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第一章

私に課せられた試練

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<sideルーディー>

まさか、アズールが私と揃いの服がいいと言ってくれるなんて思いもしなかった。

だが、そういえば、いつもアズールは私が抱っこをするたびに私の服の裾を握っていたな。
目の前のものを握りたくなるのは赤子の習性のようなものだと思っていたが、もしかして私の服を気に入ってくれていたのではないか?

そう思うと、途轍もない幸せが湧き上がってくる。

公爵夫人からの要望はただ一つ。
アズールを思いっきり可愛らしくすることだけ。

ならば、私の服にそっくりに仕立てて、尚且つ徹底的に可愛らしく仕上げてやろう。

ああ、これで大体の形が決まった。

これから忙しくなるな。

「アズール! お前の意見はしっかりと聞き入れた。アズールが望むように私と揃いの服を仕立てよう。楽しみにしているのだぞ」

アズールを抱きしめながら、そう言ってやるとアズールは嬉しそうに手足をばたつかせて

「だぁっ! だぁっ!」

と可愛らしい声をあげていた。

1歳のお披露目まであと5ヶ月。
しっかりと間に合わせなくてはな。


「爺っ! 爺っ!」

城に戻った私は急いで爺を呼び出した。

「アズールさまに何かございましたか?」

公爵邸から城に戻った後はいつも爺と話をしているからか、爺はもう呼ばれただけでアズールの話だとわかってくれているようだ。
話が早くてありがたい。

「爺が教えてくれたから、今日早速ヴォルフ公爵と話をしてきた」

「それで公爵さまはなんと?」

「私にお披露目の衣装は一任すると言ってくれたぞ」

「おおっ! それはようございました」

「ああ。爺のおかげだ。それから、お披露目の衣装に関して公爵夫人から一つだけ要望があったが、アズールを思いっきり可愛らしくすることだったから、それは問題ない」

「そうでございますね。ルーディーさまがお仕立てになるのなら、アズールさまの可愛らしさをさらに引き立たせるような御衣装になさいますからね」

「さすが、爺。よくわかっているな」

私以上に喜んでくれている爺の姿に嬉しくなる。

こうなったら、公爵家や王家の威信をかけて、私の大切なアズールの大事な節目の日を大々的に祝うとしよう。

「ところでその大事な衣装についてなのだが、アズールが私に希望を出してくれたのだ」

「えっ? アズールさま自らご希望をお出しになったのですか?」

「ああ。アズールは私が今、着ているような衣装が好きらしい。お揃いで着たいと言ってくれたのだぞ。どうだ、すごいだろう?」

「まさか……ご自分の一歳のお披露目の御衣装に自ら希望を出されるとは……本当に賢くていらっしゃるのですね」

「ああ。これでよくわかったろう? アズールは本当に賢いんだ」

「ならば、ルーディーさま! アズールさまに喜んでいただけるよう、ここはしっかりとお決めにならなければ!」

「わかっている。それでだ、ヴンダーシューン王国一の素晴らしい仕立て屋を呼びたいのだが、爺……どの仕立て屋に頼むのがいい?」

「この国一番の仕立て屋なら、マティアス殿しかおりませぬ。ルーディーさまの一歳のお披露目の御衣装もマティアス殿にお任せ致しましたし、成人の折にもお願いする予定でおります。節目ごとの大事なお仕立てにはマティアス殿以外おりませぬ」

「そうか、爺がそこまでいうならマティアスにお願いするとしよう。できるだけ早くきてもらえるように連絡をしておいてくれ」

「承知いたしました」

爺が部屋を出ていくのを見送りながら、私は今日のアズールの可愛らしい姿を思い出していた。

ふわふわのアズールの小さな尻尾。
そして、私の目の前で可愛らしく揺れる小さな尻。

ああ、本当に可愛らしい。
あの至福のひととき……。

「くっ――!」

あの記憶だけで一気に昂っていくのを感じながら、私は急いでトイレに駆け込んだ。

「ああっ、アズールっ! アズールっ!!」

何度出してもおさまらないこの興奮に、自分でも呆れながらもどうしようもない。
どうしても激しい衝動を抑えられない。
これも獣人としての性なのか……。

それでも、アズールが成人するまでは決して手を出さない。
それは私に課せられた試練だ。

これを守ってこそ、アズールの夫として認められると思っている。
だからこそ、私は今日も必死に自分の本能と戦う。

アズールとの幸せな未来のために。
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