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更なる成長を果たした魔王編

482.ソフィからの提案

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 上空に居るソフィ達を地上から見ていた『ディアトロス』は、愉快げに笑い始めた。

「カッカッカ! ワシの『虚構の世界』をあっさりと防いだあやつが、ソフィの『超越魔法』でなら一発かよ」

「さ、流石はソフィ様……」

「親分が本気で魔法を放てば『魔神』の『結界』すら持たぬか」

 九大魔王の面々が各々呟く中『魔王』レアは、ソフィと戦った過去のトラウマが蘇ってしまい、頭が混乱して泣きそうな表情を浮かべるのだった。

 …………

「選択肢だと?」

「うむ。お主らを従えておるミラのところへ、素直に我を案内するか……」

 そこで一度言葉を区切り、強調するかのように声を出す。



 その二択は組織の魔族として選ぶには、余りにも冷酷な選択肢であった。どちらを選んでも今後『ハワード』は、生きてはいけない程の苦痛を長い期間味わう事となるだろう。

 あらゆる世界に突如現れるという『魔神』はそれぞれが、あらゆる力を持っていると言われている。そして今目の前に居る『力の魔神』は戦う力を司る魔神であり、その名の通り相手の『魔力』を奪う。

 魔神と契約している者は少なからず過去にも居たが、現在この魔神は大魔王ソフィと契約している事により、その気になれば命令一つで相手の『生きる力』すらも奪ってみせるだろう。
 それ程の力を『

 こうなった以上『ハワード』は、ミラの元へ素直にこの化け物を案内する他ないだろう。

 魔族の長い長い余生を『力』を奪われたままで生きていく事は、数多の世界を支配した彼にとっては『死』よりも辛い屈辱を味わう事となる。

 だが、ハワードから返ってきた言葉は、ソフィが思っていた言葉とは違っていた。

「俺のは、その二つのどちらでもないな」

 そう言うと今まで戦う心が折れて動かなかった『ハワード』の目に光が戻った。

「総帥を裏切るくらいならば、あえてこの場でっ!」

 再び『ハワード』はサーベルを具現化したかと思うと『高速転移』でその場から一瞬で姿を消して真っすぐに、意識を失っているシスの元へ向かっていく。

 どうやら『ハワード』は『死』を覚悟しながらもを亡き者にしようと考えたのだろう。

「死ねぇっ!」

 ハワードは目を金色にしながら『シス』を支えて居たレアごと『創成具現』で創り出した『サーベル』で串刺しにしようとする。

 ――しかし、ハワードの得物がシス達の心臓を貫く事はなかった。

 いつの間にかレア達の前に移動したソフィが、ハワードのサーベルを掴んだからである。

「くっ……! クククッ! ば、化け物めがぁっ!」

 ソフィは掴んでいるサーベルを燃やし尽くしたかと思うと、そのまま右手でハワードの顔を掴みあげた。そしてそのまま強引に腕を横に振ると『ハワード』の

「気が変わった。このまま楽にしてやろう」

 ソフィがそう呟くと、右手に魔力を込めて持っていた『ハワード』の首を燃やし尽くした。

 ――「『』」。

 絶命したハワードの魂が『代替身体だいたいしんたい』へと向かおうとしたが、その場で『魔神』によって阻まれる。

 生み出された『魔神』の魔力のオーラのようなもので、ハワードの魂は幽閉されたのであった。

「――?」

 魔神はこの世界とは違う言語でソフィの心に直接語り掛ける。

 (この魂はどうするの?)といったところだろう。

『力の魔神』は自分の主である、ソフィの言葉を一語一句聞き逃すまいとしながら、ゆっくりとソフィの言葉を待つのだった。

『空間除外』を使わずとも『ソフィ』の魔力が宿る魔神の力をもってすれば、魔族の魂など思いのままである。

「消滅させて構わぬ」

 ソフィの呟きと共に魔神は笑みを浮かべたかと思うと一気に『力』を加える。幽閉されていた『ハワード』の魂は浄化されたかの如く、光に包まれながら空高く上がっていき『魔神』が一層表情を険しく変えたかと思えば、次の瞬間には吹き荒れる『魔力圧』が具現化されて一気に『ハワード』の魂は消滅させられるのだった。

 ――こうして組織の最高幹部であった『ハワード』は、生前の派手な生き方とは打って変わって、静かにその生涯を閉じる事となった。

 魔神はゆっくりとソフィの前まで現れると、左手でソフィの頬を優しく撫で這わせながら、恍惚の表情を浮かべて消えていくのだった。

 ソフィは魔神が消えて行くのを見届けた後に、ゆっくりと仲間達の方へと振り返る。ディアトロスはソフィを見て頷き、イリーガルはその場で跪いてリーシャはソフィに抱きつく。

 ――こうして『九大魔王』達は抜き身の刀が鞘に収まるかの如く、仕える主の元へと戻るのであった。

 この場でレアだけがソフィを見てぎこちない笑みを浮かべたかと思うと、恐怖で震える手を必死に伸ばして、ぎゅっとシスを掴むのであった。
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