1,068 / 1,915
サカダイ編
1051.互いの組織の事情
しおりを挟む
「ねぇイダラマ。君の言う通りにしていれば元の世界へ帰る事の出来る『転置宝玉』をくれるというから僕は君と行動を共にしているんだよ?」
『妖魔山』へと向かいながら苛立ちを隠そうともせずに、隣に居るイダラマに苦言を呈するのは、青髪をした少年『エヴィ』であった。
当初の予定では『ゲンロクの里』の襲撃後、直ぐにサカダイに向かい『妖魔退魔師』の組織で話し合いを終えた後、彼はマジックアイテムの『転置宝玉』を渡してもらい、そこでイダラマと別れるつもりであった。
あくまでゲンロクの里から『転置宝玉』を奪う協力と、サカダイの『妖魔退魔師』達との会合が終わるまでの護衛のつもりだったのである。
しかしその『妖魔退魔師』の会合を終えた今も、その護衛の協力をイダラマから告げられた為に、こうして不満を述べていたのである。
「ああ、分かっているよ『麒麟児』。今回の事が終われば、約束通りお前に『転置宝玉』を渡す。だから今はもう少し協力をしてくれないだろうか」
エヴィは静かにイダラマを見つめて、無言で真意を確かめる。どうやら本当に彼の言葉には、偽りがあるようには見えなかった。
「分かったよ……」
溜息を吐いたエヴィは、もう少しだけ彼に従う事にするのだった。元『予備群』のアコウとウガマは『イダラマ』とエヴィの様子に顔を見合わせて笑顔を浮かべ合う。
どうやらエヴィが契約違反だと告げて暴れるんじゃないかと、互いに心の中で懸念を抱いていたようで、もう少し護衛の延長をするという事をイダラマに約束してくれたエヴィに、ほっと一安心した様子であった。
イダラマ達が妖魔山に向かっている理由は、先日サカダイの『妖魔退魔師』組織との間で行われた会合でイダラマが提示した『妖魔山』の管理についての話が大きく前に進んだ為である。
……
……
……
――イダラマとエヴィ達が『妖魔山』へと向かう前に時は遡る。
あの会合の最後に『妖魔退魔師』の総長『シゲン』と、副総長の『ミスズ』は直ぐに返事をする事は出来ないとイダラマに告げた。
しかしサカダイの領地内に入り込んだ事に対して元々『妖魔退魔師』側は『妖魔召士』側と会合をするという予定は立っていた為、今回の事を一応留意した上で、ミスズ達は最高幹部のヒノエに話を纏めてくるようにと命令を下したのだった。
そして総長、副総長から命令を受けたヒノエはこれを快諾して、自分の組の人間だけが居るヒノエ組の屯所へとこの話を持ち帰り、直ぐに副組長である『ヒナギク』を連れてゲンロクが居る里へと、向かうのであった。
…………
『妖魔召士』達が大勢見ている中、ゲンロクの里の中を『妖魔退魔師』達が歩いていく。
その数は凡そ十人程だろうか。彼らは自分達に注目する『妖魔召士』達を睨み返す。
『妖魔退魔師』達に睨まれた『妖魔召士』達は、悔しそうに顔を歪めて視線を逸らした。それを見た『妖魔退魔師』達の先頭を歩いている女性が足を止めて口を開いた。
「お前ら私達はあくまで話し合いに来たんだ。先に手を出すような真似をして、奴らに隙を見せるんじゃねぇぞ?」
ヒノエ組の者達は、組長のヒノエに釘を刺されて慌てて頷きを返すのだった。
『妖魔召士』達の里の中を我が物顔で歩く『妖魔退魔師』達。その先頭を歩いていくヒノエは、中央に建つ屋敷の前で足を止める。
屋敷の前で待っていた一人の男が『ヒノエ』達に頭を下げて一礼をした後、顔をあげると同時に無表情で口を開いた。
「ご足労頂きありがとうございます。既に皆集まっておりますので、どうぞ中へ……」
ヒノエにそう告げたのは、ゲンロクの側近である『妖魔召士』の男であった。
「ああ、案内を頼むぞ」
ヒノエは自分より二回り程は齢が上であろう『妖魔召士』の男にそう告げると、隣に居る『ヒナギク』の顔を一瞥する。
「貴方たちはここで待っていなさい」
「分かりました、お気をつけて」
どうやらゲンロク達の居る屋敷の中へは組長である『ヒノエ』と、副組長である『ヒナギク』の二人で入るようであった。
「それではこちらです」
『妖魔召士』の案内でヒノエとヒナギクは、ゲンロク達の待つ屋敷の中へと入って行くのであった。
『妖魔山』へと向かいながら苛立ちを隠そうともせずに、隣に居るイダラマに苦言を呈するのは、青髪をした少年『エヴィ』であった。
当初の予定では『ゲンロクの里』の襲撃後、直ぐにサカダイに向かい『妖魔退魔師』の組織で話し合いを終えた後、彼はマジックアイテムの『転置宝玉』を渡してもらい、そこでイダラマと別れるつもりであった。
あくまでゲンロクの里から『転置宝玉』を奪う協力と、サカダイの『妖魔退魔師』達との会合が終わるまでの護衛のつもりだったのである。
しかしその『妖魔退魔師』の会合を終えた今も、その護衛の協力をイダラマから告げられた為に、こうして不満を述べていたのである。
「ああ、分かっているよ『麒麟児』。今回の事が終われば、約束通りお前に『転置宝玉』を渡す。だから今はもう少し協力をしてくれないだろうか」
エヴィは静かにイダラマを見つめて、無言で真意を確かめる。どうやら本当に彼の言葉には、偽りがあるようには見えなかった。
「分かったよ……」
溜息を吐いたエヴィは、もう少しだけ彼に従う事にするのだった。元『予備群』のアコウとウガマは『イダラマ』とエヴィの様子に顔を見合わせて笑顔を浮かべ合う。
どうやらエヴィが契約違反だと告げて暴れるんじゃないかと、互いに心の中で懸念を抱いていたようで、もう少し護衛の延長をするという事をイダラマに約束してくれたエヴィに、ほっと一安心した様子であった。
イダラマ達が妖魔山に向かっている理由は、先日サカダイの『妖魔退魔師』組織との間で行われた会合でイダラマが提示した『妖魔山』の管理についての話が大きく前に進んだ為である。
……
……
……
――イダラマとエヴィ達が『妖魔山』へと向かう前に時は遡る。
あの会合の最後に『妖魔退魔師』の総長『シゲン』と、副総長の『ミスズ』は直ぐに返事をする事は出来ないとイダラマに告げた。
しかしサカダイの領地内に入り込んだ事に対して元々『妖魔退魔師』側は『妖魔召士』側と会合をするという予定は立っていた為、今回の事を一応留意した上で、ミスズ達は最高幹部のヒノエに話を纏めてくるようにと命令を下したのだった。
そして総長、副総長から命令を受けたヒノエはこれを快諾して、自分の組の人間だけが居るヒノエ組の屯所へとこの話を持ち帰り、直ぐに副組長である『ヒナギク』を連れてゲンロクが居る里へと、向かうのであった。
…………
『妖魔召士』達が大勢見ている中、ゲンロクの里の中を『妖魔退魔師』達が歩いていく。
その数は凡そ十人程だろうか。彼らは自分達に注目する『妖魔召士』達を睨み返す。
『妖魔退魔師』達に睨まれた『妖魔召士』達は、悔しそうに顔を歪めて視線を逸らした。それを見た『妖魔退魔師』達の先頭を歩いている女性が足を止めて口を開いた。
「お前ら私達はあくまで話し合いに来たんだ。先に手を出すような真似をして、奴らに隙を見せるんじゃねぇぞ?」
ヒノエ組の者達は、組長のヒノエに釘を刺されて慌てて頷きを返すのだった。
『妖魔召士』達の里の中を我が物顔で歩く『妖魔退魔師』達。その先頭を歩いていくヒノエは、中央に建つ屋敷の前で足を止める。
屋敷の前で待っていた一人の男が『ヒノエ』達に頭を下げて一礼をした後、顔をあげると同時に無表情で口を開いた。
「ご足労頂きありがとうございます。既に皆集まっておりますので、どうぞ中へ……」
ヒノエにそう告げたのは、ゲンロクの側近である『妖魔召士』の男であった。
「ああ、案内を頼むぞ」
ヒノエは自分より二回り程は齢が上であろう『妖魔召士』の男にそう告げると、隣に居る『ヒナギク』の顔を一瞥する。
「貴方たちはここで待っていなさい」
「分かりました、お気をつけて」
どうやらゲンロク達の居る屋敷の中へは組長である『ヒノエ』と、副組長である『ヒナギク』の二人で入るようであった。
「それではこちらです」
『妖魔召士』の案内でヒノエとヒナギクは、ゲンロク達の待つ屋敷の中へと入って行くのであった。
0
お気に入りに追加
424
あなたにおすすめの小説
豪華地下室チートで異世界救済!〜僕の地下室がみんなの憩いの場になるまで〜
自来也
ファンタジー
カクヨム、なろうで150万PV達成!
理想の家の完成を目前に異世界に転移してしまったごく普通のサラリーマンの翔(しょう)。転移先で手にしたスキルは、なんと「地下室作成」!? 戦闘スキルでも、魔法の才能でもないただの「地下室作り」
これが翔の望んだ力だった。
スキルが成長するにつれて移動可能、豪華な浴室、ナイトプール、釣り堀、ゴーカート、ゲーセンなどなどあらゆる物の配置が可能に!?
ある時は瀕死の冒険者を助け、ある時は獣人を招待し、翔の理想の地下室はいつのまにか隠れた憩いの場になっていく。
※この作品は小説家になろう、カクヨムにも投稿しております。
ユーヤのお気楽異世界転移
暇野無学
ファンタジー
死因は神様の当て逃げです! 地震による事故で死亡したのだが、原因は神社の扁額が当たっての即死。問題の神様は気まずさから俺を輪廻の輪から外し、異世界の神に俺をゆだねた。異世界への移住を渋る俺に、神様特典付きで異世界へ招待されたが・・・ この神様が超適当な健忘症タイプときた。
テンプレな異世界を楽しんでね♪~元おっさんの異世界生活~【加筆修正版】
永倉伊織
ファンタジー
神の力によって異世界に転生した長倉真八(39歳)、転生した世界は彼のよく知る「異世界小説」のような世界だった。
転生した彼の身体は20歳の若者になったが、精神は何故か39歳のおっさんのままだった。
こうして元おっさんとして第2の人生を歩む事になった彼は異世界小説でよくある展開、いわゆるテンプレな出来事に巻き込まれながらも、出逢いや別れ、時には仲間とゆる~い冒険の旅に出たり
授かった能力を使いつつも普通に生きていこうとする、おっさんの物語である。
◇ ◇ ◇
本作は主人公が異世界で「生活」していく事がメインのお話しなので、派手な出来事は起こりません。
序盤は1話あたりの文字数が少なめですが
全体的には1話2000文字前後でサクッと読める内容を目指してます。
異世界で魔法が使えるなんて幻想だった!〜街を追われたので馬車を改造して車中泊します!〜え、魔力持ってるじゃんて?違います、電力です!
あるちゃいる
ファンタジー
山菜を採りに山へ入ると運悪く猪に遭遇し、慌てて逃げると崖から落ちて意識を失った。
気が付いたら山だった場所は平坦な森で、落ちたはずの崖も無かった。
不思議に思ったが、理由はすぐに判明した。
どうやら農作業中の外国人に助けられたようだ。
その外国人は背中に背負子と鍬を背負っていたからきっと近所の農家の人なのだろう。意外と流暢な日本語を話す。が、言葉の意味はあまり理解してないらしく、『県道は何処か?』と聞いても首を傾げていた。
『道は何処にありますか?』と言ったら、漸く理解したのか案内してくれるというので着いていく。
が、行けども行けどもどんどん森は深くなり、不審に思い始めた頃に少し開けた場所に出た。
そこは農具でも置いてる場所なのかボロ小屋が数軒建っていて、外国人さんが大声で叫ぶと、人が十数人ゾロゾロと小屋から出てきて、俺の周りを囲む。
そして何故か縄で手足を縛られて大八車に転がされ……。
⚠️超絶不定期更新⚠️
はずれスキル『本日一粒万倍日』で金も魔法も作物もなんでも一万倍 ~はぐれサラリーマンのスキル頼みな異世界満喫日記~
緋色優希
ファンタジー
勇者召喚に巻き込まれて異世界へやってきたサラリーマン麦野一穂(むぎのかずほ)。得たスキルは屑(ランクレス)スキルの『本日一粒万倍日』。あまりの内容に爆笑され、同じように召喚に巻き込まれてきた連中にも馬鹿にされ、一人だけ何一つ持たされず荒城にそのまま置き去りにされた。ある物と言えば、水の樽といくらかの焼き締めパン。どうする事もできずに途方に暮れたが、スキルを唱えたら水樽が一万個に増えてしまった。また城で見つけた、たった一枚の銀貨も、なんと銀貨一万枚になった。どうやら、あれこれと一万倍にしてくれる不思議なスキルらしい。こんな世界で王様の助けもなく、たった一人どうやって生きたらいいのか。だが開き直った彼は『住めば都』とばかりに、スキル頼みでこの異世界での生活を思いっきり楽しむ事に決めたのだった。
【しっかり書き換え版】『異世界でたった1人の日本人』~ 異世界で日本の神の加護を持つたった1人の男~
石のやっさん
ファンタジー
12/17 13時20分 HOT男性部門1位 ファンタジー日間 1位 でした。
ありがとうございます
主人公の神代理人(かみしろ りひと)はクラスの異世界転移に巻き込まれた。
転移前に白い空間にて女神イシュタスがジョブやスキルを与えていたのだが、理人の番が来た時にイシュタスの顔色が変わる。「貴方神臭いわね」そう言うと理人にだけジョブやスキルも与えずに異世界に転移をさせた。
ジョブやスキルの無い事から早々と城から追い出される事が決まった、理人の前に天照の分体、眷属のアマ=テラス事『テラスちゃん』が現れた。
『異世界の女神は誘拐犯なんだ』とリヒトに話し、神社の宮司の孫の理人に異世界でも生きられるように日本人ならではの力を授けてくれた。
ここから『異世界でたった1人の日本人、理人の物語』がスタートする
「『異世界でたった1人の日本人』 私達を蔑ろにしチート貰ったのだから返して貰いますね」が好評だったのですが...昔に書いて小説らしくないのでしっかり書き始めました。
異世界転移しましたが、面倒事に巻き込まれそうな予感しかしないので早めに逃げ出す事にします。
sou
ファンタジー
蕪木高等学校3年1組の生徒40名は突如眩い光に包まれた。
目が覚めた彼らは異世界転移し見知らぬ国、リスランダ王国へと転移していたのだ。
「勇者たちよ…この国を救ってくれ…えっ!一人いなくなった?どこに?」
これは、面倒事を予感した主人公がいち早く逃げ出し、平穏な暮らしを目指す物語。
なろう、カクヨムにも同作を投稿しています。
異世界転生~チート魔法でスローライフ
リョンコ
ファンタジー
【あらすじ⠀】都会で産まれ育ち、学生時代を過ごし 社会人になって早20年。
43歳になった主人公。趣味はアニメや漫画、スポーツ等 多岐に渡る。
その中でも最近嵌ってるのは「ソロキャンプ」
大型連休を利用して、
穴場スポットへやってきた!
テントを建て、BBQコンロに
テーブル等用意して……。
近くの川まで散歩しに来たら、
何やら動物か?の気配が……
木の影からこっそり覗くとそこには……
キラキラと光注ぐように発光した
「え!オオカミ!」
3メートルはありそうな巨大なオオカミが!!
急いでテントまで戻ってくると
「え!ここどこだ??」
都会の生活に疲れた主人公が、
異世界へ転生して 冒険者になって
魔物を倒したり、現代知識で商売したり…… 。
恋愛は多分ありません。
基本スローライフを目指してます(笑)
※挿絵有りますが、自作です。
無断転載はしてません。
イラストは、あくまで私のイメージです
※当初恋愛無しで進めようと書いていましたが
少し趣向を変えて、
若干ですが恋愛有りになります。
※カクヨム、なろうでも公開しています
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる