運命の出会いは空港で 〜クールなイケメン社長は無自覚煽りの可愛い子ちゃんに我慢できない

波木真帆

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砂川への頼みごと

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航の隣に滑り入ると航は俺の匂いを探すように擦り寄ってきて俺の胸元にポスっとおさまった。
すやすやと眠りについた航のその安心しきった表情に俺の心の中に温かいものが広がっていく。

今までどれだけ熱を分け合っても出してしまえば、一瞬にして冷えていったのに。
こうやって終わった後に腕に抱き、寝顔を見つめるなんてこと一度もなかった。

そもそもぐったりとして意識がなくなった相手に貪り続けるなんてこともあり得なかったことだ。
航だけだ、こんなに俺の心を揺さぶるのは。

あの会社から、あの男から勇気を出して逃げてくれて本当によかった。
航があの男に傷つけられていたとしたら、今頃奴を殺していただろうな、俺は。
まぁあれだけ航にトラウマを植え付けた奴だ。
殺しはしないまでも絶対に許しはしない。

航が俺のものになった今、航にとって嫌な過去は全部ぶっ潰してやる。

航はいつまでも俺の傍で笑ってくれていたらいいんだ。
航……お前がいてくれるだけで俺は一生幸せでいられる。
だから俺を離さないでくれ。



俺は航の匂いに包まれながら少しの間仮眠をとって、気持ちよさそうに眠る航を起こさないようにそっとベッドから抜け出した。
俺がいなくなったことに気づいたのか、航の手が俺を探すようにシーツの上を滑っていく。
その仕草が可愛すぎて思わずもう一度ベッドへと戻りたくなったが、ここで戻れば確実に砂川に文句を言われるのは目に見えている。
俺たちの未来のためにも今日は仕事を進めておかないといけないから、ごめんな。航。

俺はもう一つの寝室に置いてあったいつも使っているブランケットを取りに行き、航にかけてやると俺の匂いに安心したのかそれをギュッと抱きしめながらまたスヤスヤと眠りについた。

俺はそっと航の頬にキスをして、寝室をでた。

流石に少し寝不足だが、身体はスッキリとしていて軽い。
あれだけ相性の良いセックスをすれば当然か。

心地よい疲れに満足しながらコーヒーだけを口にして急いで着替えを済ませた。

出かける前に航の寝ているベッドの隣の棚にペットボトルの水と航のスマホを用意して、俺は会社へと向かった。

「おはよう」

声をかけるとあちこちから朝の挨拶の声が聞こえてくる中、

「藤乃くんはどうしたんですか?」

という砂川の声が耳に飛び込んできた。

「おい、第一声がそれか?」

「ああ。失礼いたしました。おはようございます。それで、藤乃くんはどうしたんですか?」

俺はその問いかけに答えることなく、社長室へと向かった。
砂川は後ろから強い足音をさせながらついてきて、バタンと扉を閉め、もう一度問いかけてきた。

「社長。何度も言わせないでください。藤乃くんはどうしたんですか?」

砂川のその冷ややかな声に俺は仕方なく答えた。

「いや、その……今日は休ませる、ことにした……」

「はぁっ? 休ませるって……社長。私、昨日言いましたよね?
無理はさせないようにって注意しましたよね? それがなぜこんなことになるんですか?」

「ああーっ、もう、仕方ないだろうっ!
俺だって自分で驚いてるんだよ。こんなに自分の理性が崩壊させられるなんて思ってなかったんだ」

「はぁーーっ。伊織さんから宿での様子を聞いておかしいと思ってましたが、社長は一体どうしたんですか?」

今までの俺の付き合い方をほぼ知っている砂川だからこそ、今の俺の姿が信じられないんだろう。
俺だって思ってるよ。
だが、航だけは特別なんだとしか言いようがない。

もう俺は航以外とはする気・・・にならないほど、航に溺れてるんだ。

「本当は今日だって航にずっと付いててやりたかったくらいなんだ。俺だけでも出社したんだからそれでよしとしてくれ」

「社長……本気なんですね」

「ああ、そうだ」

「ふぅ……、わかりました。ですが、今日はちゃんと働いてもらいますからそのつもりで」

ようやく砂川から認めてもらい、俺は仕事に取り掛かった。

と、その前に話しておかないといけないことがあったな。

「砂川、これは仕事とは関係ないことだが、お前と安慶名さんにお願いしたいことがある」

「私と伊織さんに? 一体何のお話ですか?」」

俺は航が前の会社でどんな目に遭っていたのかを全て砂川に話して聞かせた。

「お前が言っていたあの浅香のホテルでの被害者も航に間違いなかった。
薬を盛られて襲われそうになったところを逃げ帰ったら、翌日会社で上司に殴られたと言っていた」

「殴られた……? じゃあ、藤乃くんの頬にあった打撲の痕は?」

「ああ。そいつに殴られた痕だ。うちの履歴書の写真には前の写真を使って、面接の時にはメイクで誤魔化そうとしていたようだ」

「性接待を強制した挙句に殴りつけた上で解雇だなんて、酷すぎるにも程がありますよ。しかも、ちゃんとした給料ももらえず休みもなしだなんて、どれだけ酷い会社なんですか。それで社長、どうするおつもりですか?」

「大切な恋人がここまで酷い目に遭っていたのを知って、何もしないほどお人好しじゃないぞ、俺は。
『玻名崎商会』は元々、業界でも悪い噂が絶えない会社だ。叩けばすぐに埃が出るだろう。
安慶名さんとお前とで証拠集めをして欲しいんだ。俺があの会社をぶっ潰してやる」

「わかりました。すぐに調査に入ります。それで、上司とその沼田とかいう男の方はどうする気ですか?」

「ふっ。もうそっちは計画済みだ。東京帰ったらあいつらに協力してもらう予定だから、まぁまず失敗はないだろう」

「あの方々なら心配はなさそうですね」

「それからもう一つ調べて欲しいことがあるんだが……」

俺はずっと気になっていたことをついでに調べてもらうことにして、ようやく残っていた仕事に取り掛かった。
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