真っ白ウサギの公爵令息はイケメン狼王子の溺愛する許嫁です

波木真帆

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第三章

本懐を遂げるまで

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<sideマクシミリアン>

「次の相手は誰だ?!」

「は、はい! お願いします!」

団長一人でもう30人も相手になさっている。
いくら獣人で我々より遥かに体力のある団長とはいえ、そろそろ休憩を取られたほうが良いかと思うが、何かを発散するように動いておられる。

まぁ、何を発散しようとしているかは聞かずともわかりきったことだが。

騎士たちにとっては団長に直接稽古をつけていただくのは大変ありがたいことだが、とりあえず、そろそろ団長に休憩をしていただかなければ、騎士たちが先にへたばって使い物にならなくなってしまう。

「次――」
「団長、そろそろ休憩にいたしましょう」

「マクシミリアンか。まぁ、いい。なら、10分休憩だ」

その声に訓練場中が安堵のため息に覆われた。

「団長、どうぞ」

「ああ、悪いな」

団長は私の差し出した水を手に取り一気に飲み干し、1リットルの水があっという間に空になった。

「ふぅ。自分が思っていたよりは脱水していたようだ。休憩の声をかけてくれて助かったな」

「それはそうですよ。もう三時間も稽古をつけていらしたのですから」

「そうか。集中していたから気が付かなかったな」

「今日はいつも以上に感情が昂っていらっしゃいましたよ」

「そうか?」

「ええ。ご自分でお分かりでないのですか?」

「いや、もうずっとこんな状態だからな。自分でもどうしようもない」

そういって、笑ってみせるが団長にとって厳しい状態が続いているのだからそれも仕方のないことだろう。

なんせ、アズールさまとのご結婚があと半年後に迫っているのだ。
団長がずっと待ち焦がれた日が近づいているのだから、感情が昂らないわけがない。

その上、最近はアズールさまの匂いがかなり強くなってこられたらしい。

今までのウサギ族の方々は成人を迎えられ、無事に結婚式を終えられて初夜のタイミングで初めての発情期を経験なさったようだが、主治医の見立てによるとアズールさまは発情期が迫っていて、もしかしたら18歳の誕生日を待たずして初めての発情期を迎えられるかもしれないとのことだ。

王国始まって以来の出来事に、陛下とヴォルフ公爵との協議の結果、アズールさまに発情期が訪れたら、18歳の誕生日を待たずに初夜を迎えるということに決まったようだ。

ヴォルフ公爵とクレイさまは最後まで反対をなさっておいでだったが、アズールさまの安全と、そしてこの国の未来には代えられない。

なんせ発情期を迎えられたまま、何も触れられなければアズールさまは苦しみ、命に関わることとなる。
アズールさまに万が一のことがあれば、運命の番である団長もそのまま命を落としてしまうことになってしまう。
そうなれば、この国に未来はない。

それを回避するにはこの方法しか選択肢がなかったのだ。

けれど、発情期を迎えられるまでは手を出してはいけないとなったのは、ヴォルフ公爵の最後の足掻きだろう。
あれだけ溺愛なさってお育てになったアズールさまが団長のものとなってしまうのが寂しくてたまらないのだ。
父親としての気持ちはわからないでもないが、こんなにも我慢なさっている団長の姿をおそばで拝見していると、早く楽にさせてあげたいという気持ちが込み上げる。

運命の番と出会いながらもう17年以上も我慢を続けているのだから、もういい加減いいだろうと言ってやりたくなる。
それでも団長はアズールさまに負担をかけたくないと我慢なさっているのだ。

結局アズールさまには、あれから5年経った今でも性教育はできていない。
アズールさまが素直で純粋が故に、習ったことをすぐに試してしまうのではないかという意見がヴォルフ公爵から出たからだ。
確かに好奇心旺盛なアズールさまのことだから、あのような話を聞けば実際に見てみたいと言い出しかねない。
だから結局、初夜の時に団長が全てをお教えすることになったのだ。

主治医の診断後、アズールさまは一歩もお屋敷から出ていない。
もし、外出された時に発情期が来てしまったら、とんでもないことになってしまうからだ。

今、アズールさまの周りには、ご家族以外はすでに生殖機能が退化している執事のベンと、専属護衛のヴェルナー、そして、シェフのフランツしか近付くことはできない。
ヴェルナーはすでに私と番である上に、フランツにもすでに相手がいて、アズールさまがたとえ、発情を起こしたとしても反応しないので安心なのだ。

「今日もアズールさまがお食事を作って団長のご帰宅を待っていらっしゃるのですか?」

「ああ。だが、日に日にアズールの匂いが強くなってきて、正直料理よりもアズールが食べたくて仕方がない」

「それはお辛いですね。我慢も限界なのではありませんか?」

「それはもうアズールが生まれた時から我慢しているのだからな。だが、もう少しの辛抱だ」

団長の目の奥がギラリと光って、私でさえ身体が震えてしまいそうになる。
団長が本懐を遂げるのも本当にもう近いのかもしれない。
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