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26.共犯者は終わり
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しおりを挟む中一のときに使っていた教室まで二人で歩いていく。エントランスには少しは人がいたけれど、この辺りは全く文化祭に使われていないようで、廊下には誰もいなかった。
「でも、なんだか不思議だな。あの時は柚希と仲良くなると思わなかった」
廊下を懐かしそうに見回しながら咲良は言う。
「私も!協力的じゃない上に、違うクラスの可愛い女の子とはペラペラしゃべるから、かなり印象悪かったわ」
「元気に言わないでよ」
私が正直に当時の心境を述べると、咲良は不満そうにこっちを見た。
「でもね、その後見直したんだよ。
ほら、私、いつだかポーチ盗んだんじゃないかって疑われたことあったでしょ?あのとき、咲良が冷静に根拠がないじゃんとか、私がそう言うんならやってないんでしょとか言ってくれて、意外といい奴だなって思ったの」
「思ったまま言っただけなんだけど」
「わかってるよ。それが余計に嬉しかったの。本当に疑ってないんだなってわかって」
咲良はそっか、と言う。
「それで急に話しかけてくるようになったんだ」
「うん。咲良、最初迷惑そうにしてたね。心開かせるの大変だったなぁ」
「だって、柚希押しが強いんだもん。目が合うと寄って来るわ、やたらあの蜂蜜の飴くれるわ……」
咲良は呆れたように言う。でも、その顔は楽し気だった。
「あの飴はね、私のお守りなの。長野から持ってきて、寂しい時や悲しい時に舐めてたんだ。だから咲良が元気なさそうな時にあげてたんだけど……」
「え?結構元気なときにももらってたような気がするんだけど」
「え?……元気に見えないのよ、咲良。元気ならもっと元気そうにしててよ」
「横暴だな……。それに今は気を付けてると思うんだけど」
咲良は柚希って僕の印象、中学で止まってるとこあるよね?と文句を言う。
「ごめんごめん」
確かにそうなんだけど、どうしても咲良を思い浮かべると、出会ったときの不愛想な咲良が浮かんできてしまう。
そんなことを話しているうちに教室に着いた。
「うわー、懐かしい!高校とはやっぱりちょっと違うよねー」
同じ学校だから造りは似ているけれど、高校の教室とは机のデザインもロッカーの形も違う。懐かしくなってペタペタと教室のものに触った。
「この景色も懐かしいな。こっちの校舎からだと見晴らしがいいよね」
窓に近づいて、外を眺める。高校の校舎からだと、近くのビルに隠れて遠くは見えないけれど、ここからだと側にある公園や駅の方までよく見える。
「本当に」
咲良はそう言って外を見た後、窓枠に腰かけた。そうして目を細めて言う。
「柚希はいつも元気だよね。柚希が隣で楽しそうにしてると、こっちまで嬉しくなるよ」
穏やかな声で言われて、戸惑ってしまった。
「何、急に」
「思ったことを言っただけ」
咲良はあっさりと言う。まじめに返すべきか迷っているうちに、咲良は言葉を続けた。
「……柚希、この前このはさんの家に行ったとき、どうして謝りに行こうと思ったのか聞いてきたじゃん」
「うん」
あの時の咲良は、何か言おうとして、だけど答えてくれなかった。
「……僕も柚希みたいになりたかったんだ」
遠くを見つめながら咲良は言った。
「私みたいに?」
「うん。柚希は僕と違って真っ直ぐ生きてるから。ずっと眩しかった」
話が飲み込めないでいる私に、咲良はたんたんと話す。
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