真っ白ウサギの公爵令息はイケメン狼王子の溺愛する許嫁です

波木真帆

文字の大きさ
19 / 296
第一章

アズールの衣装を仕立てるには

しおりを挟む
<sideフィデリオ(爺)>

「陛下。わざとルーディーさまにお披露目会の御衣装の話をお伝えにならなかったのですか?」

「い、いや。そうではない。話すタイミングを逃していたというか……」

「お隠しになってもこの私にはわかっておりますぞ。可愛らしいと評判のアズールさまにご自分の選んだ御衣装を身につけさせたくなられたのでしょう?」

「――っ、どうしてわかったのだ?」

「陛下もルーディーさまもそっくりな性格をしておいでですから。ルーディーさまがあれほどまでにご執着になるのはアズールさまが運命の相手だというだけではございませんでしょう? ウサギ族のお方には誰もが心を奪われると申しますし、しかもアズールさまはウサギ族の中でも特別なお方なのでしょう?」

「ああ、そうなのだよ! 今まで王家に生まれた、ルーディーと同じ『神の御意志』の相手となるウサギ族は皆、耳も尻尾も茶色や黒色をしていたが、ルーディーの相手であるアズールは真っ白だというではないか。真っ白なウサギはウサギ族の中でも最高峰の美貌を持っていると伝えられているのだ。だが、一歳までは家族と、そして運命の番しか顔を見ることができない。ルーディーからアズールの話を聞くたびに羨ましいと思ってしまうのだ。だから、せめてアズールの衣装だけでも私の選んだものを身につけてくれればこの思いも晴れるかと……」

「陛下のお気持ちはよくわかりますが、もし、何も仰らずに当日を迎えていたら、ルーディーさまが冷静でおられるわけがございません。なんせ、運命の番がお召しになる衣装なのですよ。それをルーディーさま以外の者が用意したとわかれば、ただで済まないことはお分かりでしょう?」

「――っ、た、確かに……」

私の言葉に陛下もようやく、自分がとんでもないことをしでかすところだったことに気づかれたようだ。

はぁーっ。
歴史あるヴンダーシューン王国の陛下ともあろうお方がこんなわかりきったことすらお気づきにならないとは……。
普段の陛下ならば、到底考えられないことだ。
ウサギ族のお方には狼族は弱いとはよく言ったものだな。

本当にルーディーさまにお声がけしておいて正解だった。

「ルーディーさまは本日、ヴォルフ公爵さまとお話になって、お披露目会の御衣装はルーディーさまがお決めになることで決定したようでございます。ですから陛下……」

「ああ、わかっている。もう邪魔などしない。だが、その代わりにこっそりとアズールの顔を見にいくというのはどうだろうな?」

「陛下っ!」

「――っ、じょ、冗談だ。ここまで待ったのだ。あと5ヶ月くらい我慢してみせるぞ。なんと言っても私はこの国の国王なのだからな」

冗談だと仰ってはいるが、これが本気であることは私がよくわかっている。
だからこそ、ルーディーさまにはしっかりとアズールさまを守っていて貰わなければ。


<sideルーディー>

「ルーディーさま。マティアス殿にアズールさまの御衣装を仕立てていただくには、アズールさまのおサイズが大事でございます。狼族のルーディーさまが一歳の頃とは格段にお小さいでしょうから、ルーディーさまのを参考にするわけにもいきませぬ。ですから、今のアズールさまのおサイズを測ってきていただく必要がございます。私やマティアス殿はアズールさまにお会いすることはできませんので。ルーディーさまにお願いしてもよろしゅうございますか?」

「ああ、確かにそれは必要だな」

普段の私の衣装を仕立てる際も、かなりの頻度で寸法を測っている。
それは狼族の成長が早いからだろうが、アズールはそんなに著しく変化はしていない。
身長も生まれた頃より15cm大きくなったかどうかというくらいだろうか。

おそらく一歳になってもそれほど変わらないだろう。
せいぜい5cm大きくなるかどうかと言ったところだろうな。

ならば、今のサイズを測って、それに+5cmほどで仕立てさせればいいか。

「わかった。今からアズールに会いに行ってくるから、サイズを測っておこう」

「ルーディーさまが御衣装をお仕立てになる時に測っていただくところを全てお測り下さい」

「わかった。任せておけ」

そうして私は意気揚々と公爵邸に向かった。


「アズールっ!」

「うーっ!!」

「ああ、今日も私を待っていてくれたのだな。本当にアズールは可愛いな」

「うーっ! もふもふぅーっ!」

アズールを怖がらせるのではないかと不安に思っていたのはもうどこへ行ったのかもわからないほど、毎日会うたびに私の顔を嬉しそうに撫でてくる。
それどころか、私の大きな口や牙にも何も気にせずに触れようとする。

アズールを決して傷つけることはしないが、こんなにも怖がらずにいてくれると返って大丈夫だろうかと心配になってしまう。
運命の番がこんなにも喜んでくれているのだから、こんな心配などよそから見れば、ただの惚気にしか聞こえないかもしれないが。

「アズール、今日はお前のサイズを測らせてもらうぞ」

「うっ?」

「くっ――!」

私が何を言っているのかわからず聞き返す時のアズールの仕草にいつもやられてしまう。
ピンと張った耳を垂らして、コテンと首を傾げるだけでどうしてこんなにも可愛いのだろうな……。


「アズールのために衣装……洋服を作るのだ。そのためにアズールの大きさを測らせてくれ」

そういうと、アズールは理解してくれたのか

「だぁっ! だぁっ!」

と可愛らしく返事しながら、おとなしく私の膝に座ってくれた。

ああ、やっぱりアズールは賢いのだな。
しおりを挟む
感想 570

あなたにおすすめの小説

身代わりにされた少年は、冷徹騎士に溺愛される

秋津むぎ
BL
第13回BL大賞奨励賞頂きました! 最終17位でした!応援ありがとうございます! あらすじ 魔力がなく、義母達に疎まれながらも必死に生きる少年アシェ。 ある日、義兄が騎士団長ヴァルドの徽章を盗んだ罪をアシェに押し付け、身代わりにされてしまう。 死を覚悟した彼の姿を見て、冷徹な騎士ヴァルドは――? 傷ついた少年と騎士の、温かい溺愛物語。

結婚初夜に相手が舌打ちして寝室出て行こうとした

BL
十数年間続いた王国と帝国の戦争の終結と和平の形として、元敵国の皇帝と結婚することになったカイル。 実家にはもう帰ってくるなと言われるし、結婚相手は心底嫌そうに舌打ちしてくるし、マジ最悪ってところから始まる話。 オメガバースでオメガの立場が低い世界 こんなあらすじとタイトルですが、主人公が可哀そうって感じは全然ないです 強くたくましくメンタルがオリハルコンな主人公です 主人公は耐える我慢する許す許容するということがあんまり出来ない人間です 倫理観もちょっと薄いです というか、他人の事を自分と同じ人間だと思ってない部分があります ※この主人公は受けです

あなたと過ごせた日々は幸せでした

蒸しケーキ
BL
結婚から五年後、幸せな日々を過ごしていたシューン・トアは、突然義父に「息子と別れてやってくれ」と冷酷に告げられる。そんな言葉にシューンは、何一つ言い返せず、飲み込むしかなかった。そして、夫であるアインス・キールに離婚を切り出すが、アインスがそう簡単にシューンを手離す訳もなく......。

悪役令息を改めたら皆の様子がおかしいです?

  *  ゆるゆ
BL
王太子から伴侶(予定)契約を破棄された瞬間、前世の記憶がよみがえって、悪役令息だと気づいたよ! しかし気づいたのが終了した後な件について。 悪役令息で断罪なんて絶対だめだ! 泣いちゃう! せっかく前世を思い出したんだから、これからは心を入れ替えて、真面目にがんばっていこう! と思ったんだけど……あれ? 皆やさしい? 主人公はあっちだよー? ユィリと皆の動画をつくりました! インスタ @yuruyu0 絵も動画もあがります。ほぼ毎日更新! Youtube @BL小説動画 アカウントがなくても、どなたでもご覧になれます。動画を作ったときに更新! プロフのWebサイトから、両方に飛べるので、もしよかったら! 名前が  *   ゆるゆ  になりましたー! 中身はいっしょなので(笑)これからもどうぞよろしくお願い致しますー! ご感想欄 、うれしくてすぐ承認を押してしまい(笑)ネタバレ 配慮できないので、ご覧になる時は、お気をつけください!

「自由に生きていい」と言われたので冒険者になりましたが、なぜか旦那様が激怒して連れ戻しに来ました。

キノア9g
BL
「君に義務は求めない」=ニート生活推奨!? ポジティブ転生者と、言葉足らずで愛が重い氷の伯爵様の、全力すれ違い新婚ラブコメディ! あらすじ 「君に求める義務はない。屋敷で自由に過ごしていい」 貧乏男爵家の次男・ルシアン(前世は男子高校生)は、政略結婚した若き天才当主・オルドリンからそう告げられた。 冷徹で無表情な旦那様の言葉を、「俺に興味がないんだな! ラッキー、衣食住保証付きのニート生活だ!」とポジティブに解釈したルシアン。 彼はこっそり屋敷を抜け出し、偽名を使って憧れの冒険者ライフを満喫し始める。 「旦那様は俺に無関心」 そう信じて、半年間ものんきに遊び回っていたルシアンだったが、ある日クエスト中に怪我をしてしまう。 バレたら怒られるかな……とビクビクしていた彼の元に現れたのは、顔面蒼白で息を切らした旦那様で――!? 「君が怪我をしたと聞いて、気が狂いそうだった……!」 怒鳴られるかと思いきや、折れるほど強く抱きしめられて困惑。 えっ、放置してたんじゃなかったの? なんでそんなに必死なの? 実は旦那様は冷徹なのではなく、ルシアンが好きすぎて「嫌われないように」と身を引いていただけの、超・奥手な心配性スパダリだった! 「君を守れるなら、森ごと消し飛ばすが?」 「過保護すぎて冒険になりません!!」 Fランク冒険者ののんきな妻(夫)×国宝級魔法使いの激重旦那様。 すれ違っていた二人が、甘々な「週末冒険者夫婦」になるまでの、勘違いと溺愛のハッピーエンドBL。

殿下に婚約終了と言われたので城を出ようとしたら、何かおかしいんですが!?

krm
BL
「俺達の婚約は今日で終わりにする」 突然の婚約終了宣言。心がぐしゃぐしゃになった僕は、荷物を抱えて城を出る決意をした。 なのに、何故か殿下が追いかけてきて――いやいやいや、どういうこと!? 全力すれ違いラブコメファンタジーBL! 支部の企画投稿用に書いたショートショートです。前後編二話完結です。

【WEB版】監視が厳しすぎた嫁入り生活から解放されました~冷徹無慈悲と呼ばれた隻眼の伯爵様と呪いの首輪~【BL・オメガバース】

古森きり
BL
【書籍化決定しました!】 詳細が決まりましたら改めてお知らせにあがります! たくさんの閲覧、お気に入り、しおり、感想ありがとうございました! アルファポリス様の規約に従い発売日にURL登録に変更、こちらは引き下げ削除させていただきます。 政略結婚で嫁いだ先は、女狂いの伯爵家。 男のΩである僕には一切興味を示さず、しかし不貞をさせまいと常に監視される生活。 自分ではどうすることもできない生活に疲れ果てて諦めた時、夫の不正が暴かれて失脚した。 行く当てがなくなった僕を保護してくれたのは、元夫が口を開けば罵っていた政敵ヘルムート・カウフマン。 冷徹無慈悲と呼び声高い彼だが、共に食事を摂ってくれたりやりたいことを応援してくれたり、決して冷たいだけの人ではなさそうで――。 カクヨムに書き溜め。 小説家になろう、アルファポリス、BLoveにそのうち掲載します。

【完結済】あの日、王子の隣を去った俺は、いまもあなたを想っている

キノア9g
BL
かつて、誰よりも大切だった人と別れた――それが、すべての始まりだった。 今はただ、冒険者として任務をこなす日々。けれどある日、思いがけず「彼」と再び顔を合わせることになる。 魔法と剣が支配するリオセルト大陸。 平和を取り戻しつつあるこの世界で、心に火種を抱えたふたりが、交差する。 過去を捨てたはずの男と、捨てきれなかった男。 すれ違った時間の中に、まだ消えていない想いがある。 ――これは、「終わったはずの恋」に、もう一度立ち向かう物語。 切なくも温かい、“再会”から始まるファンタジーBL。 お題『復縁/元恋人と3年後に再会/主人公は冒険者/身を引いた形』設定担当AI /チャッピー AI比較企画作品

処理中です...