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僕の会いたい人

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「エ、エヴァンさんっ、聞こえてたんですか?」

「ああ、ユヅルに関することは聞こえるんだ。なんと言っても私は伴侶だからな」

そんな堂々と言われるとは思わなかったけど。
ものすごい勢いで来られるとは思ってなかったからびっくりしちゃった。

「それより、ユヅルの会いたい人とは誰なんだ? 私の知っている者か?」

「えっ、あ、あの……」

「ユヅルが会いに行きたいのなら止めはしないが、私は絶対についていくからな。それだけはわかっておいてくれ」

「いや、その……」

「しかし、相手がユヅルを私から奪おうとするなら戦うぞ! 私はユヅルを手放したりしないからな」

「えっ、そうじゃなくて……」

なんだか少しヒートアップしていくエヴァンさんにどうしようかと思っていると、

「エヴァンさま。少し落ち着いてください。ユヅルさまがお話ししたくてもできませんよ」

とセルジュさんが声をかけてくれた。

「あ、ああ。ユヅル。申し訳ない」

「あ、いえ。そんな……エヴァンさんは、悪くないですから」

「ユヅル……っ、ああ、なんて優しいんだろうな」

そう言って、抱きしめてくれる。
もう、本当にエヴァンさんは優しくて可愛い。

「それで、弓弦くんの会いたい人って、誰? 誰?」

興味津々な様子で尋ねてきたのは、佳都さん。
その声にみんなの視線を集めちゃってちょっと恥ずかしい。

「えっと、あ、あの……僕、秀吾さんの……お母さんに会いたいなって……」

「えっ? 僕の、母に?」

そんな言葉が出てくるとは思っていなかったのか、秀吾さんがキョトンとした顔で僕を見つめてくる。

「僕……あの映像のお礼が言いたくて……それに、その時のお父さんと母さんの話を聞けたらなって……」

「ユヅル……っ」
「弓弦くん……っ」

「やっぱり、無理ですよね……」

「そんなことないっ!!」

「――っ!!!」

突然ギュッと手を握られてびっくりしてしまった。

「あっ、ごめん! でも、僕嬉しいんだ!!」

「秀吾さん……」

こんなに興奮している秀吾さん、初めて見るかも……。

「本当だよ。弓弦くんに会えるなんて聞いたら、母も大喜びだよ! ねぇ、将臣」

「ああ、お義母さんなら弓弦くんと会えるって聞いたら張り切ってそうだな。というか、話を出した日から<いつ会えるの?>って聞いてきそう」

「ふふっ。そうそう。だから、こっちからお願いしたいくらいだよ。ぜひ、うちの母に会ってあげて」

「秀吾さん……ありがとうございます。あの、会えるのを楽しみにしていますね」

「うん。僕も楽しみにしてる。約束だよ」

そう言って差し出された指を絡める。
ああ、この約束が嬉しくてたまらない。

「ねぇねぇ。じゃあ日本に来たら、お母さんたちと会う日を作るっていうのはどう?」

「えっ? お母さんたちに会う?」

「そう! 僕のお母さんもきっと弓弦くんたちに会いたいっていうと思うんだ。理央くんのところもでしょう?」

「うん! 絶対に言いそう!! だって、僕にお友達ができたって言ったらすっごく喜んでくれたもん」

佳都さんの提案にすぐに理央くんも乗ってくれて、なんでみんなこんなに優しんんだろう。

「佳都さん……それに、理央くんまで……。嬉しいっ!! 僕、クリスマスプレゼントのお礼も言いたかったんだ!!」

「ふふっ。じゃあ、決まりね! ああーっ、お母さんたちすっごく喜びそう! ねぇ、理央くん」

「うん、うん。すっごく楽しみだね!!」

そう笑顔を向けられて、僕は嬉しすぎて頷くしかできなかった。

「ユヅル、日本には絶対連れていくからな。ユヅルの会いたい人全員に会いに行こう」

「エヴァンさん……はい。僕、嬉しいです」

思い切って言ってみて良かった。
ああ、もう日本行きが待ち遠しくてたまらないな。

それからしばらく、日本旅行の計画を話し合っていたら

「おっ、やっと来たか」

という綾城さんの声に僕たちは一斉に入口を見た。
悠木さんの腕の中でピッタリと身体を預けている空良くんの姿が見える。

「そんなに遅かったか?」

「ああ、見ての通りお前が一番最後だよ。まぁわかってたけどな。って、また空良くん寝てるのか?」

「いや、連れてきた時は起きてたんだが、ここまで来るまでにちょっとウトウトしてしまっただけだ。空良、起きれるか?」

「う、ん……ちゅーしたら、おき、れる……」

少し掠れたようなその声が静かなリビングに響く。

「あれ? 今のって、空良くんの声?」

いつもと全然違う掠れた声にちょっとドキッとしつつも、気になって仕方がない。

「空良くん、風邪ひいちゃったの? 大丈夫?」

「あ、いや。大丈夫、すぐに治るよ」

「そっか。悠木さん、お医者さんだもんね」

理央くんの言葉にホッとする。
今から帰るのに風邪なんてかわいそうだもんね。
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