何もできない僕が甘えてもいい? 〜イケメンな彼の優しさに戸惑っています

波木真帆

文字の大きさ
上 下
21 / 42

二人でゆっくり……

しおりを挟む
びっくりして慎一さんが僕を見る。

「僕……慎一さんのこと、信じます」

僕も慎一さんを見つめながらそういうと、慎一さんは手を震わせながら、

「ほ、本当に?」

と聞き返してきた。その姿になんだかキュンとする。
でも信じるためにはちゃんと慎一さんの口から言葉を聞きたくて

「はい。だから、ちゃんと言ってください……」

といったのだけど、僕の言葉の意味を慎一さんは理解できていないようだったから、今度はもっと丁寧に

「僕のこと、好きだって……言ってください……」

と言うと、慎一さんはハッとした表情を見せた。
一緒のベッドで寝ることよりも先に伝えてほしい言葉があったことに気づいてくれたみたいだ。

慎一さんはふぅと深呼吸をすると、僕の目をまっすぐ見てゆっくりと口を開いた。

「伊月くん、俺は君が好きだ。恋人になってほしい!」

その言葉を聞いた瞬間、

「僕でよかったら、喜んで……」

と言う返事がサラッと口から溢れた。僕はずっと慎一さんからのその言葉を待っていたんだな。

その幸せに浸っていると、突然慎一さんの腕の中に包こまれて思わず声をあげてしまったけれど、その温もりがもう離れたくないと思ってしまうほど心地いい。

慎一さんの匂いもこんなに近くで感じられるなんて嬉しいな。
そんなことを思っていると、

「これで、俺たち……恋人になったから、一緒に寝てくれるよね?」

と念を押されるように確認されて恥ずかしくなる。それはもちろんそのつもりだけど、改めて言うのはちょっと照れる。
でも大事なことだからと言われて、正直に一緒に寝たいと告げた。きっと今、僕の顔は真っ赤になっているだろうな。

あ、でも慎一さんに伝えておかなくちゃいけないことがある

僕は今まで誰も好きになったこともなかった。それは両親がお互いを思い遣ったり仲睦まじく過ごしている姿をを一度も見たことがなかったからかもしれない。それでも中学生や高校生になると、同級生で恋人がいるなんて話を聞くこともあったし、聞きたくなくても恋人になったら……なんてことを朧げながらに聞くこともあった。だけど、そんなことに気を向けていられないくらい、自分の勉強と生活に必死で何も知らずに過ごしてきた。

だから慎一さんと恋人になっても何をしていいのかわからない。そのことは正直にいったほうがいいんだろうな。

「その、僕……なんていうか、その……恋人同士の、何も、知らなくて……」

「えっ? 何もって……」

必死にそういうと、予想していなかったとでも言うような表情で慎一さんに聞き返される。

もしかして、恋人でもそう言うんじゃなかったのかな?
僕……勝手に勘違いして先走っちゃった?

うそっ、恥ずかしすぎる!

もう穴があったら入りたいくらいの恥ずかしさでどうしていいかわからない。

「やっ、恥ずかしい……っ」

慎一さんに顔を覗き込まれそうになって必死に顔を隠そうと慎一さんの胸に押し当てると、安心する匂いに包まれてなんともいえない感情が湧き上がる。

なんだろう、この気持ち。ホッとするし、なんだか身体の奥が熱くなる気がする。

その気持ちに戸惑っている時に耳元で、

「心配しないでいいよ」

と慎一さんに囁かれる。

「大丈夫、俺も初めてだから」

続けてそんな言葉が聞こえてきてびっくりして顔を上げると、優しい笑顔を浮かべた慎一さんの顔が見えた。
慎一さんが初めて? そんな……本当に?


「今まで伊月くん以外に好きになった人がいないんだ。だから誰とも付き合ったことないよ。告白したのだって、伊月くんが初めてだよ」

僕に嘘は言わないといって教えてくれたことに僕は驚きしかなかったけど、僕は慎一さんを信じるって決めたんだ。慎一さんの言うことを疑うなんてダメだ。

慎一さんが初めて付き合った人が僕だって信じられないくらいびっくりしたけど、でも……ものすごく嬉しい。

「初めて同士、ゆっくり進んでいこう」

そんな優しい言葉をかけられて僕は嬉しくなって頷いた。

「ねぇ、伊月くん。他に気になることある? さっきも言ったけど、俺は伊月くんにはすべて本当のことしか話さないから、なんでも聞いてくれていいよ」

そう言われて、一番気になっていたことを尋ねてみた。

「慎一さんのお仕事って、なんですか? あのコンビニの本社で働いているわけじゃないんですよね?」

「そっか、それを話さないといけなかったな。うん、あれは別の仕事。今の本業は獣医師だよ」

「えっ? 獣医師、さんですか?」

まさかの職業に驚きしかない。だって調査員とは全然違うし。

「うん。と言っても、雇われで週に二日しか働いてないけどね」

「そうなんですか?」

「ああ、獣医師は本当になりたいものになる布石のようなものなんだよ」

「本当になりたいもの?」

「俺はブリーダーになりたくて、今は準備を整えているところなんだ。もうすぐそれが完成するんだよ」

ブリーダーって、確かペットを繁殖させる人だったかな。獣医さんがブリーダーだったら確かにすごく安心だ。
そのために獣医さんになる慎一さんってすごく素敵だな。
しおりを挟む
感想 25

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

4人の兄に溺愛されてます

まつも☆きらら
BL
中学1年生の梨夢は5人兄弟の末っ子。4人の兄にとにかく溺愛されている。兄たちが大好きな梨夢だが、心配性な兄たちは時に過保護になりすぎて。

【完結】兄の事を皆が期待していたので僕は離れます

まりぃべる
ファンタジー
一つ年上の兄は、国の為にと言われて意気揚々と村を離れた。お伽話にある、奇跡の聖人だと幼き頃より誰からも言われていた為、それは必然だと。 貧しい村で育った弟は、小さな頃より家の事を兄の分までせねばならず、兄は素晴らしい人物で対して自分は凡人であると思い込まされ、自分は必要ないのだからと弟は村を離れる事にした。 そんな弟が、自分を必要としてくれる人に会い、幸せを掴むお話。 ☆まりぃべるの世界観です。緩い設定で、現実世界とは違う部分も多々ありますがそこをあえて楽しんでいただけると幸いです。 ☆現実世界にも同じような名前、地名、言葉などがありますが、関係ありません。

見ぃつけた。

茉莉花 香乃
BL
小学生の時、意地悪されて転校した。高校一年生の途中までは穏やかな生活だったのに、全寮制の学校に転入しなければならなくなった。そこで、出会ったのは… 他サイトにも公開しています

怒られるのが怖くて体調不良を言えない大人

こじらせた処女
BL
 幼少期、風邪を引いて学校を休むと母親に怒られていた経験から、体調不良を誰かに伝えることが苦手になってしまった佐倉憂(さくらうい)。 しんどいことを訴えると仕事に行けないとヒステリックを起こされ怒られていたため、次第に我慢して学校に行くようになった。 「風邪をひくことは悪いこと」 社会人になって1人暮らしを始めてもその認識は治らないまま。多少の熱や頭痛があっても怒られることを危惧して出勤している。 とある日、いつものように会社に行って業務をこなしていた時。午前では無視できていただるけが無視できないものになっていた。 それでも、自己管理がなっていない、日頃ちゃんと体調管理が出来てない、そう怒られるのが怖くて、言えずにいると…?

聖女召喚されて『お前なんか聖女じゃない』って断罪されているけど、そんなことよりこの国が私を召喚したせいで滅びそうなのがこわい

金田のん
恋愛
自室で普通にお茶をしていたら、聖女召喚されました。 私と一緒に聖女召喚されたのは、若くてかわいい女の子。 勝手に召喚しといて「平凡顔の年増」とかいう王族の暴言はこの際、置いておこう。 なぜなら、この国・・・・私を召喚したせいで・・・・いまにも滅びそうだから・・・・・。 ※小説家になろうさんにも投稿しています。

悩める文官のひとりごと

きりか
BL
幼い頃から憧れていた騎士団に入りたくても、小柄でひ弱なリュカ・アルマンは、学校を卒業と同時に、文官として騎士団に入団する。方向音痴なリュカは、マルーン副団長の部屋と間違え、イザーク団長の部屋に入り込む。 そこでは、惚れ薬を口にした団長がいて…。 エチシーンが書けなくて、朝チュンとなりました。 ムーンライト様にも掲載しております。 

帰宅

pAp1Ko
BL
遊んでばかりいた養子の長男と実子の双子の次男たち。 双子を庇い、拐われた長男のその後のおはなし。 書きたいところだけ書いた。作者が読みたいだけです。

処理中です...