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尚孝くんからのプレゼント
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「おはよう。待たせたかな?」
爽やかな声で河北さんが部屋に入ってくる。
僕が待ちきれずに早く準備しすぎただけだからそれを正直に告げたのだけど、言ってしまった後で自分が子どもっぽいところを見せてしまったようで恥ずかしくなる。
けれど、河北さんは僕の気持ちを汲んでくれた上で、軽々と荷物を持ってくれた。
「行こうか」
と優しい笑顔を向けられてさりげなく手を握られる。
河北さんの大きくて優しい手に包み込まれて思わず声を上げてしまったけれど、転ぶと危ないからという優しい理由だった。
僕のことを心配してくれているが故に手を握ってくれただけだけど、僕は河北さんのその優しさが嬉しかった。
河北さんと一緒に部屋を出てエレベーターに向かう前に
「田淵くん、看護師さんたちに挨拶していこうか」
と声をかけてくれる。僕も挨拶したかったから嬉しい。
僕と河北さんがスタッフステーションに向かうと、すぐにいつも部屋に来てくれていた看護師さんが僕たちの元に駆け寄ってきてくれた。
「田淵くん! とうとう退院だね。おめでとう!!」
いつも笑顔で挨拶してくれて、ご飯を完食した時には、「頑張ったね」と声をかけてくれた。
僕がこうあって欲しいと思っていた母さんのような優しさに、僕はいつも安心をもらっていた。
この看護師さんだけじゃなく、他の人もいつも優しく声をかけてくれて……ここで入院できて本当によかったって心から思えた。
この二ヶ月間の思い出が甦ってきていろいろ言いたいこともあったけれど、胸がいっぱいで言葉にならない。
「二ヶ月間、すごくお世話になりました。ありがとうございました!」
そういうのが精一杯だったけれど、看護師さんたちはたくさんの拍手で見送ってくれた。
河北さんとエレベータに乗り込んで扉が閉まるまでずっと笑顔で見送ってくれて、本当に嬉しかった。
「玄関のすぐ近くに車を置いてるから」
そう言われて、気づいた。
東京に来て車に乗るのが初めてなことに。
地元では両親ともにそれぞれ車を持っていた。
田舎では通勤用に大事な交通手段だ。だけど僕が乗った記憶はあんまりない。
東京に来てからは、さらに車とは縁遠い生活になった。
大学もバイト先もアパートから徒歩圏内にしたし、どうしても用事がある時は電車もバスもある。
こういう時に公共交通機関が充実しているのは安心だ。
だからこの三年はそういう移動ばかりだったから、今から河北さんの車に乗ると思うと緊張する。
「あれだよ」
と教えてくれた河北さんの車が見たことないくらいかっこいい車でさらに緊張感が増してしまった。
こんなすごい車に僕が乗る?
そんな日が来るなんて思ってもなかった。
傷つけたり汚したりしないようにしないとな。
ドキドキしながら、車に近づこうとすると、後ろから
「伊月くん!!」
と僕の名前を呼ぶ声が聞こえた。
その声にすぐに尚孝くんだと思ったけれど、振り返ってみてやっぱり尚孝くんの姿が見えて驚いてしまった。
だって、もう会えないと思っていたから。
「良かった、間に合って。今日が退院だって聞いてたからおめでとうって声かけたくて……」
驚く僕に尚孝くんが嬉しい言葉をかけてくれる。
わざわざそのために来てくれる気持ちが嬉しくてたまらなかった。
しかも、
「これ、大したものじゃないけど退院のお祝い。受け取ってくれたら嬉しい」
とプレゼントまで渡してくれて、申し訳ない気持ちでいっぱいになってしまった。
だけど、尚孝くんは
「もらって欲しいんだ。僕、伊月くんのおかげで理学療法士として頑張ろうって思えたから……」
と言ってくれる。こんなこと言われたら受け取らないなんてできるわけない。
お礼を言って受け取ると、そのプレゼントの中身が入浴剤だと教えてくれた。
「足の血行をよくしてくれるからお風呂でマッサージしてね」
本当に僕のことを考えてくれたプレゼントに僕は幸せな気持ちでいっぱいになっていた。
尚孝くんは河北さんにも引き留めてごめんなさいと気遣いの言葉をかけたけれど河北さんは何も気にする様子もなく、笑顔を向けていた。
うん。やっぱり河北さんは優しい人だ。
「尚孝くんのおかげで自分で歩いて退院できるんだよ。僕のために一生懸命指導してくれてありがとう」
僕のために二ヶ月間、一緒に戦ってくれた尚孝くんにお礼を言うと、尚孝くんは笑顔を見せてくれた。
その目に少し涙が見えた気がして、僕も泣きそうになってしまった。
この後どこかに行くなら送って行くよと河北さんが尚孝くんに声をかけていたけれど、尚孝くんは山野辺先生のところに用事があるらしい。
もう少し尚孝くんと一緒にいられるかなと思っていたからちょっと寂しかったけれど、
「あ、そうだ! これ、僕の連絡先」
とメモを渡してくれた。
ずっと聞きたかった尚孝くんの連絡先。でもダメだと思っていたから我慢していた。もう二度と会えないかもしれないと覚悟もしていただけに尚孝くんから連絡先をもらえてすごく嬉しかった。
すぐにでも僕のを教えたくて、河北さんに頼んで荷物を入れていたバッグからスマホを出してもらった。
「わぁ、伊月くんのスマホ。可愛いカバーだね!」
僕のスマホを見た途端、尚孝くんが褒めてくれる。
河北さんが僕のために選んでくれたカバーを褒められるのは何よりも嬉しい。
笑顔で尚孝くんの連絡先をスマホに登録し、僕の連絡先を尚孝くんに送る。
これでいつでも繋がっていられる。
「じゃあ、今度遊びに行こう!」
「うん! 連絡するね」
そんな会話を交わして、尚孝くんは病院の中に入って行った。
爽やかな声で河北さんが部屋に入ってくる。
僕が待ちきれずに早く準備しすぎただけだからそれを正直に告げたのだけど、言ってしまった後で自分が子どもっぽいところを見せてしまったようで恥ずかしくなる。
けれど、河北さんは僕の気持ちを汲んでくれた上で、軽々と荷物を持ってくれた。
「行こうか」
と優しい笑顔を向けられてさりげなく手を握られる。
河北さんの大きくて優しい手に包み込まれて思わず声を上げてしまったけれど、転ぶと危ないからという優しい理由だった。
僕のことを心配してくれているが故に手を握ってくれただけだけど、僕は河北さんのその優しさが嬉しかった。
河北さんと一緒に部屋を出てエレベーターに向かう前に
「田淵くん、看護師さんたちに挨拶していこうか」
と声をかけてくれる。僕も挨拶したかったから嬉しい。
僕と河北さんがスタッフステーションに向かうと、すぐにいつも部屋に来てくれていた看護師さんが僕たちの元に駆け寄ってきてくれた。
「田淵くん! とうとう退院だね。おめでとう!!」
いつも笑顔で挨拶してくれて、ご飯を完食した時には、「頑張ったね」と声をかけてくれた。
僕がこうあって欲しいと思っていた母さんのような優しさに、僕はいつも安心をもらっていた。
この看護師さんだけじゃなく、他の人もいつも優しく声をかけてくれて……ここで入院できて本当によかったって心から思えた。
この二ヶ月間の思い出が甦ってきていろいろ言いたいこともあったけれど、胸がいっぱいで言葉にならない。
「二ヶ月間、すごくお世話になりました。ありがとうございました!」
そういうのが精一杯だったけれど、看護師さんたちはたくさんの拍手で見送ってくれた。
河北さんとエレベータに乗り込んで扉が閉まるまでずっと笑顔で見送ってくれて、本当に嬉しかった。
「玄関のすぐ近くに車を置いてるから」
そう言われて、気づいた。
東京に来て車に乗るのが初めてなことに。
地元では両親ともにそれぞれ車を持っていた。
田舎では通勤用に大事な交通手段だ。だけど僕が乗った記憶はあんまりない。
東京に来てからは、さらに車とは縁遠い生活になった。
大学もバイト先もアパートから徒歩圏内にしたし、どうしても用事がある時は電車もバスもある。
こういう時に公共交通機関が充実しているのは安心だ。
だからこの三年はそういう移動ばかりだったから、今から河北さんの車に乗ると思うと緊張する。
「あれだよ」
と教えてくれた河北さんの車が見たことないくらいかっこいい車でさらに緊張感が増してしまった。
こんなすごい車に僕が乗る?
そんな日が来るなんて思ってもなかった。
傷つけたり汚したりしないようにしないとな。
ドキドキしながら、車に近づこうとすると、後ろから
「伊月くん!!」
と僕の名前を呼ぶ声が聞こえた。
その声にすぐに尚孝くんだと思ったけれど、振り返ってみてやっぱり尚孝くんの姿が見えて驚いてしまった。
だって、もう会えないと思っていたから。
「良かった、間に合って。今日が退院だって聞いてたからおめでとうって声かけたくて……」
驚く僕に尚孝くんが嬉しい言葉をかけてくれる。
わざわざそのために来てくれる気持ちが嬉しくてたまらなかった。
しかも、
「これ、大したものじゃないけど退院のお祝い。受け取ってくれたら嬉しい」
とプレゼントまで渡してくれて、申し訳ない気持ちでいっぱいになってしまった。
だけど、尚孝くんは
「もらって欲しいんだ。僕、伊月くんのおかげで理学療法士として頑張ろうって思えたから……」
と言ってくれる。こんなこと言われたら受け取らないなんてできるわけない。
お礼を言って受け取ると、そのプレゼントの中身が入浴剤だと教えてくれた。
「足の血行をよくしてくれるからお風呂でマッサージしてね」
本当に僕のことを考えてくれたプレゼントに僕は幸せな気持ちでいっぱいになっていた。
尚孝くんは河北さんにも引き留めてごめんなさいと気遣いの言葉をかけたけれど河北さんは何も気にする様子もなく、笑顔を向けていた。
うん。やっぱり河北さんは優しい人だ。
「尚孝くんのおかげで自分で歩いて退院できるんだよ。僕のために一生懸命指導してくれてありがとう」
僕のために二ヶ月間、一緒に戦ってくれた尚孝くんにお礼を言うと、尚孝くんは笑顔を見せてくれた。
その目に少し涙が見えた気がして、僕も泣きそうになってしまった。
この後どこかに行くなら送って行くよと河北さんが尚孝くんに声をかけていたけれど、尚孝くんは山野辺先生のところに用事があるらしい。
もう少し尚孝くんと一緒にいられるかなと思っていたからちょっと寂しかったけれど、
「あ、そうだ! これ、僕の連絡先」
とメモを渡してくれた。
ずっと聞きたかった尚孝くんの連絡先。でもダメだと思っていたから我慢していた。もう二度と会えないかもしれないと覚悟もしていただけに尚孝くんから連絡先をもらえてすごく嬉しかった。
すぐにでも僕のを教えたくて、河北さんに頼んで荷物を入れていたバッグからスマホを出してもらった。
「わぁ、伊月くんのスマホ。可愛いカバーだね!」
僕のスマホを見た途端、尚孝くんが褒めてくれる。
河北さんが僕のために選んでくれたカバーを褒められるのは何よりも嬉しい。
笑顔で尚孝くんの連絡先をスマホに登録し、僕の連絡先を尚孝くんに送る。
これでいつでも繋がっていられる。
「じゃあ、今度遊びに行こう!」
「うん! 連絡するね」
そんな会話を交わして、尚孝くんは病院の中に入って行った。
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