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第一章
興奮が抑えられない
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<sideアズール>
「アズール、今日もご機嫌ね。そろそろ王子がお越しになるのがわかるのかしら?」
「だっ、だっ」
わーい、今日もあのもふもふ王子さまと遊べるんだぁ~!
お母さまやお父さま、それにお兄さまと遊ぶのも楽しいけれど、もふもふ王子さまはそばにいるだけですっごく安心するし、何よりあのもふもふの尻尾にコロンと転がるのが楽しいんだ。
あーあ、早く来ないかな。
そういえば、不思議なんだよね。
もふもふ王子さまって、手からすっごく甘くて美味しそうな匂いがする時と、しない時があるんだ。
しかも右手だけ。
王子さま自身からもずっと甘い匂いが漂っているけれど、あの手の甘い匂いはそれよりもものすごく強くって、前の世界で一年に一回だけ食べさせてもらってた誕生日ケーキのあの甘い生クリームよりもずっとずっと甘くて美味しい匂いがするんだ。
ぺろぺろ舐めると、ほんのりその甘い味がして全部舐め尽くしたくなっちゃう。
だから、最近はもふもふ王子さまが遊びに来てくれたら、すぐに手の匂いを確認しちゃうんだ。
でも昨日は全然甘い匂いしなかった……。
その代わりに石鹸のいい香りがしてた。
それも嫌いじゃないけど、でもやっぱり僕はあの甘い匂いがいい。
今日はどっちかなぁ…‥。
お母さまに抱っこされて、お庭でお散歩をしていると風に乗って甘い匂いがしてきたからもふもふ王子さまがきてくれたってすぐにわかった。
「だぁーっ、だぁーっ!」
足をばたつかせてお母さまに教えると
「あらあら。やっぱり運命の相手なのね。誰よりも早くわかるなんて」
と嬉しそうに笑っていた。
「アズールっ!」
僕の声に気づいてくれたのか、大声をあげながらもふもふ王子さまが駆け寄ってきてくれた。
「今日もまた一段と可愛らしいな」
「ふふっ。アズールが朝から王子がお越しになるのを待っていましたよ」
「そ、そうかっ! それは嬉しいな」
「ほら、アズール。王子さまと楽しい時間を過ごしていらっしゃい」
「あーっ」
はーいって、返事したけど、なかなか難しい。
赤ちゃんが言葉を話すって本当すごいことなんだな。
お母さまが僕をもふもふ王子さまに渡すと、優しく抱っこしてくれる。
甘い匂いに包まれるとそれだけで幸せな気分になれるんだ。
あっ、今日は手から甘い匂いがする。
僕の小さな両手で一生懸命もふもふ王子さまの手を持とうとするけれど、重くて持てない……。
「ふぇっ……ふぇっ……」
「ああっ! アズール、ごめんごめん」
甘い手を舐められなくて悲しくなっていると、もふもふ王子さまは焦ったように謝りながら、僕を抱っこしたまますぐそばにある庭の木の下に座り込んだ。
「あっ! 王子っ! すぐに敷物用意させますから」
「いや、このままでいい。アズールは汚したりしないから安心してくれ」
お母さまがそう叫んだけれど、もふもふ王子さまは何も気にしていないみたい。
王子さまがあぐらをかいたお膝の上にふさふさのしっぽを乗せてくれて、僕をその上で包み込むように座らせてくれる。
背中は王子さまのお腹に寄りかかっているから安定感も抜群だ。
「あうっ、あうっ」
口を開けて見せると、王子さまはゆっくりと僕の口の中に指を入れてくれた。
僕の小さな口には指一本しか入らないけれど、ちゅっと吸うだけで甘い味が口の中に広がっていく気がする。
何もついていないのに、本当に不思議なんだよね。
指をちゅっちゅっと吸いながら、お腹に乗せられているふさふさのしっぽをきゅっと握ると、もふもふ王子さまの身体がビクンと震えた。
「ふぇっ?」
「ああ、ごめん。アズール、大丈夫だから」
びっくりしたけど、ニコニコしているから大丈夫かな?
手のひらまでひとしきり舐め終わったら、もふもふ王子さまの手は僕の涎でたくさん濡れちゃっていた。
ああーっ、いくら美味しいからってやりすぎちゃったかなと思ったけど、
「あ、アズール。ほら、尻尾だよ。もふもふ~っ」
ふさふさのしっぽを僕の身体に優しく当ててくれる。
「きゃっ、きゃっ」
それがすっごく楽しいんだ。
良かった、涎いっぱいつけちゃったけど、王子さまは全然気にしていないみたい。
ふと王子様の右手を見た時には僕の涎は綺麗に無くなってた。
僕が知らない間に拭き取ったんだろうな。
すごく優しい。
しっぽで遊んだあと、王子さまは僕を向かい合わせに抱っこした。
今度は何で遊んでくれるんだろうと思っていると、僕の目を見ながら
「ほら、アズール。私はルーディーだよ。『ルー』って言ってごらん」
最近、よく王子さまは僕に名前を言わせようとする。
でもルーディーって難しいんだよね。
僕にとってはもふもふ王子さまの方がわかりやすかったんだけど……。
でもやっぱり名前はちゃんと言ってあげるべきだよね。
名前を間違って言っちゃうのはやっちゃいけないから、ちゃんと言えるようになるまでは、言わないほうがいいかと思ってたんだけど、『ルー』なら言えそう。
「うーっ?」
あっ、だめだ。
ルーって言いたいのに、うーになっちゃう。
王子さま、怒ってないかな?
「うーっ?」
「くぅ――!!!」
「だっ!!」
突然、もふもふのしっぽがすごい勢いで動き出して、自分で王子さまの足をバシバシ叩いてる。
だ、大丈夫かな?
<sideルーディー>
爺にアドバイスをもらって、意気揚々と公爵邸に向かうとちょうど公爵夫人と庭で散歩をしているようだった。
庭に案内され、すぐに公爵夫人の姿を見つけ近づこうとするとすぐにアズールの可愛い声が耳に飛び込んできた。
ああっ!
私を呼んでくれているんだ!!
そう思うだけで、駆け出している自分がいた。
「アズールっ!!」
王子として感情も抑えられないのかと言われようがどうでもいい。
ほんの少しでも早く愛しいアズールのそばに行きたい。
ただそれだけだ。
アズールが朝から私がくるのを待っていたようだと公爵夫人が教えてくれた。
アズールにそんな気持ちが生まれてきてくれただけで途轍もない幸せが込み上げてくる。
公爵夫人からアズールを受け取り抱き上げると、アズールはすぐに私の匂いに気がついた。
ああ、今日は少し遅かったかもしれない。
昨日、早すぎたと思って時間をずらしすぎたか。
アズールはすぐに私の蜜の匂いに気づき、小さな手で私の右手を持ち上げようとするが、アズールの力で上がるわけがなく、舐められないことが悲しかったのか泣き出してしまった。
抱っこしたままで右手をアズールに預けるのは少し危険だ。
万が一にでも落としてはいけない。
急いで庭の大木の下に腰を下ろすと、公爵夫人が慌てたように敷物をと言ってくれたが服が汚れることなどどうでもいい。
今は誰にも邪魔されず、二人の時間を過ごしたいだけだ。
「このままでいい」
そう叫ぶと、私の意図に気づいてくれたのか、皆が庭から離れてくれた。
ああ、これでアズールと二人だけの楽しい時間が過ごせる。
アズールを私の膝に座らせ、尻尾と腕で抱きしめながら癒しのひと時を過ごす。
とはいえ、精神を集中していないと危ない時間でもある。
なんせ、アズールが私の指を舐めてくれるのだから。
まだ歯も生えていないアズールの口に包まれると、下半身に熱が籠ってしまうのだ。
しかもチューチューと吸われるとさらに危ない。
だから必死に耐えるのだが、今日は尻尾がすぐ近くにあったからか、指を舐められながら尻尾を握られてしまった。
思いがけない衝撃に思わず身体を震わせると、アズールは目を丸くして
「ふぇっ?」
と声をあげた。
まずいっ、驚かせてしまったか。
慌てて笑顔を見せると安心してくれたようだ。
ふぅ、良かった……。
ひとしきり舐め尽くすと、どうやら蜜の匂いも消えてしまったのか満足そうに口から私の指を離してくれた。
私の手はアズールの涎が滴っているが、私にとってはご褒美でしかない。
アズールの気を逸らすように、アズールの身体に尻尾をペシペシと当てて遊んでいる間にアズールの涎を全て舐めとる。
こういう時、狼の長い舌は役に立つ。
アズールの甘い唾液は本当にご馳走だな。
さて、今日はここからが本番だ。
爺に教えられた通り、私の愛称を考えた。
ルーディーが言いにくいなら、『ルー』にすればいい。
これならきっとアズールにも言えるはずだ。
「ほら、アズール。私はルーディーだよ。『ルー』って言ってごらん」
いつもと違うことに気づいたのか、アズールの口が動いている気がする。
もしかしたら、私の名を呼んでくれるかもしれない。
ドキドキしながら見つめていると、
「うーっ?」
可愛らしい舌足らずな声が耳に飛び込んできた。
今のは……私の名だな?
どう考えても私の名だ!
ああっ!!!
なんて幸せなんだ!!!
アズールが私の名を呼んでくれた!!!!
公爵も公爵夫人もまだ呼ばれていないはず!!
私がアズールに名を呼ばれた初めての者なんだ!!!
爆発しそうなくらい歓喜に溢れていると、アズールが小首を傾げながら耳を垂らし、心配そうに
「うーっ?」
もう一度私の名を呼んでくれる。
その可愛さたるや、この世のものとは思えないほど極上の可愛さだ。
思わず遠吠えをしそうになるが、アズールを驚かせてはいけない。
必死に押さえつけようとするが、抑えきれない興奮が尻尾に現れてしまっている。
暴走している尻尾を止めることもできず、バシバシと身体に当たる嬉しい痛みを感じながらアズールを抱きしめ続けていた。
「アズール、今日もご機嫌ね。そろそろ王子がお越しになるのがわかるのかしら?」
「だっ、だっ」
わーい、今日もあのもふもふ王子さまと遊べるんだぁ~!
お母さまやお父さま、それにお兄さまと遊ぶのも楽しいけれど、もふもふ王子さまはそばにいるだけですっごく安心するし、何よりあのもふもふの尻尾にコロンと転がるのが楽しいんだ。
あーあ、早く来ないかな。
そういえば、不思議なんだよね。
もふもふ王子さまって、手からすっごく甘くて美味しそうな匂いがする時と、しない時があるんだ。
しかも右手だけ。
王子さま自身からもずっと甘い匂いが漂っているけれど、あの手の甘い匂いはそれよりもものすごく強くって、前の世界で一年に一回だけ食べさせてもらってた誕生日ケーキのあの甘い生クリームよりもずっとずっと甘くて美味しい匂いがするんだ。
ぺろぺろ舐めると、ほんのりその甘い味がして全部舐め尽くしたくなっちゃう。
だから、最近はもふもふ王子さまが遊びに来てくれたら、すぐに手の匂いを確認しちゃうんだ。
でも昨日は全然甘い匂いしなかった……。
その代わりに石鹸のいい香りがしてた。
それも嫌いじゃないけど、でもやっぱり僕はあの甘い匂いがいい。
今日はどっちかなぁ…‥。
お母さまに抱っこされて、お庭でお散歩をしていると風に乗って甘い匂いがしてきたからもふもふ王子さまがきてくれたってすぐにわかった。
「だぁーっ、だぁーっ!」
足をばたつかせてお母さまに教えると
「あらあら。やっぱり運命の相手なのね。誰よりも早くわかるなんて」
と嬉しそうに笑っていた。
「アズールっ!」
僕の声に気づいてくれたのか、大声をあげながらもふもふ王子さまが駆け寄ってきてくれた。
「今日もまた一段と可愛らしいな」
「ふふっ。アズールが朝から王子がお越しになるのを待っていましたよ」
「そ、そうかっ! それは嬉しいな」
「ほら、アズール。王子さまと楽しい時間を過ごしていらっしゃい」
「あーっ」
はーいって、返事したけど、なかなか難しい。
赤ちゃんが言葉を話すって本当すごいことなんだな。
お母さまが僕をもふもふ王子さまに渡すと、優しく抱っこしてくれる。
甘い匂いに包まれるとそれだけで幸せな気分になれるんだ。
あっ、今日は手から甘い匂いがする。
僕の小さな両手で一生懸命もふもふ王子さまの手を持とうとするけれど、重くて持てない……。
「ふぇっ……ふぇっ……」
「ああっ! アズール、ごめんごめん」
甘い手を舐められなくて悲しくなっていると、もふもふ王子さまは焦ったように謝りながら、僕を抱っこしたまますぐそばにある庭の木の下に座り込んだ。
「あっ! 王子っ! すぐに敷物用意させますから」
「いや、このままでいい。アズールは汚したりしないから安心してくれ」
お母さまがそう叫んだけれど、もふもふ王子さまは何も気にしていないみたい。
王子さまがあぐらをかいたお膝の上にふさふさのしっぽを乗せてくれて、僕をその上で包み込むように座らせてくれる。
背中は王子さまのお腹に寄りかかっているから安定感も抜群だ。
「あうっ、あうっ」
口を開けて見せると、王子さまはゆっくりと僕の口の中に指を入れてくれた。
僕の小さな口には指一本しか入らないけれど、ちゅっと吸うだけで甘い味が口の中に広がっていく気がする。
何もついていないのに、本当に不思議なんだよね。
指をちゅっちゅっと吸いながら、お腹に乗せられているふさふさのしっぽをきゅっと握ると、もふもふ王子さまの身体がビクンと震えた。
「ふぇっ?」
「ああ、ごめん。アズール、大丈夫だから」
びっくりしたけど、ニコニコしているから大丈夫かな?
手のひらまでひとしきり舐め終わったら、もふもふ王子さまの手は僕の涎でたくさん濡れちゃっていた。
ああーっ、いくら美味しいからってやりすぎちゃったかなと思ったけど、
「あ、アズール。ほら、尻尾だよ。もふもふ~っ」
ふさふさのしっぽを僕の身体に優しく当ててくれる。
「きゃっ、きゃっ」
それがすっごく楽しいんだ。
良かった、涎いっぱいつけちゃったけど、王子さまは全然気にしていないみたい。
ふと王子様の右手を見た時には僕の涎は綺麗に無くなってた。
僕が知らない間に拭き取ったんだろうな。
すごく優しい。
しっぽで遊んだあと、王子さまは僕を向かい合わせに抱っこした。
今度は何で遊んでくれるんだろうと思っていると、僕の目を見ながら
「ほら、アズール。私はルーディーだよ。『ルー』って言ってごらん」
最近、よく王子さまは僕に名前を言わせようとする。
でもルーディーって難しいんだよね。
僕にとってはもふもふ王子さまの方がわかりやすかったんだけど……。
でもやっぱり名前はちゃんと言ってあげるべきだよね。
名前を間違って言っちゃうのはやっちゃいけないから、ちゃんと言えるようになるまでは、言わないほうがいいかと思ってたんだけど、『ルー』なら言えそう。
「うーっ?」
あっ、だめだ。
ルーって言いたいのに、うーになっちゃう。
王子さま、怒ってないかな?
「うーっ?」
「くぅ――!!!」
「だっ!!」
突然、もふもふのしっぽがすごい勢いで動き出して、自分で王子さまの足をバシバシ叩いてる。
だ、大丈夫かな?
<sideルーディー>
爺にアドバイスをもらって、意気揚々と公爵邸に向かうとちょうど公爵夫人と庭で散歩をしているようだった。
庭に案内され、すぐに公爵夫人の姿を見つけ近づこうとするとすぐにアズールの可愛い声が耳に飛び込んできた。
ああっ!
私を呼んでくれているんだ!!
そう思うだけで、駆け出している自分がいた。
「アズールっ!!」
王子として感情も抑えられないのかと言われようがどうでもいい。
ほんの少しでも早く愛しいアズールのそばに行きたい。
ただそれだけだ。
アズールが朝から私がくるのを待っていたようだと公爵夫人が教えてくれた。
アズールにそんな気持ちが生まれてきてくれただけで途轍もない幸せが込み上げてくる。
公爵夫人からアズールを受け取り抱き上げると、アズールはすぐに私の匂いに気がついた。
ああ、今日は少し遅かったかもしれない。
昨日、早すぎたと思って時間をずらしすぎたか。
アズールはすぐに私の蜜の匂いに気づき、小さな手で私の右手を持ち上げようとするが、アズールの力で上がるわけがなく、舐められないことが悲しかったのか泣き出してしまった。
抱っこしたままで右手をアズールに預けるのは少し危険だ。
万が一にでも落としてはいけない。
急いで庭の大木の下に腰を下ろすと、公爵夫人が慌てたように敷物をと言ってくれたが服が汚れることなどどうでもいい。
今は誰にも邪魔されず、二人の時間を過ごしたいだけだ。
「このままでいい」
そう叫ぶと、私の意図に気づいてくれたのか、皆が庭から離れてくれた。
ああ、これでアズールと二人だけの楽しい時間が過ごせる。
アズールを私の膝に座らせ、尻尾と腕で抱きしめながら癒しのひと時を過ごす。
とはいえ、精神を集中していないと危ない時間でもある。
なんせ、アズールが私の指を舐めてくれるのだから。
まだ歯も生えていないアズールの口に包まれると、下半身に熱が籠ってしまうのだ。
しかもチューチューと吸われるとさらに危ない。
だから必死に耐えるのだが、今日は尻尾がすぐ近くにあったからか、指を舐められながら尻尾を握られてしまった。
思いがけない衝撃に思わず身体を震わせると、アズールは目を丸くして
「ふぇっ?」
と声をあげた。
まずいっ、驚かせてしまったか。
慌てて笑顔を見せると安心してくれたようだ。
ふぅ、良かった……。
ひとしきり舐め尽くすと、どうやら蜜の匂いも消えてしまったのか満足そうに口から私の指を離してくれた。
私の手はアズールの涎が滴っているが、私にとってはご褒美でしかない。
アズールの気を逸らすように、アズールの身体に尻尾をペシペシと当てて遊んでいる間にアズールの涎を全て舐めとる。
こういう時、狼の長い舌は役に立つ。
アズールの甘い唾液は本当にご馳走だな。
さて、今日はここからが本番だ。
爺に教えられた通り、私の愛称を考えた。
ルーディーが言いにくいなら、『ルー』にすればいい。
これならきっとアズールにも言えるはずだ。
「ほら、アズール。私はルーディーだよ。『ルー』って言ってごらん」
いつもと違うことに気づいたのか、アズールの口が動いている気がする。
もしかしたら、私の名を呼んでくれるかもしれない。
ドキドキしながら見つめていると、
「うーっ?」
可愛らしい舌足らずな声が耳に飛び込んできた。
今のは……私の名だな?
どう考えても私の名だ!
ああっ!!!
なんて幸せなんだ!!!
アズールが私の名を呼んでくれた!!!!
公爵も公爵夫人もまだ呼ばれていないはず!!
私がアズールに名を呼ばれた初めての者なんだ!!!
爆発しそうなくらい歓喜に溢れていると、アズールが小首を傾げながら耳を垂らし、心配そうに
「うーっ?」
もう一度私の名を呼んでくれる。
その可愛さたるや、この世のものとは思えないほど極上の可愛さだ。
思わず遠吠えをしそうになるが、アズールを驚かせてはいけない。
必死に押さえつけようとするが、抑えきれない興奮が尻尾に現れてしまっている。
暴走している尻尾を止めることもできず、バシバシと身体に当たる嬉しい痛みを感じながらアズールを抱きしめ続けていた。
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