イケメン店主に秘密の片想いのはずが何故か溺愛されちゃってます

波木真帆

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番外編

最高の上司

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数日ぶりに自分の席に座って就業の準備を整えていると、

「社長、藤乃くん。おはようございます」

という砂川さんの声が聞こえてきた。

やっぱり二人一緒の出社か。ラブラブだななんて思いながらそっちを見ると、藤乃くんと目が合った瞬間、

「あっ! 平松さん!」

と驚いた表情を浮かべたまま藤乃くんが大声で俺の名前を呼んだ。そしてなぜか興奮した様子で俺の方に駆け寄ってきた。

「祐悟さん、平松さん出社してましたよ! 今日まで休みじゃなかったです!」

キラキラと目を輝かせてそう言ったかと思うと、

「平松さん、腰は大丈夫ですか? 無理しないでくださいね! 僕、なんでもお手伝いしますから!」

と大きな声で言われてしまった。その声に、一気に周りが騒めき始めた。

砂川さんや名嘉村さんにエッチしたことがバレたのも恥ずかしかったのに、藤乃くんの言葉で会社中にそれが広まってしまった気がする。

うわ、恥ずかしいっ_!!
すぐにでもこの場からいなくなってしまいたいくらいだ。
でも、藤乃くんは親切で言ってくれたってわかっているから、なんて声を返していいのかもわからない。

恥ずかしさに震えながら、隣にいた名嘉村さんにそっと視線を送ると、

「大丈夫だよ、藤乃くん。平松くんのことは僕に任せて。藤乃くんは社長のサポートの仕事があるでしょう?」

と笑顔で藤乃くんに声をかけていた。
すると、その声に反応するようにすぐに社長が

「航。大事な資料作ってもらうから、早く行くぞ」

と声をかけたかと思うと、そのまま藤乃くんの手を取ってオフィスの奥にある社長室に連れて行った。

バタンと扉が閉まるのが聞こえて、俺たちの周りは静かになった。まだ俺に視線が向けられている気がしたけれど、砂川さんが、

「さぁ、仕事を始めてください」

と声をかけると、すぐにそれぞれ仕事に取り掛かった。俺に対する視線が消えたのがわかって、ほっと一息吐いた。

すると、砂川さんがそっと俺のところに近づいてきて、

「私の部屋で少しお話ししましょうか」

と笑顔を見せてくれて、俺は砂川さんに連れられて部屋に向かった。

いつも昼食の時にお邪魔している部屋だけど、業務時間中に入るのはドキドキする。

俺をソファーに座らせると、すぐにコーヒーを出してくれた。

「どうぞ」

「は、はい。いただきます」

砂糖とミルクが入った俺好みのコーヒー。
さっきの恥ずかしかった気持ちが少し和らいでいくのがわかる。

「藤乃くんのこと、許してあげてください」

「えっ?」

「昨日お休みだったから平松くんのこと心配していたんですよ。おそらく、自分の経験からとんでもないことになっていると思ったんでしょう。だから、今日平松くんの元気な姿を見てほっとしたんだと思うんです。それでつい、あんな大声で話してしまったと思うんですよ」

「ああ……そういうこと、ですか」

社長がけだもの……なんて話を聞いたばかりだったもんな。
藤乃くんがそんなけだものな社長との体験から、俺のことを心配してくれていたが故のさっきの発言ってことか……。

「きっと今頃、藤乃くんも社長から注意を受けていると思いますので、許してあげてください」

「砂川さん、大丈夫です。確かに少し、いや、かなり恥ずかしかったですけど……もうバレたらバレたでいいかなって思えたので……。それに、俺、崇史さんとその……ああいうことになれて幸せだって思っているので、崇史さんが俺のものだってみんなに周知できてある意味よかったのかもしれません。だから、大丈夫です」

「平松くん……ふふっ、今の言葉。八尋さんが聞いたらものすごく喜ぶと思いますよ」

「――っ、あ、あの、内緒に……」

「内緒でいいんですか?」

「あ、あの……じゃあ、俺がいないところで……」

「わかりました。じゃあ、こっそり伝えておきますね」

俺にそういう時点でこっそりではない気もするけれど、砂川さんのそんなお茶目なところに思わず笑ってしまう。

「あの、社長に伝えてください。俺、藤乃くんの言ったこともう気にしてないので、藤乃くんをあまり怒らないであげてほしいって」

「ええ。わかりました。じゃあ、仕事をしましょうか。十時のおやつまで頑張りましょうね」

優しい笑顔を向けられて俺は部屋を出た。ああ、俺は本当にいい上司に恵まれたな。
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