最強の魔王が異世界に転移したので冒険者ギルドに所属してみました。

羽海汐遠

文字の大きさ
上 下
1,502 / 1,988
イダラマの同志編

1485.力の魔神の死神貴族を見る目

しおりを挟む
「――」(ソフィさん! こいつどうしちまったんだ!? 突然……)

「うるせぇ……。何ともねぇって言ってんだろテア。ただ、ちょっとこいつの『魔力』を推し量ろうとしちまっただけだ」

「お、おい! てめぇ、まさかさっきの旦那に向けて『漏出サーチ』でも放ったんじゃねぇだろうな? そんな事をすればどうなるかくらい、お前なら分かってんだろう!?」

 確かに自分より『魔力』が桁違いに差がある場合は、その相手の『魔力』の値を『漏出サーチ』で強引に数値化しようとすれば、瞬時にその情報を理解しようとする働きによって、脳が耐えられずに焼き切れて絶命をしてもおかしくはない危険性を孕んでいる。

 『基本研鑽演義きほんけんさんえんぎ』を行い続けている者であれば、その会得している『魔力コントロール』と天性のセンスで脳が焼き切れる前に、ある程度の情報を確立させる者も一握りの魔族の中には存在するが、それでもそのある程度の情報でさえ、今の四翼の戦闘形態の『完全なる大魔王』となっているソフィの情報を探ろうとすればこうなってもおかしくはない。

 むしろ本当に先程のソフィに『漏出サーチ』を放ってこの程度の眩暈ですんでいるのであれば、それは逆に大魔王ヌーが見事だったと言わざるを得ないだろう。

 情報を得るまでの切り替えのタイミングに『漏出サーチ』の『魔力コントロール』が卓越していたからこそ、この程度で済んでいるのである。

 しかしそれでも著しく健康被害を引き起こしており、無理をすればこのまま意識を失いかねない危険な状態に変わりはなかった。

「お主が過去に我に説いた事をお主がやってしまったという事か……。確かに少し頭が痛むような感覚を覚えた事は我もあるが、お主は少しばかり我の感じた事のある感覚よりも被害が大きそうだな」

(いやいやいや、旦那は何を言っているんだ? 『漏出サーチ』で旦那の『魔力』を推し量ろうとして、この程度で済んでいる事が凄いんだよ! 頭が痛むくらいの感覚より症状が重そうだとか、そんな程度の話じゃないんだが……!)

 大魔王ヌーがどれだけ危険な事をして、どれだけ凄い事を為したかが全く理解していない様子のソフィに、セルバスは胸中で信じられないとばかりに、唖然とした表情を浮かべていた。

「――」(ソフィ、こんなことを私が言うのはおかしいかもしれないけれど、その魔族を治してあげてもらえないかしら? がこれ以上ない程に心配そうにしているの。それを見ているとのよ)

「うむ。もちろんだとも。眩暈や頭痛程度であれば何の問題もなく治す事は可能だ」

「ま、待て! これは俺の未熟な『魔力コントロール』が招いた情けない結果だ。この痛みは今後の教訓として覚えておきたい! だからてめぇは何もするな! 頼む」

「むっ……!」

「――」(ヌー……)

 何とあの大魔王ヌーがソフィに対して『』と真剣な表情を浮かべながら告げた。

 ――これまでソフィに対してこんな言葉を口にしたことがないヌーがである。

 ここでいらぬ節介を焼けば、今後のヌーにとってよくない事だとソフィは瞬時に理解をするのであった。

「分かった。しかし今は我とお主達だけしかいなかった頃とは違う。数多くの者達の予定というモノが付きまとっている状態なのだ。我の助けを拒んだ以上は、お主一人の都合を優先するわけにはいかぬ。辛いだろうが付いてきてもらうが構わぬな?」

「ああ……! 当然だろうが……。こんなモン直ぐに回復してみせる」

 そう言って無理に立ち上がろうとしたヌーだが、再びフラフラと身体を揺らしながら倒れそうになる。

「――!」(私に掴まれ! 大丈夫だ。私がお前の足になってやるから、倒れそうになったらしがみつけ!)

 そう言って『死神』のテアは、ぎゅっと自分より遥かに背が高く大柄なヌーを支えようと両手に必死に力を込めてそう口にするのだった。

「……わりぃな。今はちっとお前の力を借りさせてもらう」

「――」(ああ、遠慮するなよ)

「うむ……。むっ?」

 ソフィはヌーとテアの様子を見て感慨深そうに頷くと、隣に居る『魔神』に再び『結界』を『魔力吸収の地アブソ・マギア・フィールド』に使ってもらおうと顔を上げたが、何やら感動している様子の『魔神』を見て口を噤むのであった。

「――」(ああ! 下界の存在にあそこまで献身的になれる貴方は本当に素晴らしいわ! その姿こそが本当の『契約者』のあるべき姿なのよ……! ああ、可愛いテア。……)

 絶世の美女といえる『力の魔神』は、執念を感じさせる程の怖いくらいの『綺麗』な笑みを浮かべたが、傍から見ていてその目は、何処か先を見据えた冷徹な目にも映るのであった。
しおりを挟む
感想 259

あなたにおすすめの小説

家族で突然異世界転移!?パパは家族を守るのに必死です。

3匹の子猫
ファンタジー
社智也とその家族はある日気がつけば家ごと見知らぬ場所に転移されていた。 そこは俺の持ちうる知識からおそらく異世界だ!確かに若い頃は異世界転移や転生を願ったことはあったけど、それは守るべき家族を持った今ではない!! こんな世界でまだ幼い子供たちを守りながら生き残るのは酷だろ…だが、俺は家族を必ず守り抜いてみせる!! 感想やご意見楽しみにしております! 尚、作中の登場人物、国名はあくまでもフィクションです。実在する国とは一切関係ありません。

異世界に召喚されたが「間違っちゃった」と身勝手な女神に追放されてしまったので、おまけで貰ったスキルで凡人の俺は頑張って生き残ります!

椿紅颯
ファンタジー
神乃勇人(こうのゆうと)はある日、女神ルミナによって異世界へと転移させられる。 しかしまさかのまさか、それは誤転移ということだった。 身勝手な女神により、たった一人だけ仲間外れにされた挙句の果てに粗雑に扱われ、ほぼ投げ捨てられるようなかたちで異世界の地へと下ろされてしまう。 そんな踏んだり蹴ったりな、凡人主人公がおりなす異世界ファンタジー!

完結【真】ご都合主義で生きてます。-創生魔法で思った物を創り、現代知識を使い世界を変える-

ジェルミ
ファンタジー
魔法は5属性、無限収納のストレージ。 自分の望んだものを創れる『創生魔法』が使える者が現れたら。 28歳でこの世を去った佐藤は、異世界の女神により転移を誘われる。 そして女神が授けたのは、想像した事を実現できる創生魔法だった。 安定した収入を得るために創生魔法を使い生産チートを目指す。 いずれは働かず、寝て暮らせる生活を目指して! この世界は無い物ばかり。 現代知識を使い生産チートを目指します。 ※カクヨム様にて1日PV数10,000超え、同時掲載しております。

せっかくのクラス転移だけども、俺はポテトチップスでも食べながらクラスメイトの冒険を見守りたいと思います

霖空
ファンタジー
クラス転移に巻き込まれてしまった主人公。 得た能力は悪くない……いや、むしろ、チートじみたものだった。 しかしながら、それ以上のデメリットもあり……。 傍観者にならざるをえない彼が傍観者するお話です。 基本的に、勇者や、影井くんを見守りつつ、ほのぼの?生活していきます。 が、そのうち、彼自身の物語も始まる予定です。

【完結】転生7年!ぼっち脱出して王宮ライフ満喫してたら王国の動乱に巻き込まれた少女戦記 〜愛でたいアイカは救国の姫になる

三矢さくら
ファンタジー
【完結しました】異世界からの召喚に応じて6歳児に転生したアイカは、護ってくれる結界に逆に閉じ込められた結果、山奥でサバイバル生活を始める。 こんなはずじゃなかった! 異世界の山奥で過ごすこと7年。ようやく結界が解けて、山を下りたアイカは王都ヴィアナで【天衣無縫の無頼姫】の異名をとる第3王女リティアと出会う。 珍しい物好きの王女に気に入られたアイカは、なんと侍女に取り立てられて王宮に! やっと始まった異世界生活は、美男美女ぞろいの王宮生活! 右を見ても左を見ても「愛でたい」美人に美少女! 美男子に美少年ばかり! アイカとリティア、まだまだ幼い侍女と王女が数奇な運命をたどる異世界王宮ファンタジー戦記。

三歳で婚約破棄された貧乏伯爵家の三男坊そのショックで現世の記憶が蘇る

マメシバ
ファンタジー
貧乏伯爵家の三男坊のアラン令息 三歳で婚約破棄され そのショックで前世の記憶が蘇る 前世でも貧乏だったのなんの問題なし なによりも魔法の世界 ワクワクが止まらない三歳児の 波瀾万丈

あなたは異世界に行ったら何をします?~良いことしてポイント稼いで気ままに生きていこう~

深楽朱夜
ファンタジー
13人の神がいる異世界《アタラクシア》にこの世界を治癒する為の魔術、異界人召喚によって呼ばれた主人公 じゃ、この世界を治せばいいの?そうじゃない、この魔法そのものが治療なので後は好きに生きていって下さい …この世界でも生きていける術は用意している 責任はとります、《アタラクシア》に来てくれてありがとう という訳で異世界暮らし始めちゃいます? ※誤字 脱字 矛盾 作者承知の上です 寛容な心で読んで頂けると幸いです ※表紙イラストはAIイラスト自動作成で作っています

スキルが【アイテムボックス】だけってどうなのよ?

山ノ内虎之助
ファンタジー
高校生宮原幸也は転生者である。 2度目の人生を目立たぬよう生きてきた幸也だが、ある日クラスメイト15人と一緒に異世界に転移されてしまう。 異世界で与えられたスキルは【アイテムボックス】のみ。 唯一のスキルを創意工夫しながら異世界を生き抜いていく。

処理中です...