上 下
1,355 / 1,915
サカダイ編

1338.慌て始めるヒュウガ一派

しおりを挟む
 先程『ジンゼン』の魔力が感知出来なかった『ヒュウガ』だったが、今度は『スオウ』の魔力を感知することに成功して頭を振るのだった。

「俄かには信じられぬ事だが、王連とジンゼンは『スオウ』殿に敗れたみたいだな……」

 ヒュウガの言葉を聴いた『キクゾウ』もまた、スオウの居る場所周辺の『魔力』を探知し始めるのだった。

 そしてヒュウガが感知したのと同様に、キクゾウもスオウの魔力を感知した後に、ジンゼン達の魔力が感知出来ない事に気づいたようだった。

「仕方あるまい。このまま森を出て我々は『コウヒョウ』の町で少しの間だけ身を隠すぞ」

「ま、待ってください。わ、我々だけで向かうおつもりですか!? ま、まだこの森には我らの同志が多く残って……」

「それも仕方がないだろう! 王連を倒すような『組長格』に、そこに居る『黄雀こうじゃく』の片腕を奪うような妖魔退魔師に、副総長の『ミスズ』殿までもが血眼になって私たちを探しているのだぞ!? ここで悠長に待っていたら、今度こそ全滅だ!!」

 ぴしゃりと言い放ったヒュウガは、ここに来た時とはまるで人が変わったかのようだった。

「わ、分かりました……」

 キクゾウにも当然思うところはあるようだったが、信じてついてきた主である『ヒュウガ』の決めた事に対して、逆らうまではするつもりはないようで、仕方なく頷いて見せるのであった。

「よし、そうと決まれば早速ここを出るぞ?」

「はい……」

 釈然とはしないモノの『キクゾウ』は、ヒュウガの言葉に首を縦に振って頷くのだった。

 そして『ヒュウガ』『キクゾウ』『黄雀こうじゃく』の妖魔を含めた妖魔召士二名が洞穴を出た時――。

 ――居る筈のない者達がそこに立っているのであった。

「な? 言ったとおりだったろう」

「そのようですね。といっても私は最初から貴方がたを疑ってはいませんでしたが」

「ふんっ……」

 ――ヒュウガ達が洞穴を出たところに居たのは『ヌー』達であった。

 まさか誰も居ないと思って出てきたところに『ミスズ』の姿があった為に、ヒュウガ達も流石に目を丸くして驚く。

「――」(こいつらを全員やっちまえばいいんだな? ヌー)

「ああ、面倒くせぇから皆殺しにしろ」

「ま、待ってください。使役されている『式』に関してはお任せしますが、残りの『妖魔召士』達はしっかりと生かしたまま捕らえるようにご協力願います」

「ちっ……! 人間の方は殺さずに捕まえろだとよ」

「――」(ああ。分かった)

 ヌーは渋々とテアにミスズの告げた言葉を通訳すると、直ぐに戦闘に入れるようにオーラを纏い始める。

 かつて誤ったオーラの発動の手順を踏んで手痛い思いをしたヌーは、まず最初に『青』から用いて防御力を取りつつも『魔瞳まどう』である『金色の目ゴールド・アイ』を発動させながら、周囲に『スタック』の準備をさせている。

 そしてヌーが『妖魔退魔師』の本部の建物の中で語ったように、三色併用を纏うために必要な『紅』の比率をいつもの1.2から1.7へと変えたかと思うと、一気にヌーは『三色併用』状態へと変貌を遂げた。

 ――確かにヌーの発案は正しかったようで、僅かな差ではあるが普段の時よりも纏うまでの時間が短縮されていたようであった。

「さ、さっさとこの場を離れるぞ! 後の者達も面倒そうだが、そんな者達よりも『ミスズ』殿が居る以上は、まともにやりあうわけにはいかぬ!」

 ヒュウガはそう言うと懐から『式札』を取り出して、あっという間に『鳥』の妖魔を使役し始めて空へと舞い上がるのだった。それを見た『キクゾウ』も慌てて『黄雀』に掴まって空へと上がっていく。

「くっ……! 逃すわけには!!」

「安心しろ。俺は逃さねぇよ」

 ようやく見つけたヒュウガが、このままでは再び手の届かない空の上へと逃げられると焦ったミスズだったが、行動を起こそうと動き出す直前にヌーに止められるのだった。

「し、しかし……! え?」

 ――次の瞬間。

 急激に空の色が変わり始めたかと思うと、空へと舞い上がっていった二人に向かって雷光が降り注いだ。

 ――魔神域魔法、『天雷一閃ルフト・ブリッツ』。

 ……
 ……
 ……
しおりを挟む
感想 259

あなたにおすすめの小説

テンプレな異世界を楽しんでね♪~元おっさんの異世界生活~【加筆修正版】

永倉伊織
ファンタジー
神の力によって異世界に転生した長倉真八(39歳)、転生した世界は彼のよく知る「異世界小説」のような世界だった。 転生した彼の身体は20歳の若者になったが、精神は何故か39歳のおっさんのままだった。 こうして元おっさんとして第2の人生を歩む事になった彼は異世界小説でよくある展開、いわゆるテンプレな出来事に巻き込まれながらも、出逢いや別れ、時には仲間とゆる~い冒険の旅に出たり 授かった能力を使いつつも普通に生きていこうとする、おっさんの物語である。 ◇ ◇ ◇ 本作は主人公が異世界で「生活」していく事がメインのお話しなので、派手な出来事は起こりません。 序盤は1話あたりの文字数が少なめですが 全体的には1話2000文字前後でサクッと読める内容を目指してます。

ユーヤのお気楽異世界転移

暇野無学
ファンタジー
 死因は神様の当て逃げです!  地震による事故で死亡したのだが、原因は神社の扁額が当たっての即死。問題の神様は気まずさから俺を輪廻の輪から外し、異世界の神に俺をゆだねた。異世界への移住を渋る俺に、神様特典付きで異世界へ招待されたが・・・ この神様が超適当な健忘症タイプときた。

豪華地下室チートで異世界救済!〜僕の地下室がみんなの憩いの場になるまで〜

自来也
ファンタジー
カクヨム、なろうで150万PV達成! 理想の家の完成を目前に異世界に転移してしまったごく普通のサラリーマンの翔(しょう)。転移先で手にしたスキルは、なんと「地下室作成」!? 戦闘スキルでも、魔法の才能でもないただの「地下室作り」 これが翔の望んだ力だった。 スキルが成長するにつれて移動可能、豪華な浴室、ナイトプール、釣り堀、ゴーカート、ゲーセンなどなどあらゆる物の配置が可能に!? ある時は瀕死の冒険者を助け、ある時は獣人を招待し、翔の理想の地下室はいつのまにか隠れた憩いの場になっていく。 ※この作品は小説家になろう、カクヨムにも投稿しております。

はずれスキル『本日一粒万倍日』で金も魔法も作物もなんでも一万倍 ~はぐれサラリーマンのスキル頼みな異世界満喫日記~

緋色優希
ファンタジー
 勇者召喚に巻き込まれて異世界へやってきたサラリーマン麦野一穂(むぎのかずほ)。得たスキルは屑(ランクレス)スキルの『本日一粒万倍日』。あまりの内容に爆笑され、同じように召喚に巻き込まれてきた連中にも馬鹿にされ、一人だけ何一つ持たされず荒城にそのまま置き去りにされた。ある物と言えば、水の樽といくらかの焼き締めパン。どうする事もできずに途方に暮れたが、スキルを唱えたら水樽が一万個に増えてしまった。また城で見つけた、たった一枚の銀貨も、なんと銀貨一万枚になった。どうやら、あれこれと一万倍にしてくれる不思議なスキルらしい。こんな世界で王様の助けもなく、たった一人どうやって生きたらいいのか。だが開き直った彼は『住めば都』とばかりに、スキル頼みでこの異世界での生活を思いっきり楽しむ事に決めたのだった。

異世界転移しましたが、面倒事に巻き込まれそうな予感しかしないので早めに逃げ出す事にします。

sou
ファンタジー
蕪木高等学校3年1組の生徒40名は突如眩い光に包まれた。 目が覚めた彼らは異世界転移し見知らぬ国、リスランダ王国へと転移していたのだ。 「勇者たちよ…この国を救ってくれ…えっ!一人いなくなった?どこに?」 これは、面倒事を予感した主人公がいち早く逃げ出し、平穏な暮らしを目指す物語。 なろう、カクヨムにも同作を投稿しています。

異世界で魔法が使えるなんて幻想だった!〜街を追われたので馬車を改造して車中泊します!〜え、魔力持ってるじゃんて?違います、電力です!

あるちゃいる
ファンタジー
 山菜を採りに山へ入ると運悪く猪に遭遇し、慌てて逃げると崖から落ちて意識を失った。  気が付いたら山だった場所は平坦な森で、落ちたはずの崖も無かった。  不思議に思ったが、理由はすぐに判明した。  どうやら農作業中の外国人に助けられたようだ。  その外国人は背中に背負子と鍬を背負っていたからきっと近所の農家の人なのだろう。意外と流暢な日本語を話す。が、言葉の意味はあまり理解してないらしく、『県道は何処か?』と聞いても首を傾げていた。  『道は何処にありますか?』と言ったら、漸く理解したのか案内してくれるというので着いていく。  が、行けども行けどもどんどん森は深くなり、不審に思い始めた頃に少し開けた場所に出た。  そこは農具でも置いてる場所なのかボロ小屋が数軒建っていて、外国人さんが大声で叫ぶと、人が十数人ゾロゾロと小屋から出てきて、俺の周りを囲む。  そして何故か縄で手足を縛られて大八車に転がされ……。   ⚠️超絶不定期更新⚠️

異世界転生してしまったがさすがにこれはおかしい

増月ヒラナ
ファンタジー
不慮の事故により死んだ主人公 神田玲。 目覚めたら見知らぬ光景が広がっていた 3歳になるころ、母に催促されステータスを確認したところ いくらなんでもこれはおかしいだろ!

クラス転移から逃げ出したイジメられっ子、女神に頼まれ渋々異世界転移するが職業[逃亡者]が無能だと処刑される

こたろう文庫
ファンタジー
日頃からいじめにあっていた影宮 灰人は授業中に突如現れた転移陣によってクラスごと転移されそうになるが、咄嗟の機転により転移を一人だけ回避することに成功する。しかし女神の説得?により結局異世界転移するが、転移先の国王から職業[逃亡者]が無能という理由にて処刑されることになる 初執筆作品になりますので日本語などおかしい部分があるかと思いますが、温かい目で読んで頂き、少しでも面白いと思って頂ければ幸いです。 なろう・カクヨム・アルファポリスにて公開しています こちらの作品も宜しければお願いします [イラついた俺は強奪スキルで神からスキルを奪うことにしました。神の力で学園最強に・・・]

処理中です...