ペントハウスでイケメンスパダリ紳士に甘やかされています

波木真帆

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俺は何をしてしまったんだ?

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部屋に戻り昼間とは違った夜景の美しさに感動しながらふらふらとソファーに座り込んだ。
俺の人生において今日ほど感情が大きく揺さぶられ続けた日はなかったかもしれない。
いや、涼平さんに出会ってからは毎日感情が大きく揺さぶられ続けているか……。
その中でも今日は特に目まぐるしい1日だった。

『ふぅーーっ』
気づけば大きく息を吐いていた。

「朝陽。疲れたか? それとも……」

「ふふっ。嫌になんかなってないよ。疲れただけ」

「そうか。なら、よかった。疲れを癒せるように風呂の準備をしてこよう」

バタバタとバスルームに向かう涼平さんを見ながら、俺はこれからのことを考えていた。

あの事件が起こって、どうすることもできなくて俺は俳優として生きることを諦めた。
いや、本当は諦めたくなかった。
でもどうしていいかわからずに俺は考えることを放棄して逃げ出した。
それこそが諦めだとわかっていながら……。

でも、涼平さんはそんな俺を見つけてくれた。
そしてもう一度俳優として戻れるチャンスを与えてくれたんだ。

これ以上ない幸運を手にして、俺はどれだけ涼平さんに報いることができるだろうか。
涼平さんを好きな気持ちは誰にも負けない。
でも、それ以上に俳優として成功することが、きっと恩返しになるはずだ。

あの西表の滝で今までの自分から生まれ変わろうと思った時のように……
そして、絶対にあの舞台をやり通してみせるとあの満天の星に誓った時のように……

必死に食らいついて新しい南條朝陽を見せつけてやる!!

俺は三度みたび心に誓った。


一緒に入ろうという涼平さんを必死に説得して、俺は今1人でお風呂に入っている。

沖縄では一緒に温泉に入ったし、そ、それ以上のこともしちゃってる、けど……でも、こんな明るい中で一緒に入るなんて俺の心が持たない。

だって……涼平さんのあの身体を思い出すだけで、すぐにドキドキしちゃうんだ。
そんな状態なのに、実物をこんな明るい場所で見るなんて……無理、無理っ!

そんなことを考えているだけでアレが元気になってしまいそう。
それを必死に押しとどめて、お風呂から上がった。

そういえばパジャマ持ってくるの忘れちゃったな……と思っていると、脱衣所の棚に着替えが置かれているのを見つけた。

ああ、涼平さんが用意してくれたんだ。
さすがだなぁ。

パッと広げて、俺は目を疑った。
それは…………


「りょ、涼平さん……お風呂先にいただきました」

ドキドキしながらリビングで寛いでいる涼平さんの元に戻ると、涼平さんは俺の姿を見てニヤッと嬉しそうな笑みを浮かべて

「朝陽、よく似合ってるよ」

と近づいてきた。

俺が着ているのはイケメン外国人が着てそうな手触りの滑らかなガウン。
いやいや、涼平さんなら似合いそうだけど、俺はただ着せられてる感たっぷりなんだけど……。

「寝室で待っていてくれ」

「ひゃ……っ」

耳元で囁かれて身体がゾクゾク震えてしまった。

「ふふっ。朝陽は可愛いな」

頬を優しく撫でられ、涼平さんはそのままお風呂へと行ってしまった。

寝室で待っててって言ってたよね?
それって……する、ってこと?
いやいや、ベッドはひとつしかないんだし、普通に寝るだけかも。

えーっ、どっち??

俺はドキドキしながら、寝室へと向かった。
間接照明しか点けていない大きなベッドの真ん中に入り込んで横たわっていると、ふわふわの枕と弾力のあるマットの心地よさにだんだんと目が閉じてくる。

だ、めっ……りょう、へいさんを……まつんだ……
さきに、ねちゃ……だ、めだ……

必死に睡魔に抗おうとしたけれど、朝からの怒涛の展開に俺の身体はもうすっかり疲れ果てていて、知らない間に眠りの世界へと旅立ってしまっていた。


ぱちっと目を覚ますと、俺は仄暗い部屋の中にいた。
あれ? 俺の部屋……朝から日差しが入り込んできていつも眩しくて目が覚めるのに……。
今日天気悪いのか?
そう思ったけれど、雨の音も何も聞こえない。

んっ? いや、別の何かが聞こえる。

隣から聞こえるスースーと落ち着いた寝息に俺は昨日の出来事を思い出していた。

うわっ、俺、結局寝ちゃったんだっ!!
涼平さんが来るのを待たないで先に寝ちゃうなんて!

とんでもないことやっちゃった……と思いながら隣を見ると、涼平さんがすやすやと眠っている。

ふふっ。寝てても格好良いってずるいな。

今何時なんだろう?
涼平さんを起こさないようにそっとサイドテーブルに手を伸ばすと、俺のスマホが置かれていた。
きっと涼平さんが持ってきてくれたんだな。

時間を見るとまだ5時半。
今日、業者さんが来るのは午後だと言っていたからまだ時間がありそうだ。
途端に眠くなってきて、俺はアラームを7時にセットし直してモゾモゾと布団に潜り込んだ。

涼平さんの胸元に顔を擦り寄せると、フワッと涼平さんの匂いがした。
ふふっ。良い匂い。

俺はその匂いに包まれながら、再度眠りについた。

「――ひ、朝陽。そろそろ起きようか」

「う、うーん」

眠い目を擦り開けると、目の前に突然涼平さんが飛び込んできた。

「えっ? えっ?」

「ふふっ。よく寝てたね」

そういえば、一回起きてまた寝たんだっけ?
あれ……

「……確か、アラームかけてたはずだったけど……」

そう呟くと、

「ああ、まだ早かったから寝かせておいたんだ」

と優しく頭を撫でてくれた。

「起こしてくれてよかったのに」

「いや、朝陽の寝顔が可愛かったからずっと見ていたかったんだ」

頬を撫でられカーッと恥ずかしさが込み上げてくる。

「ね、寝顔とか……変な顔してるのに……」

思わず布団を引き上げて顔を隠すと、涼平さんは笑いながら、
『ほら、朝陽の可愛い顔を見せてくれ。朝の挨拶もまだだぞ』と近づいてきた。

「朝陽、おはよう」

「りょ、涼平さん……おはよう」

「ああ……、いいな」

「えっ?」

「朝から朝陽が隣にいて挨拶できるこんな生活……幸せすぎるな」

蕩けるような甘い言葉に被っていた布団を下ろすと、狙ったように唇にキスが降ってきた。

「目覚めのキス、これから毎日させてくれ」

「は、恥ずかしいよ……」

「ここは私と2人だけ、誰にも見られないよ」

『さぁ、起きよう』と抱き起こされて、自分の着ているガウンに目がいった瞬間、昨夜の失態を思い出した。

「あ、あの……涼平さん……」

「んっ? どうした?」

「俺、昨日……先に寝ちゃって……ごめんなさい」

ベッドに正座して頭を下げると、『ふふっ』と笑い声が聞こえた。

びっくりして顔を上げると、涼平さんはにっこりと笑っていた。

「……えっ? 怒って、ないの……?」

「そんなことで怒るわけないだろう。確かに朝陽が寝ていて少し寂しかったけれど、朝陽の寝顔も堪能できたしそれに……ふふっ」

「えっ? なにっ? なにがあったの?」

「ふふっ。秘密」

「ええーっ! 気になるっ!」

「じゃあ、今日の夜に教えてやろう」

不敵な笑みを浮かべながら、『さぁ、起きるぞ』と俺を抱き起こして、ベッドから下ろしてくれた。
そのご機嫌な様子にドキドキしてしまう。

昨日、一体何があったんだ???

結局どれだけ考えてもわからずじまいで、俺は夜を待つしかなかった。
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