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番外編
学生時代の思い出 <中編>
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サクッと終わらそうと思ったんですが、新入生ならこういう行事もあるよね……と思いついて一話増えました(汗)
楽しんでいただけると嬉しいです♡
* * *
今日は新入生行事の一つ。
身体測定と健康診断がある。
学生が多いから学部ごとに日にちが分けられていて、俺たち経済学部(男子)は今日の午前中の三時間の間に、個人票を片手に各々で空いているところから回り、最後に総務課に提出することになっていた。
ちなみに女子は午後の三時間で、全ての時間帯で他学部の学生と異性は完全立ち入り禁止となっている。
指定された日に受けられない場合には各自で病院に行き、結果を学校に提出しなければならないことになっていて、その診断書代も含めて全て自己負担な上に時間も手間もかかることから、ほとんどの学生が都合をつけてやってくる。
俺たちも例に違わず、それを受けることにしたのだが、どうも浅香の様子がおかしい。
そういえば、さっさと行って早く終わらそうぜと声をかけた時から何だかおかしかった。
「浅香、どうしたんだ?」
「いや、これ全員で一緒にやるのか?」
「全員でって、流れ作業みたいなもんだろ、こういうのは」
「流れ作業?」
俺の言葉にどうやらピンときていないらしい。
「高校の時もやっただろう? 例えば、一組は身長から測って、二組は体重とか、もう忘れたのか?」
「それが普通なのか?」
「普通かどうかはわからないけど、そういうのが多いと思う。桜守は違うのか?」
「うちは身体測定と健康診断の時はそれぞれのかかりつけの病院から先生が来てくれて、病院ごとにそれぞれ臨時の診察室ができるんだ。それで一人ずつ、診察室に入って診てもらう感じかな。だから、ああやって上半身裸で並んで待ってたりとかなかったからびっくりして……」
「…………あー、なるほど」
さすが桜守としか言いようがない。
「えっ? じゃあ、体育の授業の着替えとかどうしてたんだ?」
「えっ? だって、更衣室にはそれぞれ個室があるだろう? 狭いけど、一人で着替えるには十分だし」
「…………そうか」
だから水泳も楽しそうとか言ってたんだ。
個室なら誰の目も気にせずに着替えられるからな。
ああ、もう根本から違ったな。
そもそも俺らがいた高校と桜守を一緒にしたのがダメだった。
「でも、大学ではこういうシムテムならそれに従うよ。上の服を脱いで並んで待つんだよな」
浅香がちらりと見た方向には、上半身裸でこっちを……いや、浅香を見て、ニヤニヤと怪しい笑みを浮かべる奴らがいた。
あいつら、絶対に浅香の裸見るのが目的だろ。
こっそり写真でも撮られたら最悪だ。
「いやいや、ちょっと待て。今日はここで受けないでおこう。お前のかかりつけの病院に行こうぜ」
「えっ、でもわざわざ行くのも面倒だろ? それに、生まれた時からずっと診てくれてた先生が、ついこの前引退したから新しいかかりつけの病院を探しているところなんだ。だからどっちにしても診てもらうのは無理だし」
「ああ、わかった。じゃあ、いい病院を紹介するよ。それならいいだろう?」
「えっ? どこ?」
「うちの両親の病院」
「はっ? えっ? 倉橋の両親って医者なの?」
「ああ、ちょうど今日は休診日だから今から開けてやってもらうよ」
「そんな、いいのか?」
「ああ、浅香のこと話したら一度会ってみたいって話してたしな。ちょうど良かったよ。そうと決まれば善は急げ。すぐに行こうぜ。蓮見、俺、親に電話していくから、先に駐車場行っておいてくれ」
「オッケー」
蓮見が浅香を連れていくのを見送りながら、俺は急いで父親に電話をかけた。
ーどうした? 珍しいな、お前から電話してくるのは。
ーああ。ちょっと頼みたいことがあって……
そう言って浅香の話を伝えると、
ーははっ。さすが桜守の子だな。そんなことになるかと思ってたんだよ。
ーそうなのか?
ーああ。私たちも桜守に呼ばれて健康診断しているからな。
ー知らなかった……。
ーそれだけ秘匿事項になってるってことだよ。
ーなるほど。
ーじゃあ、浅香くんは瞳子に診させよう。お前と涼平くんは私が診る。
ーああ、それで頼むよ。今からすぐに行くから。
ーわかった。準備しておくよ。
電話を切った後、俺はほっと息を吐いた。
今日ほど、両親が医者であったことを幸運だと思ったことはない。
その後、浅香を俺の車に乗せて、蓮見は後ろからついてきて、二台の車で両親の病院に向かった。
浅香の顔を見た途端、母が大喜びしていたのは、ずっと可愛い息子が欲しいと言っていたからだろう。
両親のおかげで無事に身体測定と健康診断を終えられて本当に良かった。
ああ、それにしても桜守……すごいな。
楽しんでいただけると嬉しいです♡
* * *
今日は新入生行事の一つ。
身体測定と健康診断がある。
学生が多いから学部ごとに日にちが分けられていて、俺たち経済学部(男子)は今日の午前中の三時間の間に、個人票を片手に各々で空いているところから回り、最後に総務課に提出することになっていた。
ちなみに女子は午後の三時間で、全ての時間帯で他学部の学生と異性は完全立ち入り禁止となっている。
指定された日に受けられない場合には各自で病院に行き、結果を学校に提出しなければならないことになっていて、その診断書代も含めて全て自己負担な上に時間も手間もかかることから、ほとんどの学生が都合をつけてやってくる。
俺たちも例に違わず、それを受けることにしたのだが、どうも浅香の様子がおかしい。
そういえば、さっさと行って早く終わらそうぜと声をかけた時から何だかおかしかった。
「浅香、どうしたんだ?」
「いや、これ全員で一緒にやるのか?」
「全員でって、流れ作業みたいなもんだろ、こういうのは」
「流れ作業?」
俺の言葉にどうやらピンときていないらしい。
「高校の時もやっただろう? 例えば、一組は身長から測って、二組は体重とか、もう忘れたのか?」
「それが普通なのか?」
「普通かどうかはわからないけど、そういうのが多いと思う。桜守は違うのか?」
「うちは身体測定と健康診断の時はそれぞれのかかりつけの病院から先生が来てくれて、病院ごとにそれぞれ臨時の診察室ができるんだ。それで一人ずつ、診察室に入って診てもらう感じかな。だから、ああやって上半身裸で並んで待ってたりとかなかったからびっくりして……」
「…………あー、なるほど」
さすが桜守としか言いようがない。
「えっ? じゃあ、体育の授業の着替えとかどうしてたんだ?」
「えっ? だって、更衣室にはそれぞれ個室があるだろう? 狭いけど、一人で着替えるには十分だし」
「…………そうか」
だから水泳も楽しそうとか言ってたんだ。
個室なら誰の目も気にせずに着替えられるからな。
ああ、もう根本から違ったな。
そもそも俺らがいた高校と桜守を一緒にしたのがダメだった。
「でも、大学ではこういうシムテムならそれに従うよ。上の服を脱いで並んで待つんだよな」
浅香がちらりと見た方向には、上半身裸でこっちを……いや、浅香を見て、ニヤニヤと怪しい笑みを浮かべる奴らがいた。
あいつら、絶対に浅香の裸見るのが目的だろ。
こっそり写真でも撮られたら最悪だ。
「いやいや、ちょっと待て。今日はここで受けないでおこう。お前のかかりつけの病院に行こうぜ」
「えっ、でもわざわざ行くのも面倒だろ? それに、生まれた時からずっと診てくれてた先生が、ついこの前引退したから新しいかかりつけの病院を探しているところなんだ。だからどっちにしても診てもらうのは無理だし」
「ああ、わかった。じゃあ、いい病院を紹介するよ。それならいいだろう?」
「えっ? どこ?」
「うちの両親の病院」
「はっ? えっ? 倉橋の両親って医者なの?」
「ああ、ちょうど今日は休診日だから今から開けてやってもらうよ」
「そんな、いいのか?」
「ああ、浅香のこと話したら一度会ってみたいって話してたしな。ちょうど良かったよ。そうと決まれば善は急げ。すぐに行こうぜ。蓮見、俺、親に電話していくから、先に駐車場行っておいてくれ」
「オッケー」
蓮見が浅香を連れていくのを見送りながら、俺は急いで父親に電話をかけた。
ーどうした? 珍しいな、お前から電話してくるのは。
ーああ。ちょっと頼みたいことがあって……
そう言って浅香の話を伝えると、
ーははっ。さすが桜守の子だな。そんなことになるかと思ってたんだよ。
ーそうなのか?
ーああ。私たちも桜守に呼ばれて健康診断しているからな。
ー知らなかった……。
ーそれだけ秘匿事項になってるってことだよ。
ーなるほど。
ーじゃあ、浅香くんは瞳子に診させよう。お前と涼平くんは私が診る。
ーああ、それで頼むよ。今からすぐに行くから。
ーわかった。準備しておくよ。
電話を切った後、俺はほっと息を吐いた。
今日ほど、両親が医者であったことを幸運だと思ったことはない。
その後、浅香を俺の車に乗せて、蓮見は後ろからついてきて、二台の車で両親の病院に向かった。
浅香の顔を見た途端、母が大喜びしていたのは、ずっと可愛い息子が欲しいと言っていたからだろう。
両親のおかげで無事に身体測定と健康診断を終えられて本当に良かった。
ああ、それにしても桜守……すごいな。
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