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イダラマの同志編
1486.ソフィの幼少の頃の話
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『妖魔退魔師』組織の本部にある『牢』と、そのひとつ前の部屋に『魔力吸収の地』とそれを外から覆い隠す『魔神』の『結界』を施し終えたソフィ達は、倒れそうになっているヌーを休ませるために宛がわれていた部屋へと戻ってきていた。
ソフィは自分の回復を拒んだ以上は、周りの迷惑も考えてもらうと告げて、このまま『里』へ向かおうと考えていたのだが、今にも倒れそうなヌーを見たミスズは、そのソフィの言葉に待ったをかけて、別室に用意されていた布団をこの部屋にまで運んできてくれるのであった。
どうやらミスズは親身になってヌーの事を心配してくれたのだろう。
そしてその少しだけ柔らかくて質の良さそうな布団は、少し前に『スオウ』の指示でサシャが用意した布団であった。
「どうぞ、これをお使いください。そしてソフィ殿には申し訳ないのですが、後でまた総長の部屋までご足労願えますでしょうか? どうしても総長はソフィ殿と個人的に話がしたいそうなのですが……」
「む? 分かった。少しだけヌーの容態を見たらそちらへ向かわせてもらう」
「ありがとうございます。そして『結界』の件、本当に助かりました」
そう言って再びミスズはソフィに頭を下げるのであった。
「先程も言ったがこちらも色々と世話になっている身だからな。そのように気にしないでもらいたいのだが……」
「いえ、感謝を伝えたいのは本当の事ですので。それではソフィ殿、また後ほど部屋までお願いします」
そう言ってミスズは部屋に居る者達を一瞥した後に、軽く会釈を行い部屋を出ていった。
ミスズが出て行った後、テアの力を借りて布団で横になっていたヌーは、身体を起こしてソフィの方を向いて口を開いた。
「さっきのお前の『極大魔法』の事だが、あんな『魔法』はこれまで『アレルバレル』の世界で見た事ねぇが、あれはお前の『固有魔法』なのか?」
「ふむ。それは『絶殲』の事か?」
「ああ……」
「そうだな。使ったのは実に数千年、いやそれ以上ぶりではあるが、あれは確かに我が若かりし頃に編み出した『魔法』で間違いない」
「俺との戦いを含めてこれまでてめぇがそれを使ったところは見た事がないが、何故これまで使わなかった?」
ヌーは何処か鋭い視線をソフィに向けながら問い訊ねると、ソフィはそのヌーの本音を暴こうとするかのように少しだけ目を細めて、少し返答内容を考えるように間を置いたが、やがてその口を開いた。
「それはこの『絶殲』が少しばかり、他の『極大魔法』と違って扱いが難しいからだ。先程も言ったがこの『絶殲』はまだ我が『アレルバレル』の世界で自分の強さというモノを自覚する前に、一番最初に編み出して使った『魔法』だったのだ……」
「てめぇが……、自分の強さを自覚する前?」
ソフィがこれまで自分達に『絶殲』とかいう『魔法』を使ってこなかったのは、単に下に見られていたからだと、単に手加減をされていたのだと考えていたヌーは、その神妙そうに話を始めたソフィにどうやら『理由がある』と感じたようで、素直に耳を傾け始めるのだった。
「そうだ。お主がまだ生まれるよりずっと昔だ」
ソフィはどこか遠い目をしたかと思うと、過去を想い耽るように目を閉じた。
「まだ我が自分の『魔力』がどれくらいあるのか。いや、それどころか『理』や『魔法』を使う為の『発動羅列』などもよく理解していない程の幼子だった頃の話だ。まだ自分の足で立てるようになって少し経った頃だったか」
「あぁ……? 自分の足で立てるようになった頃だと……?」
その場で話を聴いていた『ヌー』だけじゃなく『セルバス』ですら『ソフィは一体、いつ頃の話をするつもりだ』と顔を見合わせる。
「あの頃の『アレルバレル』の世界の『魔界』は、自分の仲間以外の魔族が視界に映れば、何があってもおかしくはないような危険な時代だったのだが、その時の我は家族や知り合いといった者も居らず、どうやって暮らしていたかすら今となっては定かではないが……、我もその時に何度か襲撃をされたことがあったのだ」
(まぁそれは俺の時代でも似たようなもんだったがな……。あの世界の魔族が少ない原因は、幼少の頃に身を守る術がなければ皆殺しにされるからだ。生き延びられる者達には、運よく大魔王領域の保護者がついているか、運よくそういう連中が居ない離島などの施設で過ごせたかどうかだからな)
ソフィの言葉にヌーは胸中でそう呟くのだった。
「なんかようやく共感出来る事を聞けた気がしますよ。旦那もそんな時代を過ごしていたんすねぇ。それでどうやって旦那の場合は襲撃してくる『魔族』から逃れたんすか?」
セルバスもヌーの気持ちと共有が出来ていたようで、軽い気持ちでそう口にするのだった。
「いや、幼少の頃は自分の力と相手の差が分からなかったものでな。襲ってくる奴は有無を言わさずに、全員消滅させてしまっていたのだ……」
「え? いや、その幼少の頃ってのは、旦那が自分の足で立てるようになって少し経った頃の話なんでしょ?」
「うむ。よくは覚えてはおらぬが、二歳かまだその少し前の頃だったと思うが……」
「え? お、襲ってきた奴は『魔族』だったんですよね? その相手も赤ん坊くらいだった……、とかいうわけじゃないっすよね?」
「よくは覚えておらぬが、何やら『魔法』を我に向けて放ってきた事くらいは覚えているな。その時に我はそれを見て色々と『魔力』の使い方を学ばせてもらってな。そしてそのおかげでこの『絶殲』を会得が出来て初めて使ったのだ。自分の身を守るためにな」
ソフィの話す内容があまりにも荒唐無稽すぎて、何を言っているんだと言いたげな表情を浮かべるセルバスであった。
(セルバスの馬鹿野郎め。話の流れ的に『絶殲』の編み出した話をしてやがんだから、それくらい直ぐに理解が出来るだろうが。まぁ、相手の魔族とやらが『魔王』領域に至っていたかどうかは知らねぇが、まだまだ赤子から少し経った頃といえるような年齢の奴が、新たに固有魔法を生み出して使って敵を消滅させたとあっちゃ、信じられねぇっていうセルバスの気持ちも分からなくはないがな……)
「それで話を戻すが、先程『魔力吸収の地』に向けて放った時と同規模の『絶殲』をその襲ってきた者達に使った時に、陸ごと消滅させてしまったりもしてしまってな。まぁ、その時に大陸そのものを消滅させないようにする『魔力コントロール』を覚えたりも出来たのだが、その頃の我には、自分の力量というモノが分からなかったから、使わなければ相手にも同じことをされるだろうと思って、襲ってくる者達には全員同じように消滅させてしまっていたのだが、それから数か月後に、どうやらこの『魔法』は自分の思っていた以上に危険なモノだと理解したのだ。クックック! 懐かしいな。それからはまぁ、他の魔王連中達の使う『魔法』を真似るようになって、力を抑えて簡単な『超越魔法』や『神域魔法』を使う事で、三歳になる前にはもう『絶殲』を使う事を自ら禁じても生きていけるようになったのだ」
懐かしいとばかりに笑うソフィに対して、セルバスだけではなく『ヌー』ですら唖然とした表情でソフィを見るのであった。
ソフィは自分の回復を拒んだ以上は、周りの迷惑も考えてもらうと告げて、このまま『里』へ向かおうと考えていたのだが、今にも倒れそうなヌーを見たミスズは、そのソフィの言葉に待ったをかけて、別室に用意されていた布団をこの部屋にまで運んできてくれるのであった。
どうやらミスズは親身になってヌーの事を心配してくれたのだろう。
そしてその少しだけ柔らかくて質の良さそうな布団は、少し前に『スオウ』の指示でサシャが用意した布団であった。
「どうぞ、これをお使いください。そしてソフィ殿には申し訳ないのですが、後でまた総長の部屋までご足労願えますでしょうか? どうしても総長はソフィ殿と個人的に話がしたいそうなのですが……」
「む? 分かった。少しだけヌーの容態を見たらそちらへ向かわせてもらう」
「ありがとうございます。そして『結界』の件、本当に助かりました」
そう言って再びミスズはソフィに頭を下げるのであった。
「先程も言ったがこちらも色々と世話になっている身だからな。そのように気にしないでもらいたいのだが……」
「いえ、感謝を伝えたいのは本当の事ですので。それではソフィ殿、また後ほど部屋までお願いします」
そう言ってミスズは部屋に居る者達を一瞥した後に、軽く会釈を行い部屋を出ていった。
ミスズが出て行った後、テアの力を借りて布団で横になっていたヌーは、身体を起こしてソフィの方を向いて口を開いた。
「さっきのお前の『極大魔法』の事だが、あんな『魔法』はこれまで『アレルバレル』の世界で見た事ねぇが、あれはお前の『固有魔法』なのか?」
「ふむ。それは『絶殲』の事か?」
「ああ……」
「そうだな。使ったのは実に数千年、いやそれ以上ぶりではあるが、あれは確かに我が若かりし頃に編み出した『魔法』で間違いない」
「俺との戦いを含めてこれまでてめぇがそれを使ったところは見た事がないが、何故これまで使わなかった?」
ヌーは何処か鋭い視線をソフィに向けながら問い訊ねると、ソフィはそのヌーの本音を暴こうとするかのように少しだけ目を細めて、少し返答内容を考えるように間を置いたが、やがてその口を開いた。
「それはこの『絶殲』が少しばかり、他の『極大魔法』と違って扱いが難しいからだ。先程も言ったがこの『絶殲』はまだ我が『アレルバレル』の世界で自分の強さというモノを自覚する前に、一番最初に編み出して使った『魔法』だったのだ……」
「てめぇが……、自分の強さを自覚する前?」
ソフィがこれまで自分達に『絶殲』とかいう『魔法』を使ってこなかったのは、単に下に見られていたからだと、単に手加減をされていたのだと考えていたヌーは、その神妙そうに話を始めたソフィにどうやら『理由がある』と感じたようで、素直に耳を傾け始めるのだった。
「そうだ。お主がまだ生まれるよりずっと昔だ」
ソフィはどこか遠い目をしたかと思うと、過去を想い耽るように目を閉じた。
「まだ我が自分の『魔力』がどれくらいあるのか。いや、それどころか『理』や『魔法』を使う為の『発動羅列』などもよく理解していない程の幼子だった頃の話だ。まだ自分の足で立てるようになって少し経った頃だったか」
「あぁ……? 自分の足で立てるようになった頃だと……?」
その場で話を聴いていた『ヌー』だけじゃなく『セルバス』ですら『ソフィは一体、いつ頃の話をするつもりだ』と顔を見合わせる。
「あの頃の『アレルバレル』の世界の『魔界』は、自分の仲間以外の魔族が視界に映れば、何があってもおかしくはないような危険な時代だったのだが、その時の我は家族や知り合いといった者も居らず、どうやって暮らしていたかすら今となっては定かではないが……、我もその時に何度か襲撃をされたことがあったのだ」
(まぁそれは俺の時代でも似たようなもんだったがな……。あの世界の魔族が少ない原因は、幼少の頃に身を守る術がなければ皆殺しにされるからだ。生き延びられる者達には、運よく大魔王領域の保護者がついているか、運よくそういう連中が居ない離島などの施設で過ごせたかどうかだからな)
ソフィの言葉にヌーは胸中でそう呟くのだった。
「なんかようやく共感出来る事を聞けた気がしますよ。旦那もそんな時代を過ごしていたんすねぇ。それでどうやって旦那の場合は襲撃してくる『魔族』から逃れたんすか?」
セルバスもヌーの気持ちと共有が出来ていたようで、軽い気持ちでそう口にするのだった。
「いや、幼少の頃は自分の力と相手の差が分からなかったものでな。襲ってくる奴は有無を言わさずに、全員消滅させてしまっていたのだ……」
「え? いや、その幼少の頃ってのは、旦那が自分の足で立てるようになって少し経った頃の話なんでしょ?」
「うむ。よくは覚えてはおらぬが、二歳かまだその少し前の頃だったと思うが……」
「え? お、襲ってきた奴は『魔族』だったんですよね? その相手も赤ん坊くらいだった……、とかいうわけじゃないっすよね?」
「よくは覚えておらぬが、何やら『魔法』を我に向けて放ってきた事くらいは覚えているな。その時に我はそれを見て色々と『魔力』の使い方を学ばせてもらってな。そしてそのおかげでこの『絶殲』を会得が出来て初めて使ったのだ。自分の身を守るためにな」
ソフィの話す内容があまりにも荒唐無稽すぎて、何を言っているんだと言いたげな表情を浮かべるセルバスであった。
(セルバスの馬鹿野郎め。話の流れ的に『絶殲』の編み出した話をしてやがんだから、それくらい直ぐに理解が出来るだろうが。まぁ、相手の魔族とやらが『魔王』領域に至っていたかどうかは知らねぇが、まだまだ赤子から少し経った頃といえるような年齢の奴が、新たに固有魔法を生み出して使って敵を消滅させたとあっちゃ、信じられねぇっていうセルバスの気持ちも分からなくはないがな……)
「それで話を戻すが、先程『魔力吸収の地』に向けて放った時と同規模の『絶殲』をその襲ってきた者達に使った時に、陸ごと消滅させてしまったりもしてしまってな。まぁ、その時に大陸そのものを消滅させないようにする『魔力コントロール』を覚えたりも出来たのだが、その頃の我には、自分の力量というモノが分からなかったから、使わなければ相手にも同じことをされるだろうと思って、襲ってくる者達には全員同じように消滅させてしまっていたのだが、それから数か月後に、どうやらこの『魔法』は自分の思っていた以上に危険なモノだと理解したのだ。クックック! 懐かしいな。それからはまぁ、他の魔王連中達の使う『魔法』を真似るようになって、力を抑えて簡単な『超越魔法』や『神域魔法』を使う事で、三歳になる前にはもう『絶殲』を使う事を自ら禁じても生きていけるようになったのだ」
懐かしいとばかりに笑うソフィに対して、セルバスだけではなく『ヌー』ですら唖然とした表情でソフィを見るのであった。
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