運命の出会いは空港で 〜クールなイケメン社長は無自覚煽りの可愛い子ちゃんに我慢できない

波木真帆

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番外編

俺たちのミッション  <前編>

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番外編第一弾は、沼田への報復編となります。
航と祐悟は一切出てきません。
朝陽視点でお届けします。
少し長くなったので途中で切っちゃいました。すみません。
楽しんでいただけると嬉しいです♡





「朝陽、準備できたか?」

ここはテリフィックオフィス内にあるヘアメイク室。

「ちょっと待って~!」

俺はメイク室の外で待っている涼平さんに声をかけながら、メイクさんと2人で顔を見合わせて

「これ、すごいですね!」

「でしょう。もう今日は気合い入れて頑張っちゃいました!」

と笑い合った。

「これなら、南條さんだって絶対にバレないですよ!
蓮見さんとデートされるんでしょ? あ、でも蓮見さんは変装されなくていいんですか?」

「えっ、えっと……あの涼平さんは、髪型変えてサングラスかけたら結構印象変わりますから」

「ああ、確かに。その筋の人・・・・・に見えそうですよね。ってこんなこと言っちゃダメですね」

「ふふっ。いいんですよ。その通りなんで」

「ふふっ。じゃあ、私そろそろ失礼しますね」

「はい。今日はありがとうございました」

メイクをしてくれた神原かんばらさんがメイク室から『お疲れさまです』と出ていくと、入れ替わるように涼平さんが入ってきた。

「なんか、メイクさん俺の顔見て少し笑ってたけど、朝陽、何か言ったのか?」

「ううん、何も言ってないよ」

「そうか――って、本当に朝陽か?」

「ふふっ。すごいでしょ? これなら大丈夫だよね」

「うわぁっ、別人だな本当に」

「ねぇ、涼平さんも少し変装してよ。俺だけ変わっても涼平さんでバレちゃう」

「そうだな、だがどうする?」

「ふふっ。俺に任せて」

俺は涼平さんの髪をオールバックにして、強めのサングラスをかけさせた。

「スーツは、あのスリーピースのやつにしよう。俺の部屋からとってくるから待ってて」

「ちょっと待て。そんな顔でウロウロして他の子に見られでもしたらまた説明するのも厄介だから俺がとってくるよ」

そう言って涼平さんは事務所の中にある俺の部屋にスーツを取りに行ってくれた。


なぜ俺たちが変装なんかしているのかというと、彼女が言ってたようにデートするわけじゃない。

今日は俺たちに課せられたミッションを遂行するために変装してるんだ。

涼平さんの親友であり、俺の友人でもある倉橋さんの大事な人が、とある人物に襲われ暴行されそうになったことがあるらしい。
倉橋さんはそのことを許せずにその人物への復讐を決意した。

その復讐計画を遂行するために志願したのが俺。
元々、俺はその計画に入ってはいなかったけれど、倉橋さんの大事な人・航くんにこの前あって、今までの事情を聞いてどうしても俺の手で仇をとりたくなっちゃったんだ。
俺も昔、嫌な目に遭わされたときみんなに助けてもらったから、その恩返しでもある。

それで俺も計画に加えてもらえることになったのだけど、自分で言うのもなんだけど、一応世の中に知れ渡っている身としては普段の顔だとすぐに俺だとバレちゃうから特殊メイクのプロにお願いして俺だとわからなくする+さらに美形に変身させてもらったんだ。

涼平さんは俺に何かあった時のためにって警護についてきてくれるんだよ。

しかも今回の計画は俺の他に後2人囮役がいて、2人ともそれはそれは王子様みたいに可愛い子たちなんだ。

嵌める相手は中年のおじさんらしいんだけど、可愛い男の子が好みだって言うから俺たち3人もいれば誰か好みに当たるでしょう。

嫌がる子を無理やり襲うような輩はさっさと捕まえて罪を償ってもらわないとね。


涼平さんの変装も終わって、まずは一緒に計画に参加してくれる新川くんと盛山くんを迎えに銀座にある浅香さんのホテルへ。
今日はそこのホテルにお泊まりなんだって。
これは倉橋さんからこの計画に協力してくれるお礼も兼ねてるらしい。
もちろんお礼はこれだけじゃないらしいけど。
倉橋さんはお金持ちな涼平さんよりもかなりの資産持ちらしい。
俺はよくは知らないけど……。
だからこのホテルの宿泊費だろうがその他のお礼だろうが痛くも痒くもないらしいよ。
ほんとすごいよね。

彼らのいるスイートにお迎えに行くと、2人もまたそれはそれはカッコ可愛い格好でお出迎えしてくれた。

そんな彼らが俺の姿を見て、

「えっ? 本当に南條さん???」

と目を丸くして驚いていたけれど、いやいや、俺だってびっくりしてる。
俺のは特殊メイクだけど、新川くんたちは地顔がこんなにも王子なんだから。

「朝陽の素顔が可愛いから、特殊メイクしてもこれだけ可愛いんだぞ」

「はいはい。そうですね。もう本当に社長は相変わらずですね。ふふっ」

涼平さんの言葉も新川くんはさらっと流しちゃうくらい、涼平さんのところの従業員さんは仲がいい。

「じゃあ、そろそろ行こうか。2人とも流れはわかってるか?」

「はい。大丈夫ですよ。2人で練習してきたんで」

「ふふっ。それなら心強いな。車の中で俺も一緒に入れてよ」

「南條さんと一緒にだなんて緊張しちゃうな」


ホテルを出て、車で今日の目的地へと向かう。

その間、俺は新川くんと盛山くんと念入りに話し合った。
相手は変な薬を盛って無理やり襲おうとする相手だ。
おかしな真似をされないように気をつけようと声をかけあった。

涼平さんは俺たち3人を守るためにもう1人警護の助っ人を用意してくれていた。
それは涼平さんのお兄さんで周平さん。

2人ともガタイのいい人だから、写真で見せてもらったターゲットの中年男なら軽々とやっつけられるはずだ。


今日、その男がいるという情報のあった新宿の怪しげなBARの近くに着き、俺たちはこっそりとその店に向かった。

俺と新川くんと盛山くんの3人で店に入り、涼平さんと周平さんは近くで見張ってくれているようだ。

少し暗いBARの扉を開け、中に足を踏み入れるとカウンターの奥の席にターゲットの男が1人で酒を飲んでいるのが見えた。

俺たちはその男のいる席から4つほど離れたカウンター席に並んで腰を下ろした。

その男に意識を向けながら少し甘めのカクテルをそれぞれ選んでたわいもない話をしていると、奴が動いた。

「君たち、3人で呑みにきたのかい?」

「はい。こういうところ初めてだから、1人でくるの怖くって……」

「そうか。でも怖いことなんて何もないよ。私が楽しいことを教えてあげよう」

「本当ですか、嬉しいっ!」

思わせぶりに上目遣いでその男を見つめると、

「――っ!」

男はハッと息を呑んだ。


『さすが南條さん、もうすぐオチそう。こわっ!』
『俺ら、いらないんじゃね?』
『いや、あいつりつのことちょいちょい見てるから、お前も声かけてやればノリノリになるよ』
『そうか? じゃあやってみるか』

「あの……、僕にも教えてもらえますか?」

「あ、ああ。もちろんだよ」

「ふふっ。嬉しいっ!」

「――っ!!」


ふふっ。盛山くんもうまい、うまい。
そんな王子さまみたいな爽やかな笑顔で見つめられたら、この男もそんな反応になっちゃうよね。

ターゲットの表情があっという間に緩んで、警戒心も全くない。
しばらくお酒を呑みながら話をしている最中も、男の視線は俺たちの身体に向けられている。
服の上からでもじっとりと舐め回すような視線を感じるのが正直かなり気持ちが悪い。
でも、奴を捕まえるためなら頑張れる!

「ねぇ、そろそろ違うとこ行きませんか?」

「んっ? そこはどこだ?」

そう言いながらもかなり期待している目をしている。
本当、気持ちが悪い。

「ふふっ。わかってるくせに~」

新川くんがそう言って男の太ももに手を乗せ指先でツーッと撫でてやると、男はすぐに立ち上がり

「そうだな! すぐに行こう! おい、会計をしてくれ。この子たちの分もだ!」

と俺たちの分まで支払ってくれて、大急ぎで店を出た。
おおかた、俺たちの気が変わらないうちにとでも思っているだろう。

支払いを済ませ鼻の下をだらんと伸ばしている男に、
『じゃあ、行きましょう』と声をかけ連れ立って、目的の場所に向かった。
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