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第三章
出産祝いの贈り物
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「待ち望んだルーディーとアズールの子どもたちの誕生だ。すぐに宴を……と言いたいところだが、アズールも子どもたちもまだ万全ではないだろう。私もそのことを理解している。宴はアズールと子どもたちの主治医でもあるアントンと、そしてルーディーの意見を聞いて後々催すとして、私からはアズールと子どもたちにお祝いを贈るつもりだ」
「陛下……っ」
陛下の言葉にクレイさまとティオさまも一気に安堵の表情をお見せになる。
すぐに宴をするのだと無理を申されることも覚悟していたのかもしれない。
あれほど跡継ぎを熱望なさっていた陛下ならば、跡継ぎである王子の誕生と可愛らしい姫の誕生にすぐに宴を! と言い出しそうと思っても無理はない。
だが、ルーディーさまをご出産なさった王妃さまは一時回復の兆しを見せたものの、それからしばらくして短い生涯を終えられた。
あの時、出産後の母体がどれほど弱っているかを身をもって体験なさったのだ。
アズールさまはルーディーさまの蜜で回復が早いようだが、それでも帝王切開でご出産なさったのだから、身体にご負担がかかったことは間違いない。
王妃さまと同じ未来を歩まないようになさるためにも今はアズールさまにしっかりとご静養していただくのが何よりも大事なことだ。
だから、陛下はアズールさまに今すぐに宴を! なんてことを言うはずがないのだ。
「アズールと子どもたちへの贈り物は何がいいだろうか? クレイとティオ、忌憚の無い意見を出してほしい」
「はい。アズールは甘いものが好きですから、陛下からお菓子や果物を贈られたら喜ぶと思います。それに子どもたちもアズールのミルクを通して食べたものが届けられるのですから、結果として子どもたちへの贈り物になっているかと存じます」
「うーん、やはりそれになるか……」
クレイさまの意見に少し悩んで見せたのは、アズールさまが妊娠なさっていた間もよくお菓子と果物をお贈りしていたからだ。
確かに大喜びしてくださるだろうが、誕生の祝いとしては悩むところだ。
大喜びしてくださるものを送るのはもちろんいいことなのだが。
「恐れながら、陛下。私もよろしいでしょうか?」
「ああ、ティオ。なんでも意見を言ってほしい」
「お子さま方には、お揃いのお洋服を贈られるのはいかがでしょうか? 可愛らしい双子がお揃いの衣装に身を包むのはなんとも愛らしいものです」
「おおっ!! それは素晴らしいな!! なるほど、すぐに仕立て屋を呼ぶとしよう!」
その言葉に私は急いで、仕立て屋のマティアス殿に呼び出しを入れた。
きっとすぐに登城くださることだろう。
「アズールへの贈り物は何がいいだろうか? やはりクレイの言う通り、お菓子と果物が喜ぶだろうか?」
「はい。もちろん、それもお喜びなさると思いますが、せっかくですので、アズールさまとルーディーさまにも対の衣裳をお贈りするというのはいかがでしょうか?」
「何? アズールと、ルーディーに対の服を?」
「はい。アズールさまだけの御衣装でしたら、ルーディーさまのご機嫌を損ねる恐れがございますが、ルーディーさまとの対の衣装であれば、お喜びいただけるかと存じます」
「なるほど……それなら、喜んでもらえそうだな。よし、マティアスにルーディーとアズールの衣装も頼むとしよう。仕立てるまでに日数がかかるだろうから、その間に菓子と果物を贈っておくとしようか」
その言葉にクレイさまの表情が和らいだ。
ふふっ。陛下もお優しいことだ。
「それでは私たちは、そろそろ失礼致します」
「もう帰るのか?」
「いえ、騎士団に寄ってマクシミリアンとヴェルナーにも出産報告をするのです」
「ああ、それなら早く行ってやってくれ。二人もかなり心配していたようだったから、無事に産まれたと聞けば安心するだろう」
マクシミリアンもヴェルナー殿もアズールさまの護衛としてずっとおそばに仕えていたから、喜びも一入だろう。
頭を下げ部屋を出ていくクレイさまとティオさまをお見送りしていると、
「失礼致します。このマティアス、急ぎのご連絡を賜り馳せ参じました」
と汗だくでマティアス殿が現れた。
<sideティオ>
「陛下が宴という言葉を出された時はドキッとしましたね」
「ああ、だがさすが陛下。アズールのことも子どもたちのこともちゃんと考えてくださった。それに贈り物まであんなにも真剣にお考えくださるとは……」
「はい。アズールさまもルーディーさまもきっと喜びになります」
「それにしてもティオの考えは素晴らしかったな」
「そんな……っ。私はただ、自分がもらったら嬉しいだろうなと思ったことをお話ししただけで……」
そういうとクレイさまの目が輝いた気がした。
「クレイさま?」
「ということは、ティオも私と対の衣裳が着たいということか?」
「えっ……それは、もちろん。クレイさまと対の衣装を着られるのは嬉しいことです」
「そうかっ、なら私たちも仕立てるとしよう!! ああ、楽しみができたな」
嬉しそうにはしゃぐクレイさまをなんだか可愛いと思いながらも、早々と対の衣装に逸る私がいた。
「陛下……っ」
陛下の言葉にクレイさまとティオさまも一気に安堵の表情をお見せになる。
すぐに宴をするのだと無理を申されることも覚悟していたのかもしれない。
あれほど跡継ぎを熱望なさっていた陛下ならば、跡継ぎである王子の誕生と可愛らしい姫の誕生にすぐに宴を! と言い出しそうと思っても無理はない。
だが、ルーディーさまをご出産なさった王妃さまは一時回復の兆しを見せたものの、それからしばらくして短い生涯を終えられた。
あの時、出産後の母体がどれほど弱っているかを身をもって体験なさったのだ。
アズールさまはルーディーさまの蜜で回復が早いようだが、それでも帝王切開でご出産なさったのだから、身体にご負担がかかったことは間違いない。
王妃さまと同じ未来を歩まないようになさるためにも今はアズールさまにしっかりとご静養していただくのが何よりも大事なことだ。
だから、陛下はアズールさまに今すぐに宴を! なんてことを言うはずがないのだ。
「アズールと子どもたちへの贈り物は何がいいだろうか? クレイとティオ、忌憚の無い意見を出してほしい」
「はい。アズールは甘いものが好きですから、陛下からお菓子や果物を贈られたら喜ぶと思います。それに子どもたちもアズールのミルクを通して食べたものが届けられるのですから、結果として子どもたちへの贈り物になっているかと存じます」
「うーん、やはりそれになるか……」
クレイさまの意見に少し悩んで見せたのは、アズールさまが妊娠なさっていた間もよくお菓子と果物をお贈りしていたからだ。
確かに大喜びしてくださるだろうが、誕生の祝いとしては悩むところだ。
大喜びしてくださるものを送るのはもちろんいいことなのだが。
「恐れながら、陛下。私もよろしいでしょうか?」
「ああ、ティオ。なんでも意見を言ってほしい」
「お子さま方には、お揃いのお洋服を贈られるのはいかがでしょうか? 可愛らしい双子がお揃いの衣装に身を包むのはなんとも愛らしいものです」
「おおっ!! それは素晴らしいな!! なるほど、すぐに仕立て屋を呼ぶとしよう!」
その言葉に私は急いで、仕立て屋のマティアス殿に呼び出しを入れた。
きっとすぐに登城くださることだろう。
「アズールへの贈り物は何がいいだろうか? やはりクレイの言う通り、お菓子と果物が喜ぶだろうか?」
「はい。もちろん、それもお喜びなさると思いますが、せっかくですので、アズールさまとルーディーさまにも対の衣裳をお贈りするというのはいかがでしょうか?」
「何? アズールと、ルーディーに対の服を?」
「はい。アズールさまだけの御衣装でしたら、ルーディーさまのご機嫌を損ねる恐れがございますが、ルーディーさまとの対の衣装であれば、お喜びいただけるかと存じます」
「なるほど……それなら、喜んでもらえそうだな。よし、マティアスにルーディーとアズールの衣装も頼むとしよう。仕立てるまでに日数がかかるだろうから、その間に菓子と果物を贈っておくとしようか」
その言葉にクレイさまの表情が和らいだ。
ふふっ。陛下もお優しいことだ。
「それでは私たちは、そろそろ失礼致します」
「もう帰るのか?」
「いえ、騎士団に寄ってマクシミリアンとヴェルナーにも出産報告をするのです」
「ああ、それなら早く行ってやってくれ。二人もかなり心配していたようだったから、無事に産まれたと聞けば安心するだろう」
マクシミリアンもヴェルナー殿もアズールさまの護衛としてずっとおそばに仕えていたから、喜びも一入だろう。
頭を下げ部屋を出ていくクレイさまとティオさまをお見送りしていると、
「失礼致します。このマティアス、急ぎのご連絡を賜り馳せ参じました」
と汗だくでマティアス殿が現れた。
<sideティオ>
「陛下が宴という言葉を出された時はドキッとしましたね」
「ああ、だがさすが陛下。アズールのことも子どもたちのこともちゃんと考えてくださった。それに贈り物まであんなにも真剣にお考えくださるとは……」
「はい。アズールさまもルーディーさまもきっと喜びになります」
「それにしてもティオの考えは素晴らしかったな」
「そんな……っ。私はただ、自分がもらったら嬉しいだろうなと思ったことをお話ししただけで……」
そういうとクレイさまの目が輝いた気がした。
「クレイさま?」
「ということは、ティオも私と対の衣裳が着たいということか?」
「えっ……それは、もちろん。クレイさまと対の衣装を着られるのは嬉しいことです」
「そうかっ、なら私たちも仕立てるとしよう!! ああ、楽しみができたな」
嬉しそうにはしゃぐクレイさまをなんだか可愛いと思いながらも、早々と対の衣装に逸る私がいた。
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