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第三章
異変
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<sideヴェルナー>
「アズールの発情期がかなり早くやってくるかもしれない。悪いが、今日も公爵家に泊まり込んでアズールの様子を見ていてくれないか?」
「承知しました」
本来ならば私が公爵邸に夜も泊まるのは一日置き。
他の日は私の代わりに三人の騎士たちを夜間警備につけ、マクシミリアンと一緒の部屋で過ごしているのだが、流石にアズールさまの発情期が近いとなれば、そうはいっていられない。
王子もアズールさまのことがご心配な様子で、訓練もかなり大変なのだとマクシミリアンが話していた。
だから、私も王子とアズールさまのためにもう何日も公爵家に泊まり込んでいる。
アズールさまをじっと観察していると、日に日に水分を取られる量が増えているし、頬を赤らめることも増えたような気がする。
こっそり公爵家専属医師に相談してみたところ、発情期が近づき体温が上がっているため、喉が渇きやすくなっているのではないかという見立てであった。
この分であれば、おそらく半年後の誕生日を待たずしてアズールさまは発情期に入られることだろう。
黒豹族である私や狼族である王子の発情期は一般的によく知られているが、ウサギ族のそれはどのようなものか知る者が少ない。
それは圧倒的な個体数の差も大きな要因の一つだが、何よりも運命の番となる王子が、ウサギ族の発情期の様子を全く外に漏らさないため、わからないというのが大きな理由らしい。
王子も御多分に洩れず、
「いいか、夜中にアズールが声を上げて呼んでも、決して中に入るな。すぐに私を呼ぶんだ」
と念を押していた。
初めての発情は昼間に起こった時よりも夜間に起こる方が強く出る。
アリーシャさまがお持ちになっていたウサギ族の文献にそう書かれていたのを王子は覚えていらっしゃったのだろう。
こちらとしてもアズールさまの発情フェロモンに当てられるわけにはいかない。
発情期を迎えられたアズールさまが決して部屋から出ないように対策を施しておかなければならないだろう。
そうして、対策を施しつつも、アズールさまに発情期の兆候・前触れが起こり始めてから二週間が経った。
<sideアズール>
なんだか最近ずっとお腹の奥の方でむずむずする感覚が抜けない。
しかもルーとキスをした後はもっとその感覚が強くなる。
唾液の交換をしないと体調が悪くなるというから、ほとんど毎日のようにキスをしているけれど、もしかしたら僕が大人になって身体が大きくなってきたから、今までの唾液の量じゃ足りなくなってきているのかもしれないな。
そうか、足りないからお腹がむずむずするんだ!
じゃあ、明日はもっと長い時間してもらうように頼んでおこう。
ルーの長い舌で唇や口の中を舐められたり、吸い付かれるのは心地良いから、その時間が長くなるのは嬉しいな。
明日、ルーにあったら、もっと長くキスしたいって言ってみよう。
ルーは怒ったりはしないはずだけど、驚くかもね。
ふふっ。ルーの驚く顔を見るのが楽しみだな。
今日ルーから新しくもらったフワッフワのブランケットに身体中を包み込んでベッドに寝転がる。
僕の耳や尻尾みたいなふわふわの毛並みをしたこのブランケットはルー用だけあって、ものすごく大きい。
だから、僕の頭から足先まですっぽりと覆ってくれるだけじゃなくて、身体とブランケットを一体化にするくらいいっぱい巻き込んでも手足や頭が出たりしないんだ。
おっきなブランケットに全身を包み込んでいると、なんだかルーに抱きしめられているような錯覚に陥る。
しかもこのブランケットからはルーの匂いが染み付いているし、このまま寝たら、ルーだと勘違いしてぐっすり眠れそう。
ああ、やっぱりこれ。いいな。
昨日までのブランケットもよかったけれど、だいぶルーの匂いが薄くなってたもんね。
やっぱり熟睡するにはルーの匂いが必要なんだな。
ルーの匂いをたっぷりと吸い込みながら、目を閉じるとスーッと夢の世界に落ちていきそう。
お腹のむずむずはまだ消えないけれどこのまま眠れそうだ。
少し暑さを感じながらも気持ちの良い睡眠に落ちていった。
「う、ん……っ、あ、つっ……」
むせ返るような暑さと喉の渇きに僕は目を覚ました。
な、に……こ、れ……っ。
ブランケットの下では汗まみれになっているどころか、なぜかあの時のように蜜が下着を濡らしている。
だけどあの時とは比べ物にならないくらい量が多くてたっぷりと湿っている。
これこそ、本当にオシッコなんじゃ……。
もうすぐ成人になるというのに、おねしょしただなんて恥ずかしすぎるっ!
僕は急いで起きあがろうとすると、手足に力が出ず、ふらふらとしてその場から動けなくなってしまっていた。
こんなひどい状態は蒼央の時だってなかったのに……僕の身体、一体どうなっちゃったの?
「アズールの発情期がかなり早くやってくるかもしれない。悪いが、今日も公爵家に泊まり込んでアズールの様子を見ていてくれないか?」
「承知しました」
本来ならば私が公爵邸に夜も泊まるのは一日置き。
他の日は私の代わりに三人の騎士たちを夜間警備につけ、マクシミリアンと一緒の部屋で過ごしているのだが、流石にアズールさまの発情期が近いとなれば、そうはいっていられない。
王子もアズールさまのことがご心配な様子で、訓練もかなり大変なのだとマクシミリアンが話していた。
だから、私も王子とアズールさまのためにもう何日も公爵家に泊まり込んでいる。
アズールさまをじっと観察していると、日に日に水分を取られる量が増えているし、頬を赤らめることも増えたような気がする。
こっそり公爵家専属医師に相談してみたところ、発情期が近づき体温が上がっているため、喉が渇きやすくなっているのではないかという見立てであった。
この分であれば、おそらく半年後の誕生日を待たずしてアズールさまは発情期に入られることだろう。
黒豹族である私や狼族である王子の発情期は一般的によく知られているが、ウサギ族のそれはどのようなものか知る者が少ない。
それは圧倒的な個体数の差も大きな要因の一つだが、何よりも運命の番となる王子が、ウサギ族の発情期の様子を全く外に漏らさないため、わからないというのが大きな理由らしい。
王子も御多分に洩れず、
「いいか、夜中にアズールが声を上げて呼んでも、決して中に入るな。すぐに私を呼ぶんだ」
と念を押していた。
初めての発情は昼間に起こった時よりも夜間に起こる方が強く出る。
アリーシャさまがお持ちになっていたウサギ族の文献にそう書かれていたのを王子は覚えていらっしゃったのだろう。
こちらとしてもアズールさまの発情フェロモンに当てられるわけにはいかない。
発情期を迎えられたアズールさまが決して部屋から出ないように対策を施しておかなければならないだろう。
そうして、対策を施しつつも、アズールさまに発情期の兆候・前触れが起こり始めてから二週間が経った。
<sideアズール>
なんだか最近ずっとお腹の奥の方でむずむずする感覚が抜けない。
しかもルーとキスをした後はもっとその感覚が強くなる。
唾液の交換をしないと体調が悪くなるというから、ほとんど毎日のようにキスをしているけれど、もしかしたら僕が大人になって身体が大きくなってきたから、今までの唾液の量じゃ足りなくなってきているのかもしれないな。
そうか、足りないからお腹がむずむずするんだ!
じゃあ、明日はもっと長い時間してもらうように頼んでおこう。
ルーの長い舌で唇や口の中を舐められたり、吸い付かれるのは心地良いから、その時間が長くなるのは嬉しいな。
明日、ルーにあったら、もっと長くキスしたいって言ってみよう。
ルーは怒ったりはしないはずだけど、驚くかもね。
ふふっ。ルーの驚く顔を見るのが楽しみだな。
今日ルーから新しくもらったフワッフワのブランケットに身体中を包み込んでベッドに寝転がる。
僕の耳や尻尾みたいなふわふわの毛並みをしたこのブランケットはルー用だけあって、ものすごく大きい。
だから、僕の頭から足先まですっぽりと覆ってくれるだけじゃなくて、身体とブランケットを一体化にするくらいいっぱい巻き込んでも手足や頭が出たりしないんだ。
おっきなブランケットに全身を包み込んでいると、なんだかルーに抱きしめられているような錯覚に陥る。
しかもこのブランケットからはルーの匂いが染み付いているし、このまま寝たら、ルーだと勘違いしてぐっすり眠れそう。
ああ、やっぱりこれ。いいな。
昨日までのブランケットもよかったけれど、だいぶルーの匂いが薄くなってたもんね。
やっぱり熟睡するにはルーの匂いが必要なんだな。
ルーの匂いをたっぷりと吸い込みながら、目を閉じるとスーッと夢の世界に落ちていきそう。
お腹のむずむずはまだ消えないけれどこのまま眠れそうだ。
少し暑さを感じながらも気持ちの良い睡眠に落ちていった。
「う、ん……っ、あ、つっ……」
むせ返るような暑さと喉の渇きに僕は目を覚ました。
な、に……こ、れ……っ。
ブランケットの下では汗まみれになっているどころか、なぜかあの時のように蜜が下着を濡らしている。
だけどあの時とは比べ物にならないくらい量が多くてたっぷりと湿っている。
これこそ、本当にオシッコなんじゃ……。
もうすぐ成人になるというのに、おねしょしただなんて恥ずかしすぎるっ!
僕は急いで起きあがろうとすると、手足に力が出ず、ふらふらとしてその場から動けなくなってしまっていた。
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