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恋人だから……
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「僕、この薄い卵で巻くオムライスが好きなんです」
今はとろとろの卵がかかったオムライスも多いけど、僕にとってオムライスは薄い卵で巻いてあって上にケチャップがかけられたものというイメージが強い。それはおばあちゃんのオムライスがそうだったから。
今まで誰にもその話をしたことがなくて、でも真一さんが僕の好みのオムライスを作ってくれたことが嬉しくて、つい言ってしまった。
そうなんだーって言われるかなって思ってた。
でも慎一さんの口から出たのは、「知ってる」という言葉。
あれ? 僕、気づかない間に言ってたっけ?
でも今までオムライスの話になったことはなかったはずなのに。
「伊月くんのことならなんでも知ってるよ。俺は伊月くんの恋人だからね」
びっくりした僕に慎一さんはそう言ってくれた。
慎一さんが僕の恋人だから……。ああ、なんて嬉しい響きなんだろう。
「僕も、慎一さんのこと……何でも知りたいです……恋人、ですから……」
口に出すのは少し恥ずかしかったけれど、慎一さんは僕の言葉に嬉しそうに笑って抱きしめてくれた。
ああ、本当に僕……慎一さんの恋人なんだ。幸せすぎて怖いな。
「ふぅ……お腹いっぱいです。オムライスもミックスフライもすっごくおいしかったです。あのカニクリームコロッケも、カニがいっぱいでびっくりしました」
「伊月くんに満足してもらえて良かったよ。またいつでも作るからね。ああ、今度は<ミモザ>にも食べに行こうか。俺が作ったものと食べ比べてみてよ」
「はい。でも……僕はきっと、慎一さんが作ってくれたものが美味しいと思います」
素直な気持ちを告げると、慎一さんは嬉しそうに笑ってくれた。
「片付けるからそこで休んでいて」
「僕も手伝います!」
「そう? じゃあ、お願いしようかな」
二人でキッチンに並ぶと、家のキッチンよりずいぶん高いことに気づく。きっと慎一さん仕様になっているんだろうな。
僕が使う時は踏み台でもおいたほうがいいかな?
なんて考えていると、
「これ、拭いてもらっていい?」
と大きな鍋とボウルを渡される。
「はい。任せてください!」
慎一さんに頼まれたのが嬉しくて水滴ひとつ残らないように丁寧に拭き終わると、
「ありがとう。おかげで片付けも終わったよ」
と笑顔を向けられる。
「えっ?」
僕があれだけ拭いている間にシンクはピッカピカになっていて、食洗機も動いている。
慎一さんって凄すぎる……。
「食後のデザートにプリンあるよ。食べる?」
「慎一さんの手作りですか?」
「ああ。もちろん!」
「食べたいです!」
お腹がいっぱいでも慎一さんが作ってくれたものなら絶対に食べたい。
慎一さんは冷蔵庫からプリンを取り出すと、僕の手を取ってソファーに連れて行ってくれた。
「さぁ、どうぞ召し上がれ」
「いただきます」
スプーンを入れるとわかる。僕の好きな少し硬めのプリンだ。
慎一さんが食べさせてくれたあのプリンによく似ている。うん、すっごく美味しい!
「すごく美味しそうに食べてくれるね」
「はい。だってすっごく美味しいです」
「そうか、それなら良かった」
プリンを三分の一ほど食べたところで、
「明日は、これからこの家で暮らすにあたって必要なものを買いに行こう」
と提案された。
でも必要なものと言われてももう全部揃っている気がする。
学校も休みだし、家で過ごす時間が多いからと言ってくれるけれど、それならなおのこともう全部揃いすぎてるから僕のために買い物なんて必要ない。
「これ以上買ってもらうなんて……」
申し訳なく思っていると、慎一さんは困ったように笑って口を開いた。
「ごめん、ちょっとカッコつけた」
カッコつけた? えっ? どういうことだろう?
「恋人になった伊月くんと買い物に託けてデートしたいだけなんだ。一緒に、出かけてくれる?」
ぼ、僕が……慎一さんと、デート……。そっか。恋人だから、デートできるんだ……。
嬉しい! 嬉しすぎる!!
「はい。僕も、慎一さんとデート、したいです……」
「やった!!」
僕の言葉に子どもみたいに喜んでくれた慎一さんをみて、本当に僕のこと好きなんだと思うと嬉しくてたまらなくなっていた。
「はい。これ、着替えね」
お風呂場に案内されて、着替えを渡される。
病院でも使っていたのと同じものだ。
病院で毎日僕のお見舞いに来てくれるたびに僕の出した汚れ物を持って帰ってくれていたことに気がついた時に、申し訳なく思っていたけれど、自分の洗濯物を洗うのと手間は変わらないからと言われて結局ずっとやってもらってたんだよね。
そのおかげで毎日綺麗な下着を身につけることができて嬉しかった。
しかも事故の前に僕が履いていたパンツと違って、すごく穿き心地が良くてこんなにも違うんだってびっくりした。
いつも穿いていたのはゴムのところがすぐに赤くかぶれてしまうからわざと緩めにして穿いてたけど、その分、穿き心地は悪かったけど、被れるよりマシだって言い聞かせてた。
でも最初の砂川くんが用意してくれた下着も、慎一さんの下着もかぶれたりしないかったな。
あれ? そういえば、砂川くんが用意してくれた下着はどこ行ったんだろう?
もしかしたら転院した時にどこかに無くしちゃったのかな? 後でもう一度荷物を探してみようかな。
今はとろとろの卵がかかったオムライスも多いけど、僕にとってオムライスは薄い卵で巻いてあって上にケチャップがかけられたものというイメージが強い。それはおばあちゃんのオムライスがそうだったから。
今まで誰にもその話をしたことがなくて、でも真一さんが僕の好みのオムライスを作ってくれたことが嬉しくて、つい言ってしまった。
そうなんだーって言われるかなって思ってた。
でも慎一さんの口から出たのは、「知ってる」という言葉。
あれ? 僕、気づかない間に言ってたっけ?
でも今までオムライスの話になったことはなかったはずなのに。
「伊月くんのことならなんでも知ってるよ。俺は伊月くんの恋人だからね」
びっくりした僕に慎一さんはそう言ってくれた。
慎一さんが僕の恋人だから……。ああ、なんて嬉しい響きなんだろう。
「僕も、慎一さんのこと……何でも知りたいです……恋人、ですから……」
口に出すのは少し恥ずかしかったけれど、慎一さんは僕の言葉に嬉しそうに笑って抱きしめてくれた。
ああ、本当に僕……慎一さんの恋人なんだ。幸せすぎて怖いな。
「ふぅ……お腹いっぱいです。オムライスもミックスフライもすっごくおいしかったです。あのカニクリームコロッケも、カニがいっぱいでびっくりしました」
「伊月くんに満足してもらえて良かったよ。またいつでも作るからね。ああ、今度は<ミモザ>にも食べに行こうか。俺が作ったものと食べ比べてみてよ」
「はい。でも……僕はきっと、慎一さんが作ってくれたものが美味しいと思います」
素直な気持ちを告げると、慎一さんは嬉しそうに笑ってくれた。
「片付けるからそこで休んでいて」
「僕も手伝います!」
「そう? じゃあ、お願いしようかな」
二人でキッチンに並ぶと、家のキッチンよりずいぶん高いことに気づく。きっと慎一さん仕様になっているんだろうな。
僕が使う時は踏み台でもおいたほうがいいかな?
なんて考えていると、
「これ、拭いてもらっていい?」
と大きな鍋とボウルを渡される。
「はい。任せてください!」
慎一さんに頼まれたのが嬉しくて水滴ひとつ残らないように丁寧に拭き終わると、
「ありがとう。おかげで片付けも終わったよ」
と笑顔を向けられる。
「えっ?」
僕があれだけ拭いている間にシンクはピッカピカになっていて、食洗機も動いている。
慎一さんって凄すぎる……。
「食後のデザートにプリンあるよ。食べる?」
「慎一さんの手作りですか?」
「ああ。もちろん!」
「食べたいです!」
お腹がいっぱいでも慎一さんが作ってくれたものなら絶対に食べたい。
慎一さんは冷蔵庫からプリンを取り出すと、僕の手を取ってソファーに連れて行ってくれた。
「さぁ、どうぞ召し上がれ」
「いただきます」
スプーンを入れるとわかる。僕の好きな少し硬めのプリンだ。
慎一さんが食べさせてくれたあのプリンによく似ている。うん、すっごく美味しい!
「すごく美味しそうに食べてくれるね」
「はい。だってすっごく美味しいです」
「そうか、それなら良かった」
プリンを三分の一ほど食べたところで、
「明日は、これからこの家で暮らすにあたって必要なものを買いに行こう」
と提案された。
でも必要なものと言われてももう全部揃っている気がする。
学校も休みだし、家で過ごす時間が多いからと言ってくれるけれど、それならなおのこともう全部揃いすぎてるから僕のために買い物なんて必要ない。
「これ以上買ってもらうなんて……」
申し訳なく思っていると、慎一さんは困ったように笑って口を開いた。
「ごめん、ちょっとカッコつけた」
カッコつけた? えっ? どういうことだろう?
「恋人になった伊月くんと買い物に託けてデートしたいだけなんだ。一緒に、出かけてくれる?」
ぼ、僕が……慎一さんと、デート……。そっか。恋人だから、デートできるんだ……。
嬉しい! 嬉しすぎる!!
「はい。僕も、慎一さんとデート、したいです……」
「やった!!」
僕の言葉に子どもみたいに喜んでくれた慎一さんをみて、本当に僕のこと好きなんだと思うと嬉しくてたまらなくなっていた。
「はい。これ、着替えね」
お風呂場に案内されて、着替えを渡される。
病院でも使っていたのと同じものだ。
病院で毎日僕のお見舞いに来てくれるたびに僕の出した汚れ物を持って帰ってくれていたことに気がついた時に、申し訳なく思っていたけれど、自分の洗濯物を洗うのと手間は変わらないからと言われて結局ずっとやってもらってたんだよね。
そのおかげで毎日綺麗な下着を身につけることができて嬉しかった。
しかも事故の前に僕が履いていたパンツと違って、すごく穿き心地が良くてこんなにも違うんだってびっくりした。
いつも穿いていたのはゴムのところがすぐに赤くかぶれてしまうからわざと緩めにして穿いてたけど、その分、穿き心地は悪かったけど、被れるよりマシだって言い聞かせてた。
でも最初の砂川くんが用意してくれた下着も、慎一さんの下着もかぶれたりしないかったな。
あれ? そういえば、砂川くんが用意してくれた下着はどこ行ったんだろう?
もしかしたら転院した時にどこかに無くしちゃったのかな? 後でもう一度荷物を探してみようかな。
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