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久しぶりの再会
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「ふふっ。待ちきれないみたいですね」
「えっ? そ、そんなことないけど……」
「もう穴が空くほど時計を見てますよ。確か3時到着でしたよね? もう着いていてもおかしくないんじゃないですか?」
「ああ、そうなんだけどこの時間は渋滞が酷いから、多分もう少しかかるんじゃないかな」
理解したようにそう言いつつも、心の中ではまだかな、まだかなと浮ついた気持ちを抑えることができずにいた。
仕事もなかなか手につかず、ちょっとコーヒーでも飲んで落ち着かせようと思っているとデスクに置いてある電話がなった。
急いで取ると
「杉山支社長、お客さまがロビーに来られました」
という受付からの連絡だった。
「すぐに行きます!」
そう言って駆け出して行こうと思ったら、
「僕も行きます」
と大夢くんが声をかけてくれた。
今日透也と一緒に来る彼は大夢くんとは顔見知りだ。
大夢くんの顔を見せた方がホッとするだろう。
それに二人が話をしている間に、透也と少しでも話ができるかもしれない。
そんなことを考えながら、大夢くんと一緒にロビーまで降りていった。
どこにいるんだろう……ロビーについて見渡そうと思ったと同時に
「杉山さんっ!!」
という透也の声が耳に飛び込んできた。
満面の笑みで嬉しそうに手を振りながら駆け寄ってくる透也の姿は、まるで大型犬が尻尾を振りながら飼い主のもとに駆け寄ってきているみたいだ。
「ふふっ。透也くん、すごいな。もう我慢しきれないって感じだね。北原くんの方は僕に任せて、透也くんと再会をしばらく楽しんでください」
大夢くんはそう言って、先に北原くんたちの方へ駆けていった。
それとすれ違うように透也が俺の元にやってくる。
「ただいま、大智さん」
「透也……おかえり」
本当ならすぐにでも飛びつきたい。
でもそれを必死に抑えて笑顔で迎え入れた。
それなのに、
「今すぐハグしてキスしたいんですけど、大智は気にしますか?」
そんなことを尋ねられる。
流石にここは会社のロビー。
気にしないわけない。
まだ働いている時間だから、そこまで人の姿は多くないけれど全くいないわけじゃない。
ただでさえ透也の大声で注目を集めているのに、そこまではできないというより、してはいけないだろう。
でも……ずっと会いたかった透也が目の前にいるのに、触れ合うこともできないなんて辛すぎる。
もうとっくに俺の我慢は限界なんだから。
俺は何も言わずに透也の手を取って、思いっきり引っ張った。
「えっ? ど、どうしたんですか?」
焦る透也の声に返事もせずにロビー階の奥にある待合室に向かった。
一応用意されている部屋だけれど、普段はここには誰も来ない。
だったら、支社長権限で少しくらい使ってもいいだろう。
俺は透也を待合室に押し込んで、後ろ手でカチャリと鍵をかけた。
「大智……」
「透也っ!!」
会いたかったとか、寂しかったとか、言いたいこともいっぱいあったのに。
ここが会社だとか、仕事中だとか、そんなことももう何もかも忘れて俺は透也の胸に飛び込んだ。
ギュッと抱きしめられてふわりと透也の匂いを感じる。
ああ、この匂い。
これにずっと包まれたかったんだ。
「寂しい思いをさせてすみません」
そう言いながら、透也の顔が近づいてくる。
スッと目を閉じるとゆっくりと唇が重なった。
ここは会社だからせめて重ねるだけ……そう思っていたのに重なってしまったらもう止められなかった。
自然と唇を開いて、透也の舌を誘い込んでしまう。
「んんっ……んっ!」
何日も透也と触れ合っていなかった身体は舌を絡められただけで身体の奥まで疼いてしまう。
ダメだ、このままじゃ!
慌ててトントンと胸を叩くと、透也の唇がスッと離れた。
「すみません、大智。つい我慢できなくて……怒ってますか?」
「ちが――っ、これ以上、キスしたら俺の方が我慢できなくなる、から……続きは帰ってから……」
「――っ、ああもうっ、本当に可愛すぎます。大智は」
ギュッと抱きしめられて、温もりに安心する。
「長旅お疲れさま。それに千鶴のこともありがとう」
「お礼なんていいんですよ。それに今のキスで長旅の疲れも消えました」
「ふふっ。ならよかった」
「ああ、こんな色っぽい顔で外に出したくないな」
「色っぽいって……何言ってるんだ」
「本当ですよ。もう、いい加減大智は自分が魅力的だってわかってくださいよ」
透也はいつだってそういうけれど、この年まで童貞処女だった俺に言っても説得力ない気がするんだけどな……。
なんて言ったら怒りそうだから言わないけれど。
「いい加減、高遠くんたちのところに行かないとな」
「うーん、まだ火照ってるのが気になりますけど……仕方ないですね。俺からあんまり離れないでくださいね」
「わかったって」
そう言って、待合室を出てロビーに向かうともうすでに大夢くんたちはいなかった。
「先にオフィスを案内しているんじゃないですか?」
「あっ、そうかも」
支社長のくせに客人を部下に任せてほったらかしにするなんてとんでもないことだけど、とりあえずはオフィスに戻ることが先決だ。
透也と一緒に急いでオフィスに向かい、中に入ると大夢くんと宇佐美くんが北原くんと話しているのが見えた。
「ごめん、待たせてしまって」
そう言いながら駆け寄ると、
「大丈夫ですよ。先に案内していたので」
と笑顔で大夢くんに迎え入れられた。
何もかもわかっているんだという大夢くんの表情に少し恥ずかしくなるが、透也との時間を作ってくれたことは感謝してる。
慌てて支社長の顔を作りながら、北原くんに挨拶をした。
「えっ? そ、そんなことないけど……」
「もう穴が空くほど時計を見てますよ。確か3時到着でしたよね? もう着いていてもおかしくないんじゃないですか?」
「ああ、そうなんだけどこの時間は渋滞が酷いから、多分もう少しかかるんじゃないかな」
理解したようにそう言いつつも、心の中ではまだかな、まだかなと浮ついた気持ちを抑えることができずにいた。
仕事もなかなか手につかず、ちょっとコーヒーでも飲んで落ち着かせようと思っているとデスクに置いてある電話がなった。
急いで取ると
「杉山支社長、お客さまがロビーに来られました」
という受付からの連絡だった。
「すぐに行きます!」
そう言って駆け出して行こうと思ったら、
「僕も行きます」
と大夢くんが声をかけてくれた。
今日透也と一緒に来る彼は大夢くんとは顔見知りだ。
大夢くんの顔を見せた方がホッとするだろう。
それに二人が話をしている間に、透也と少しでも話ができるかもしれない。
そんなことを考えながら、大夢くんと一緒にロビーまで降りていった。
どこにいるんだろう……ロビーについて見渡そうと思ったと同時に
「杉山さんっ!!」
という透也の声が耳に飛び込んできた。
満面の笑みで嬉しそうに手を振りながら駆け寄ってくる透也の姿は、まるで大型犬が尻尾を振りながら飼い主のもとに駆け寄ってきているみたいだ。
「ふふっ。透也くん、すごいな。もう我慢しきれないって感じだね。北原くんの方は僕に任せて、透也くんと再会をしばらく楽しんでください」
大夢くんはそう言って、先に北原くんたちの方へ駆けていった。
それとすれ違うように透也が俺の元にやってくる。
「ただいま、大智さん」
「透也……おかえり」
本当ならすぐにでも飛びつきたい。
でもそれを必死に抑えて笑顔で迎え入れた。
それなのに、
「今すぐハグしてキスしたいんですけど、大智は気にしますか?」
そんなことを尋ねられる。
流石にここは会社のロビー。
気にしないわけない。
まだ働いている時間だから、そこまで人の姿は多くないけれど全くいないわけじゃない。
ただでさえ透也の大声で注目を集めているのに、そこまではできないというより、してはいけないだろう。
でも……ずっと会いたかった透也が目の前にいるのに、触れ合うこともできないなんて辛すぎる。
もうとっくに俺の我慢は限界なんだから。
俺は何も言わずに透也の手を取って、思いっきり引っ張った。
「えっ? ど、どうしたんですか?」
焦る透也の声に返事もせずにロビー階の奥にある待合室に向かった。
一応用意されている部屋だけれど、普段はここには誰も来ない。
だったら、支社長権限で少しくらい使ってもいいだろう。
俺は透也を待合室に押し込んで、後ろ手でカチャリと鍵をかけた。
「大智……」
「透也っ!!」
会いたかったとか、寂しかったとか、言いたいこともいっぱいあったのに。
ここが会社だとか、仕事中だとか、そんなことももう何もかも忘れて俺は透也の胸に飛び込んだ。
ギュッと抱きしめられてふわりと透也の匂いを感じる。
ああ、この匂い。
これにずっと包まれたかったんだ。
「寂しい思いをさせてすみません」
そう言いながら、透也の顔が近づいてくる。
スッと目を閉じるとゆっくりと唇が重なった。
ここは会社だからせめて重ねるだけ……そう思っていたのに重なってしまったらもう止められなかった。
自然と唇を開いて、透也の舌を誘い込んでしまう。
「んんっ……んっ!」
何日も透也と触れ合っていなかった身体は舌を絡められただけで身体の奥まで疼いてしまう。
ダメだ、このままじゃ!
慌ててトントンと胸を叩くと、透也の唇がスッと離れた。
「すみません、大智。つい我慢できなくて……怒ってますか?」
「ちが――っ、これ以上、キスしたら俺の方が我慢できなくなる、から……続きは帰ってから……」
「――っ、ああもうっ、本当に可愛すぎます。大智は」
ギュッと抱きしめられて、温もりに安心する。
「長旅お疲れさま。それに千鶴のこともありがとう」
「お礼なんていいんですよ。それに今のキスで長旅の疲れも消えました」
「ふふっ。ならよかった」
「ああ、こんな色っぽい顔で外に出したくないな」
「色っぽいって……何言ってるんだ」
「本当ですよ。もう、いい加減大智は自分が魅力的だってわかってくださいよ」
透也はいつだってそういうけれど、この年まで童貞処女だった俺に言っても説得力ない気がするんだけどな……。
なんて言ったら怒りそうだから言わないけれど。
「いい加減、高遠くんたちのところに行かないとな」
「うーん、まだ火照ってるのが気になりますけど……仕方ないですね。俺からあんまり離れないでくださいね」
「わかったって」
そう言って、待合室を出てロビーに向かうともうすでに大夢くんたちはいなかった。
「先にオフィスを案内しているんじゃないですか?」
「あっ、そうかも」
支社長のくせに客人を部下に任せてほったらかしにするなんてとんでもないことだけど、とりあえずはオフィスに戻ることが先決だ。
透也と一緒に急いでオフィスに向かい、中に入ると大夢くんと宇佐美くんが北原くんと話しているのが見えた。
「ごめん、待たせてしまって」
そう言いながら駆け寄ると、
「大丈夫ですよ。先に案内していたので」
と笑顔で大夢くんに迎え入れられた。
何もかもわかっているんだという大夢くんの表情に少し恥ずかしくなるが、透也との時間を作ってくれたことは感謝してる。
慌てて支社長の顔を作りながら、北原くんに挨拶をした。
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