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第三章

出産報告

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<sideアリーシャ>

「アリーシャ! どうだった?」

「ええ、無事に生まれたわ」

てっきりそれぞれの部屋で待っているかと思ったのに、手術室の前で待ちかねているなんて驚いてしまったわ。
でも、ヴィルとクレイ、それにティオの嬉しそうな顔を見ると、私も嬉しくなる。

「アズールさまのご様子はいかがですか?」

「ええ、とっても元気よ。今、早速赤ちゃんたちにミルクをあげているの」

「えっ? もうミルクがお出になったのですか?」

「ええ。ルーディーがそばにいてくれているおかげよ」

その言葉にティオの顔が一気に赤くなる。
相変わらず純情で可愛らしいんだから。

「それで、子どもたちはどっちだった?」

待ちきれないと言った様子でヴィルが尋ねてくる。

「どちらも狼族で男の子と女の子だったわ」

「おおーっ!! そうか、二人の子だ。それは可愛いだろうな」

「ええ、黒耳の男の子はしっかりした顔立ちでルーディーによく似ていたわ。女の子はね、ふふっ」

「なんだ? 女の子はどうしたんだ?」

「アズールと同じ真っ白な耳と尻尾を持っていたわ」

「な――っ、狼族で白い耳、とな? それはまた珍しい」

驚くのも無理はない。
王家の血筋なら黒耳、そこから遠くなるにつれてグレーや茶色になるのだけど、私の知る限り真っ白な耳を持つ狼族はいなかったはずだから。

「『神の御意志』とその運命の番の子どもたちだもの。そんなこともあるわ。たとえ、真っ白でも真っ黒でも変わらないでしょう?」

「ああ、それはもちろん。これからみんなで育てていくとしよう。そうだ、アリーシャ。陛下へのご報告はどうする? ルーディーがするのか?」

「いえ、当分はアズールの世話に忙しいだろうから、私たちでしておきましょう。その代わり、ルーディーから連絡があるまではこちらに来るのはお待ちいただくことになるけれど」

「そうだな。アズールも子どもたちもまだ万全ではないだろうからな」

「父上、私たちが陛下に報告に行ってきますよ。ついでにマクシミリアンとヴェルナーにも伝えてきましょう」

「ああ、お前たちが行ってくれるならありがたい。頼むよ」

「ではすぐに行って参ります」

そういうと、クレイはティオをつれてすぐにお城へ向かった。


<sideフィデリオ>

「公爵家からの連絡はまだか? もう、子どもたちは生まれたのではないか?」

アズールさまが今日出産なさるとのご報告を、ルーディーさまから受けてからというもの30分おきに同じことを聞かれている気がする。

アズールさまのご出産予定日まではまだ時間があったから、これほど早く生まれる聞いて、もしかしたら不測の事態かと思って心配したけれど、アントン医師の診察の元、今のタイミングが子どもを産む絶好機なのだと言われたそうで胸を撫で下ろした。

ルーディーさまの蜜のおかげで順調に大きくなっていると言っていたし、おそらくその影響もあるのだろう。
それくらいルーディーさまがアズールさまと子どもたちのためにせっせと蜜をお与えになったということだ。

アズールさまだけでなく、ルーディーさまも子どもたちの成長のために頑張られたのだから、きっと元気な御子がお生まれになるに違いない。

もうそろそろ連絡が来る頃かと思っていると、ヴォルフ公爵家よりクレイさまとティオさまがお越しになったと報告があった。

「おおっ、来たか! すぐに通すのだ!」

陛下はそれはそれは嬉しそうにお二人を呼び入れて、挨拶もそこそこにお二人からのご報告をお受けになった。

「陛下。我が弟アズールが、先ほど無事に狼族の男の子と女の子の双子を出産致しましたのでご報告いたします」

「おおっ!! 男と女だと? それはめでたい!! それで、アズールと子どもたちは元気なのか?」

「はい。先ほど無事に初乳も飲み、健やかに眠っているとの報告を受けております」

「なんとっ! もう初乳を? さすが、アズールだな」

驚くのも無理はない。
初乳が出るのは出産後、自然分娩でも六時間ほど、帝王切開であれば半日はかかると言われているのだから。

初乳が出るのは母体が回復した証拠であり、それを飲ませると健やかに育つ。
これで三歳までは体調を崩すことなく、お育ちになることだろう。

それにしても本当に回復が早い。
あえて口にはしないが、おそらくルーディーさまのおかげだろうな。
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