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サカダイ編
1337.印象の違い
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そして『加護の森』へと『妖魔退魔師』達を引き連れて到着するヌー達であった。
これだけの大人数を一気に飛ばすには相当の魔力が必要になるが、どうやら今のヌーにしてみればそこまで大した事はない様子で、魔力の消費による魔力の枯渇の心配も全くなさそうであった。
「さて、お前らの望みの場所はここなんだろ?」
「はい。我々をここまで運んで下さって、感謝致します」
「「感謝します! ヌー殿!」」
妖魔退魔師の副総長ミスズが頭を下げて感謝の言葉を述べると、この場に一瞬で飛ばされた事に驚いていた他の隊士達も一様にヌーに頭を下げるのだった。
「ちっ……。分かった、分かった。うぜぇから顔を上げろよ」
どこか照れた様子でヌーはそっぽを向きながら『妖魔退魔師』達の頭を上げさせると、一緒にこの場所に居るセルバスは揶揄うような視線をヌーに向けて、それを見たヌーが不機嫌に舌打ちを行うのだった。
「それでは皆さんよく聞いて下さい。この加護の森には我々の同士であった者達を襲った、元『妖魔召士』のヒュウガ殿とその取り巻きの『上位妖魔召士』達が潜伏しているとみられます。つまりここはもう戦場であり、いつ襲われるか分かりません。あちらは我々と違い『結界』を利用して我々の接近をすでに感知している事でしょう。一箇所に固まって行動を行うと『捉術』の餌食となる可能性がありますので、今回の任務では『スオウ』組長の『二組』の方々と、私達の『特務』の隊士の者達で、三人組または四人組で少数部隊を作って彼ら『ヒュウガ一派』を探す事にしましょう。もし見つけた場合は、個々で襲撃を掛けるのではなく、仲間が近くに居る場合は直ぐに連絡を取り合うようにして下さい。決して功を焦ってはなりませんよ!」
「「はっ! 分かりましたミスズ副総長!!」」
副総長ミスズの命令によって、統率の取れた妖魔退魔師の隊士達は一斉に声を揃えるのだった。
「そしてヌー殿達には、度々申し訳ないのですが、お願いがあります」
「あぁ?」
「ん? どうした」
ヌーとセルバスの両名に声を掛けたミスズに、二人は同時に返事をする。
「貴方がたは『妖魔召士』の者達のように、相手の『魔力』からその位置を探る事が出来ると聞きました。もしヒュウガ殿達の居場所を突きとめられるのであれば、是非お願いしたいのですが……」
『妖魔退魔師』は目の前に居るヌー達のように、相手の魔力を探る事や、探知系の『魔法』なども使えない。そもそもこの世界には『理』を生み出す存在が居ないために、この世界の者達が『魔法』が使えないのは当然の事であった。
対する『妖魔召士』側はその持って生まれた『魔力値』の高さから『理』はなくとも『魔力』を使って相手の魔力を探ったり『捉術』と呼ばれる攻撃技法を扱う事が出来るために、ミスズ達の居場所はすでにこの森に来た時点で筒抜けになっている事だろう。
そこでせめて相手に襲われる前に、大体の位置を把握しておきたいとミスズは考えたようであった。
「ああ! そういう事か! あんたはミスズ殿って言ったか? 任せてくれよ。俺が出来る事なら何でも手伝うぜ? あのシグレ殿に悲しい思いを抱かせたクソ野郎をぶち殺す協力なら、逆にこっちから手伝わせてくれと言いたいところだったんだよ。俺達には『漏出』っていう魔法があってな、これを使えば相手の位置なんざ一発よ!」
鋭利な牙を見せながら大魔王『セルバス』は意気揚々とミスズにそう告げるのだった。
「そ、それは心強い!」
「おい、馬鹿を言うなよ? 今のお前は『代替身体』だろうが、そんな今の身体で奴らに『漏出』なんざ使ってみやがれ、お前の頭は即座に爆発するぞ?」
「あ……。そ、そうか。普段の俺なら『漏出』を使って相手の魔力がある程度上でも、直ぐに『情報排除』もコントロール出来るが、今の俺はそれすら……きわどいか?」
「きわどいどころか、即座にアウトだろうが。そもそも普段のお前でもこの世界の連中相手じゃ、魔力コントロールで位置だけ割り出そうとしても無理だろうぜ。僅かに相手の魔力の一部でも知った瞬間に、てめぇじゃ脳が焼き切れちまうだろうよ」
確かに『漏出』で相手の位置だけを探るだけならば、相手の『魔力』を探ってその魔力の数値化がなされる前に『魔法』を瞬時に解除するという高等テクニックも存在するが、それはあくまで相手との魔力値の差がなければ可能という話であり、今のセルバスの魔力で『妖魔召士』達の魔力を探った時点でコントロールを行う前に絶命するだろう。
セルバスはまだ自分が『代替身体』だからこそ、この世界の妖魔召士達よりは少しくらい魔力が劣るかもしれないぐらいに考えていたが、その考えは甘すぎるといえた。そしてあの大賢者『ミラ』が戦闘中に膨大な魔力を使用している際に、そのミラにセルバスが『漏出』で感知しようとするのと同じくらいに危険な行為だと、ヌーに懇切丁寧に説明されると、先程までミスズに意気揚々と手伝うと言っていたセルバスは、顔面蒼白と言った様子でミスズに首を振って『やっぱり無理かも』と口にして断るのだった。
「てめぇは精々大人しく『魔力感知』で近場を探る程度にしておけ。仕方ねぇから俺がやってやるよ」
「あ、ありがとうございます。 ヌー殿!」
舌打ち混じりに『めんどくせぇな』と口にしながらも、ミスズの要請に応えようとそう告げるヌーであった。
テアは背伸びをしながらヌーの頭に手を伸ばしたかと思うと、何とニコニコと笑いながらヌーの頭を撫でるのであった。
どうやらテアは、よく出来ましたと褒めたつもりなのだろうが、ヌーは顔を赤くしながら森を一人で先に歩き始めるのだった。
「――!」(あ、ごめんって。謝るから待ってくれよ、ヌー!)
流石にやり過ぎたかと反省をしながら、テアがそんなヌーを後から追いかけるのだった。
「何だか……、ヌー殿と会った時の印象がだいぶ変わりましたね」
「印象が変わったどころの騒ぎじゃねぇぜ? 昔のアイツなら協力するどころか、目障りだからって全員ぶっ壊そうと魔法をこの場で打ち込んで、さっさとどっかへ行ったはずだ」
「え」
ミスズはセルバスから昔のヌーの話を聞いて唖然としていたが、突如としてセルバスは先程まで居た場所、森の入り口付近を振り返って何やら視線を向け始めるのだった。
「どうしました、セルバス殿?」
「この森に向かって来るやつらが数人程居るようだ」
「それはつまりヒュウガ一派という事でしょうか?」
魔力の感知が出来ないミスズがセルバスにそう尋ねるが、セルバスは首を横に振るのだった。
「あんたらの追っているヒュウガとかいう奴らは、こんな矮小な魔力を持つ連中じゃないだろう。それは多分森の外からやってきているこいつらの事じゃなく、森の中で『結界』を施して息を潜めて居る奴らだと思う。そっちはヌーの野郎なら何とかするだろうから、アンタは早くヌーの方を追いかけな。こっちは俺が片付けといてやるよ」
ミスズは少し考える素振りを見せたが、確かにここに自分が来ている理由はあくまで『ヒュウガ』とその一味を捕らえる事。どうやらこの場に向かっている連中は『ヒュウガ』の一派の『妖魔召士』達とは違うのだろうと理解して、セルバスの言う通りにこの先に居るであろうヒュウガを追う事に決めるのだった。
「分かりました。それでは私は先に中で待っていますのでまた後で」
「ああ。ヌーは気が短いからな、早く戻った方が良いぜ?」
「ふふっ、分かりました。それではここは頼みましたよセルバス殿」
そう言い残してミスズはヌーを追って森の奥へと走っていくのだった。
……
……
……
これだけの大人数を一気に飛ばすには相当の魔力が必要になるが、どうやら今のヌーにしてみればそこまで大した事はない様子で、魔力の消費による魔力の枯渇の心配も全くなさそうであった。
「さて、お前らの望みの場所はここなんだろ?」
「はい。我々をここまで運んで下さって、感謝致します」
「「感謝します! ヌー殿!」」
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「ちっ……。分かった、分かった。うぜぇから顔を上げろよ」
どこか照れた様子でヌーはそっぽを向きながら『妖魔退魔師』達の頭を上げさせると、一緒にこの場所に居るセルバスは揶揄うような視線をヌーに向けて、それを見たヌーが不機嫌に舌打ちを行うのだった。
「それでは皆さんよく聞いて下さい。この加護の森には我々の同士であった者達を襲った、元『妖魔召士』のヒュウガ殿とその取り巻きの『上位妖魔召士』達が潜伏しているとみられます。つまりここはもう戦場であり、いつ襲われるか分かりません。あちらは我々と違い『結界』を利用して我々の接近をすでに感知している事でしょう。一箇所に固まって行動を行うと『捉術』の餌食となる可能性がありますので、今回の任務では『スオウ』組長の『二組』の方々と、私達の『特務』の隊士の者達で、三人組または四人組で少数部隊を作って彼ら『ヒュウガ一派』を探す事にしましょう。もし見つけた場合は、個々で襲撃を掛けるのではなく、仲間が近くに居る場合は直ぐに連絡を取り合うようにして下さい。決して功を焦ってはなりませんよ!」
「「はっ! 分かりましたミスズ副総長!!」」
副総長ミスズの命令によって、統率の取れた妖魔退魔師の隊士達は一斉に声を揃えるのだった。
「そしてヌー殿達には、度々申し訳ないのですが、お願いがあります」
「あぁ?」
「ん? どうした」
ヌーとセルバスの両名に声を掛けたミスズに、二人は同時に返事をする。
「貴方がたは『妖魔召士』の者達のように、相手の『魔力』からその位置を探る事が出来ると聞きました。もしヒュウガ殿達の居場所を突きとめられるのであれば、是非お願いしたいのですが……」
『妖魔退魔師』は目の前に居るヌー達のように、相手の魔力を探る事や、探知系の『魔法』なども使えない。そもそもこの世界には『理』を生み出す存在が居ないために、この世界の者達が『魔法』が使えないのは当然の事であった。
対する『妖魔召士』側はその持って生まれた『魔力値』の高さから『理』はなくとも『魔力』を使って相手の魔力を探ったり『捉術』と呼ばれる攻撃技法を扱う事が出来るために、ミスズ達の居場所はすでにこの森に来た時点で筒抜けになっている事だろう。
そこでせめて相手に襲われる前に、大体の位置を把握しておきたいとミスズは考えたようであった。
「ああ! そういう事か! あんたはミスズ殿って言ったか? 任せてくれよ。俺が出来る事なら何でも手伝うぜ? あのシグレ殿に悲しい思いを抱かせたクソ野郎をぶち殺す協力なら、逆にこっちから手伝わせてくれと言いたいところだったんだよ。俺達には『漏出』っていう魔法があってな、これを使えば相手の位置なんざ一発よ!」
鋭利な牙を見せながら大魔王『セルバス』は意気揚々とミスズにそう告げるのだった。
「そ、それは心強い!」
「おい、馬鹿を言うなよ? 今のお前は『代替身体』だろうが、そんな今の身体で奴らに『漏出』なんざ使ってみやがれ、お前の頭は即座に爆発するぞ?」
「あ……。そ、そうか。普段の俺なら『漏出』を使って相手の魔力がある程度上でも、直ぐに『情報排除』もコントロール出来るが、今の俺はそれすら……きわどいか?」
「きわどいどころか、即座にアウトだろうが。そもそも普段のお前でもこの世界の連中相手じゃ、魔力コントロールで位置だけ割り出そうとしても無理だろうぜ。僅かに相手の魔力の一部でも知った瞬間に、てめぇじゃ脳が焼き切れちまうだろうよ」
確かに『漏出』で相手の位置だけを探るだけならば、相手の『魔力』を探ってその魔力の数値化がなされる前に『魔法』を瞬時に解除するという高等テクニックも存在するが、それはあくまで相手との魔力値の差がなければ可能という話であり、今のセルバスの魔力で『妖魔召士』達の魔力を探った時点でコントロールを行う前に絶命するだろう。
セルバスはまだ自分が『代替身体』だからこそ、この世界の妖魔召士達よりは少しくらい魔力が劣るかもしれないぐらいに考えていたが、その考えは甘すぎるといえた。そしてあの大賢者『ミラ』が戦闘中に膨大な魔力を使用している際に、そのミラにセルバスが『漏出』で感知しようとするのと同じくらいに危険な行為だと、ヌーに懇切丁寧に説明されると、先程までミスズに意気揚々と手伝うと言っていたセルバスは、顔面蒼白と言った様子でミスズに首を振って『やっぱり無理かも』と口にして断るのだった。
「てめぇは精々大人しく『魔力感知』で近場を探る程度にしておけ。仕方ねぇから俺がやってやるよ」
「あ、ありがとうございます。 ヌー殿!」
舌打ち混じりに『めんどくせぇな』と口にしながらも、ミスズの要請に応えようとそう告げるヌーであった。
テアは背伸びをしながらヌーの頭に手を伸ばしたかと思うと、何とニコニコと笑いながらヌーの頭を撫でるのであった。
どうやらテアは、よく出来ましたと褒めたつもりなのだろうが、ヌーは顔を赤くしながら森を一人で先に歩き始めるのだった。
「――!」(あ、ごめんって。謝るから待ってくれよ、ヌー!)
流石にやり過ぎたかと反省をしながら、テアがそんなヌーを後から追いかけるのだった。
「何だか……、ヌー殿と会った時の印象がだいぶ変わりましたね」
「印象が変わったどころの騒ぎじゃねぇぜ? 昔のアイツなら協力するどころか、目障りだからって全員ぶっ壊そうと魔法をこの場で打ち込んで、さっさとどっかへ行ったはずだ」
「え」
ミスズはセルバスから昔のヌーの話を聞いて唖然としていたが、突如としてセルバスは先程まで居た場所、森の入り口付近を振り返って何やら視線を向け始めるのだった。
「どうしました、セルバス殿?」
「この森に向かって来るやつらが数人程居るようだ」
「それはつまりヒュウガ一派という事でしょうか?」
魔力の感知が出来ないミスズがセルバスにそう尋ねるが、セルバスは首を横に振るのだった。
「あんたらの追っているヒュウガとかいう奴らは、こんな矮小な魔力を持つ連中じゃないだろう。それは多分森の外からやってきているこいつらの事じゃなく、森の中で『結界』を施して息を潜めて居る奴らだと思う。そっちはヌーの野郎なら何とかするだろうから、アンタは早くヌーの方を追いかけな。こっちは俺が片付けといてやるよ」
ミスズは少し考える素振りを見せたが、確かにここに自分が来ている理由はあくまで『ヒュウガ』とその一味を捕らえる事。どうやらこの場に向かっている連中は『ヒュウガ』の一派の『妖魔召士』達とは違うのだろうと理解して、セルバスの言う通りにこの先に居るであろうヒュウガを追う事に決めるのだった。
「分かりました。それでは私は先に中で待っていますのでまた後で」
「ああ。ヌーは気が短いからな、早く戻った方が良いぜ?」
「ふふっ、分かりました。それではここは頼みましたよセルバス殿」
そう言い残してミスズはヌーを追って森の奥へと走っていくのだった。
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