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封印式神編
770.強い味方
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「今回はここまでにするとしよう」
リディアの戦意が失われた事を察したサイヨウは、試合の終わりを告げる。
鬼女はその宣言を聞いた後、脅える様子を見せるリディアを見下すような視線で一瞥し鼻を鳴らした後にサイヨウの手によって消えていった。
リディアは鬼女が消えたのを確認しオーラを消しながら、その場で何かを考えるように立っていたが、やがて何も言わずにこの場から離れて行くのだった。
その後ろ姿を見ながら追いかけようとするラルフだったが、レアがラルフを制止する。
「ラルフちゃん? 今は放っておきなさぁい。今追いかけるとどちらも後悔するわよぉ」
「レアさん……」
ラルフはレアに軽く手を掴まれてそう制止されて、この場からゆっくりとその姿を消していくリディアの後ろ姿を眺め続けるのだった。
……
……
……
「ちょっと外に出て来るね」
「ええ、いってらっしゃいな」
――ここはレイズ城の最上階。
鬼女と戦っているところを見ていた二人は短く会話を交わした。ユファがラルフの師であるように、エルシスはリディアを後継に選んだ。
いつかソフィの願望を叶える事を前提とした修行は、リディアを成長させる事に成功はさせた。当分の間は追加の修行をせずとも最低限、誰が相手でも負けないだろうと踏んではいた。しかしエルシスの見立てを越えて、まさかこんなにも早くリディアに壁が訪れるとは思わなかった。
だが、この壁はエルシスの想定していた壁ではなかったのである。もっとそれ以前の話であり、今程のリディアの強さに達する者であれば、既に経験を済ませている筈の壁。
――『強敵と戦う時の恐怖心』という壁である。
「彼はソフィ様と戦ったことがある筈だけど、その時は、恐怖を感じなかったのかしら……?」
ユファは一人残されたレイズの会議室の窓際に立ちながら、そんな事は無い筈だと思う反面、最初から強き者であれば可能性はあるのかもしれないと考える。
「まぁ彼の事はエルシスが何とかするでしょう。むしろこっちの方がやるべきことが多そうね」
溜息を吐きながらユファは、中庭に居る愛弟子を見て複雑そうにそう独り言つのだった。
各々の弟子は強くなる為の道を歩み始めたが、その険しい道のりをまだたった一人では乗り越えられる程の強さを身につけていない。しかし彼らは幸福であるといえるだろう。
立ち止まった時に背中を押してくれる『強い味方』がついているのだから。
……
……
……
その頃レアと別れた後、ラルグ魔国にあるセグンスの自分の屋敷でソフィは、リーネとベッドの上で話をしていた。
彼は自分の最愛の妻となったリーネの顔を見て声を聴き、そして互いの身を交わした事で束の間の安らぎを得ていた。
「それでソフィ。私に何か話したい事があるんじゃないの?」
隣に居るリーネが突然そんな事を言った為、ソフィは静かに笑った。
「クックック……、何故お主には分かるのだろうな」
「あら、多分私だけではないわよ? 貴方の事をよく知る人達は、みんな気づいている」
そう断言するように告げるリーネの言葉を聞きながら、ソフィはイリーガルやエイネ。ブラスト達の顔が思い浮かんだ。
「そうかもしれぬ、な」
「多分その人たちは、あなたがこの世界に来ることを知って、私にあなたの事を任せようとしたのね。だからその思いは妻として、私の権利として有難く頂戴する事にするわ」
そう言ってリーネはピタリとソフィの身体にくっついてきて、そのままソフィの顔を覗き込んでくるのだった。
リーネはソフィが納得するまで話を聞くつもりなのだろう。どんな話でも最後まで付き合うという覚悟をリーネは覗き込む顔に垣間見せるのだった。
そんなリーネの顔を見ながらソフィは静かに口を開いた。これまでは近しい配下にすら言わなかった本音。心の吐露をリーネに聞かせるのであった。
……
……
……
リディアの戦意が失われた事を察したサイヨウは、試合の終わりを告げる。
鬼女はその宣言を聞いた後、脅える様子を見せるリディアを見下すような視線で一瞥し鼻を鳴らした後にサイヨウの手によって消えていった。
リディアは鬼女が消えたのを確認しオーラを消しながら、その場で何かを考えるように立っていたが、やがて何も言わずにこの場から離れて行くのだった。
その後ろ姿を見ながら追いかけようとするラルフだったが、レアがラルフを制止する。
「ラルフちゃん? 今は放っておきなさぁい。今追いかけるとどちらも後悔するわよぉ」
「レアさん……」
ラルフはレアに軽く手を掴まれてそう制止されて、この場からゆっくりとその姿を消していくリディアの後ろ姿を眺め続けるのだった。
……
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「ちょっと外に出て来るね」
「ええ、いってらっしゃいな」
――ここはレイズ城の最上階。
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いつかソフィの願望を叶える事を前提とした修行は、リディアを成長させる事に成功はさせた。当分の間は追加の修行をせずとも最低限、誰が相手でも負けないだろうと踏んではいた。しかしエルシスの見立てを越えて、まさかこんなにも早くリディアに壁が訪れるとは思わなかった。
だが、この壁はエルシスの想定していた壁ではなかったのである。もっとそれ以前の話であり、今程のリディアの強さに達する者であれば、既に経験を済ませている筈の壁。
――『強敵と戦う時の恐怖心』という壁である。
「彼はソフィ様と戦ったことがある筈だけど、その時は、恐怖を感じなかったのかしら……?」
ユファは一人残されたレイズの会議室の窓際に立ちながら、そんな事は無い筈だと思う反面、最初から強き者であれば可能性はあるのかもしれないと考える。
「まぁ彼の事はエルシスが何とかするでしょう。むしろこっちの方がやるべきことが多そうね」
溜息を吐きながらユファは、中庭に居る愛弟子を見て複雑そうにそう独り言つのだった。
各々の弟子は強くなる為の道を歩み始めたが、その険しい道のりをまだたった一人では乗り越えられる程の強さを身につけていない。しかし彼らは幸福であるといえるだろう。
立ち止まった時に背中を押してくれる『強い味方』がついているのだから。
……
……
……
その頃レアと別れた後、ラルグ魔国にあるセグンスの自分の屋敷でソフィは、リーネとベッドの上で話をしていた。
彼は自分の最愛の妻となったリーネの顔を見て声を聴き、そして互いの身を交わした事で束の間の安らぎを得ていた。
「それでソフィ。私に何か話したい事があるんじゃないの?」
隣に居るリーネが突然そんな事を言った為、ソフィは静かに笑った。
「クックック……、何故お主には分かるのだろうな」
「あら、多分私だけではないわよ? 貴方の事をよく知る人達は、みんな気づいている」
そう断言するように告げるリーネの言葉を聞きながら、ソフィはイリーガルやエイネ。ブラスト達の顔が思い浮かんだ。
「そうかもしれぬ、な」
「多分その人たちは、あなたがこの世界に来ることを知って、私にあなたの事を任せようとしたのね。だからその思いは妻として、私の権利として有難く頂戴する事にするわ」
そう言ってリーネはピタリとソフィの身体にくっついてきて、そのままソフィの顔を覗き込んでくるのだった。
リーネはソフィが納得するまで話を聞くつもりなのだろう。どんな話でも最後まで付き合うという覚悟をリーネは覗き込む顔に垣間見せるのだった。
そんなリーネの顔を見ながらソフィは静かに口を開いた。これまでは近しい配下にすら言わなかった本音。心の吐露をリーネに聞かせるのであった。
……
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