1,610 / 1,906
妖魔山編
1593.厄介な目
しおりを挟む
「まぁその『転置宝玉』をお主がどうやって入手をしたのかは今は置いて話を戻すが、あの小僧に『転置宝玉』を渡すという事は、あの少年はこの『ノックス』の世界の住人ではないという事か?」
コウエン程の『妖魔召士』組織の幹部であるならば、この『転置宝玉』の詳細を知っている事も当然である。
全てをコウエンに包み隠さずに話そうと決めたイダラマは、静かに首を縦に振るのだった。
「コウエン殿の仰る通り、あの麒麟児は別世界からこの世界にきたらしいのです。それも本人が望んでこの世界にきたというワケではなく、麒麟児の元の居た世界で、麒麟児側の組織と抗争中であった相手の一味の『魔法』とやらでこの世界に跳ばされてきてしまったようなのです」
イダラマの荒唐無稽な話にコウエンは苦笑いを浮かべる。どうやら思っていた以上に、コウエンには納得し辛い話だったようである。
「それでは何か? あの小僧達の居る世界では『転置宝玉』を用いずとも『魔法』とやらで自在に別世界に跳ばす事が可能という事なのか?」
「そうらしいですな。私達の世界では『魔力』とは『捉術』を扱うためにありますが、麒麟児たちの世界では『魔法』というモノに用いるらしく、それも『魔法』とは『精霊』という種族が『理』を生み出した事で、その『理』を理解する事で『魔力』が僅かでも持っていれば、誰でも『魔法』を会得する事が出来て、その『魔法』を使っていく事で『魔力』を誰でも高める事が可能なのだそうです」
今度こそイダラマの言葉に、目を丸くして驚くコウエンであった。
「だ、誰でも『魔力』を高められるだと……?」
この世界には『理』を生み出す『精霊族』の存在などは居ないため、生まれた時に『魔力値』が少ない者はもう『魔力』を高める事など不可能とされている。
しかしイダラマの話では『エヴィ』という少年の元居た世界では、誰でもが『理』という代物を理解さえすれば、持っている『魔力』を高める事が可能だという。
こんな話を聞かされて驚くなという方が難しかった。
「まぁ、しかし肝心なのはここからなのですが、彼には仕える主というものが居るらしく、その主のために元の世界へ戻らなければならないと、何度も我々は彼に聞かされているのですよ」
「ふむ……」
この時、コウエンにとってはもうイダラマの話や『エヴィ』という少年の事よりも、先程の話にあった『魔力』を高める『理』のある世界の方に意識が向いているのだった。
しかしこの後のイダラマの言葉に、再びコウエンの関心は『サカダイ』の町で発していた『魔力』の持ち主に戻るのであった。
「それで彼が自慢気に話すその主とやらの特徴を、耳にタコが出来る程に聞かされた私なのですが、どうやら『サカダイ』の町から感じた『魔力』の持ち主が、この麒麟児の主なのではないかと私は考えているのです」
コウエンはその言葉に意識をイダラマに向け直すと、神妙な顔つきとなる。
「確かにあの小僧の面妖な『術』は、この世界で見た事も聞いたこともない技法の類だった。そして『サカダイ』の町に現れた膨大な『魔力』を発した者もこの世界の『妖魔召士』とは思えぬ『魔』の使い方であった。その事を踏まえてお主の言葉を省みるに、確かにそうだと言われれば納得も出来る話ではあるが、だが、それならば何故小僧と同じ世界にその主とやらが居て、小僧はその事に気づいておら……。あ、ああ、そういうわけか」
コウエンは一つの疑問を抱いたが、その理由を明確に理解する。
『妖魔山』に入る前からイダラマは、身を隠すだけにしてはあまりに過剰すぎるその『結界』にまわす『魔力』の使い方に、コウエンは常々不思議に思っていた。
だが、それがイダラマ達が『妖魔退魔師』達から逃れるためにやっているのではなく、逆に外の情報を内に居る『エヴィ』という少年に知らせぬように『結界』を施していたというのであれば、過剰すぎる理由もその正体もよく分かるというものである。
「だが、まだ『サカダイ』の町に居る者が、その小僧の主と決まったわけではないのだろう? 少しばかり執着しすぎなのではないのか? これだけの規模の『結界』を常に使い続けているのであれば、流石のお主であってもいずれは枯渇しかねぬというのに……」
「いえ、コウエン殿。万が一があっては困るのですよ。私のここまで必死に保ってきた計画が瓦解する事に比べれば、私が『結界』を用いるのに使っている魔力の消費など、あってないようなものだ」
そう告げるイダラマの目は、再びあの『コウヒョウ』の町で見せたような、何が何でも自分の目的を成し遂げてやるという真剣な目をしているのであった。
「左様か……。あいわかった」
そんな厄介な目をしているイダラマに、もうコウエンは真っ向から逆らうつもりはないようで、強引に話を打ち切るように溜息を吐くのであった。
コウエン程の『妖魔召士』組織の幹部であるならば、この『転置宝玉』の詳細を知っている事も当然である。
全てをコウエンに包み隠さずに話そうと決めたイダラマは、静かに首を縦に振るのだった。
「コウエン殿の仰る通り、あの麒麟児は別世界からこの世界にきたらしいのです。それも本人が望んでこの世界にきたというワケではなく、麒麟児の元の居た世界で、麒麟児側の組織と抗争中であった相手の一味の『魔法』とやらでこの世界に跳ばされてきてしまったようなのです」
イダラマの荒唐無稽な話にコウエンは苦笑いを浮かべる。どうやら思っていた以上に、コウエンには納得し辛い話だったようである。
「それでは何か? あの小僧達の居る世界では『転置宝玉』を用いずとも『魔法』とやらで自在に別世界に跳ばす事が可能という事なのか?」
「そうらしいですな。私達の世界では『魔力』とは『捉術』を扱うためにありますが、麒麟児たちの世界では『魔法』というモノに用いるらしく、それも『魔法』とは『精霊』という種族が『理』を生み出した事で、その『理』を理解する事で『魔力』が僅かでも持っていれば、誰でも『魔法』を会得する事が出来て、その『魔法』を使っていく事で『魔力』を誰でも高める事が可能なのだそうです」
今度こそイダラマの言葉に、目を丸くして驚くコウエンであった。
「だ、誰でも『魔力』を高められるだと……?」
この世界には『理』を生み出す『精霊族』の存在などは居ないため、生まれた時に『魔力値』が少ない者はもう『魔力』を高める事など不可能とされている。
しかしイダラマの話では『エヴィ』という少年の元居た世界では、誰でもが『理』という代物を理解さえすれば、持っている『魔力』を高める事が可能だという。
こんな話を聞かされて驚くなという方が難しかった。
「まぁ、しかし肝心なのはここからなのですが、彼には仕える主というものが居るらしく、その主のために元の世界へ戻らなければならないと、何度も我々は彼に聞かされているのですよ」
「ふむ……」
この時、コウエンにとってはもうイダラマの話や『エヴィ』という少年の事よりも、先程の話にあった『魔力』を高める『理』のある世界の方に意識が向いているのだった。
しかしこの後のイダラマの言葉に、再びコウエンの関心は『サカダイ』の町で発していた『魔力』の持ち主に戻るのであった。
「それで彼が自慢気に話すその主とやらの特徴を、耳にタコが出来る程に聞かされた私なのですが、どうやら『サカダイ』の町から感じた『魔力』の持ち主が、この麒麟児の主なのではないかと私は考えているのです」
コウエンはその言葉に意識をイダラマに向け直すと、神妙な顔つきとなる。
「確かにあの小僧の面妖な『術』は、この世界で見た事も聞いたこともない技法の類だった。そして『サカダイ』の町に現れた膨大な『魔力』を発した者もこの世界の『妖魔召士』とは思えぬ『魔』の使い方であった。その事を踏まえてお主の言葉を省みるに、確かにそうだと言われれば納得も出来る話ではあるが、だが、それならば何故小僧と同じ世界にその主とやらが居て、小僧はその事に気づいておら……。あ、ああ、そういうわけか」
コウエンは一つの疑問を抱いたが、その理由を明確に理解する。
『妖魔山』に入る前からイダラマは、身を隠すだけにしてはあまりに過剰すぎるその『結界』にまわす『魔力』の使い方に、コウエンは常々不思議に思っていた。
だが、それがイダラマ達が『妖魔退魔師』達から逃れるためにやっているのではなく、逆に外の情報を内に居る『エヴィ』という少年に知らせぬように『結界』を施していたというのであれば、過剰すぎる理由もその正体もよく分かるというものである。
「だが、まだ『サカダイ』の町に居る者が、その小僧の主と決まったわけではないのだろう? 少しばかり執着しすぎなのではないのか? これだけの規模の『結界』を常に使い続けているのであれば、流石のお主であってもいずれは枯渇しかねぬというのに……」
「いえ、コウエン殿。万が一があっては困るのですよ。私のここまで必死に保ってきた計画が瓦解する事に比べれば、私が『結界』を用いるのに使っている魔力の消費など、あってないようなものだ」
そう告げるイダラマの目は、再びあの『コウヒョウ』の町で見せたような、何が何でも自分の目的を成し遂げてやるという真剣な目をしているのであった。
「左様か……。あいわかった」
そんな厄介な目をしているイダラマに、もうコウエンは真っ向から逆らうつもりはないようで、強引に話を打ち切るように溜息を吐くのであった。
0
お気に入りに追加
421
あなたにおすすめの小説
勇者召喚に巻き込まれ、異世界転移・貰えたスキルも鑑定だけ・・・・だけど、何かあるはず!
よっしぃ
ファンタジー
9月11日、12日、ファンタジー部門2位達成中です!
僕はもうすぐ25歳になる常山 順平 24歳。
つねやま じゅんぺいと読む。
何処にでもいる普通のサラリーマン。
仕事帰りの電車で、吊革に捕まりうつらうつらしていると・・・・
突然気分が悪くなり、倒れそうになる。
周りを見ると、周りの人々もどんどん倒れている。明らかな異常事態。
何が起こったか分からないまま、気を失う。
気が付けば電車ではなく、どこかの建物。
周りにも人が倒れている。
僕と同じようなリーマンから、数人の女子高生や男子学生、仕事帰りの若い女性や、定年近いおっさんとか。
気が付けば誰かがしゃべってる。
どうやらよくある勇者召喚とやらが行われ、たまたま僕は異世界転移に巻き込まれたようだ。
そして・・・・帰るには、魔王を倒してもらう必要がある・・・・と。
想定外の人数がやって来たらしく、渡すギフト・・・・スキルらしいけど、それも数が限られていて、勇者として召喚した人以外、つまり巻き込まれて転移したその他大勢は、1人1つのギフト?スキルを。あとは支度金と装備一式を渡されるらしい。
どうしても無理な人は、戻ってきたら面倒を見ると。
一方的だが、日本に戻るには、勇者が魔王を倒すしかなく、それを待つのもよし、自ら勇者に協力するもよし・・・・
ですが、ここで問題が。
スキルやギフトにはそれぞれランク、格、強さがバラバラで・・・・
より良いスキルは早い者勝ち。
我も我もと群がる人々。
そんな中突き飛ばされて倒れる1人の女性が。
僕はその女性を助け・・・同じように突き飛ばされ、またもや気を失う。
気が付けば2人だけになっていて・・・・
スキルも2つしか残っていない。
一つは鑑定。
もう一つは家事全般。
両方とも微妙だ・・・・
彼女の名は才村 友郁
さいむら ゆか。 23歳。
今年社会人になりたて。
取り残された2人が、すったもんだで生き残り、最終的には成り上がるお話。
異世界転移しましたが、面倒事に巻き込まれそうな予感しかしないので早めに逃げ出す事にします。
sou
ファンタジー
蕪木高等学校3年1組の生徒40名は突如眩い光に包まれた。
目が覚めた彼らは異世界転移し見知らぬ国、リスランダ王国へと転移していたのだ。
「勇者たちよ…この国を救ってくれ…えっ!一人いなくなった?どこに?」
これは、面倒事を予感した主人公がいち早く逃げ出し、平穏な暮らしを目指す物語。
なろう、カクヨムにも同作を投稿しています。
最弱賢者の転生者 ~四度目の人生で最強になりました~
木嶋隆太
ファンタジー
生まれ持った職業によって優劣が決まる世界で、ロワールは僧侶という下級職として生まれた。下級職だったため、あっさりと死んでしまったロワールだったが、彼は転生した。――最強と呼ばれる『賢者』として。転生した世界はロワールの時代よりも遥かに魔法のレベルが落ちた世界であり、『賢者』は最弱の職業として知られていた。見下され、バカにされるロワールだったが、彼は世界の常識を破壊するように大活躍し、成り上がっていく。※こちらの作品は、「カクヨム」、「小説家になろう」にも投稿しています。
せっかくのクラス転移だけども、俺はポテトチップスでも食べながらクラスメイトの冒険を見守りたいと思います
霖空
ファンタジー
クラス転移に巻き込まれてしまった主人公。
得た能力は悪くない……いや、むしろ、チートじみたものだった。
しかしながら、それ以上のデメリットもあり……。
傍観者にならざるをえない彼が傍観者するお話です。
基本的に、勇者や、影井くんを見守りつつ、ほのぼの?生活していきます。
が、そのうち、彼自身の物語も始まる予定です。
特殊部隊の俺が転生すると、目の前で絶世の美人母娘が犯されそうで助けたら、とんでもないヤンデレ貴族だった
なるとし
ファンタジー
鷹取晴翔(たかとりはると)は陸上自衛隊のとある特殊部隊に所属している。だが、ある日、訓練の途中、不慮の事故に遭い、異世界に転生することとなる。
特殊部隊で使っていた武器や防具などを召喚できる特殊能力を謎の存在から授かり、目を開けたら、絶世の美女とも呼ばれる母娘が男たちによって犯されそうになっていた。
武装状態の鷹取晴翔は、持ち前の優秀な身体能力と武器を使い、その母娘と敷地にいる使用人たちを救う。
だけど、その母と娘二人は、
とおおおおんでもないヤンデレだった……
第3回次世代ファンタジーカップに出すために一部を修正して投稿したものです。
おっさんの神器はハズレではない
兎屋亀吉
ファンタジー
今日も元気に満員電車で通勤途中のおっさんは、突然異世界から召喚されてしまう。一緒に召喚された大勢の人々と共に、女神様から一人3つの神器をいただけることになったおっさん。はたしておっさんは何を選ぶのか。おっさんの選んだ神器の能力とは。
異世界で魔法が使えるなんて幻想だった!〜街を追われたので馬車を改造して車中泊します!〜え、魔力持ってるじゃんて?違います、電力です!
あるちゃいる
ファンタジー
山菜を採りに山へ入ると運悪く猪に遭遇し、慌てて逃げると崖から落ちて意識を失った。
気が付いたら山だった場所は平坦な森で、落ちたはずの崖も無かった。
不思議に思ったが、理由はすぐに判明した。
どうやら農作業中の外国人に助けられたようだ。
その外国人は背中に背負子と鍬を背負っていたからきっと近所の農家の人なのだろう。意外と流暢な日本語を話す。が、言葉の意味はあまり理解してないらしく、『県道は何処か?』と聞いても首を傾げていた。
『道は何処にありますか?』と言ったら、漸く理解したのか案内してくれるというので着いていく。
が、行けども行けどもどんどん森は深くなり、不審に思い始めた頃に少し開けた場所に出た。
そこは農具でも置いてる場所なのかボロ小屋が数軒建っていて、外国人さんが大声で叫ぶと、人が十数人ゾロゾロと小屋から出てきて、俺の周りを囲む。
そして何故か縄で手足を縛られて大八車に転がされ……。
⚠️超絶不定期更新⚠️
貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。
黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。
この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる