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もしものふたり
一緒にいられるだけで
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昼休憩、圭吾は悶々とどこへ行くか考えていた。
誘ったはいいものの、肝心な場所を決めていない。
ドライブデートもいいな、と考えはしたが、流石に大人の男と二人きりは怖いだろう。
というわけで、どこへ行こうか決まらないまま、
金曜日を迎えた。
土曜日には場所をメールで送ると伝えたので、
このままではいけない。
あいつに聞くのはなんだか悔しいが、これまで仕事一筋でデートプランを考えたことなどないので仕方がない。
「おい、宇野」
弥生を呼び出すことに成功し、外のベンチに座る。
ここは風当たりもよく、ゆっくり話すのにちょうどいい。
とはいえ昼休憩も残り少ないので、単刀直入に聞くことにした。
「なぁんだそんなことぉ?」
ニヤニヤして、なんだか口調も間延びしてて気持ちが悪い。
「なりふり構ってる場合じゃないんだ。
もちろん今度なにか奢る」
圭吾の真剣さにふざける気がなくなったようで、
弥生はいくつか提案をした後、こう言った。
「ま、そういうのって結局あの子に直接聞いた方がいいんじゃねーの?
お前がやけに慣れてたら、それはそれで嫌だろ」
そういうものか?と圭吾は思った。
今までの自分は全てにおいて用意周到で、何事も完璧でなければいけないと思っていた。
それに、好きな子の前ではかっこよく、頼れる大人でありたい。
「いいから聞いてみろよ、どこか行きたい場所はあるかって。
貴重な休みを貰うんだから楽しんでもらわなきゃ分が悪いだろ?」
ニヤニヤされていじられたのは悔しいが、
「宇野、お前に相談して正解だった。流石だな」
「うん。じゃ、お礼は焼肉ね」
「お前はどこまでも謙遜と遠慮を知らないな」
その夜、早速圭吾は零に電話をした。
10時くらいなら出られると前々から聞いていたので、10時ぴったりにかける。
3コールくらいで出た零の声は、機械を通して圭吾の耳に届いた。
「もしもし、花嶺さん?」
「立花くん、突然電話しちゃってごめんね。
今大丈夫?」
皿洗いでもしていたのか、零の方から水を止める音が聞こえた。
「大丈夫ですよ、どうしましたか?」
忙しかったかもしれないのに、優しいな。
圭吾はそんなことを考えながら、早速本題に入る。
「日曜日、どこか行きたいところはある?」
うーん、としばらく考えた後、零は二つほど提案をしてくれた。
「そういえば、好きな小説の三巻が出るので、それを買いに本屋さんへ行きたいです。
あとは、この前お皿を割っちゃったのでそれを…」
なかなかいい提案だね、と圭吾。
「じゃあ日曜日はゆっくり買い物しようか」
「ありがとうございます、花嶺さんもどこか行きたい場所はありますか?」
圭吾もうーんとしばらく考えたが、
「特に行きたい場所とか、買わなきゃいけないものはないかな。
とにかく立花くんを誘いたいって気持ちばかり先走っちゃって…笑」
こんなんで格好がつかないが、零はその気持ちも受け止めてくれた。
「僕も、花嶺さんとならどこでも楽しいと思います。
一緒にいられたらそれで…」
電話越しに、ドキドキと高鳴る心臓の音が聞こえてしまわないだろうか。
お互いに、沈黙してしまう。
こんなことを言って貰えるとは思っていなくて、
うれしいとかたのしいとか、とにかく全ての感情が忙しなく飛び跳ねていた。
「あ、じゃあ、日曜日、また、駅で!
おやすみなさい!」
沈黙に堪えきれなくなったのか、零はそう言うとすぐに電話を切ってしまった。
________________
さて、無難にショッピングですね。
夫婦世界線の二人もぶらぶらとショッピングをするのが好きです。
誘ったはいいものの、肝心な場所を決めていない。
ドライブデートもいいな、と考えはしたが、流石に大人の男と二人きりは怖いだろう。
というわけで、どこへ行こうか決まらないまま、
金曜日を迎えた。
土曜日には場所をメールで送ると伝えたので、
このままではいけない。
あいつに聞くのはなんだか悔しいが、これまで仕事一筋でデートプランを考えたことなどないので仕方がない。
「おい、宇野」
弥生を呼び出すことに成功し、外のベンチに座る。
ここは風当たりもよく、ゆっくり話すのにちょうどいい。
とはいえ昼休憩も残り少ないので、単刀直入に聞くことにした。
「なぁんだそんなことぉ?」
ニヤニヤして、なんだか口調も間延びしてて気持ちが悪い。
「なりふり構ってる場合じゃないんだ。
もちろん今度なにか奢る」
圭吾の真剣さにふざける気がなくなったようで、
弥生はいくつか提案をした後、こう言った。
「ま、そういうのって結局あの子に直接聞いた方がいいんじゃねーの?
お前がやけに慣れてたら、それはそれで嫌だろ」
そういうものか?と圭吾は思った。
今までの自分は全てにおいて用意周到で、何事も完璧でなければいけないと思っていた。
それに、好きな子の前ではかっこよく、頼れる大人でありたい。
「いいから聞いてみろよ、どこか行きたい場所はあるかって。
貴重な休みを貰うんだから楽しんでもらわなきゃ分が悪いだろ?」
ニヤニヤされていじられたのは悔しいが、
「宇野、お前に相談して正解だった。流石だな」
「うん。じゃ、お礼は焼肉ね」
「お前はどこまでも謙遜と遠慮を知らないな」
その夜、早速圭吾は零に電話をした。
10時くらいなら出られると前々から聞いていたので、10時ぴったりにかける。
3コールくらいで出た零の声は、機械を通して圭吾の耳に届いた。
「もしもし、花嶺さん?」
「立花くん、突然電話しちゃってごめんね。
今大丈夫?」
皿洗いでもしていたのか、零の方から水を止める音が聞こえた。
「大丈夫ですよ、どうしましたか?」
忙しかったかもしれないのに、優しいな。
圭吾はそんなことを考えながら、早速本題に入る。
「日曜日、どこか行きたいところはある?」
うーん、としばらく考えた後、零は二つほど提案をしてくれた。
「そういえば、好きな小説の三巻が出るので、それを買いに本屋さんへ行きたいです。
あとは、この前お皿を割っちゃったのでそれを…」
なかなかいい提案だね、と圭吾。
「じゃあ日曜日はゆっくり買い物しようか」
「ありがとうございます、花嶺さんもどこか行きたい場所はありますか?」
圭吾もうーんとしばらく考えたが、
「特に行きたい場所とか、買わなきゃいけないものはないかな。
とにかく立花くんを誘いたいって気持ちばかり先走っちゃって…笑」
こんなんで格好がつかないが、零はその気持ちも受け止めてくれた。
「僕も、花嶺さんとならどこでも楽しいと思います。
一緒にいられたらそれで…」
電話越しに、ドキドキと高鳴る心臓の音が聞こえてしまわないだろうか。
お互いに、沈黙してしまう。
こんなことを言って貰えるとは思っていなくて、
うれしいとかたのしいとか、とにかく全ての感情が忙しなく飛び跳ねていた。
「あ、じゃあ、日曜日、また、駅で!
おやすみなさい!」
沈黙に堪えきれなくなったのか、零はそう言うとすぐに電話を切ってしまった。
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さて、無難にショッピングですね。
夫婦世界線の二人もぶらぶらとショッピングをするのが好きです。
応援ありがとうございます!
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