墜落レッド ~戦隊レッドは魔王さまに愛でられる~

るなかふぇ

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第四章 勇者の村

2 使者

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 知らせに来た男が言うには、魔王からの《連絡》を持ってきたのは人間の少年だということだった。

「人間ですって? どういうことなのっ?」
「私にもわかりません。とにかく一緒にいらしてください」

 足の遅い古老たちはあっというまに後方へ引き離されてしまい、気がつけば岩だらけの地下道を走っているのは案内の男と《レンジャー》の四名のみになっていた。
 地下道にはあちこちに灯火がともされてはいるが、とにかく暗い。そのうえ、くねくねと曲がりくねった複雑な迷路になっている。もちろんそれは外敵の侵入を防ぐためだった。
 子どものころは、「けっして勝手に入るな」と親から厳しく言われたものだ。道を知らないものがうっかり足を踏み入れてしまえば、命の危険さえある。冗談ごとではすまない。
 とはいえサクヤたちにとって、ここは今では自分の庭のようなもの。すいすいとよどみなく足を運び、ほとんど駆け上がるようにして坂を上っていく。

 やがて前方から太陽光が漏れてくるのが感じられはじめた。
 洞窟の入口には、よそ者にはそれとわからないように雑木林が生い茂るままになっている。それをかき分けて外へ出ると、暗さに慣れた目が一瞬だけまぶしさを感じ、虹彩が引き絞られる。

 そこから少し下った所にある小さな開けた草地に、その者はいた。
 村人とは明らかに違う装束姿。質はいいようだが、きらびやかとまでは言えない。風変りだが素朴な服装の少年である。
 彼を見て、レンジャーの一同はぽかんと口をあけた。

(まさか……。本当に人間?)

 そう。それはどこからどう見ても人間の少年だった。
 癖のある黒髪で、肌はきめのこまかい茶色。大きな目がキョトキョトしているのは、相当緊張しているからだろう。見たところ、村にいるほかの少年と大差ないようだ。
 だがそれでも、サクヤは用心を怠らなかった。キツくなりすぎないよう注意しながらも、相手を睨んだまま問う。

「あんたはだれ? 魔王の使いっていうのは本当?」
「あ……はい」

 少年は青ざめて震えながらも、こくんとうなずく。彼の両手には、直径二十センチほどのうす青く光る玉が大事そうに捧げられている。

「れ、レンジャーと、古老たちが集まってから話をせよと……魔王さまから命令されています」

 サクヤの片眉がぴくっとあがった。

(魔王……「さま」?)

「なんで人間が魔王の手下になってんの? あんたは裏切り者ってこと?」
「ちがいますっ。て、手下じゃないし。ぼくらは魔王さまに……人間の村で、保護されてて」
「人間の村? 保護って??」

 いきなり、びっくりするような珍情報だ。
 古老たちがえっちらおっちら、息を切らしながら穴から出てくるのを待ちきれず、サクヤはそれまでに少年から粗方あらかたのことは聞き出していた。

 要するに、あちらには人間の保護区域があるらしい。そこにはすでに結構な数の人間がいて、魔王に護られ、平和に暮らしているのだという。
 村人を構成する人間たちも、別にさらってきたというのではなく、魔素のために死にかかっていたのを発見して救い出した者やら、たまに「突然変異」とやらで先祖返りして人間として生まれてきてしまった赤子を保護した者やら……とにかく、そうした諸々の結果として、今その人間専用の保護区が存在しているのだと。

(そんな……信じられない)

 とにかく、聞けば聞くほど驚く話の連続だった。
 あの魔王が、裏でそんなことをやっていたなんて。まったく予想の外である。
 もうひとつ、魔族たちが過去の人間から《進化》してきた存在だ……というのにもかなり驚いた。

 ともあれ、ゼーハー言いまくっていた老人たちが落ち着いてきたところで、ようやく少年は当初の用件に入った。

「こちらの玉で、魔王さまと直接お話ができるそうです。その前に、そちら側で話をする代表の人を決めてください」
 いかにも少年らしい、高くて澄んだ声だ。
「では私が話をいたそう」
 進み出たのは、この村で最も年老い、権威も高い古老だった。
 少年はひとつうなずくと、手元の玉に何事かをそっと囁いたように見えた。

「えっ……?」
「おお? あれは」

 一同がどよめく。
 無理もない。目をあげたすぐ上の、何もなかった空間に、少しだけ緑に光る四角い板状のものが出現したのだ。
 さらに──

「おおおっ?」
「ま、魔王……!」

 板の中に、見覚えのある妙に凄みのある美形の男の顔が浮かび上がった。
 見るたびに肌や瞳、髪色の違う男だが、今日は赤い瞳に黄金色の髪、紺色の肌をチョイスいしてるようだ。
 大映しになっていた魔王の顔が少しずつ小さくなるにつれて男の上半身が見えるようになりだした。

「な……っ?」

 一同はふたたび驚愕した。

「リョ、リョウマ……?」

 そうなのだ。
 魔王が着ているのと同じ、ゆったりとした袖のある前開きの着物を着たリョウマが、なぜか魔王の膝の上に横抱きにして座らされていたのである。
 魔王は黒い衣だが、彼のものは赤い。どちらも金糸で品のいい刺繍をほどこされた品のようだった。
 余裕の表情で笑みを浮かべている魔王とは対照的に、リョウマは心なしかふくれっ面である。先ほどからじとーっと、魔王の顔を半眼でにらみつけているようだ。

 と、驚愕している一同の耳に、不意に穏やかな低い声が届いた。

 《やあ、勇者の村の諸君。こうして挨拶をするのは久しいな。どうやら懐かしい顔も見えるようだが、みな息災にしておったか》
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