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第三章
虫の知らせ
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<sideヴェルナー>
アズールさまのお部屋は、リビングに限っては多少の物音が聞こえるように作られている。
それはアズールさまに何かあったときにすぐに御守りするためだ。
寝室は王子がご宿泊になることもあるため、完全防音になっているが、寝室に置かれたベルを鳴らせば、私と執事であるベンのみ知らせが届くようになっている。
それはアズールさまもご存じであるから、何か異変があればすぐにベルを鳴らしてくれることだろう。
私は今夜もアズールさまの部屋の前で静かに待機する。
何も起こらないに越したことはない。
けれど、その時は刻一刻と近づいている。
それが今日か明日か……。
私はじっとその時を待ち続けるだけだ。
今夜は大丈夫かもしれない。
そう思ったのは、あと1時間ほどで夜明けを迎えようとしていたからだ。
しかし、異変は突然何の前触れもなく訪れた。
「――っ!!!」
激しく震えるボタンがアズールさまに何かがあったことを表していた。
「すぐに王子を! 急げ!!」
すぐ近くで警備をしていた騎士に指示を出し、急いで王子を迎えに行かせた。
その間にもアズールさまは中で苦しんでおられるのだ。
早く!
王子、急いでください!
あなたの大事なアズールさまが!
アズールさまが今、どんな状況であるかはわからないが、あの様子からすれば十中八九発情期を迎えられたに違いない。
私が今、やらなければいけないことはどんなことがあっても、この扉を開けてはならないということだけだ。
アズールさま。
どうかご無事で。
そう願いながらも、決して扉が開かないように押さえ続けていると、
「……っ、ゔぇ、る……っ、あ、ちゅい……っ、こ、こ、あけ、て……っ」
扉のすぐ近くでアズールさまの苦しげな声が聞こえる。
ああ、やはり間違いない。
こんなにも苦しそうな声をあげて……必死にここまで来られたのだろう。
だが、アズールさまのお願いでもこれだけは聞けないのだ。
「アズールさま、もう少しの辛抱です。すぐに王子が参りますよ!」
「るー……き、てくりぇ、る……?」
「ええ。もうすぐお越しになりますよ。ですから、頑張りましょうね」
「ゔぇ、る……」
「アズールさまっ!」
今にも儚くなってしまいそうな弱々しい声に、何度扉を開けて救出しに行こうと思ってしまったか。
決してそれをしてはいけないと頭ではわかっているから扉を開けることはしないが、これほど葛藤したのは初めてかもしれない。
ああ、王子!
早くきてください!
私にはもう心の中で祈ることしかできなかった。
<sideルーディー>
ベッドに入ってみたものの、妙な皆騒ぎがする。
アズールになにか起こったのではあるまいな?
この時期にこの胸騒ぎとくれば、想像するのはただ一つしかない。
己の本能を信じて一度アズールの様子を見に行ってみようか?
たとえ、無駄足になったとしても構わない。
単なる杞憂であればそれでいいのだ。
もし、何もなければアズールと朝の散歩をするのも楽しいかもしれない。
そんなことを思いながら身支度を整え、城を出た。
夜明けまではあと1時間というところか。
アズールと共に日の出を見るのもいいな。
馬を走らせていると、ものすごい勢いで駆けてくる馬の足音が近づいてくる。
「何事だ?!」
あまりの勢いに騎士を止め、声をかければ
「団長っ! 団長をお迎えに参ったのでございます! アズールさまが――」
と必死な形相で叫んだ。
アズールの名前が私の耳に触れた頃には、もう私は馬を走らせていた。
ああ、やはりあの胸騒ぎは間違いではなかったのだ。
もしかしたらアズールが私に知らせてくれたのかもしれない。
アズールっ!
アズールっ!!
もう少しの辛抱だ!
私の尋常でない様子を愛馬も理解してくれているようで、信じられないほどの速さで公爵邸に到着した。
馬から飛び降り、玄関を激しく叩けばベンがすぐに扉を開けた。
「馬を頼む!」
そう叫んで私は急いで階段を駆け上った。
「ヴェルナーっ!!」
「王子! 急いでください!」
「離れていろ! そして、誰も近づけるな!!」
「はっ!」
扉の前にいたヴェルナーと入れ替わるように扉の前に立ち、
「アズール! 開けるぞ! 扉から離れていろ!」
と念の為に声をかけ、気配が動いたのを確認して扉を開けた。
「くぅ――っ!!!!」
部屋中を覆い尽くすようなアズールの甘い香りに、一気に欲望が昂ったのがわかった。
アズールさまのお部屋は、リビングに限っては多少の物音が聞こえるように作られている。
それはアズールさまに何かあったときにすぐに御守りするためだ。
寝室は王子がご宿泊になることもあるため、完全防音になっているが、寝室に置かれたベルを鳴らせば、私と執事であるベンのみ知らせが届くようになっている。
それはアズールさまもご存じであるから、何か異変があればすぐにベルを鳴らしてくれることだろう。
私は今夜もアズールさまの部屋の前で静かに待機する。
何も起こらないに越したことはない。
けれど、その時は刻一刻と近づいている。
それが今日か明日か……。
私はじっとその時を待ち続けるだけだ。
今夜は大丈夫かもしれない。
そう思ったのは、あと1時間ほどで夜明けを迎えようとしていたからだ。
しかし、異変は突然何の前触れもなく訪れた。
「――っ!!!」
激しく震えるボタンがアズールさまに何かがあったことを表していた。
「すぐに王子を! 急げ!!」
すぐ近くで警備をしていた騎士に指示を出し、急いで王子を迎えに行かせた。
その間にもアズールさまは中で苦しんでおられるのだ。
早く!
王子、急いでください!
あなたの大事なアズールさまが!
アズールさまが今、どんな状況であるかはわからないが、あの様子からすれば十中八九発情期を迎えられたに違いない。
私が今、やらなければいけないことはどんなことがあっても、この扉を開けてはならないということだけだ。
アズールさま。
どうかご無事で。
そう願いながらも、決して扉が開かないように押さえ続けていると、
「……っ、ゔぇ、る……っ、あ、ちゅい……っ、こ、こ、あけ、て……っ」
扉のすぐ近くでアズールさまの苦しげな声が聞こえる。
ああ、やはり間違いない。
こんなにも苦しそうな声をあげて……必死にここまで来られたのだろう。
だが、アズールさまのお願いでもこれだけは聞けないのだ。
「アズールさま、もう少しの辛抱です。すぐに王子が参りますよ!」
「るー……き、てくりぇ、る……?」
「ええ。もうすぐお越しになりますよ。ですから、頑張りましょうね」
「ゔぇ、る……」
「アズールさまっ!」
今にも儚くなってしまいそうな弱々しい声に、何度扉を開けて救出しに行こうと思ってしまったか。
決してそれをしてはいけないと頭ではわかっているから扉を開けることはしないが、これほど葛藤したのは初めてかもしれない。
ああ、王子!
早くきてください!
私にはもう心の中で祈ることしかできなかった。
<sideルーディー>
ベッドに入ってみたものの、妙な皆騒ぎがする。
アズールになにか起こったのではあるまいな?
この時期にこの胸騒ぎとくれば、想像するのはただ一つしかない。
己の本能を信じて一度アズールの様子を見に行ってみようか?
たとえ、無駄足になったとしても構わない。
単なる杞憂であればそれでいいのだ。
もし、何もなければアズールと朝の散歩をするのも楽しいかもしれない。
そんなことを思いながら身支度を整え、城を出た。
夜明けまではあと1時間というところか。
アズールと共に日の出を見るのもいいな。
馬を走らせていると、ものすごい勢いで駆けてくる馬の足音が近づいてくる。
「何事だ?!」
あまりの勢いに騎士を止め、声をかければ
「団長っ! 団長をお迎えに参ったのでございます! アズールさまが――」
と必死な形相で叫んだ。
アズールの名前が私の耳に触れた頃には、もう私は馬を走らせていた。
ああ、やはりあの胸騒ぎは間違いではなかったのだ。
もしかしたらアズールが私に知らせてくれたのかもしれない。
アズールっ!
アズールっ!!
もう少しの辛抱だ!
私の尋常でない様子を愛馬も理解してくれているようで、信じられないほどの速さで公爵邸に到着した。
馬から飛び降り、玄関を激しく叩けばベンがすぐに扉を開けた。
「馬を頼む!」
そう叫んで私は急いで階段を駆け上った。
「ヴェルナーっ!!」
「王子! 急いでください!」
「離れていろ! そして、誰も近づけるな!!」
「はっ!」
扉の前にいたヴェルナーと入れ替わるように扉の前に立ち、
「アズール! 開けるぞ! 扉から離れていろ!」
と念の為に声をかけ、気配が動いたのを確認して扉を開けた。
「くぅ――っ!!!!」
部屋中を覆い尽くすようなアズールの甘い香りに、一気に欲望が昂ったのがわかった。
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