何もできない僕が甘えてもいい? 〜イケメンな彼の優しさに戸惑っています

波木真帆

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早く二人になりたい

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「真琴。あの車が欲しいなら買おうか」

僕たちの会話を聞いていたのか、ユウさんがまるでお菓子でも買うかのように真琴くんに声をかけた。

真琴くんが可愛いって褒めたからかな?
もしかして、嫉妬……とか?
いやいや、まさか、そんなことはないよね。

「えっ? そんな、買うだなんて! 僕は優一さんと一緒に乗る車が一番好きです。今日の車もお家にあるものも全部好きですよ」

真琴くんもユウさんの言葉にびっくりしたみたいで慌てて否定していたけれど、今日の車もお家にあるもののも全部って、言ってたな。

ってことは、ユウさんも車を少なくとも二台以上は持っているってことだよね。
うちの田舎では車がないとどこにも行けなかったし一人一台は普通だったけれど、東京の人は一人二台以上持つのが普通なのかな?

電車とか便利だし、車なくても十分生活できるんだけどな……不思議。

「あっ、そうだ! これ宮古島のお土産。僕の大好きな黒糖のお饅頭なんだ」

後部座席に置かれていた荷物をユウさんから受け取った真琴くんは僕に手渡してくれた。

「わぁ、お饅頭。僕、大好き!」

「だよね。伊月くん、和菓子が好きだもんね。喜んでもらえてよかった」

僕の好みを知ってくれているのが友人って感じがして嬉しい。

「シン。これは真琴の家のマンゴーだ。冷やして二人で食べるといい」

ユウさんが慎一さんに渡しているのが見える。

「真琴くんの家のマンゴー? 楽しみ!」

「毎年甘くて美味しいけど今年は特に美味しいから期待して」

「うん、ありがとう」

ユウさんと真琴くんは笑顔でさっと車に乗り込み、

「じゃあ、シン。また連絡するから」

と声をかけた。

「はい。今日はご馳走さまでした」

その言葉にユウさんがお支払いしてくれたんだとわかって、僕も急いでご馳走さまでしたと頭を下げた。

ユウさんは優しい笑顔で

「退院おめでとう!」

と言ってくれて、そのまま駐車場から出て行った。
車が見えなくなるまで見送ると、慎一さんが僕の肩にそっと手を置いた。

「伊月、行こうか」

優しい声で話しかけられてどきっとする。
そうだ。もう呼び捨てになったんだった。なんだか嬉しい!

行く時のように助手席に座ると、慎一さんが優しくシートベルトをつけてくれる。
ユウさんも真琴くんのシートベルトをつけてあげていたなって思っていると、突然慎一さんの唇が僕の唇に重なった。

「んっ! えっ?」

あまりにも突然のキスでびっくりして慎一さんを見つめた。
慎一さんは少しいたずらっ子のような顔をしながら、

「やっと二人っきりになれたから」

と嬉しそうに笑っていた。
真琴くんたちといる間ずっとキスしたかったのかなと思わせるような言葉に僕は嬉しくてたまらない。
だって、僕だってずっと慎一さんとキスしたかったのを我慢していたんだから。

膝に乗って食事をしている間、顔が近かったからドキドキしていたんだ。

正直にその気持ちを伝えると、慎一さんはなぜか急に苦し気な表情になった。

「ごめん、このあとドライブでもって思ってたけど、帰っていいかな?」

もしかしたら体調が悪くなったのかな?
心配でたまらない。

「えっ? もちろんいいですけど、どうかしたんですか?」

「伊月が可愛すぎるから我慢できないんだ。早く家で二人になりたい」

大好きな慎一さんにそんなことを言われて嫌なわけがない。
僕も早く二人になりたいと告げると慎一さんはすぐに自宅に向けて発車した。

駐車場から手を繋いだままエレベーターに乗って帰ろうとすると、コンシェルジュの大園さんが現れた。

「おかえりなさいませ。お荷物が届いておりましたが、大きなものでしたのでこちらでお預かりしております」

荷物という言葉が出てきて、すぐにあのワンちゃんのぬいぐるみのことだとわかった。
どうやら箱が大きくて宅配ボックスには入らなかったみたいだ。

大園さんがエレベーターまで運んでくれることになり、箱と一緒に家に向かった。

僕たちの家の階にエレベーターが止まり、僕が先に降りたから慎一さんが入れやすいように玄関の扉を開けて待っていると慎一さんがお礼を言ってくれた。

慎一さんの役に立てて嬉しいな。

家に入るとすぐに箱を開けようと言ってくれた。
やっぱり慎一さんって優しいな。

慎一さんが箱を開けると中から綺麗に梱包されたワンちゃんが出てきた。その小さい子のほうを取り出すと、

「ほら、伊月」

と優しく手渡してくれる。

もふもふの感触がとても気持ちいいし、可愛い。

「こっちの子も抱っこする?」

もう一匹のワンちゃんも渡してもらえて嬉しくて抱っこしていると、

「伊月、こっち向いて」

と慎一さんの声が聞こえた。
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