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サカダイ編
1184.研鑽の末に得た結晶と帰趨
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ヌーの周囲に鮮やかな『青』のオーラが纏われ始めていく。今のヌーが纏う『青』のオーラは従来の『魔族』達が使っている淡い『青』のオーラではなく『三色併用』を用いる為のルートに使われている鮮明な『青』の色のオーラが纏われていた。
(『煌鴟梟』の者達が居た場所であやつが、初めて体現を果たした『三色』の内の一つの青だな)
これまでソフィはその鮮やかな『青』を見ていても、これまでの『浅葱色』のような淡い青との効力の違いなどは気にした事はなく、彼自身の強さの所為で同じ『青』でも性能が変わるという事に気づく事はなかった。しかしこうして第三者であるヌーが『三色併用』に到達した事で『青』の中でも多種多様の違いがある事を明確に理解するに至ったのである。
このヌーが纏っている鮮明な『青』こそは『漏出』等で相手の魔力値や戦力値測定出来る魔法では『浅葱色』と数値上での変化は見受けられないが、実際に戦闘を行えば相手はその『青』を纏った者の耐久性の変化に驚く事であろう。防御力向上の性能が淡い青とは違いすぎるのである。
「あの方も当たり前のように『天色』を纏えるのですね」
ヌーの『青』のオーラを見て、ミスズが『天色』と小さく口にしたのをソフィが耳聡く聞きつける。
「お主やナギリ殿も更にあの濃い『青』を纏う前に、今のヌーが纏っておる『青』を使っていたようだが、お主らの世界でもオーラというモノは我らの世界と同一なモノを使っているようだ」
「どうやらそのようですソフィ殿。しかし貴方がたの世界ではあのように『青色』に達する者達が、当たり前のように多く居るのですか? こちらの世界では少々会得するのに時間が掛かる程の扱いなのですが……」
どうやらあの鮮明な『青』の事をミスズ殿達の世界では、その彩度の度合が表している色の濃さ通りに『天色』と呼んでいるようであった。
「クックック、まさか。我らの世界でもお主らの言う『天色』とやらに、こうして辿り着けている者は限られておるよ。我とてあの『青』を使ってはおったが、淡い方の『青』との明確な違いなど今でも詳しくは存じて居らぬ」
ソフィの言葉を聞いたミスズは少しだけ驚いた様子で、視線をヌーからソフィに移すのだった。
「そ、そうですか」
(『浅葱色』と『青色』では全く異なる効果の筈なのだけれど、ソフィ殿の中ではそこまで気にする程の事ではないという事なのかしら? 我々妖魔退魔師の間でも『天色』の会得までには相当の時間を要する事なのに……)
ソフィ達の居た世界『アレルバレル』の世界では、勿論到達している者も疎らには居たかもしれないが、それでもそこまで『天色』の領域に達している者が少なかった為、ソフィは比較する対象が居ない事から詳細は知らないと告げたつもりだったが、ミスズはソフィの言葉から『浅葱色』と『天色』の違い等は気に掛ける程の事でもないという風に言っていると捉えて勘違いを起こした様子であった。
「それにオーラにはその『天色』と呼ばれる『青』だけではないのだしな……」
ぼそりと付け加えるように呟いたソフィの言葉を聞いたミスズは、どういう事かと訊ねようとしたがその解答はソフィからではなく、ヌーが実際に纏い始めた事でミスズが謎に思った事は解消されていった。
鮮やかな『天色』を纏うヌーだったが、更にそのオーラに大元の『青』とは別の『色』が加えられていく。今度は鮮血のように紅い『柘榴色』をした魔族特有のオーラがヌーの『天色』の『青』に彩りを加えていく。
――この状態は『魔族』の多くが体現を果たす『二色の併用』という技法を用いた状態ではある。
しかし多くの『魔王』領域の使う『二色併用』と、このくっきりと鮮やかな色合いを周囲に放ち続けるヌーの『二色の併用』では、これもまた数値上は変わらないのだが、その効果自体が全く異なっている。
この状態のヌーで大魔王『最上位領域』に位置する『九大魔王』達を同時に数体相手に出来る程の強さを兼ね揃えているのだった――。
「ソフィ殿『天色』以外のオーラが彼に纏われている様ですが、あの真っ赤なオーラはどのような効力が施されるのですか?」
どうやらミスズは『青』のオーラにはソフィ達以上に詳しい様子ではあったが『紅』のオーラに対しては知識として何も持ってはいない様子であった。それも当然といえば当然かとソフィは内心で納得する。何故なら『紅』のオーラは本来『魔族』が纏う特有のオーラだったからである。
人間達が『青』を纏うという事は、過去に『エルシス』が使っていた事からも理解は出来ていたが『紅』を纏う『人間』は居ない。どうやら『魔族』以外に体現する事が出来る種族が居るとしたら、ソフィの知るところでいえば『龍族』くらいだろうか。
「あれは『紅』と呼ばれる我ら『魔族』が、研鑽と経験によって身につけられる最初の技法だ。お主が先程言っていた『青』の中でも研鑽の末に『天色』と呼ばれる力に変わるように『紅』も少し変貌を遂げていくようであるらしいぞ。あの『紅』もまた戦力値や『魔力』を大きく上昇させる事が出来るが『紅』は能力を向上させるというよりは、このように武器を持たぬとも武器を持つ者と対等に渡り合えるように手にオーラを纏わせて武器を具現させる使い方をするのが一般的だな」
そう言ってソフィは目の前のヌーのように、右手にオーラを纏わせて紅の創成具現を行って見せる。それを見たミスズは『特務』の訓練施設でソフィと戦った時の事を思い出すのであった。
(成程、あのようにオーラで武器を生み出して使っていたモノは、元々は我らの『天色』のようにオーラから派生させて使っているという事ですか。確かにそういう使い方が出来るのであれば、重宝される技法になり得るのでしょうが、一体どうやって二つのオーラを同時に扱っているのでしょうか?)
ミスズの悩んでいる事は、これまで多くの魔族達も直面してきていた問題であった。そしてこれは『理』の存在しない『ノックス』の世界に生きる『魔力』が乏しいミスズ達のような『人間』では、少しばかり理解に至るには難しい話になってしまうだろう。
研鑽の末に『天色』を身につけられる程の域に至っているミスズであっても、二つの技法を同時に一つの技法として組み込むという技術は、見た事も聞いた事もない様子であった。
しかしミスズ達のように一つの技法を極限まで鍛え上げて研磨を繰り返し研鑽に研鑽を重ねあげる事と『魔族』の扱う『二色の併用』のように、複数の違う技法を同時に具現化しそれを平等に扱えるように、自身の魔力を精密にコントロールをして、別々の技法を一つの技法として再構築をする事もまた、前者の難度とはまた違うベクトルで拮抗する程の難度を誇っている。
「ミスズ殿、この後のヌーから目を離さぬように見ておくとよいぞ。お主程の洞察力を持つ者であれば、色々と気付ける事もあるだろう」
「今ヌー殿が行われている事も本来であれば相当に負荷が掛かっているだろうと感じられるのですが、この状態からまだ何か彼は行うというのでしょうか……」
あっさりと『二色の併用』を行って見せているヌーを見ていたミスズは、その『魔力』のコントロール自体に理解が及ばなくても、やっている事の難しさは『天色』の上を行く『瑠璃』という一つの『青』の到達点を経験している彼女には難しさ自体は理解が出来ていた。
しかしまさかこの『青』と『紅』を同時に行っている状態から、ソフィはこの後は目を離すなと告げて来た為に、ここからまだ何かあるのかとミスズはズレ落ちそうになる眼鏡を手で支えながらゴクリと唾を呑み込むのだった。
……
……
……
(『煌鴟梟』の者達が居た場所であやつが、初めて体現を果たした『三色』の内の一つの青だな)
これまでソフィはその鮮やかな『青』を見ていても、これまでの『浅葱色』のような淡い青との効力の違いなどは気にした事はなく、彼自身の強さの所為で同じ『青』でも性能が変わるという事に気づく事はなかった。しかしこうして第三者であるヌーが『三色併用』に到達した事で『青』の中でも多種多様の違いがある事を明確に理解するに至ったのである。
このヌーが纏っている鮮明な『青』こそは『漏出』等で相手の魔力値や戦力値測定出来る魔法では『浅葱色』と数値上での変化は見受けられないが、実際に戦闘を行えば相手はその『青』を纏った者の耐久性の変化に驚く事であろう。防御力向上の性能が淡い青とは違いすぎるのである。
「あの方も当たり前のように『天色』を纏えるのですね」
ヌーの『青』のオーラを見て、ミスズが『天色』と小さく口にしたのをソフィが耳聡く聞きつける。
「お主やナギリ殿も更にあの濃い『青』を纏う前に、今のヌーが纏っておる『青』を使っていたようだが、お主らの世界でもオーラというモノは我らの世界と同一なモノを使っているようだ」
「どうやらそのようですソフィ殿。しかし貴方がたの世界ではあのように『青色』に達する者達が、当たり前のように多く居るのですか? こちらの世界では少々会得するのに時間が掛かる程の扱いなのですが……」
どうやらあの鮮明な『青』の事をミスズ殿達の世界では、その彩度の度合が表している色の濃さ通りに『天色』と呼んでいるようであった。
「クックック、まさか。我らの世界でもお主らの言う『天色』とやらに、こうして辿り着けている者は限られておるよ。我とてあの『青』を使ってはおったが、淡い方の『青』との明確な違いなど今でも詳しくは存じて居らぬ」
ソフィの言葉を聞いたミスズは少しだけ驚いた様子で、視線をヌーからソフィに移すのだった。
「そ、そうですか」
(『浅葱色』と『青色』では全く異なる効果の筈なのだけれど、ソフィ殿の中ではそこまで気にする程の事ではないという事なのかしら? 我々妖魔退魔師の間でも『天色』の会得までには相当の時間を要する事なのに……)
ソフィ達の居た世界『アレルバレル』の世界では、勿論到達している者も疎らには居たかもしれないが、それでもそこまで『天色』の領域に達している者が少なかった為、ソフィは比較する対象が居ない事から詳細は知らないと告げたつもりだったが、ミスズはソフィの言葉から『浅葱色』と『天色』の違い等は気に掛ける程の事でもないという風に言っていると捉えて勘違いを起こした様子であった。
「それにオーラにはその『天色』と呼ばれる『青』だけではないのだしな……」
ぼそりと付け加えるように呟いたソフィの言葉を聞いたミスズは、どういう事かと訊ねようとしたがその解答はソフィからではなく、ヌーが実際に纏い始めた事でミスズが謎に思った事は解消されていった。
鮮やかな『天色』を纏うヌーだったが、更にそのオーラに大元の『青』とは別の『色』が加えられていく。今度は鮮血のように紅い『柘榴色』をした魔族特有のオーラがヌーの『天色』の『青』に彩りを加えていく。
――この状態は『魔族』の多くが体現を果たす『二色の併用』という技法を用いた状態ではある。
しかし多くの『魔王』領域の使う『二色併用』と、このくっきりと鮮やかな色合いを周囲に放ち続けるヌーの『二色の併用』では、これもまた数値上は変わらないのだが、その効果自体が全く異なっている。
この状態のヌーで大魔王『最上位領域』に位置する『九大魔王』達を同時に数体相手に出来る程の強さを兼ね揃えているのだった――。
「ソフィ殿『天色』以外のオーラが彼に纏われている様ですが、あの真っ赤なオーラはどのような効力が施されるのですか?」
どうやらミスズは『青』のオーラにはソフィ達以上に詳しい様子ではあったが『紅』のオーラに対しては知識として何も持ってはいない様子であった。それも当然といえば当然かとソフィは内心で納得する。何故なら『紅』のオーラは本来『魔族』が纏う特有のオーラだったからである。
人間達が『青』を纏うという事は、過去に『エルシス』が使っていた事からも理解は出来ていたが『紅』を纏う『人間』は居ない。どうやら『魔族』以外に体現する事が出来る種族が居るとしたら、ソフィの知るところでいえば『龍族』くらいだろうか。
「あれは『紅』と呼ばれる我ら『魔族』が、研鑽と経験によって身につけられる最初の技法だ。お主が先程言っていた『青』の中でも研鑽の末に『天色』と呼ばれる力に変わるように『紅』も少し変貌を遂げていくようであるらしいぞ。あの『紅』もまた戦力値や『魔力』を大きく上昇させる事が出来るが『紅』は能力を向上させるというよりは、このように武器を持たぬとも武器を持つ者と対等に渡り合えるように手にオーラを纏わせて武器を具現させる使い方をするのが一般的だな」
そう言ってソフィは目の前のヌーのように、右手にオーラを纏わせて紅の創成具現を行って見せる。それを見たミスズは『特務』の訓練施設でソフィと戦った時の事を思い出すのであった。
(成程、あのようにオーラで武器を生み出して使っていたモノは、元々は我らの『天色』のようにオーラから派生させて使っているという事ですか。確かにそういう使い方が出来るのであれば、重宝される技法になり得るのでしょうが、一体どうやって二つのオーラを同時に扱っているのでしょうか?)
ミスズの悩んでいる事は、これまで多くの魔族達も直面してきていた問題であった。そしてこれは『理』の存在しない『ノックス』の世界に生きる『魔力』が乏しいミスズ達のような『人間』では、少しばかり理解に至るには難しい話になってしまうだろう。
研鑽の末に『天色』を身につけられる程の域に至っているミスズであっても、二つの技法を同時に一つの技法として組み込むという技術は、見た事も聞いた事もない様子であった。
しかしミスズ達のように一つの技法を極限まで鍛え上げて研磨を繰り返し研鑽に研鑽を重ねあげる事と『魔族』の扱う『二色の併用』のように、複数の違う技法を同時に具現化しそれを平等に扱えるように、自身の魔力を精密にコントロールをして、別々の技法を一つの技法として再構築をする事もまた、前者の難度とはまた違うベクトルで拮抗する程の難度を誇っている。
「ミスズ殿、この後のヌーから目を離さぬように見ておくとよいぞ。お主程の洞察力を持つ者であれば、色々と気付ける事もあるだろう」
「今ヌー殿が行われている事も本来であれば相当に負荷が掛かっているだろうと感じられるのですが、この状態からまだ何か彼は行うというのでしょうか……」
あっさりと『二色の併用』を行って見せているヌーを見ていたミスズは、その『魔力』のコントロール自体に理解が及ばなくても、やっている事の難しさは『天色』の上を行く『瑠璃』という一つの『青』の到達点を経験している彼女には難しさ自体は理解が出来ていた。
しかしまさかこの『青』と『紅』を同時に行っている状態から、ソフィはこの後は目を離すなと告げて来た為に、ここからまだ何かあるのかとミスズはズレ落ちそうになる眼鏡を手で支えながらゴクリと唾を呑み込むのだった。
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