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思いがけない話
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新年おめでとうございます!
年末年始休暇をいただいておりましたが、今日から再開となります。
完結までしっかり進めていきたいと思っていますので、今年もどうぞよろしくお願いします!
* * *
<side一花>
お父さんと約束ができるなんて……今までの僕の人生を考えてみたら信じられないことだ。
でもからめた小指の温もりが、それが現実だと教えてくれる。
「近いうちに必ず行こう。麻友子も喜ぶよ」
「はい。僕、それまでリハビリ頑張りますね!!」
本当は歩いてお母さんのところに行けたら嬉しいけど、そこまで待ったらいつになるか……。
でも、お母さんに少しでも頑張っていることを報告したい!
「ああ、でも無理はしないようにな。予定が決まったら一花に連絡を入れるから楽しみに待っていてくれ」
「はい!」
お父さんから連絡がくる。
そう思うだけで僕の心は嬉しくてたまらなかった。
お父さんが帰った後、僕はもうウキウキが止まらなくてスマホをずっと手に持っていると、
「一花、スマホちょっと借りてもいいか?」
と征哉さんに言われた。
「はい。どうぞ」
「ちょっと一花に試してほしいアプリがあるから、それを入れたら返すよ」
「はい。わかりました」
そう言いつつも、どんなものかはよくわからなかったけれど征哉さんがしてくれることはいいことばかりだから楽しみにしていよう。
征哉さんはしばらくスマホを操作すると、僕の隣にピッタリと寄り添うように座ってくれて、スマホの画面を見せてくれた。
「一花、これなんだが……」
「これ……『恋する子猫の狼さん』?」
征哉さんがその画面を押すと、可愛い子猫ちゃんが現れて、
<今からお買い物を始めるよ>
と僕に話しかけてくれる。
みているだけでとっても楽しいけど何が始まるのか全くわからない。
「これ、一体どういうものなんですか?」
「買い物補助アプリというものなんだが、まだこのアプリは試作品なんだ」
「試作品?」
「ああ。一花は、先日浅香さんがグリを連れてきた時に一緒に来ていた男性を覚えているか?」
「一緒に……はい。グリの飼育員さん、ですか?」
「ははっ。違うよ。あの人は、一花の服を作ってくれているデザイナーさんなんだ」
「えっ、デザイナーさん? 浅香さんの隣で心配そうに見守っていた気がしたからてっきり飼育員さんかと思ってました……ごめんなさい」
「いや、気にすることはない。あの時はそういえば自己紹介はされていなかったからな。蓮見さんと仰るんだが、気軽にお店に買い物に行けない人のためにこの買い物補助アプリというものを開発されてね、一花にこれを使ってもらって感想を聞きたいと仰ってるんだ」
「えっ? 僕が……?」
思いもかけない話に僕は驚くしかなかった。
年末年始休暇をいただいておりましたが、今日から再開となります。
完結までしっかり進めていきたいと思っていますので、今年もどうぞよろしくお願いします!
* * *
<side一花>
お父さんと約束ができるなんて……今までの僕の人生を考えてみたら信じられないことだ。
でもからめた小指の温もりが、それが現実だと教えてくれる。
「近いうちに必ず行こう。麻友子も喜ぶよ」
「はい。僕、それまでリハビリ頑張りますね!!」
本当は歩いてお母さんのところに行けたら嬉しいけど、そこまで待ったらいつになるか……。
でも、お母さんに少しでも頑張っていることを報告したい!
「ああ、でも無理はしないようにな。予定が決まったら一花に連絡を入れるから楽しみに待っていてくれ」
「はい!」
お父さんから連絡がくる。
そう思うだけで僕の心は嬉しくてたまらなかった。
お父さんが帰った後、僕はもうウキウキが止まらなくてスマホをずっと手に持っていると、
「一花、スマホちょっと借りてもいいか?」
と征哉さんに言われた。
「はい。どうぞ」
「ちょっと一花に試してほしいアプリがあるから、それを入れたら返すよ」
「はい。わかりました」
そう言いつつも、どんなものかはよくわからなかったけれど征哉さんがしてくれることはいいことばかりだから楽しみにしていよう。
征哉さんはしばらくスマホを操作すると、僕の隣にピッタリと寄り添うように座ってくれて、スマホの画面を見せてくれた。
「一花、これなんだが……」
「これ……『恋する子猫の狼さん』?」
征哉さんがその画面を押すと、可愛い子猫ちゃんが現れて、
<今からお買い物を始めるよ>
と僕に話しかけてくれる。
みているだけでとっても楽しいけど何が始まるのか全くわからない。
「これ、一体どういうものなんですか?」
「買い物補助アプリというものなんだが、まだこのアプリは試作品なんだ」
「試作品?」
「ああ。一花は、先日浅香さんがグリを連れてきた時に一緒に来ていた男性を覚えているか?」
「一緒に……はい。グリの飼育員さん、ですか?」
「ははっ。違うよ。あの人は、一花の服を作ってくれているデザイナーさんなんだ」
「えっ、デザイナーさん? 浅香さんの隣で心配そうに見守っていた気がしたからてっきり飼育員さんかと思ってました……ごめんなさい」
「いや、気にすることはない。あの時はそういえば自己紹介はされていなかったからな。蓮見さんと仰るんだが、気軽にお店に買い物に行けない人のためにこの買い物補助アプリというものを開発されてね、一花にこれを使ってもらって感想を聞きたいと仰ってるんだ」
「えっ? 僕が……?」
思いもかけない話に僕は驚くしかなかった。
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