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サカダイ編

1122.ソフィの思い付き

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「お主ら妖魔退魔師ようまたいましとやらは、相当に強いようだからな。流石にこのままの姿で戦うというワケにはいくまい」

「「このままの姿?」」

 戦う準備を行っていたナギリと腕を組んで二人の戦いを見ていたスオウの両名は、ソフィの気になる発言に同時に同じ言葉を吐き出す。既にソフィはこの世界で数度に渡り『魔神』を呼び出して自分の魔力を取り戻している。
 『妖魔召士ようましょうし』のチアキと戦った時、そのチアキの『魔瞳まどう』である『青い目ブルー・アイ』を解除する為に、ソフィは『第三形態』の姿をこの世界で見せたのであった。

 そのソフィはこのナギリと戦うのに必要な力は、最低でも第二形態の『』状態は必要だと考えている。

 更にそこから『三色併用』を用いれば、あのチアキの式の『英鬼えいき』を赤子扱いした程の力を有する事になる。実際にこれが『妖魔退魔師ようまたいまし』とは、初めての戦闘となるソフィだが、このサカダイの町で、大魔王ヌーを通してスオウの力を見ていた為に最低でも戦力値は4000億以上は必要だと算出したようであった。

 ――しかしソフィはそこまで考えた後、少しだけ新たな考えが頭を過るのだった。

 次の瞬間、ソフィの目が金色に変わったかと思うと同時に、ソフィの身体に『青』と『紅』それに『金色』のオーラが纏われ始める。

「むっ!」

 ソフィの様子が変貌したのを見たナギリは、その場から後ろへ跳躍し距離を取る。

「あのヌー殿と同じ力を使ったのかな……?」

 スオウはそう呟くと目を細めながらソフィに対して視線を鋭くし始めて、注意深く観察をするのだった。しかしソフィの様子が完全に変わるのはここからであった――。

 ソフィが『三色のオーラ』が纏われた後にそのオーラの中心から、黒いスパークのような物が入り始める。それがバチバチと音を鳴らしたかと思えば、瞬時に恐るべき魔力がそのオーラの周囲を駆け巡り始める。

 形態変化によって生じた膨大な魔力に、包み込まれたソフィの金色の目が眩さを増したかと思うと、ソフィの背中から漆黒の羽が生えるのであった。

「なっ……!?」

「こ、これは……」

 唐突に人間と遜色の無い身体をしていたソフィから漆黒の羽が生えた事で、事情を先に聞かされていたスオウですら目を丸くして驚きの声をあげたが、ソフィが『魔族』だという事を知らないナギリはそんな驚きで収まらない程に目を驚愕に色を染めていた。

 【種族:魔族 名前:ソフィ第二形態(真なる大魔王化)魔力値:5550億
 状態:『三色併用』 戦力値:5700億 地位:アレルバレルの王】。

 この状態のソフィは妖魔召士のチアキの『式』である『英鬼えいき』と戦った時と全く同じ魔力と力を開放している。

 当然戦力値コントロールを行えばこれでもまだ、この形態で更に力を増す事はこれまででも可能な事であったが、この状態から更にソフィはこの世界で学んだとある事を取り入れようと考え始める。

 そしてそれは実際にヌーの『三色併用』を客観的に捉えられた事によるソフィなりの思い付きの行動であったが、この後その思い付きによる行動で大魔王ソフィはこの世界で『新たな力の使い方』に、目覚める事となった。

 訓練場を壊さぬようにソフィは、完全に魔力コントロールを用いながら余波を外に出さずに、自身の周囲にのみ影響を抑え込みながら、ソフィは更に別の事に『魔力』を費やし始めた。

「どうやらソフィ殿の言っていた話は本当の事だったか。あの姿は魔族だという話を聞かされていなければ、妖魔と勘違いしてしまうね」

 この『ノックス』の世界に『魔族』という種族は存在しておらず、また『アレルバレル』や『リラリオ』のような別世界の人間達のように、相手の魔力や戦力値を数値化する事の出来る『魔法』なども存在しない為、今のソフィのように姿形の変貌を遂げた姿に注視してそう口にするのであった。

(だ、旦那が力を開放した姿は、何度見ても恐ろしいぜ。正確に戦力値を測って見てみたいところだが、今の俺が旦那に『漏出サーチ』なんざ使ったら脳が焼き切れちまって、即座に俺はあの世行きになっちまうんだろうしな)

 ソフィが魔族だという事を知っている身内である筈のセルバスでさえ、今の第二形態で『真なる大魔王化』の形態変化を施しているソフィを見て、その力の膨大さに隣で魔族という存在に驚いているスオウと同じように驚きながらもセルバスは、内心でソフィの戦力値を知りたいと考えるのであった。

「成程、あんたはただの人間じゃないとは門の前で見た時、直ぐに理解は出来たがまさか本当の意味で人間じゃなかったなんてな……!」

 さっきまでのナギリはソフィに対して、手加減をする為にどれ程の力で相対しようかとそう考えていたのだが、彼に目の前で妖魔でいえばランク『5』以上の力の片鱗をこうして見せつけられてしまい、ナギリの手加減をするという考えは頭の片隅へと追いやられてしまい、本気で彼は刀を構え始めるのであった。
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