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二人でベッドで
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髪と身体を洗い終え、たっぷりの湯船に浸かってホッとする。
「ああ、気持ちいい……」
こうやってたっぷりのお湯に浸かったの、家を出てから初めてだ。
――これ、入浴剤なんだ。足の血行をよくしてくれるからお風呂でマッサージしてね。
「あっ!」
気持ち良いお風呂に浸かっていると、尚孝くんからもらった入浴剤のことを思い出して、思わず声が出た。
慎一さんの話とか美味しい食事のことですっかり忘れちゃってたな。
せっかく尚孝くんが僕のために買ってきてくれたのに申し訳ない。
明日こそはあの入浴剤を使えるといいな。慎一さんにも頼んでおかなくちゃ!
慎一さんもお風呂に入るだろうから、早く出ないと! と思いつつも、久しぶりのお風呂が楽しくて気持ちよくてなかなか出られない。それでもこれ以上入っているとのぼせそうな気がして、残念に思いつつもお風呂を出た。
身体を拭くバスタオルも僕が使っていたものとは全然違って、ふわっふわ。しかも肩からかけると僕の膝下まで包み込んでくれるくらい大きい。このままごろっと転がりたいくらい気持ちが良くて、バスタオルをとるのも勿体無いと思ってしまうほどだった
あっという間に水分を拭き取ってくれたバスタオルを外し、用意してもらった下着とパジャマに着替えると、最高の気分。
ほかほかのままお風呂場を出て、リビングに向かった。
「あ、慎一さん……同じパジャマ着てる」
僕がお風呂に入っている間に、お風呂入ったのかな? こんな広い部屋だからお風呂が二つあってもおかしくないんだろうけど、すごいな……。
慎一さんが冷蔵庫を開けてお水みたいなのを飲み干したところで、
「あっ、お風呂……いただきました」
と声をかけた。
僕の声に気づいてくれた慎一さんはこっちを振り向くと、なぜか僕を見つめたまま動かなくなってしまった。
どうしたんだろう?
「あ、あの……しん、いちさん……どうか、したんですか?」
心配になって駆け寄ると、ハッとした慎一さんが
「いや、違うんだ。伊月くんが可愛すぎて見惚れてた」
と真剣な目で言ってくれた。
可愛い? 僕が? そんなこと……っ。
「本当だよ。伊月くんには嘘なんて吐かない。俺とお揃いのパジャマ着てくれてるだけでも可愛いのに、お風呂であったまってピンク色のほっぺたをしているのもすっごく可愛いよ」
照れる僕を前に、慎一さんは次々に言ってくれてどんどん恥ずかしくなってくる。でもすごく嬉しかった。
「お風呂上がりだからこれ飲んで」
冷たいお水を渡されて飲むとほのかにレモンの味がして、火照った顔が冷めた気がした。
「髪、まだ濡れてるね。乾かそうか。おいで」
手を取られてリビングのソファーまで連れて行かれる。さっきのバスタオル以上にふわふわなマットの上に座るように言われて腰を下ろすとソファーに座った慎一さんの足に挟まれる。
そして慎一さんの優しい手が僕の髪に触れドライヤーで乾かされていく。
ドライヤーなんて使ったことがない。いつも自然乾燥で寝癖がついても気にすることもなかった。
でも慎一さんに乾かしてもらうのは気持ちがいい。
あっという間に乾いた髪は、自分の髪とは思えないくらいにサラサラしていた。
いつもとあまりにも違いすぎて驚いていると、慎一さんがこれから毎日乾かしてくれると言ってくれる。
それだけですごく嬉しかったのに、
「さぁ、ベッドに行こうか」
と誘われて、あのベッドに二人で寝るんだと思うと少し照れてしまった。
ドキドキしながら慎一さんと寝室に行き、ベッドに先に寝かされる。
慎一さんは僕が横になってからゆっくりとベッドに入ってきた。
「どう? 狭くない?」
そう尋ねられたけれど、狭いとかの問題じゃなく、慎一さんが隣で寝ている今の状況に慣れないでいる。
緊張してる? と尋ねられて、正直に人と寝るのが初めてだと伝えると、
「大丈夫、俺もだから。くっついたら恥ずかしく無くなるよ。おいで」
と慎一さんが腕を伸ばしてくる。
僕はそれに誘われるように慎一さんの腕の中に入った。
抱きしめられた瞬間、あのいい匂いに包まれて幸せてたまらなくなる。
「やっぱりいい匂いがしますね」
胸元に顔を擦り寄せて匂っていると、あの入浴剤のことを思い出した。
顔が見えない今なら言えるかも……そう思って僕は名前を呼びかけた。
「んっ? どうした?」
「あっ、あの……僕、一緒が良かったです」
突然の呼びかけに心配そうな声をかけてくれる慎一さんにそう告げたけれど、あまりにも言葉足らずだ。やっぱり少し緊張しているのかもしれない。
「お風呂……一緒に入りたかったです。尚孝くんがくれた入浴剤、慎一さんと一緒に使いたかったなって……」
必死に理由を告げると、
「あっ、そうか。入浴剤……ごめん。すっかり忘れてたな」
と慎一さんから謝罪の言葉が漏れた。
僕だって忘れていたから、謝ってもらうことじゃない。
「僕も一人でお風呂入ってから気づいたので……だから、その……明日は一緒に入ってもらえますか?」
尚孝くんがお風呂の中でマッサージしたらいいって言ってくれたから、慎一さんにやってもらえるかなと思って言ってみたんだけど、
「一緒に、いいの?」
と信じられないとでもいうような驚きの声が帰ってきた。
いいの? と言われた意味がわからない。慎一さんはそんな僕にわかるように言ってくれた。
「一緒にお風呂入るってことは……伊月くんの裸を、明るい場所で俺が見ても大丈夫かなってことなんだけど……」
「――っ!! あ、そう、ですよね……お風呂、ですもんね。それは、ちょっと恥ずかしいかも……」
明るい場所で、裸になるってことをすっかり忘れてた。でもお風呂だもんね。裸に決まってる。
でもあの入浴剤は慎一さんと一緒に使いたかったな。
そのためにはどうしたらいいだろう?
ああ、そうか! 明るい場所で裸になっても恥ずかしくなくなればいいんじゃない?
そんな考えが頭をよぎった。
「ああ、気持ちいい……」
こうやってたっぷりのお湯に浸かったの、家を出てから初めてだ。
――これ、入浴剤なんだ。足の血行をよくしてくれるからお風呂でマッサージしてね。
「あっ!」
気持ち良いお風呂に浸かっていると、尚孝くんからもらった入浴剤のことを思い出して、思わず声が出た。
慎一さんの話とか美味しい食事のことですっかり忘れちゃってたな。
せっかく尚孝くんが僕のために買ってきてくれたのに申し訳ない。
明日こそはあの入浴剤を使えるといいな。慎一さんにも頼んでおかなくちゃ!
慎一さんもお風呂に入るだろうから、早く出ないと! と思いつつも、久しぶりのお風呂が楽しくて気持ちよくてなかなか出られない。それでもこれ以上入っているとのぼせそうな気がして、残念に思いつつもお風呂を出た。
身体を拭くバスタオルも僕が使っていたものとは全然違って、ふわっふわ。しかも肩からかけると僕の膝下まで包み込んでくれるくらい大きい。このままごろっと転がりたいくらい気持ちが良くて、バスタオルをとるのも勿体無いと思ってしまうほどだった
あっという間に水分を拭き取ってくれたバスタオルを外し、用意してもらった下着とパジャマに着替えると、最高の気分。
ほかほかのままお風呂場を出て、リビングに向かった。
「あ、慎一さん……同じパジャマ着てる」
僕がお風呂に入っている間に、お風呂入ったのかな? こんな広い部屋だからお風呂が二つあってもおかしくないんだろうけど、すごいな……。
慎一さんが冷蔵庫を開けてお水みたいなのを飲み干したところで、
「あっ、お風呂……いただきました」
と声をかけた。
僕の声に気づいてくれた慎一さんはこっちを振り向くと、なぜか僕を見つめたまま動かなくなってしまった。
どうしたんだろう?
「あ、あの……しん、いちさん……どうか、したんですか?」
心配になって駆け寄ると、ハッとした慎一さんが
「いや、違うんだ。伊月くんが可愛すぎて見惚れてた」
と真剣な目で言ってくれた。
可愛い? 僕が? そんなこと……っ。
「本当だよ。伊月くんには嘘なんて吐かない。俺とお揃いのパジャマ着てくれてるだけでも可愛いのに、お風呂であったまってピンク色のほっぺたをしているのもすっごく可愛いよ」
照れる僕を前に、慎一さんは次々に言ってくれてどんどん恥ずかしくなってくる。でもすごく嬉しかった。
「お風呂上がりだからこれ飲んで」
冷たいお水を渡されて飲むとほのかにレモンの味がして、火照った顔が冷めた気がした。
「髪、まだ濡れてるね。乾かそうか。おいで」
手を取られてリビングのソファーまで連れて行かれる。さっきのバスタオル以上にふわふわなマットの上に座るように言われて腰を下ろすとソファーに座った慎一さんの足に挟まれる。
そして慎一さんの優しい手が僕の髪に触れドライヤーで乾かされていく。
ドライヤーなんて使ったことがない。いつも自然乾燥で寝癖がついても気にすることもなかった。
でも慎一さんに乾かしてもらうのは気持ちがいい。
あっという間に乾いた髪は、自分の髪とは思えないくらいにサラサラしていた。
いつもとあまりにも違いすぎて驚いていると、慎一さんがこれから毎日乾かしてくれると言ってくれる。
それだけですごく嬉しかったのに、
「さぁ、ベッドに行こうか」
と誘われて、あのベッドに二人で寝るんだと思うと少し照れてしまった。
ドキドキしながら慎一さんと寝室に行き、ベッドに先に寝かされる。
慎一さんは僕が横になってからゆっくりとベッドに入ってきた。
「どう? 狭くない?」
そう尋ねられたけれど、狭いとかの問題じゃなく、慎一さんが隣で寝ている今の状況に慣れないでいる。
緊張してる? と尋ねられて、正直に人と寝るのが初めてだと伝えると、
「大丈夫、俺もだから。くっついたら恥ずかしく無くなるよ。おいで」
と慎一さんが腕を伸ばしてくる。
僕はそれに誘われるように慎一さんの腕の中に入った。
抱きしめられた瞬間、あのいい匂いに包まれて幸せてたまらなくなる。
「やっぱりいい匂いがしますね」
胸元に顔を擦り寄せて匂っていると、あの入浴剤のことを思い出した。
顔が見えない今なら言えるかも……そう思って僕は名前を呼びかけた。
「んっ? どうした?」
「あっ、あの……僕、一緒が良かったです」
突然の呼びかけに心配そうな声をかけてくれる慎一さんにそう告げたけれど、あまりにも言葉足らずだ。やっぱり少し緊張しているのかもしれない。
「お風呂……一緒に入りたかったです。尚孝くんがくれた入浴剤、慎一さんと一緒に使いたかったなって……」
必死に理由を告げると、
「あっ、そうか。入浴剤……ごめん。すっかり忘れてたな」
と慎一さんから謝罪の言葉が漏れた。
僕だって忘れていたから、謝ってもらうことじゃない。
「僕も一人でお風呂入ってから気づいたので……だから、その……明日は一緒に入ってもらえますか?」
尚孝くんがお風呂の中でマッサージしたらいいって言ってくれたから、慎一さんにやってもらえるかなと思って言ってみたんだけど、
「一緒に、いいの?」
と信じられないとでもいうような驚きの声が帰ってきた。
いいの? と言われた意味がわからない。慎一さんはそんな僕にわかるように言ってくれた。
「一緒にお風呂入るってことは……伊月くんの裸を、明るい場所で俺が見ても大丈夫かなってことなんだけど……」
「――っ!! あ、そう、ですよね……お風呂、ですもんね。それは、ちょっと恥ずかしいかも……」
明るい場所で、裸になるってことをすっかり忘れてた。でもお風呂だもんね。裸に決まってる。
でもあの入浴剤は慎一さんと一緒に使いたかったな。
そのためにはどうしたらいいだろう?
ああ、そうか! 明るい場所で裸になっても恥ずかしくなくなればいいんじゃない?
そんな考えが頭をよぎった。
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