173 / 198
僕の会いたい人
しおりを挟む
「エ、エヴァンさんっ、聞こえてたんですか?」
「ああ、ユヅルに関することは聞こえるんだ。なんと言っても私は伴侶だからな」
そんな堂々と言われるとは思わなかったけど。
ものすごい勢いで来られるとは思ってなかったからびっくりしちゃった。
「それより、ユヅルの会いたい人とは誰なんだ? 私の知っている者か?」
「えっ、あ、あの……」
「ユヅルが会いに行きたいのなら止めはしないが、私は絶対についていくからな。それだけはわかっておいてくれ」
「いや、その……」
「しかし、相手がユヅルを私から奪おうとするなら戦うぞ! 私はユヅルを手放したりしないからな」
「えっ、そうじゃなくて……」
なんだか少しヒートアップしていくエヴァンさんにどうしようかと思っていると、
「エヴァンさま。少し落ち着いてください。ユヅルさまがお話ししたくてもできませんよ」
とセルジュさんが声をかけてくれた。
「あ、ああ。ユヅル。申し訳ない」
「あ、いえ。そんな……エヴァンさんは、悪くないですから」
「ユヅル……っ、ああ、なんて優しいんだろうな」
そう言って、抱きしめてくれる。
もう、本当にエヴァンさんは優しくて可愛い。
「それで、弓弦くんの会いたい人って、誰? 誰?」
興味津々な様子で尋ねてきたのは、佳都さん。
その声にみんなの視線を集めちゃってちょっと恥ずかしい。
「えっと、あ、あの……僕、秀吾さんの……お母さんに会いたいなって……」
「えっ? 僕の、母に?」
そんな言葉が出てくるとは思っていなかったのか、秀吾さんがキョトンとした顔で僕を見つめてくる。
「僕……あの映像のお礼が言いたくて……それに、その時のお父さんと母さんの話を聞けたらなって……」
「ユヅル……っ」
「弓弦くん……っ」
「やっぱり、無理ですよね……」
「そんなことないっ!!」
「――っ!!!」
突然ギュッと手を握られてびっくりしてしまった。
「あっ、ごめん! でも、僕嬉しいんだ!!」
「秀吾さん……」
こんなに興奮している秀吾さん、初めて見るかも……。
「本当だよ。弓弦くんに会えるなんて聞いたら、母も大喜びだよ! ねぇ、将臣」
「ああ、お義母さんなら弓弦くんと会えるって聞いたら張り切ってそうだな。というか、話を出した日から<いつ会えるの?>って聞いてきそう」
「ふふっ。そうそう。だから、こっちからお願いしたいくらいだよ。ぜひ、うちの母に会ってあげて」
「秀吾さん……ありがとうございます。あの、会えるのを楽しみにしていますね」
「うん。僕も楽しみにしてる。約束だよ」
そう言って差し出された指を絡める。
ああ、この約束が嬉しくてたまらない。
「ねぇねぇ。じゃあ日本に来たら、お母さんたちと会う日を作るっていうのはどう?」
「えっ? お母さんたちに会う?」
「そう! 僕のお母さんもきっと弓弦くんたちに会いたいっていうと思うんだ。理央くんのところもでしょう?」
「うん! 絶対に言いそう!! だって、僕にお友達ができたって言ったらすっごく喜んでくれたもん」
佳都さんの提案にすぐに理央くんも乗ってくれて、なんでみんなこんなに優しんんだろう。
「佳都さん……それに、理央くんまで……。嬉しいっ!! 僕、クリスマスプレゼントのお礼も言いたかったんだ!!」
「ふふっ。じゃあ、決まりね! ああーっ、お母さんたちすっごく喜びそう! ねぇ、理央くん」
「うん、うん。すっごく楽しみだね!!」
そう笑顔を向けられて、僕は嬉しすぎて頷くしかできなかった。
「ユヅル、日本には絶対連れていくからな。ユヅルの会いたい人全員に会いに行こう」
「エヴァンさん……はい。僕、嬉しいです」
思い切って言ってみて良かった。
ああ、もう日本行きが待ち遠しくてたまらないな。
それからしばらく、日本旅行の計画を話し合っていたら
「おっ、やっと来たか」
という綾城さんの声に僕たちは一斉に入口を見た。
悠木さんの腕の中でピッタリと身体を預けている空良くんの姿が見える。
「そんなに遅かったか?」
「ああ、見ての通りお前が一番最後だよ。まぁわかってたけどな。って、また空良くん寝てるのか?」
「いや、連れてきた時は起きてたんだが、ここまで来るまでにちょっとウトウトしてしまっただけだ。空良、起きれるか?」
「う、ん……ちゅーしたら、おき、れる……」
少し掠れたようなその声が静かなリビングに響く。
「あれ? 今のって、空良くんの声?」
いつもと全然違う掠れた声にちょっとドキッとしつつも、気になって仕方がない。
「空良くん、風邪ひいちゃったの? 大丈夫?」
「あ、いや。大丈夫、すぐに治るよ」
「そっか。悠木さん、お医者さんだもんね」
理央くんの言葉にホッとする。
今から帰るのに風邪なんてかわいそうだもんね。
「ああ、ユヅルに関することは聞こえるんだ。なんと言っても私は伴侶だからな」
そんな堂々と言われるとは思わなかったけど。
ものすごい勢いで来られるとは思ってなかったからびっくりしちゃった。
「それより、ユヅルの会いたい人とは誰なんだ? 私の知っている者か?」
「えっ、あ、あの……」
「ユヅルが会いに行きたいのなら止めはしないが、私は絶対についていくからな。それだけはわかっておいてくれ」
「いや、その……」
「しかし、相手がユヅルを私から奪おうとするなら戦うぞ! 私はユヅルを手放したりしないからな」
「えっ、そうじゃなくて……」
なんだか少しヒートアップしていくエヴァンさんにどうしようかと思っていると、
「エヴァンさま。少し落ち着いてください。ユヅルさまがお話ししたくてもできませんよ」
とセルジュさんが声をかけてくれた。
「あ、ああ。ユヅル。申し訳ない」
「あ、いえ。そんな……エヴァンさんは、悪くないですから」
「ユヅル……っ、ああ、なんて優しいんだろうな」
そう言って、抱きしめてくれる。
もう、本当にエヴァンさんは優しくて可愛い。
「それで、弓弦くんの会いたい人って、誰? 誰?」
興味津々な様子で尋ねてきたのは、佳都さん。
その声にみんなの視線を集めちゃってちょっと恥ずかしい。
「えっと、あ、あの……僕、秀吾さんの……お母さんに会いたいなって……」
「えっ? 僕の、母に?」
そんな言葉が出てくるとは思っていなかったのか、秀吾さんがキョトンとした顔で僕を見つめてくる。
「僕……あの映像のお礼が言いたくて……それに、その時のお父さんと母さんの話を聞けたらなって……」
「ユヅル……っ」
「弓弦くん……っ」
「やっぱり、無理ですよね……」
「そんなことないっ!!」
「――っ!!!」
突然ギュッと手を握られてびっくりしてしまった。
「あっ、ごめん! でも、僕嬉しいんだ!!」
「秀吾さん……」
こんなに興奮している秀吾さん、初めて見るかも……。
「本当だよ。弓弦くんに会えるなんて聞いたら、母も大喜びだよ! ねぇ、将臣」
「ああ、お義母さんなら弓弦くんと会えるって聞いたら張り切ってそうだな。というか、話を出した日から<いつ会えるの?>って聞いてきそう」
「ふふっ。そうそう。だから、こっちからお願いしたいくらいだよ。ぜひ、うちの母に会ってあげて」
「秀吾さん……ありがとうございます。あの、会えるのを楽しみにしていますね」
「うん。僕も楽しみにしてる。約束だよ」
そう言って差し出された指を絡める。
ああ、この約束が嬉しくてたまらない。
「ねぇねぇ。じゃあ日本に来たら、お母さんたちと会う日を作るっていうのはどう?」
「えっ? お母さんたちに会う?」
「そう! 僕のお母さんもきっと弓弦くんたちに会いたいっていうと思うんだ。理央くんのところもでしょう?」
「うん! 絶対に言いそう!! だって、僕にお友達ができたって言ったらすっごく喜んでくれたもん」
佳都さんの提案にすぐに理央くんも乗ってくれて、なんでみんなこんなに優しんんだろう。
「佳都さん……それに、理央くんまで……。嬉しいっ!! 僕、クリスマスプレゼントのお礼も言いたかったんだ!!」
「ふふっ。じゃあ、決まりね! ああーっ、お母さんたちすっごく喜びそう! ねぇ、理央くん」
「うん、うん。すっごく楽しみだね!!」
そう笑顔を向けられて、僕は嬉しすぎて頷くしかできなかった。
「ユヅル、日本には絶対連れていくからな。ユヅルの会いたい人全員に会いに行こう」
「エヴァンさん……はい。僕、嬉しいです」
思い切って言ってみて良かった。
ああ、もう日本行きが待ち遠しくてたまらないな。
それからしばらく、日本旅行の計画を話し合っていたら
「おっ、やっと来たか」
という綾城さんの声に僕たちは一斉に入口を見た。
悠木さんの腕の中でピッタリと身体を預けている空良くんの姿が見える。
「そんなに遅かったか?」
「ああ、見ての通りお前が一番最後だよ。まぁわかってたけどな。って、また空良くん寝てるのか?」
「いや、連れてきた時は起きてたんだが、ここまで来るまでにちょっとウトウトしてしまっただけだ。空良、起きれるか?」
「う、ん……ちゅーしたら、おき、れる……」
少し掠れたようなその声が静かなリビングに響く。
「あれ? 今のって、空良くんの声?」
いつもと全然違う掠れた声にちょっとドキッとしつつも、気になって仕方がない。
「空良くん、風邪ひいちゃったの? 大丈夫?」
「あ、いや。大丈夫、すぐに治るよ」
「そっか。悠木さん、お医者さんだもんね」
理央くんの言葉にホッとする。
今から帰るのに風邪なんてかわいそうだもんね。
127
お気に入りに追加
2,875
あなたにおすすめの小説
そばかす糸目はのんびりしたい
楢山幕府
BL
由緒ある名家の末っ子として生まれたユージン。
母親が後妻で、眉目秀麗な直系の遺伝を受け継がなかったことから、一族からは空気として扱われていた。
ただ一人、溺愛してくる老いた父親を除いて。
ユージンは、のんびりするのが好きだった。
いつでも、のんびりしたいと思っている。
でも何故か忙しい。
ひとたび出張へ出れば、冒険者に囲まれる始末。
いつになったら、のんびりできるのか。もう開き直って、のんびりしていいのか。
果たして、そばかす糸目はのんびりできるのか。
懐かれ体質が好きな方向けです。今のところ主人公は、のんびり重視の恋愛未満です。
全17話、約6万文字。
校長室のソファの染みを知っていますか?
フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。
しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。
座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る
転生令息は冒険者を目指す!?
葛城 惶
BL
ある時、日本に大規模災害が発生した。
救助活動中に取り残された少女を助けた自衛官、天海隆司は直後に土砂の崩落に巻き込まれ、意識を失う。
再び目を開けた時、彼は全く知らない世界に転生していた。
異世界で美貌の貴族令息に転生した脳筋の元自衛官は憧れの冒険者になれるのか?!
とってもお馬鹿なコメディです(;^_^A
おいしいじかん
ストロングベリー
BL
愛重めの外国人バーテンダーと、IT系サラリーマンが織りなす甘くて優しい恋物語です。美味しい料理もいくつか登場します。しっとりしたBLが読みたい方に刺されば幸いです。
ちっちゃくなった俺の異世界攻略
鮨海
ファンタジー
あるとき神の采配により異世界へ行くことを決意した高校生の大輝は……ちっちゃくなってしまっていた!
精霊と神様からの贈り物、そして大輝の力が試される異世界の大冒険?が幕を開ける!
奴の執着から逃れられない件について
B介
BL
幼稚園から中学まで、ずっと同じクラスだった幼馴染。
しかし、全く仲良くなかったし、あまり話したこともない。
なのに、高校まで一緒!?まあ、今回はクラスが違うから、内心ホッとしていたら、放課後まさかの呼び出され...,
途中からTLになるので、どちらに設定にしようか迷いました。
そばにいてほしい。
15
BL
僕の恋人には、幼馴染がいる。
そんな幼馴染が彼はよっぽど大切らしい。
──だけど、今日だけは僕のそばにいて欲しかった。
幼馴染を優先する攻め×口に出せない受け
安心してください、ハピエンです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる