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風邪を引いたら……
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「空良」
「ちゅー、ないと、おきれない……っ」
「仕方がないな」
困ったように笑いながら悠木さんはくるっと後ろを向くとしばらくしてこっちを振り向いた。
「ふふっ……うれしぃ」
にっこりした空良くんの目がこっちを向いた瞬間、
「えっ?」
と溢れそうなくらい大きく目を開ける。
「空良くん、おはよう」
理央くんが駆け寄っていくと、空良くんは真っ赤な顔で
「もしかして……いまの…?」
と問いかける。
もちろんみんな見てるけど、寝ぼけてたんだから仕方がないよね。
風邪も引いてるし。
「ふふっ。仲良しさんだね」
「りおくん……」
「風邪ひいてるから無理しちゃダメだよ」
「えっ? 風邪って、僕――」
「あ、いや。理央くん、ありがとう。待たせて悪かったね。あの朝食にしようか」
「えっ、あっ。はい」
焦ったように話を始めた悠木さんの勢いに押されるように理央くんが頷くと、
「そうだな。みんな揃ったし、食事にしよう」
とエヴァンさんが少し大きな声をかけ、近くにいたパピーにも声をかけた。
少しやりとりをした後で
「じゃあ、ダイニングルームに用意ができているから行こう」
と言って、僕を軽々と抱き上げた。
歩けるから大丈夫と言おうとしたけれど、まだほっぺたの赤い空良くんが抱っこされたままだから、僕も一緒に抱っこされてた方がいいかなと思った。
だって、一人だけ抱っこだとちょっと恥ずかしいかなって思ったんだ。
「ねぇ、エヴァンさん」
「どうした?」
「空良くん、喉が掠れて痛そうだから、ショコラショーはやめておいた方がいいかな?」
「えっ、うーん。そうだな。まぁ、ユウキがついているから任せておけばいいだろう。ユウキはソラの主治医のようなものだろう」
「あっ、そっか。そうだよね」
専属のお医者さんがいるって、安心するよね。
悠木さんは特に空良くん以上に、空良くんのことをわかってくれてるんだもんね。
「そういえば、ユヅルは風邪の時に何か特別なものを飲んだり食べたりしていたのか?」
「僕はすぐに喉が腫れるので、少しでも喉がおかしいなって思ったら母さんが蜂蜜レモンを作ってくれました」
「蜂蜜レモン?」
「はい。蜂蜜にレモンを数滴垂らしてお湯で溶かしたものです。いつも蜂蜜を多めに入れてくれて……すっごく美味しかったんですよね」
「そうか……。じゃあ、ユヅルの喉の調子が悪い時はそれを作るようにしよう」
「わぁ、嬉しいっ。でも、エヴァンさんと暮らすようになってから体調悪くしたことないですよ。いつもエヴァンさんが気遣ってくれるからですね」
「ははっ。風邪とはいえ、ユヅルに辛い思いをさせるものは排除しないといけないからな」
冗談混じりにそう言ってくれるけれど、でも僕もエヴァンさんが体調を崩したりするのは見たくないもんね。
これからもずっと元気でいてほしいから、僕も元気でいないとね。
広いダイニングルームに入り、それぞれの席に着く。
ここの広いテーブルにつくときの僕とエヴァンさんの席はいつも決まっていて、長いテーブルの真ん中に二人で並んで座る。
僕の右側には観月さんと理央くん。
そして、エヴァンさんの左側には綾城さんと佳都さんが座り、向かいには悠木さんと空良くん。
そして周防さんと秀吾さんが座り、周りにセルジュさんたちとジョルジュさんたちが座った。
こんな大人数で食事をするのも今日で最後かと思ったら寂しくなるな。
みんなが着席すると、パピーがいい匂いをさせて焼きたてのクロワッサンを運んできてくれた。
「わぁー、いい匂い~!」
「本当、美味しそう!!」
理央くんも空良くんもすっかり焼きたてクロワッサンを気に入ってくれたみたい。
そしてショコラショーも美味しそうに湯気を立てながら目の前に置かれる。
理央くんは食い入るようにそれを見ると、嬉しそうに笑顔でパピーに
「めるしぃ、ぱぴー」
と言っていた。
目を細めてお礼を言うパピーも少し寂しそう。
だって、今日でしばらくお別れだもんね。
日本に行く時はパピーも一緒に行けたらいいけどな。
この大きなお屋敷のこともあるから難しいかな?
後でエヴァンさんに聞いてみようっと。
「ではいただこうか」
エヴァンさんの声に一斉に焼きたてのクロワッサンに手が伸びる。
でもそれはみんな旦那さまたちなのが面白い。
僕は見ているだけでエヴァンさんがお皿に乗せてちぎって口に運んでくれる。
「うーん、美味しいっ!」
「そうか、ジュールもたくさん準備していると言っていたからたくさん食べるといい」
「はーい」
ショコラショーも飲みたいなと思うだけですぐにエヴァンさんの手がカップを掴む。
心の声が聞こえてるのかなって思うくらい、いつでも僕のことをわかってくれる。
ああ、エヴァンさん。
大好きだなぁ。
僕は幸せに満ち足りた気分で、甘いショコラショーをコクっと飲んだ。
「ちゅー、ないと、おきれない……っ」
「仕方がないな」
困ったように笑いながら悠木さんはくるっと後ろを向くとしばらくしてこっちを振り向いた。
「ふふっ……うれしぃ」
にっこりした空良くんの目がこっちを向いた瞬間、
「えっ?」
と溢れそうなくらい大きく目を開ける。
「空良くん、おはよう」
理央くんが駆け寄っていくと、空良くんは真っ赤な顔で
「もしかして……いまの…?」
と問いかける。
もちろんみんな見てるけど、寝ぼけてたんだから仕方がないよね。
風邪も引いてるし。
「ふふっ。仲良しさんだね」
「りおくん……」
「風邪ひいてるから無理しちゃダメだよ」
「えっ? 風邪って、僕――」
「あ、いや。理央くん、ありがとう。待たせて悪かったね。あの朝食にしようか」
「えっ、あっ。はい」
焦ったように話を始めた悠木さんの勢いに押されるように理央くんが頷くと、
「そうだな。みんな揃ったし、食事にしよう」
とエヴァンさんが少し大きな声をかけ、近くにいたパピーにも声をかけた。
少しやりとりをした後で
「じゃあ、ダイニングルームに用意ができているから行こう」
と言って、僕を軽々と抱き上げた。
歩けるから大丈夫と言おうとしたけれど、まだほっぺたの赤い空良くんが抱っこされたままだから、僕も一緒に抱っこされてた方がいいかなと思った。
だって、一人だけ抱っこだとちょっと恥ずかしいかなって思ったんだ。
「ねぇ、エヴァンさん」
「どうした?」
「空良くん、喉が掠れて痛そうだから、ショコラショーはやめておいた方がいいかな?」
「えっ、うーん。そうだな。まぁ、ユウキがついているから任せておけばいいだろう。ユウキはソラの主治医のようなものだろう」
「あっ、そっか。そうだよね」
専属のお医者さんがいるって、安心するよね。
悠木さんは特に空良くん以上に、空良くんのことをわかってくれてるんだもんね。
「そういえば、ユヅルは風邪の時に何か特別なものを飲んだり食べたりしていたのか?」
「僕はすぐに喉が腫れるので、少しでも喉がおかしいなって思ったら母さんが蜂蜜レモンを作ってくれました」
「蜂蜜レモン?」
「はい。蜂蜜にレモンを数滴垂らしてお湯で溶かしたものです。いつも蜂蜜を多めに入れてくれて……すっごく美味しかったんですよね」
「そうか……。じゃあ、ユヅルの喉の調子が悪い時はそれを作るようにしよう」
「わぁ、嬉しいっ。でも、エヴァンさんと暮らすようになってから体調悪くしたことないですよ。いつもエヴァンさんが気遣ってくれるからですね」
「ははっ。風邪とはいえ、ユヅルに辛い思いをさせるものは排除しないといけないからな」
冗談混じりにそう言ってくれるけれど、でも僕もエヴァンさんが体調を崩したりするのは見たくないもんね。
これからもずっと元気でいてほしいから、僕も元気でいないとね。
広いダイニングルームに入り、それぞれの席に着く。
ここの広いテーブルにつくときの僕とエヴァンさんの席はいつも決まっていて、長いテーブルの真ん中に二人で並んで座る。
僕の右側には観月さんと理央くん。
そして、エヴァンさんの左側には綾城さんと佳都さんが座り、向かいには悠木さんと空良くん。
そして周防さんと秀吾さんが座り、周りにセルジュさんたちとジョルジュさんたちが座った。
こんな大人数で食事をするのも今日で最後かと思ったら寂しくなるな。
みんなが着席すると、パピーがいい匂いをさせて焼きたてのクロワッサンを運んできてくれた。
「わぁー、いい匂い~!」
「本当、美味しそう!!」
理央くんも空良くんもすっかり焼きたてクロワッサンを気に入ってくれたみたい。
そしてショコラショーも美味しそうに湯気を立てながら目の前に置かれる。
理央くんは食い入るようにそれを見ると、嬉しそうに笑顔でパピーに
「めるしぃ、ぱぴー」
と言っていた。
目を細めてお礼を言うパピーも少し寂しそう。
だって、今日でしばらくお別れだもんね。
日本に行く時はパピーも一緒に行けたらいいけどな。
この大きなお屋敷のこともあるから難しいかな?
後でエヴァンさんに聞いてみようっと。
「ではいただこうか」
エヴァンさんの声に一斉に焼きたてのクロワッサンに手が伸びる。
でもそれはみんな旦那さまたちなのが面白い。
僕は見ているだけでエヴァンさんがお皿に乗せてちぎって口に運んでくれる。
「うーん、美味しいっ!」
「そうか、ジュールもたくさん準備していると言っていたからたくさん食べるといい」
「はーい」
ショコラショーも飲みたいなと思うだけですぐにエヴァンさんの手がカップを掴む。
心の声が聞こえてるのかなって思うくらい、いつでも僕のことをわかってくれる。
ああ、エヴァンさん。
大好きだなぁ。
僕は幸せに満ち足りた気分で、甘いショコラショーをコクっと飲んだ。
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