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番外編
学生時代の思い出 <後編>
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「浅香、ナイスサーブ!」
体育の授業も今日で三回目。
全くの初心者だったはずの浅香だが、もともと運動神経がいいのか、初日からうまくボールを飛ばしていて驚いた。
桜守だからといって侮っていたわけではないが、みんなで楽しく運動をするというコンセプトらしい桜守の体育の授業を受けていたと聞いていたから、ボールを遠くに飛ばすのも正直難しいかと思っていた。
それが手加減しているとはいえ、俺と普通に試合できるようになったのだから本当にすごいんだろう。
「俺の教え方がいいからだな」
蓮見はそんなことを言っていたが、まぁ確かに教え方はうまい。
この授業では外部からのコーチを呼んでいるが、最初の授業でやたら浅香に声をかけようとしていたから、蓮見がコーチに試合をしようと持ちかけて、コテンパンにやっつけた。
それくらいに蓮見はテニスがうまい。
その件でコーチは蓮見に恐れ慄き、俺と浅香の指導は蓮見に任せると言って、他の学生のコーチをする様になった。
そのおかげで俺たち三人はのびのびとテニスを楽しむことができている。
もともとこの授業は出席をしてさえいれば、単位を取れるのだ。
だから楽しまないとな。
俺と蓮見は協力して無防備になりがちな浅香を守りながら、体育の授業を楽しんでいた。
そして、今日の授業終了後、いつものように汗を流しにシャワールームに向かった。
ここのシャワールームは一つの個室に三つのシャワーブースがあり、浅香を一番右側。俺が真ん中で蓮見が左端を定位置にしてシャワーを浴びていた。
首から下と膝までしか隠れないブースだが、浅香の裸を見ないようにすればいいだけだから問題ない。
俺たちが一緒に入れるこのシャワーブースは浅香を守るのに都合が良かった。
今日も話をしながら浅香に背を向け、シャワーを浴びていると、
「あっ!」
と大きな声が聞こえた。
何かあったのかと尋ねるとボディーソープを忘れたらしい。
このシャワーブースには備え付けのシャンプーとボディーソープが置かれているのに、わざわざ自宅から持ってきていることに驚いたが、聞けば肌が弱く一度使ってかぶれてしまったのだという。
こういうところもさすが桜守。
肌質まで俺たちとは違うのか。
だが、それならちょうどいい。
母親に渡そうと準備していたボディーソープを持ってきていたことを思い出し、浅香にあげることにした。
母にもきっとこのことを話せば、渡したことを喜ぶだろう。
逆に渡さないほうが怒りそうだ。
俺が持っているボディーソープは俺が試行錯誤の上、開発したもの。
もともとは母親に向けて作ってみたものだが、材料にこだわって肌に優しいものを作ったために、かなり高級品になったが、需要はかなりあると見込んでいる。
なんせお金持ちはいいものに金は惜しまない。
しかもそれが大切な人を守るためのものなら余計にだ。
そのことに気づいたからこそ、俺は大切な人を守るためのものを積極的に考えている。
今はまだボディーソープやシャンプーだけだが、身を守るためのものなら他にもたくさんある。
俺の開発はまだまだ無限だ。
俺はシャワーブースを一旦出て、備え付けのバスローブを羽織り、持ってきていたボディーソープを浅香に渡した。
俺が作ったと知って驚いていたが嫌がるそぶりはない。
それは俺が信用されている気がして嬉しかった。
さて、どんな感想を言ってくれるかと楽しみにしながら、浅香に背を向け髪と身体を洗っていると、突然
「倉橋! これ、すごいよ!!」
と興奮しきった声が聞こえた。
身体を洗い流しながら、その声に反応して振り返ると、浅香がブースの上からこっちのブースを覗き込んでいた。
うわっ! やばっ!
と思った時には、
「うわっ! でっかっ!!!」
という浅香の声が個室内に響き渡っていた。
慌てて手で隠したが、もうバッチリみられているから意味はない。
何みてるんだと文句を言ったが、
「ご、ごめんっ!! あんまり使い心地が良かったから興奮してつい……」
と言ってくる。
興奮してって……お前、それが勘違いされても仕方ないぞ。
そう思ったけれど、
「倉橋、浅香にそんなこと言ってもわからんだろ」
と反対隣から蓮見が笑いながら言ってくる。
その蓮見の言葉の意味すら理解していない浅香に、蓮見が冗談で
「そんなに倉橋のデカかったのか?」
と尋ねたが、さすがにそんな質問には答えないだろうと思っていた。
それなのに……。
「あ、うん。多分俺の二倍はありそう」
普通に答えてくる浅香の言葉に、思わず俺も蓮見もむせ返った。
俺の大きさはどうでもいい。
ただ浅香のモノの大きさを想像してしまうのがやばかった。
シャワーを終えた後、備え付けのバスローブを羽織る浅香を見て、ついさっきの言葉を思い出す。
あの下に可愛いモノが隠れているのか……。
決して浅香をどうこうしようなんてことは考えたことはないが、今回の件で浅香を今まで以上に守らなければいけないと思ったことは事実だ。
それからかなりの年月が経って、浅香が蓮見の兄貴である周平さんと付き合うことになったと聞いて、もちろん驚いたが、ようやく浅香を守る役目を交代できると思うと嬉しかった。
俺と蓮見はきっと周平さんのために、浅香を守り続けてきたんだ。
あの日、入学式で出会ったあの日から……。
体育の授業も今日で三回目。
全くの初心者だったはずの浅香だが、もともと運動神経がいいのか、初日からうまくボールを飛ばしていて驚いた。
桜守だからといって侮っていたわけではないが、みんなで楽しく運動をするというコンセプトらしい桜守の体育の授業を受けていたと聞いていたから、ボールを遠くに飛ばすのも正直難しいかと思っていた。
それが手加減しているとはいえ、俺と普通に試合できるようになったのだから本当にすごいんだろう。
「俺の教え方がいいからだな」
蓮見はそんなことを言っていたが、まぁ確かに教え方はうまい。
この授業では外部からのコーチを呼んでいるが、最初の授業でやたら浅香に声をかけようとしていたから、蓮見がコーチに試合をしようと持ちかけて、コテンパンにやっつけた。
それくらいに蓮見はテニスがうまい。
その件でコーチは蓮見に恐れ慄き、俺と浅香の指導は蓮見に任せると言って、他の学生のコーチをする様になった。
そのおかげで俺たち三人はのびのびとテニスを楽しむことができている。
もともとこの授業は出席をしてさえいれば、単位を取れるのだ。
だから楽しまないとな。
俺と蓮見は協力して無防備になりがちな浅香を守りながら、体育の授業を楽しんでいた。
そして、今日の授業終了後、いつものように汗を流しにシャワールームに向かった。
ここのシャワールームは一つの個室に三つのシャワーブースがあり、浅香を一番右側。俺が真ん中で蓮見が左端を定位置にしてシャワーを浴びていた。
首から下と膝までしか隠れないブースだが、浅香の裸を見ないようにすればいいだけだから問題ない。
俺たちが一緒に入れるこのシャワーブースは浅香を守るのに都合が良かった。
今日も話をしながら浅香に背を向け、シャワーを浴びていると、
「あっ!」
と大きな声が聞こえた。
何かあったのかと尋ねるとボディーソープを忘れたらしい。
このシャワーブースには備え付けのシャンプーとボディーソープが置かれているのに、わざわざ自宅から持ってきていることに驚いたが、聞けば肌が弱く一度使ってかぶれてしまったのだという。
こういうところもさすが桜守。
肌質まで俺たちとは違うのか。
だが、それならちょうどいい。
母親に渡そうと準備していたボディーソープを持ってきていたことを思い出し、浅香にあげることにした。
母にもきっとこのことを話せば、渡したことを喜ぶだろう。
逆に渡さないほうが怒りそうだ。
俺が持っているボディーソープは俺が試行錯誤の上、開発したもの。
もともとは母親に向けて作ってみたものだが、材料にこだわって肌に優しいものを作ったために、かなり高級品になったが、需要はかなりあると見込んでいる。
なんせお金持ちはいいものに金は惜しまない。
しかもそれが大切な人を守るためのものなら余計にだ。
そのことに気づいたからこそ、俺は大切な人を守るためのものを積極的に考えている。
今はまだボディーソープやシャンプーだけだが、身を守るためのものなら他にもたくさんある。
俺の開発はまだまだ無限だ。
俺はシャワーブースを一旦出て、備え付けのバスローブを羽織り、持ってきていたボディーソープを浅香に渡した。
俺が作ったと知って驚いていたが嫌がるそぶりはない。
それは俺が信用されている気がして嬉しかった。
さて、どんな感想を言ってくれるかと楽しみにしながら、浅香に背を向け髪と身体を洗っていると、突然
「倉橋! これ、すごいよ!!」
と興奮しきった声が聞こえた。
身体を洗い流しながら、その声に反応して振り返ると、浅香がブースの上からこっちのブースを覗き込んでいた。
うわっ! やばっ!
と思った時には、
「うわっ! でっかっ!!!」
という浅香の声が個室内に響き渡っていた。
慌てて手で隠したが、もうバッチリみられているから意味はない。
何みてるんだと文句を言ったが、
「ご、ごめんっ!! あんまり使い心地が良かったから興奮してつい……」
と言ってくる。
興奮してって……お前、それが勘違いされても仕方ないぞ。
そう思ったけれど、
「倉橋、浅香にそんなこと言ってもわからんだろ」
と反対隣から蓮見が笑いながら言ってくる。
その蓮見の言葉の意味すら理解していない浅香に、蓮見が冗談で
「そんなに倉橋のデカかったのか?」
と尋ねたが、さすがにそんな質問には答えないだろうと思っていた。
それなのに……。
「あ、うん。多分俺の二倍はありそう」
普通に答えてくる浅香の言葉に、思わず俺も蓮見もむせ返った。
俺の大きさはどうでもいい。
ただ浅香のモノの大きさを想像してしまうのがやばかった。
シャワーを終えた後、備え付けのバスローブを羽織る浅香を見て、ついさっきの言葉を思い出す。
あの下に可愛いモノが隠れているのか……。
決して浅香をどうこうしようなんてことは考えたことはないが、今回の件で浅香を今まで以上に守らなければいけないと思ったことは事実だ。
それからかなりの年月が経って、浅香が蓮見の兄貴である周平さんと付き合うことになったと聞いて、もちろん驚いたが、ようやく浅香を守る役目を交代できると思うと嬉しかった。
俺と蓮見はきっと周平さんのために、浅香を守り続けてきたんだ。
あの日、入学式で出会ったあの日から……。
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