真っ白ウサギの公爵令息はイケメン狼王子の溺愛する許嫁です

波木真帆

文字の大きさ
上 下
137 / 288
第三章

異変

しおりを挟む
<sideヴェルナー>

「アズールの発情期がかなり早くやってくるかもしれない。悪いが、今日も公爵家に泊まり込んでアズールの様子を見ていてくれないか?」

「承知しました」

本来ならば私が公爵邸に夜も泊まるのは一日置き。
他の日は私の代わりに三人の騎士たちを夜間警備につけ、マクシミリアンと一緒の部屋で過ごしているのだが、流石にアズールさまの発情期が近いとなれば、そうはいっていられない。

王子もアズールさまのことがご心配な様子で、訓練もかなり大変なのだとマクシミリアンが話していた。
だから、私も王子とアズールさまのためにもう何日も公爵家に泊まり込んでいる。

アズールさまをじっと観察していると、日に日に水分を取られる量が増えているし、頬を赤らめることも増えたような気がする。
こっそり公爵家専属医師に相談してみたところ、発情期が近づき体温が上がっているため、喉が渇きやすくなっているのではないかという見立てであった。

この分であれば、おそらく半年後の誕生日を待たずしてアズールさまは発情期に入られることだろう。

黒豹族である私や狼族である王子の発情期は一般的によく知られているが、ウサギ族のそれはどのようなものか知る者が少ない。

それは圧倒的な個体数の差も大きな要因の一つだが、何よりも運命の番となる王子が、ウサギ族の発情期の様子を全く外に漏らさないため、わからないというのが大きな理由らしい。

王子も御多分に洩れず、

「いいか、夜中にアズールが声を上げて呼んでも、決して中に入るな。すぐに私を呼ぶんだ」

と念を押していた。

初めての発情は昼間に起こった時よりも夜間に起こる方が強く出る。
アリーシャさまがお持ちになっていたウサギ族の文献にそう書かれていたのを王子は覚えていらっしゃったのだろう。

こちらとしてもアズールさまの発情フェロモンに当てられるわけにはいかない。
発情期を迎えられたアズールさまが決して部屋から出ないように対策を施しておかなければならないだろう。

そうして、対策を施しつつも、アズールさまに発情期の兆候・前触れが起こり始めてから二週間が経った。

<sideアズール>

なんだか最近ずっとお腹の奥の方でむずむずする感覚が抜けない。
しかもルーとキスをした後はもっとその感覚が強くなる。

唾液の交換をしないと体調が悪くなるというから、ほとんど毎日のようにキスをしているけれど、もしかしたら僕が大人になって身体が大きくなってきたから、今までの唾液の量じゃ足りなくなってきているのかもしれないな。

そうか、足りないからお腹がむずむずするんだ!
 
じゃあ、明日はもっと長い時間してもらうように頼んでおこう。

ルーの長い舌で唇や口の中を舐められたり、吸い付かれるのは心地良いから、その時間が長くなるのは嬉しいな。

明日、ルーにあったら、もっと長くキスしたいって言ってみよう。
ルーは怒ったりはしないはずだけど、驚くかもね。

ふふっ。ルーの驚く顔を見るのが楽しみだな。

今日ルーから新しくもらったフワッフワのブランケットに身体中を包み込んでベッドに寝転がる。
僕の耳や尻尾みたいなふわふわの毛並みをしたこのブランケットはルー用だけあって、ものすごく大きい。
だから、僕の頭から足先まですっぽりと覆ってくれるだけじゃなくて、身体とブランケットを一体化にするくらいいっぱい巻き込んでも手足や頭が出たりしないんだ。

おっきなブランケットに全身を包み込んでいると、なんだかルーに抱きしめられているような錯覚に陥る。
しかもこのブランケットからはルーの匂いが染み付いているし、このまま寝たら、ルーだと勘違いしてぐっすり眠れそう。

ああ、やっぱりこれ。いいな。
昨日までのブランケットもよかったけれど、だいぶルーの匂いが薄くなってたもんね。

やっぱり熟睡するにはルーの匂いが必要なんだな。

ルーの匂いをたっぷりと吸い込みながら、目を閉じるとスーッと夢の世界に落ちていきそう。
お腹のむずむずはまだ消えないけれどこのまま眠れそうだ。

少し暑さを感じながらも気持ちの良い睡眠に落ちていった。

「う、ん……っ、あ、つっ……」

むせ返るような暑さと喉の渇きに僕は目を覚ました。

な、に……こ、れ……っ。

ブランケットの下では汗まみれになっているどころか、なぜかあの時のように蜜が下着を濡らしている。
だけどあの時とは比べ物にならないくらい量が多くてたっぷりと湿っている。

これこそ、本当にオシッコなんじゃ……。

もうすぐ成人になるというのに、おねしょしただなんて恥ずかしすぎるっ! 

僕は急いで起きあがろうとすると、手足に力が出ず、ふらふらとしてその場から動けなくなってしまっていた。

こんなひどい状態は蒼央の時だってなかったのに……僕の身体、一体どうなっちゃったの?
しおりを挟む
感想 549

あなたにおすすめの小説

別れようと彼氏に言ったら泣いて懇願された挙げ句めっちゃ尽くされた

翡翠飾
BL
「い、いやだ、いや……。捨てないでっ、お願いぃ……。な、何でも!何でもするっ!金なら出すしっ、えっと、あ、ぱ、パシリになるから!」 そう言って涙を流しながら足元にすがり付くαである彼氏、霜月慧弥。ノリで告白されノリで了承したこの付き合いに、βである榊原伊織は頃合いかと別れを切り出したが、慧弥は何故か未練があるらしい。 チャライケメンα(尽くし体質)×物静かβ(尽くされ体質)の話。

【完結】愛執 ~愛されたい子供を拾って溺愛したのは邪神でした~

綾雅(要らない悪役令嬢1巻重版)
BL
「なんだ、お前。鎖で繋がれてるのかよ! ひでぇな」  洞窟の神殿に鎖で繋がれた子供は、愛情も温もりも知らずに育った。 子供が欲しかったのは、自分を抱き締めてくれる腕――誰も与えてくれない温もりをくれたのは、人間ではなくて邪神。人間に害をなすとされた破壊神は、純粋な子供に絆され、子供に名をつけて溺愛し始める。  人のフリを長く続けたが愛情を理解できなかった破壊神と、初めての愛情を貪欲に欲しがる物知らぬ子供。愛を知らぬ者同士が徐々に惹かれ合う、ひたすら甘くて切ない恋物語。 「僕ね、セティのこと大好きだよ」   【注意事項】BL、R15、性的描写あり(※印) 【重複投稿】アルファポリス、カクヨム、小説家になろう、エブリスタ 【完結】2021/9/13 ※2020/11/01  エブリスタ BLカテゴリー6位 ※2021/09/09  エブリスタ、BLカテゴリー2位

僕がハーブティーを淹れたら、筆頭魔術師様(♂)にプロポーズされました

楠結衣
BL
貴族学園の中庭で、婚約破棄を告げられたエリオット伯爵令息。可愛らしい見た目に加え、ハーブと刺繍を愛する彼は、女よりも女の子らしいと言われていた。女騎士を目指す婚約者に「妹みたい」とバッサリ切り捨てられ、婚約解消されてしまう。 ショックのあまり実家のハーブガーデンに引きこもっていたところ、王宮魔術塔で働く兄から助手に誘われる。 喜ぶ家族を見たら断れなくなったエリオットは筆頭魔術師のジェラール様の執務室へ向かう。そこでエリオットがいつものようにハーブティーを淹れたところ、なぜかプロポーズされてしまい……。   「エリオット・ハワード――俺と結婚しよう」 契約結婚の打診からはじまる男同士の恋模様。 エリオットのハーブティーと刺繍に特別な力があることは、まだ秘密──。

【BL】こんな恋、したくなかった

のらねことすていぬ
BL
【貴族×貴族。明るい人気者×暗め引っ込み思案。】  人付き合いの苦手なルース(受け)は、貴族学校に居た頃からずっと人気者のギルバート(攻め)に恋をしていた。だけど彼はきらきらと輝く人気者で、この恋心はそっと己の中で葬り去るつもりだった。  ある日、彼が成り上がりの令嬢に恋をしていると聞く。苦しい気持ちを抑えつつ、二人の恋を応援しようとするルースだが……。 ※ご都合主義、ハッピーエンド

王道学園の冷徹生徒会長、裏の顔がバレて総受けルート突入しちゃいました!え?逃げ場無しですか?

名無しのナナ氏
BL
王道学園に入学して1ヶ月でトップに君臨した冷徹生徒会長、有栖川 誠(ありすがわ まこと)。常に冷静で無表情、そして無言の誠を生徒達からは尊敬の眼差しで見られていた。 そんな彼のもう1つの姿は… どの企業にも属さないにも関わらず、VTuber界で人気を博した個人VTuber〈〈 アイリス 〉〉!? 本性は寂しがり屋の泣き虫。色々あって周りから誤解されまくってしまった結果アイリスとして素を出していた。そんなある日、生徒会の仕事を1人で黙々とやっている内に疲れてしまい__________ ※ ・非王道気味 ・固定カプ予定は無い ・悲しい過去🐜のたまにシリアス ・話の流れが遅い

君に望むは僕の弔辞

爺誤
BL
僕は生まれつき身体が弱かった。父の期待に応えられなかった僕は屋敷のなかで打ち捨てられて、早く死んでしまいたいばかりだった。姉の成人で賑わう屋敷のなか、鍵のかけられた部屋で悲しみに押しつぶされかけた僕は、迷い込んだ客人に外に出してもらった。そこで自分の可能性を知り、希望を抱いた……。 全9話 匂わせBL(エ◻︎なし)。死ネタ注意 表紙はあいえだ様!! 小説家になろうにも投稿

とある文官のひとりごと

きりか
BL
貧乏な弱小子爵家出身のノア・マキシム。 アシュリー王国の花形騎士団の文官として、日々頑張っているが、学生の頃からやたらと絡んでくるイケメン部隊長であるアベル・エメを大の苦手というか、天敵認定をしていた。しかし、ある日、父の借金が判明して…。 基本コメディで、少しだけシリアス? エチシーンところか、チュッどまりで申し訳ございません(土下座) ムーンライト様でも公開しております。

婚約破棄?しませんよ、そんなもの

おしゃべりマドレーヌ
BL
王太子の卒業パーティーで、王太子・フェリクスと婚約をしていた、侯爵家のアンリは突然「婚約を破棄する」と言い渡される。どうやら真実の愛を見つけたらしいが、それにアンリは「しませんよ、そんなもの」と返す。 アンリと婚約破棄をしないほうが良い理由は山ほどある。 けれどアンリは段々と、そんなメリット・デメリットを考えるよりも、フェリクスが幸せになるほうが良いと考えるようになり…… 「………………それなら、こうしましょう。私が、第一王妃になって仕事をこなします。彼女には、第二王妃になって頂いて、貴方は彼女と暮らすのです」 それでフェリクスが幸せになるなら、それが良い。 <嚙み痕で愛を語るシリーズというシリーズで書いていきます/これはスピンオフのような話です>

処理中です...