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イダラマの同志編

1481.自分の強さと向き合う者

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「ソフィ殿。本当に度重なる協力に感謝する」

 シゲンはそう言ってソフィに頭を下げるのだった。

 元々はこの本部の牢に『結界』を張るだけであったが、ソフィがついでだからと『ゲンロク』の里に全員を運ぶと約束を取り付けてくれたのであった。

 本来であればここからそれなりの距離がある『ゲンロク』の里に使者を遣わせて話を持っていき、そこから使者が持ち帰らせて更にそこから里へ向かわねければならない為に相当な日数が掛かる事になるのだが、この一連の流れをソフィの使う『高等移動呪文アポイント』であれば、全てを省いてあっという間に『里』へ向かえる為に、時間短縮が図れるのであった。

「こちらこそ『妖魔山』に同行させてもらえる許可を出してもらえた上に、我の配下を探す協力までしてくれているのだから、出来る事を手伝うのは当然の事だ。それに『ゲンロク』殿の里へは何度も足を運んでいる。全くといっていい程に労力はないのだから、何も気にする必要はないぞ」

 ソフィがそう言うと、改めてミスズとシゲンはソフィに頭を下げるのだった。

「本当に感謝致しますよソフィ殿。我々『妖魔退魔師』組織もソフィ殿の協力に見合うように、全力を挙げて『エヴィ』殿を探し出しますので、今しばらくお待ち頂けたらと思います」

 そう口にするミスズだが、ソフィの配下の『エヴィ』は『イダラマ』と行動を共にしていた為、結局はこのまま向かう事になる『妖魔山』の中だろうなと考えるのであった。

「うむ。ありがとうミスズ殿。それでは我達も部屋に戻るが、また何かあれば遠慮なくいつでも訪ねてきてくれて構わぬよ」

「ありがとうございます! その時は宜しくお願いします」

 深々とミスズがソフィに頭を下げると、ソフィ達は自分達の宛がわれている部屋へと戻るのであった。

 ……
 ……
 ……

「しかしヌーよ。この世界の者達の使う『結界』も厄介なものだな?」

「あ? いきなりどういうこったよ」

「我達がこの世界に来てから相当の日数が経っておる。その間ただの一度もエヴィの場所を探りあてられぬ事に少しばかりな。真剣に考えさせられたのだ」

「ああ……。まぁそれは俺も思っていた事でもある。多分エヴィと一緒にいやがる『妖魔召士』って奴は相当の『魔力』を持っている事は間違いない。それも俺やお前が直々にこれだけの長い期間『魔力』を探り続けているっていやがるのに、一度も感知が出来ていないという事は、休みなく常に『結界』を張り続けられているって事だ。それは常識で考えてあり得ない程に難しい事をやっていやがるって事だからな」

 それはつまりソフィやヌーという世界を束ねる程の力量を有する『大魔王』から狙われても身を隠し通す事が出来る程の『力量者』という事の証左であり、もちろんソフィは配下であるエヴィを思っての発言だったのだが、ヌーはエヴィの事よりもイダラマの事を考えていたのだった。

 現在のヌーはランク『8』の妖魔である黄雀こうじゃくすらも倒せるほどに強くなっており、イダラマと同じ『妖魔召士』である『チアキ』を実験相手にしたことで、改めて自分の強さを確かめて自覚する事が出来た。

 今の彼は自分の中で明確に強さの基準が出ており、自分より強さが『上』だと判断しているのが大魔王『ソフィ』とこの世界で出会った『妖魔召士』の『エイジ』であった――。

 当然その両名にも差があると考えているヌーは、ソフィが最も『』に近い魔族だと判断しているが、これだけ強くなった自分でもまだ追いつけていないだろうなと感じているのが『エイジ』という『妖魔召士』の存在である。

 『三色併用』を完全に自分のモノにした今であれば、あの酒場の時の『エイジ』を相手に無様を晒したりはしなくなったと彼は考えているが、それでも本気でぶつかるにはまだ時期尚早だろうと考える程であった。

 そして先程話に出した『イダラマ』という人間もまた『結界』に関しても侮れないと感じたが、それ以上に自分が認めている『エイジ』が『イダラマ』を認めているような発言をしていたことで、ヌーの中では同じ『妖魔召士』であっても『チアキ』と『イダラマ』は強さに差があるだろうと考えているのであった。

(この世界に訪れた時からすでに、この世界は侮れねぇとは感じてはいたが、それは強くなった今でも考えは変わりやがらねぇ。自分がこれまで如何に井の中の蛙だったか……)

 高みというモノを知った現在では、よくこれまであの大魔王ソフィに勝てるつもりで挑んでいたものだと、これまでの自分に呆れかえる大魔王ヌーであった。

「まぁ何はともあれ、ようやく『妖魔山』に向かう事が出来そうでよかった。ここに来る前までは、エヴィの居場所を見つけるのにここまで苦労するとは思わなかったがな……」

「まぁな。あの『ルビリス』の野郎もに跳ばしやがったモンだ。全くめんどくせぇ」

 ヌーは舌打ちをしながら、かつての同盟であった『煌聖の教団こうせいきょうだん』の司令官の名を口にするのであった――。
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