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気になって仕方がない
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航との未来が待っていると思えば、寝不足だろうがなんだろうが面白いほどに仕事が進む。
航を俺の専属秘書として砂川に認めてもらうことはもちろんだが、何より航が自分の能力を発揮できる仕事を自信をもって取り組んでもらえるように俺は目の前にある仕事を必死で進めていた。
気になるのは寝室に置いてきた航だ。
初めてだと言うのにあれだけ無理をさせてしまったんだ。
本当なら、初めての朝は目が覚めるまで傍についていてやりたかった。
そして一日中ベッドの上で二人で過ごしていたかった。
目が覚めて俺がいないことに気づいて寂しがっていないだろうか?
ああ、一人にしてしまったことが悔やまれる。
社長室の奥に仮眠用のベッドを置いているのだからここに航を連れてくれば良かったか……。
いや、一人では歩けない状態の航を砂川に見られたら、それはそれで怒られそうだ。
それに俺の愛をたっぷりと受け入れて色気がダダ漏れの航を誰にも見せたくないと思ってしまった自分がいたのも事実だ。
どちらにしても航のことが気になって仕方がない。
朝から十分仕事は進めているし、休憩がてら航に連絡をしてみても問題はないだろう。
スマホは航の近くに置いておいたから起きていれば取るはずだ。
スマホを手に航へと電話をかけてみる。
コール音はしているがなかなか取らない。
やはりまだ眠っているのかもしれない。
もう少し寝かせておいた方がいいか。
しばらく経ってからまたかけ直してみるか。
電話を切ろうとしたその時――
「わぁーっ!!」
という航の叫び声と同時にガタッガタッと激しい物音が飛び込んできた。
「航っ? どうしたっ? 航っ?!」
慌てて声を掛けるが、返ってくるのは『ツーッ、ツーッ』という無機質な音だけ。
航に何かがあったんだ!
そう思ったらもう確かめずにはいられなかった。
取るものもとりあえず俺は自宅へと戻ることにした。
社長室を出て玄関へと向かう途中、
「社長っ! どちらに行かれるんですか?」
と砂川に声をかけられたが、止まって話をしている暇はない。
「航に何かがあったらしい。ちょっと自宅に戻ってくる」
「えっ? ちょ――っ!」
驚く砂川を背に俺は自宅へと急いだ。
航、無事でいてくれっ!
鍵を差し込む手が震えている。
急いで航の無事を確認しなければいけない時に俺は何をやってるんだ。
落ち着け! 落ち着け!
俺は必死に自分にそう声をかけながら鍵を開け、航を寝かせていたはずの寝室へと向かった。
「航っ!! 大丈夫か?」
扉をバァーーンと思いっきり開け、部屋に飛び込んで『大丈夫か? なんともないか?』とまずは身体を念入りに確かめる。
航は突然現れた俺に驚いたのか、目を丸くして声にならない言葉をあげていたが、さっきの電話の話をするとようやく状況が掴めたのか、電話を取ろうとして落としてしまったのだと教えてくれた。
そうか、もっと近い場所に置いていてやれば良かった。
身体が辛いはずだとわかっていたのに、俺は気が利かないな。
しかし、航は自分の身体が辛いのは自分が運動不足で昨日歩きすぎたからだと言い出した。
違うんだ、全てはこの身体の痛みがどうしてなったのかもわからないほど純情で純粋な子を手加減も忘れて貪り続けた俺のせいなんだよ。
「手加減できなくてすまない……」
航に謝ると、航はすごく悲しげな表情を浮かべながら
「……祐悟、さん……後悔、してますか??」
と聞いてきた。
後悔??
航に今、痛みを与えてしまっていることについては後悔しているが、航と抱き合えた昨夜の夢のような時間については全く後悔などしていない。
というよりも、一生忘れることのない喜びだ。
後悔などするわけがない。
俺のその気持ちを精一杯航に告げると、航は『じゃあ、謝らないでください……俺、すごく嬉しかったのに……』と笑顔を見せながら言ってくれた。
ああ。もう、航はいつでも私を幸せにしてくれるのだな。
そのお前の優しさに甘えてしまう。
俺は嬉しさのあまり航を抱き寄せた。
すると航もまた腕を伸ばして俺に抱きついてこようとする。
が、『いたっ――』と声をあげ、手を引っ込めてしまった。
身体を動かさせてはいけないとわかっていながら俺は馬鹿だな。
航に労りの言葉をかけると、『祐悟さん、離さないでください……』とこれまた可愛いことを言ってくれる。
愛しい恋人にこんな可愛いことを言われて離すわけがないだろうがっ!
俺は航の身体の負担にならないように抱きしめながら航と一緒にベッドに横たわった。
俺がしたかったのはこれだ。
航との幸せな朝をこうやって迎えたかったんだ。
だが……
俺のスマホの音が寝室に響く。
見なくてもわかってる、砂川だ。
俺が航のところにいると知っていながらコール音が鳴り続けるスマホにイラっとする。
切れても間髪入れずに鳴り続けるスマホに航が心配そうに見つめる。
仕方なく電話を取ると、俺の言葉を聞く間もなく
ー社長っ!!! 何やってるんですかっ!!! 仕事溜まってるんですよっ!!!
砂川の声が寝室中に響く。
スピーカーにしているわけでもないのになんて大きさだよ。
声が大きすぎだと文句を言ったが、
ー何言ってるんですかっ! 社長がなかなか帰ってこないからでしょう!!
少し様子を見にいくだけじゃなかったんですか? ちゃんと仕事やってもらわないと藤乃くんを秘書にという話、無しにしますよ!
そう言われれば戻らないわけにはいかない。
『すぐに戻ってこい!』と言わんばかりの口ぶりに、俺は戻るしか選択はなかった。
ああ、もう少しだけでも航と一緒にいたかった。
航は砂川のあまりの剣幕に恐れをなしたのか、俺に仕事に行けというばかりか自分も仕事に行くと言い出した。
そんなことさせられるわけがないだろう!
「大丈夫です。熱があるわけないじゃないし、俺……早く祐悟さんの会社のことちゃんと把握しておきたいので」
苦痛に満ちた表情で必死に起きあがろうとする姿に俺は心が痛くなった。
きっと今まで休むことなど許されなかったんだろう。
必死に身体に鞭打って熱だろうがなんだろうが仕事に行かされてたんだ。
今までの航の境遇が垣間見れた気がして、俺は悲しくなった。
『ゆっくり休んでくれ、俺のためにそうして欲しいんだ』
航のそんな色っぽい姿を見せたくない……そう胸の内を明かして航に口付けた。
最初こそ驚いていた航は俺の舌の動きに合わせるように舌を絡ませてくれる。
ふふっ。覚えがいい。
俺のキスに身体が馴染んできたみたいだ。
航の力が抜けたところで唇を離すと、上気した頬とトロンとした目が俺の官能を誘う。
「頬がほんのりピンク色でこんなとろとろに蕩けた航の顔を見られるのは私だけでいい。
頼む、今日はここでゆっくり休んでいてくれないか……」
必死にそう頼むと、航は俺の意見を聞き入れ『わかりました』と言ってくれた。
よし、あとは砂川に怒られないように必死で仕事を終わらせるだけだ。
その前に航の必要なものを用意しておかないとな。
あっと、その前に……。
「航、トイレに連れて行こう」
「えっ? だ、大丈夫です。一人で行けますから」
「何言ってるんだ。まだ足も完治してないのに身体も辛いだろう?」
「で、でも……」
「大丈夫。私はもう航の恋人でもう全て見せ合った仲だろう? 気にすることはない」
恥じらいながら躊躇う航をさっと抱きかかえて、俺はトイレへと連れて行った。
座らせて下着を下ろそうとしたが、流石にそれは断られてしまったが……。
もう中は全部知っているというのにな。
扉の外で終わるのを待ち、中に入るともうすでに下着を穿いていて少し残念だったが、抱き上げて寝室へと連れ帰った。
航の手の届きやすい位置に食べやすい食事と飲み物、充電器などを用意して『すぐに仕事を終わらせてくるから!!』と約束をして会社へと戻った。
航を俺の専属秘書として砂川に認めてもらうことはもちろんだが、何より航が自分の能力を発揮できる仕事を自信をもって取り組んでもらえるように俺は目の前にある仕事を必死で進めていた。
気になるのは寝室に置いてきた航だ。
初めてだと言うのにあれだけ無理をさせてしまったんだ。
本当なら、初めての朝は目が覚めるまで傍についていてやりたかった。
そして一日中ベッドの上で二人で過ごしていたかった。
目が覚めて俺がいないことに気づいて寂しがっていないだろうか?
ああ、一人にしてしまったことが悔やまれる。
社長室の奥に仮眠用のベッドを置いているのだからここに航を連れてくれば良かったか……。
いや、一人では歩けない状態の航を砂川に見られたら、それはそれで怒られそうだ。
それに俺の愛をたっぷりと受け入れて色気がダダ漏れの航を誰にも見せたくないと思ってしまった自分がいたのも事実だ。
どちらにしても航のことが気になって仕方がない。
朝から十分仕事は進めているし、休憩がてら航に連絡をしてみても問題はないだろう。
スマホは航の近くに置いておいたから起きていれば取るはずだ。
スマホを手に航へと電話をかけてみる。
コール音はしているがなかなか取らない。
やはりまだ眠っているのかもしれない。
もう少し寝かせておいた方がいいか。
しばらく経ってからまたかけ直してみるか。
電話を切ろうとしたその時――
「わぁーっ!!」
という航の叫び声と同時にガタッガタッと激しい物音が飛び込んできた。
「航っ? どうしたっ? 航っ?!」
慌てて声を掛けるが、返ってくるのは『ツーッ、ツーッ』という無機質な音だけ。
航に何かがあったんだ!
そう思ったらもう確かめずにはいられなかった。
取るものもとりあえず俺は自宅へと戻ることにした。
社長室を出て玄関へと向かう途中、
「社長っ! どちらに行かれるんですか?」
と砂川に声をかけられたが、止まって話をしている暇はない。
「航に何かがあったらしい。ちょっと自宅に戻ってくる」
「えっ? ちょ――っ!」
驚く砂川を背に俺は自宅へと急いだ。
航、無事でいてくれっ!
鍵を差し込む手が震えている。
急いで航の無事を確認しなければいけない時に俺は何をやってるんだ。
落ち着け! 落ち着け!
俺は必死に自分にそう声をかけながら鍵を開け、航を寝かせていたはずの寝室へと向かった。
「航っ!! 大丈夫か?」
扉をバァーーンと思いっきり開け、部屋に飛び込んで『大丈夫か? なんともないか?』とまずは身体を念入りに確かめる。
航は突然現れた俺に驚いたのか、目を丸くして声にならない言葉をあげていたが、さっきの電話の話をするとようやく状況が掴めたのか、電話を取ろうとして落としてしまったのだと教えてくれた。
そうか、もっと近い場所に置いていてやれば良かった。
身体が辛いはずだとわかっていたのに、俺は気が利かないな。
しかし、航は自分の身体が辛いのは自分が運動不足で昨日歩きすぎたからだと言い出した。
違うんだ、全てはこの身体の痛みがどうしてなったのかもわからないほど純情で純粋な子を手加減も忘れて貪り続けた俺のせいなんだよ。
「手加減できなくてすまない……」
航に謝ると、航はすごく悲しげな表情を浮かべながら
「……祐悟、さん……後悔、してますか??」
と聞いてきた。
後悔??
航に今、痛みを与えてしまっていることについては後悔しているが、航と抱き合えた昨夜の夢のような時間については全く後悔などしていない。
というよりも、一生忘れることのない喜びだ。
後悔などするわけがない。
俺のその気持ちを精一杯航に告げると、航は『じゃあ、謝らないでください……俺、すごく嬉しかったのに……』と笑顔を見せながら言ってくれた。
ああ。もう、航はいつでも私を幸せにしてくれるのだな。
そのお前の優しさに甘えてしまう。
俺は嬉しさのあまり航を抱き寄せた。
すると航もまた腕を伸ばして俺に抱きついてこようとする。
が、『いたっ――』と声をあげ、手を引っ込めてしまった。
身体を動かさせてはいけないとわかっていながら俺は馬鹿だな。
航に労りの言葉をかけると、『祐悟さん、離さないでください……』とこれまた可愛いことを言ってくれる。
愛しい恋人にこんな可愛いことを言われて離すわけがないだろうがっ!
俺は航の身体の負担にならないように抱きしめながら航と一緒にベッドに横たわった。
俺がしたかったのはこれだ。
航との幸せな朝をこうやって迎えたかったんだ。
だが……
俺のスマホの音が寝室に響く。
見なくてもわかってる、砂川だ。
俺が航のところにいると知っていながらコール音が鳴り続けるスマホにイラっとする。
切れても間髪入れずに鳴り続けるスマホに航が心配そうに見つめる。
仕方なく電話を取ると、俺の言葉を聞く間もなく
ー社長っ!!! 何やってるんですかっ!!! 仕事溜まってるんですよっ!!!
砂川の声が寝室中に響く。
スピーカーにしているわけでもないのになんて大きさだよ。
声が大きすぎだと文句を言ったが、
ー何言ってるんですかっ! 社長がなかなか帰ってこないからでしょう!!
少し様子を見にいくだけじゃなかったんですか? ちゃんと仕事やってもらわないと藤乃くんを秘書にという話、無しにしますよ!
そう言われれば戻らないわけにはいかない。
『すぐに戻ってこい!』と言わんばかりの口ぶりに、俺は戻るしか選択はなかった。
ああ、もう少しだけでも航と一緒にいたかった。
航は砂川のあまりの剣幕に恐れをなしたのか、俺に仕事に行けというばかりか自分も仕事に行くと言い出した。
そんなことさせられるわけがないだろう!
「大丈夫です。熱があるわけないじゃないし、俺……早く祐悟さんの会社のことちゃんと把握しておきたいので」
苦痛に満ちた表情で必死に起きあがろうとする姿に俺は心が痛くなった。
きっと今まで休むことなど許されなかったんだろう。
必死に身体に鞭打って熱だろうがなんだろうが仕事に行かされてたんだ。
今までの航の境遇が垣間見れた気がして、俺は悲しくなった。
『ゆっくり休んでくれ、俺のためにそうして欲しいんだ』
航のそんな色っぽい姿を見せたくない……そう胸の内を明かして航に口付けた。
最初こそ驚いていた航は俺の舌の動きに合わせるように舌を絡ませてくれる。
ふふっ。覚えがいい。
俺のキスに身体が馴染んできたみたいだ。
航の力が抜けたところで唇を離すと、上気した頬とトロンとした目が俺の官能を誘う。
「頬がほんのりピンク色でこんなとろとろに蕩けた航の顔を見られるのは私だけでいい。
頼む、今日はここでゆっくり休んでいてくれないか……」
必死にそう頼むと、航は俺の意見を聞き入れ『わかりました』と言ってくれた。
よし、あとは砂川に怒られないように必死で仕事を終わらせるだけだ。
その前に航の必要なものを用意しておかないとな。
あっと、その前に……。
「航、トイレに連れて行こう」
「えっ? だ、大丈夫です。一人で行けますから」
「何言ってるんだ。まだ足も完治してないのに身体も辛いだろう?」
「で、でも……」
「大丈夫。私はもう航の恋人でもう全て見せ合った仲だろう? 気にすることはない」
恥じらいながら躊躇う航をさっと抱きかかえて、俺はトイレへと連れて行った。
座らせて下着を下ろそうとしたが、流石にそれは断られてしまったが……。
もう中は全部知っているというのにな。
扉の外で終わるのを待ち、中に入るともうすでに下着を穿いていて少し残念だったが、抱き上げて寝室へと連れ帰った。
航の手の届きやすい位置に食べやすい食事と飲み物、充電器などを用意して『すぐに仕事を終わらせてくるから!!』と約束をして会社へと戻った。
応援ありがとうございます!
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