年下イケメンに甘やかされすぎて困ってます

波木真帆

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カミングアウト

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「北原くん、遠いところよく来てくれたね。L.A支社の一応支社長をしている杉山大智です。これからしばらく一緒に働けると聞いているよ。よろしく」

さっと手を差し出すと、彼は目を丸くしながらもゆっくりと握手してくれた。

「あ、あの……北原、暁です。こちらこそお役に立てるかわかりませんが精一杯頑張ります。よろしくお願いします」

可愛らしい子だな。
人のことは言えないけれど、透也と同期とは思えないくらい幼く見える。
透也が笹川コーポレーションで必死に守っていた理由がわかる気がするな。

「何言ってるんだよ、北原くん。君が優秀だってことはもうみんなわかってるから、謙遜しないでいいよ」

「そんな、高遠さん……っ、謙遜じゃないですよ」

真っ赤な顔で必死に訴える彼が可愛くて思わず笑みが溢れた。

「まぁとりあえず、ここでしっかりとうちのやり方を覚えてくれればいいよ。本社では北原くんに、そこにいる宇佐美くんと、あともう一人宇佐美くんの同期で上田くんの二人の専属事務員として動いてもらうつもりのようだからね。今から宇佐美くんと一緒に動いていると本社でも楽に進めるんじゃないかな」

「えっ、専属事務員? そんなのがあるんですか?」

「支社長、その話は僕も初耳ですよ」

今回の吸収合併で笹川コーポレーションから営業事務員を多く再雇用することになったことにより、透也が考えたのがバディ制度だ。
営業社員二人につき、専属の営業事務員一人をつけることで、欲しい情報を常に共有し合うのが目的だ。
営業に行く身からしても、常に同じ人に資料を作ってもらい情報を共有している方が、毎回別の事務員に説明しなければならない手間が減るし、何よりこんな資料を作って欲しいと希望を言いやすい。

宇佐美くんと上田くんはベルンシュトルフの営業部の中でも常にトップを争う営業マンだけれど、高遠くんの抜けた穴を入社して間もない彼がほぼ一人で埋めていたという話を聞く限り、彼の実力なら余裕だろう。

「ああ、これから始まるんだ。色んな人の資料を作るよりは専属で動ける方がやりやすいと思うよ。それが彼の考えなんだ」

そう言って、透也に視線を向けると、透也は嬉しそうに俺のそばに駆け寄ってきた。

「ああ。だから、北原を今回こっちに連れてきたかったんだよ。今から仲良くしておいた方がやりやすいだろう?」

「そうだったんだ……。田辺……ありがとう」

「礼なんかいらないよ。うちの会社のためになるようにしているだけだからな」

そういうと北原くんは安心したように笑った。


「あの、宇佐美さんはいつ頃本社に戻られるんですか?」

「ここで任されていたプロジェクトがちょうど昨日で終わったんだ。だから、あと引き継ぎとか片付けとかして今週末には帰国する予定になっているよ」

「あっ、じゃあ本当に僕と一緒に本社に行けるんですね。初出社の日から知っている人がいるだけで安心します」

北原くんの嬉しそうな顔を見て宇佐美くんは嬉しそうだ。

「ふふっ。そのためにわざわざ透也が連れてきたんだよ。遠くまで来てもらって悪かったね」

「いえ。それより、あの……透也って、宇佐美さんは田辺と元々知り合いだったんですか?」

「あー、えっと、知り合いっていうか……」

再従兄弟だからね。
透也は北原くんに自分が次期社長だってことを話したみたいだけど、宇佐美くんのことまでは話してないだろうしな。

「もう良いだろ、敦己。隠さなくてもお前が実力でその立場にいるってみんなわかってるよ。ちなみに北原は俺が会長の孫だってことはもう知ってるぞ」

「えっ? 本当か?」

宇佐美くんの驚く声と同時に、オフィスの中も騒めきたった。

「えっ? あの人、今、会長の孫っていった?」
「うん、私もそう聞こえた」
「えっ? どういうこと?」
「会長の孫なら次期社長ってことだよね?」
「だから、あの人支社長とよく一緒にいたの?」
「えー、まさかの玉の輿? 狙い目じゃない!」

透也の正体が知れ渡ったらこうなるかなとは思っていた。
でも笹川コーポレーションが吸収合併されて、透也自身も再来週からこの支社で働くようになることを考えたら、いつまでも正体を隠しておくわけにいかないもんな。

その上、宇佐美くんが正体を明かしたら、騒ぎは大きくなりそうだけど、一度に終わる方がまだマシだし、宇佐美くんは来週にはここから出るしな。
ちょうどいいタイミングなのかもしれない。

「そうか、透也のことを知っているなら、もう隠さなくていいかもな」

そういうと、宇佐美くんはオフィス内の騒めきをスルーしながら、

「実は僕と透也は再従兄弟なんだ」

と告げた。

「えっ、再従兄弟って……」

「僕と透也のお祖父さんたちが兄弟ってことかな」

そこまで言えば、北原くんも宇佐美くんが透也と同じ経営一族の仲間だと気づくはずだ。
さて、どんな反応をするのかと思っていたら、

「あ、そうだったんですね。親戚で同じ会社って仲良いんですね」

ものすごい笑顔でそう言われて、

「えっ?」
「はっ?」

宇佐美くんも当の透也も面食らったみたいだ。

北原くん以外からは

「えーっ、宇佐美さんも経営者一族?」
「宇佐美さんもまだ結婚してなかったよね?」
「こっちも玉の輿狙えるじゃない!」
「すごーいっ!!」

といろめきだった声が上がっている。
きっとこういう反応が普通なんだろうな。


「ぷっ、ははっ」
「ははっ」

「えっ? 何? 僕、何かおかしいこと言いましたか?」

透也と宇佐美くんが急に笑い出したから、北原くんは不思議そうにしているけれど、そんな可愛い反応に俺も大夢くんも一緒になってつい笑ってしまった。

「あっ、支社長と高遠さんまで。どうして笑ってるんですか?」

「ああ、ごめん。ごめん。北原くんがすごく素直で可愛いなと思って」

そういうと、

「うちの暁は本当に可愛いんですよ」

と今までずっと北原くんの後ろで見守っていた長身の男性がそっと北原くんに寄り添った。
あれっ、そういえば彼は誰だろう? ロビーでも確か一緒にいた気がする。

「あの、すみません。挨拶をするのを忘れていましたが、あなたはどなたですか?」

「これはご挨拶が遅れて申し訳ありません。私は小田切おだぎりさとし。弁護士をやっています」

「えっ? 弁護士さんがどうして彼と一緒に?」

そう聞くと北原くんの顔が一気に赤くなった。
その反応に驚いていると、透也が俺の耳元で囁いて教えてくれた。

「杉山さん……彼なんですよ。北原に同行する恋人さんは」

「えっ? 彼が?」

「はい。そして、千鶴さんの件でお世話になった弁護士さんです」

「――っ、そうだったんですか! その節は妹が大変お世話になりました」

慌てて頭を下げると、

「いえ、千鶴さんの件はほとんど田辺さんが動いていらっしゃいましたよ。私は特に何もしていません」

とにこやかな笑顔を向けてくれた。
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