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更なる成長を果たした魔王編
第七章の補足と訂正
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第七章の補足と訂正
▼第七章は組織の者達がついに本格的に動き出す章となりました。七章の前半ではレアがソフィの配下として生きていくために『リラリオ』の世界にある『ヴェルマー』大陸に戦争を仕掛けた事の償いをするというところから始まりました。
★『魔王レア』
第六章の舞台となった数千年前のリラリオの世界で、レパートの世界からフルーフの命令により世界を支配しに来たレアが、当時はまだ龍族どころか魔人や精霊族にさえ劣っていた魔族達を率いてたった数年で魔族をリラリオの頂点に位置する種族へとのし上げて、自身はリラリオの支配者として『原初の魔王』となりました。
しかし現代を生きるリラリオの魔族達の多くは、レアがそんな大それた魔族だという事は知りません。しかしラルグ魔国のNo.2である『レルバノン』や『レイズ』魔国の女王『シス』。そしてNo.3の『リーゼ』達は、レアが龍族の王『キーリ』に変わってこの世界の支配者となった、当時の事を知っている魔族達でした。
彼らの思いはそれぞれが異なり、元々レアが当初支配していた国の出身である『ラルグ』の魔国のレルバノンは、レアを尊敬するような態度で接した上でソフィの配下となる事に賛成しました。
しかしレイズ魔国の女王である『シス』は、母親である『セレス』からあまりレアの事を良くは聞かされていなかったために、償いを申し出るレアにあまりいい顔はしませんでした。
しかしながら家族同然であるユファから、レアを信用してあげて欲しいと言われた事に加えて、真摯に謝罪をしてこれから本気で建物の修繕などといった事をして償うと告げたレアに、渋々ではありましたが『シス』は納得することとなりました。
この後からレアは言葉通りに必死にレイズ魔国のために働き始めます。そしてそれとは別にレアの胸中では、シスの母親である『セレス』や、シスの祖母である『エリス』を思い出して『この子も私が強くしてあげたい』という気持ちを抱く事になります。
これが七章最初のお話で『幼き魔王の償い編』となります。
★『ルードリヒ国王エイル』
次にルードリヒ国王からの指名依頼を受けたAランク冒険者『リマルカ』が、ソフィに会うために『ミールガルド』大陸から『ヴェルマー』大陸へと渡ってきます。
ミールガルド大陸では、魔法使いとしてかなり有名になったリマルカでしたが、ヴェルマー大陸では早速初日に、ミールガルドとは明らかに強さのレベルの違う魔物達から洗礼を受ける事になりました。
ミールガルド大陸では『ギルド指定A』ランククラスの『ギールドッグ』に襲われてしまい、勲章ランクAクラスの者達が三人以上のパーティを組んで、ようやく倒せる相手にたった一人で挑まされて死を覚悟する事となりました。
そしてそんなリマルカでしたが、かつての『勲章Aランク』の先輩であった『スイレン』に、偶然助けられて九死に一生を得ることとなりました。そしてなんと彼は、同じ勲章ランクAだというのにリマルカが苦戦を強いられた魔物『ギールドッグ』数体をあっさりと倒してみせます。
ここが『ルードリヒ国王の指名依頼編』で、作者が記述したい本懐の部分だったのですが、ミールガルド大陸では『リディア』や『スイレン』といった、本物のAランクの強さを持つ冒険者たちが離れてしまい、上位の冒険者の多くがBランクの者達となってしまいます。そこで形式上の『勲章ランクA』の冒険者を大量に作り体裁を保つために、多くの緊急クエスト等をBランクの者達に与えて、強引に形だけの『勲章ランクA』を作り出し始めました。
上位冒険者を人数的にはこれによって補う事が出来ました。これにて『ミールガルド』大陸にある冒険者ギルドの至るところで、Aランク冒険者が在籍するという体裁は守られましたが、普段のクエスト程度であれば問題はなくとも、実際の彼らは実際には『Bランク』程の強さしかありません。それはルードリヒ国王から『指名依頼』を受けた『リマルカ』も例外ではなく『ヴェルマー』大陸で、当然の如く苦戦を強いられる事となりました。
実際に『ギールドッグ』は、本来の『勲章ランクA」』の者達であっても、三人程のパーティでなければ勝てる相手ではありません。そんな相手に実際の強さが『勲章ランクB』程度しかない『リマルカ』が、ギールドッグに勝てる道理はありませんでした。
作者はこの章では前半に国の在り方と冒険者ギルドの現状を書き、後半部分に山伏『サイヨウ・サガラ』の出会いの導入部分をどうしても書きたかったので、『指名依頼編』は少し長くなっております。今後どちらの話の展開も重要になって来るために、この『指名依頼編』は七章の大きなポイントとして見ていただけたらと思います。
(※それとは別に一章のギルド対抗戦でソフィと戦った『リマルカ』をもう一度出したかったという作者の思いも込められております。笑)。
次に国の在り方ですが、これはルードリヒの国王『エイル』との対談での話です。この国の在り方というテーマは実は、この作品の『裏のテーマ』と呼べるモノでもあり、実は第一章から目立たぬように少しずつこのテーマを散りばめていました。第一章ではスイレンの忍者の里に対しての統治と、ソフィの想う統治の方法などです。
この章ではエイルは『ルードリヒ』の歴史から続く統治の考え方として『君主制度』が挙げられました。
エイルの考え方としては 「民の為に王が道を開かねばならぬ』というこの君主制の考え方で、王みずからが決めた事を民に強いて導いていくというモノでした。
それに対してソフィもまた、自身の思想を語ります。
『国の発展は、民を無くして有るべくも無し』。
つまり王という立場に居る者は可能な限り民が良いと思った事を否定ではなく尊重すべきとして、そこに間違いがあるのならば、統治者としての責任をもって初めて否定を促すものとするという考え方です。
互いに国どころか生きていた世界が違うために、ソフィはエイルの持つ思想に干渉をするつもりではなく、こういう考え方もあるのだと告げました。エイルはこれまでこういった話を語った事がなく、ソフィの言葉に感銘を受けてこの章での対談で、民の意見を尊重することが大事なのではないかと考え始めました。
全てをソフィの云う通りにするつもりはもちろんエイルにもありませんが、真摯に受け止めて修正案が必要だと思う場面では今後はエイルは改善をしていく事でしょう。
しかしながらソフィ自身『アレルバレル』の世界でよかれと思って行ってきた『国の発展は、民を無くして有るべくも無し』という考え方に、勇者『マリス』が告げた『圧政』という言葉を未だに引きずっており、それがトラウマとなっていて本当の正しい統治とは何かと、出ている結論以外の考え方を模索している最中でもあります。
今後ソフィは納得のいく自身や守るべき民が、互いに正解だと思えるような統治に、行きつく事が出来ればよいのですが、それはまだこの時点では答えは出なさそうです。
★『山伏サイヨウ・サガラ』
そして『ルードリヒ国王の指名依頼編』の後半部分になりますが、ここで新キャラクターの山伏である『サイヨウ・サガラ』が出てきます。修験者である彼ですが、作中でもかなりの力量を持っています。
大賢者ミラの組織と同盟を結んでいる別の組織に属する男『ビラーノ』。彼もまた『代替身体』とはいっても『金色の体現者』であるレアをあっさりと倒して見せる程の実力を持っていましたが、サイヨウの前ではあっさりとやられてしまいます。
組織の者達に姑息な行動ばかりを取られて、苛立ちを見せるソフィの前に姿を現して、落ち着かせるように説法をソフィにします。
『悪』と『邪』の違いや、正と善について語るサイヨウですが、実はこのサイヨウは後述する予定である、この章の一番大きなテーマである『巡る魂』。
『輪廻転生』をするソフィの友人『エルシス』にとって重要性を持っているのです。内容は作中の通りですが、次章から再びこの『サイヨウ・サガラ』が登場しますので、覚えていただければ幸いです。
★『大魔王シス』
実は作者が第三章からずっと書きたくて仕方がなかった伏線をようやく第七章にて回収出来ました。作中でも少し出しましたが、大魔王シスには二つの魂が宿っています。
一つは元々の『セレス』から生を受けた時に抱いた本来の魂。そして『輪廻転生』によって『シス』の身体に宿った『エルシス』の魂です。
二つの魂を宿らせたまま生きていけば、いつかはシスの精神が持たず自我の崩壊へと誘われるために、エルシスの魂は因果を曲げるかの如く、自我を芽生えさせる事なくシスの内側に眠る事を選びました。
このまま大魔王シスは、本来の魂のまま生きていく事になる筈でしたが、不測の事態が起きてしまいます。こちらも作中で紹介した通りですが、家族同然であるヴェルトマーが、シーマの配下であるシュライダーに、目の前で残虐な殺され方をしてシスの精神が崩壊しかけてしまい、魂に大きなダメージを負ってしまった事で、肉体の死を迎えかけてしまったのです。
そしてシスの魂は、無意識に自分の肉体を守るために、精神の深淵に眠るエルシスの魂を追い出して代わりに深淵に引きこもってしまったのです。
そしてここが重要な補足の部分なのですが、この時にエルシスの魂がシスに宿っていなかった場合。シスはレアの告げた通り『憎悪の大魔王』となって『邪』に支配された邪悪な魔族になっていたという事です。
この時エルシスの魂がシスの肉体に宿っていなければ、今のレイズ魔国の女王『シス』は、居なくなっていた事でしょう。
次にシスの持つ『潜在する力』ですが、これは『エルシス』の魂とは何も関係がありません。
母親である『セレス』はレアの残したメモによって、あらゆる魔法を使えた事で『セレス』は『魔』を司る魔女として恐れられましたが『エリス』のように膨大な魔力を持っていなかったために、魔力値自体は大した事はありませんでした。
そして『シス』もまた幼少期の頃は指導をしていたリーゼが、シスの本当の力を見抜く事が出来なかったために大したことはないと思われていました。
それに伴って本人の性格が弱気な事もあり、自分は大した事のない魔族なんだと思ってしまい、本来の力に蓋をしてしまい、潜在する力に気づくことなく、成長してしまいました。
もし幼少期の頃にもっと早く『ヴェルトマー』がシスの前に現れて今のシスの年齢までずっと修行を重ねさせていたならば、祖母であり『魔』の天才であった『エリス』を遥かに凌ぐ魔族になっていた事でしょう。
さて、そのシスの持つ本来の力ですがどれ程の強さなのでしょうか。第三章で怒りによって体を突き動かされたシスが、ソフィを相手に無詠唱で複数の魔法を同時に発動させましたが、この時の時点でシスが神域魔法の『発動羅列』を会得していた場合、同じように複数の『神域魔法』を発動させることが出来ていたでしょう。
そして『シス』自身の恐ろしいところは、一度見た魔法の『発動羅列』を瞬時にトレース出来る事です。この技術を持つ者は作中では『エルシス』を除いて他にはいません。
つまりその点に関しては『ミラを越える程』の『魔』の才能をシスは持っているという事になります。
(※但しあくまで他人の『発動羅列』をトレースすることなので、自分自身で新たに『エルシス』や『フルーフ』のように新魔法の開発が、出来るわけではありません)。
大魔王シスが潜在する力を全て余すことなく使えるようになれば、師であるユファはおろか、エルシスさえも凌ぐ大賢者になる事も不可能ではないでしょう。
★『大賢者エルシス』
言わずと知れた『アレルバレル』の世界で、最強の人間にして最強の大魔王『ソフィ』の友人。人間にして『金色の体現者』であり『青』の練度も5.0に到達している。それだけに留まらず、あらゆる魔法を生み出しており、その最たるものが『神聖魔法』である。
かつての『アレルバレル』では二十歳という若さで、既に自分に匹敵する存在を見失った彼は、これ以上強くなったところで、自分で自分の強さを測る事が出来ないのではないかという不安を抱き、成長を諦めかけていた天才賢者。
第405話『最強の大魔王は人間に興味を抱く』にて、自身の強さを測る事の出来る存在。大魔王ソフィに出会い彼はついに指標を得る事となった。そして21歳の時に初めてソフィと戦い人生初めての敗北を知る。(この時のエルシスの金色纏い時の最大戦力値は2200億)。
このソフィとの死闘の後に彼はソフィと親友とも呼べる友になり、今度は彼がソフィの願いを叶えようとしてソフィのためだけに強くなるための修行を開始する。
そして三十歳に差し掛かろうという年齢になった頃『金色』と『青の混合二色』の体現に成功する。
しかしエルシスを以てしても、この力を長時間維持する事は難しく、結局数秒単位しか持たないために実戦ではこれ以降使う事はなかった。この時の最大瞬間戦力値は5500億を越えているが、もしエルシスの寿命が魔族程にあれば『混合二色』ではなく『青』と『金色』の『二色の併用』の体現に至りながらにして、戦闘で数分から数十分コントロールを続けられたことは間違いないでしょう。
そしてエルシスが五十歳を迎える頃。自分の寿命が持つ間に友人の願いを叶える事は不可能だと悟り、自分の人生自身に『は』悔いは無かったが、ソフィに孤独を感じさせてしまい、その事を想い悔み続ける日々を送り続けるが、遂にエルシスは寿命によってその生涯を終える。
★【大魔王リーシャ】
第369話『リーシャとの出会い』にて本作初登場。
当時五歳のリーシャは集落の試験のために、エイネの『名付け』魔物の『ボア』と戦っていたところにレアと出会い、レアに試験相手のボアを倒された事で喧嘩になる。
第六章後半。当初こそリーシャはレアを嫌っていたが、レアと生活をしていく上で面倒見のいいレアにどんどん惹かれていき、第415話『最後の別れと涙』にて、レアと別れる時まで涙を堪えたが、レアが『概念跳躍』で戻った後に大号泣をしてしまう。
大好きなレアにもらった髪留めを今でも大事につけている。
徐々にレアを失った悲しみに耐えられなくなり、自身の髪型や言葉遣いなどを無意識にレアに寄せていくリーシャだったが、その姿を見て恐ろしい程にエイネに心配されてしまい、それ以後エイネの前では以前の口調を心掛けている。
集落の長老バルドに裏切られたに、リーシャとエイネは集落を出て魔界中を旅しようとするが、ビル爺にソフィの『魔王軍』を紹介されてそのままソフィの配下となる。
一番最初に所属した時のリーシャの地位は、序列部隊でさえ入れず圏外だった。だが、一緒に魔王軍に所属した『エイネ』が、その『能力』を見込まれて『序列二桁・94位』に任命されたのを踏まえて、リーシャはおいて行かれないために死ぬ気で研鑽を積む。
『金色の体現』を果たした後、リーシャは『敵』を切り刻む時に発狂する事で有名となり、敵が動かなくなるまで止まる事なく攻撃をし続けるため、最初についた異名は『狂鬼』であった。リーシャが『九大魔王』に任命された後、先に『九大魔王』入りを果たしていたエイネと共に、かつてレア達と一緒に過ごした集落へと戻った。
だが、そこで組織の者達の襲撃にあい『リーシャ』を庇った『エイネ』は別世界へと跳ばされる事となった。
エイネとレア。そして多くの仲間や主であるソフィをも失った彼女は、組織の者達を延々と殺すために生き続けていた。
――第七章の補足と訂正は以上になります。
皆様お久しぶりです。羽海汐遠です。第六章後半のあとがきから、2か月程が経ちました。本当に月日が経つのは早いと感じる日々です。
第七章は冒頭でも述べましたが、ついに大賢者ミラが戦いの場に出てきました。それも相手がまさかソフィではなく、大賢者エルシスの魂が宿ったシスです! これを書いている時、本当に楽しくて楽しくて気が付けば5時間くらいぶっ通しで書いていました。笑。
エルシスはユファ並に思い入れがあり、この作品では初期の頃から名前だけは登場させていましたが、実際にこうして戦闘シーンを書くと感慨深いものがありました。
少しでも圧倒的感を出したくて、組織の面々をふんだんに使ってしまいましたね。実際にミラやハワード、そしてルビリスは九大魔王相手であっても、引けを取らない強さなのですが。
因みにこの作品のプロットを初期の頃に書き上げた時、エルシスの転生先をシスに決めた時に、名前でバレるかなぁと懸念が少しありましたが、読者の方の感想で、まさかリディアがエルシス? といった感想をいただき、ほっとしたのを覚えています。笑。
今回新しく『発動羅列』や『スタック』といった設定を試みたのですが、自分の思い描いた内容が文章として伝える事が出来ていれば嬉しいです。
『発動羅列』は簡単に言うと、『魔』の言語で表したプログラムのようなものです。完成した羅列の文言を『理』を用いて詠唱用に置き換えて発動させると魔法陣が出現して、そこで魔力を乗せると、魔法陣が高速回転をして魔法が発動する。といった風な物となります。
『スタック』は、魔力回路に込められた魔力を抜き出した後の状態で、魔法を頭の中で使おうと考える時に置いておく場所みたいなものです。(魔力回路から出しているので、ずっと放置しておくと消えます)。
例に挙げると、魔法を発動できる状況を作ったとして、いつでも『魔力』を込めるとその『魔法』が発動出来る状態が『待機状態』となります。
文章だと難しいですが『発動羅列』と『スタック』がなければ魔法は使えないという認識で大丈夫です。
次章では組織の者達は少しお休みとなり、再び物語は『リラリオ』の世界中心に戻ってきます。七章では出番が少なかったリディアや、ラルフ達にスポットライトを当てる予定ですが、ソフィにも遂に春がやってきます! お楽しみに! 笑。
それでは第七章のあとがきはここまでにしたいと思います。
SNSのDMやサイトでの感想。誤字脱字報告をしていただいた方々、ありがとうございます! また次回、第八章のあとがきでお会い出来る事を楽しみにしています!
それではお疲れ様でした!
作者:羽海汐遠。
▼第七章は組織の者達がついに本格的に動き出す章となりました。七章の前半ではレアがソフィの配下として生きていくために『リラリオ』の世界にある『ヴェルマー』大陸に戦争を仕掛けた事の償いをするというところから始まりました。
★『魔王レア』
第六章の舞台となった数千年前のリラリオの世界で、レパートの世界からフルーフの命令により世界を支配しに来たレアが、当時はまだ龍族どころか魔人や精霊族にさえ劣っていた魔族達を率いてたった数年で魔族をリラリオの頂点に位置する種族へとのし上げて、自身はリラリオの支配者として『原初の魔王』となりました。
しかし現代を生きるリラリオの魔族達の多くは、レアがそんな大それた魔族だという事は知りません。しかしラルグ魔国のNo.2である『レルバノン』や『レイズ』魔国の女王『シス』。そしてNo.3の『リーゼ』達は、レアが龍族の王『キーリ』に変わってこの世界の支配者となった、当時の事を知っている魔族達でした。
彼らの思いはそれぞれが異なり、元々レアが当初支配していた国の出身である『ラルグ』の魔国のレルバノンは、レアを尊敬するような態度で接した上でソフィの配下となる事に賛成しました。
しかしレイズ魔国の女王である『シス』は、母親である『セレス』からあまりレアの事を良くは聞かされていなかったために、償いを申し出るレアにあまりいい顔はしませんでした。
しかしながら家族同然であるユファから、レアを信用してあげて欲しいと言われた事に加えて、真摯に謝罪をしてこれから本気で建物の修繕などといった事をして償うと告げたレアに、渋々ではありましたが『シス』は納得することとなりました。
この後からレアは言葉通りに必死にレイズ魔国のために働き始めます。そしてそれとは別にレアの胸中では、シスの母親である『セレス』や、シスの祖母である『エリス』を思い出して『この子も私が強くしてあげたい』という気持ちを抱く事になります。
これが七章最初のお話で『幼き魔王の償い編』となります。
★『ルードリヒ国王エイル』
次にルードリヒ国王からの指名依頼を受けたAランク冒険者『リマルカ』が、ソフィに会うために『ミールガルド』大陸から『ヴェルマー』大陸へと渡ってきます。
ミールガルド大陸では、魔法使いとしてかなり有名になったリマルカでしたが、ヴェルマー大陸では早速初日に、ミールガルドとは明らかに強さのレベルの違う魔物達から洗礼を受ける事になりました。
ミールガルド大陸では『ギルド指定A』ランククラスの『ギールドッグ』に襲われてしまい、勲章ランクAクラスの者達が三人以上のパーティを組んで、ようやく倒せる相手にたった一人で挑まされて死を覚悟する事となりました。
そしてそんなリマルカでしたが、かつての『勲章Aランク』の先輩であった『スイレン』に、偶然助けられて九死に一生を得ることとなりました。そしてなんと彼は、同じ勲章ランクAだというのにリマルカが苦戦を強いられた魔物『ギールドッグ』数体をあっさりと倒してみせます。
ここが『ルードリヒ国王の指名依頼編』で、作者が記述したい本懐の部分だったのですが、ミールガルド大陸では『リディア』や『スイレン』といった、本物のAランクの強さを持つ冒険者たちが離れてしまい、上位の冒険者の多くがBランクの者達となってしまいます。そこで形式上の『勲章ランクA』の冒険者を大量に作り体裁を保つために、多くの緊急クエスト等をBランクの者達に与えて、強引に形だけの『勲章ランクA』を作り出し始めました。
上位冒険者を人数的にはこれによって補う事が出来ました。これにて『ミールガルド』大陸にある冒険者ギルドの至るところで、Aランク冒険者が在籍するという体裁は守られましたが、普段のクエスト程度であれば問題はなくとも、実際の彼らは実際には『Bランク』程の強さしかありません。それはルードリヒ国王から『指名依頼』を受けた『リマルカ』も例外ではなく『ヴェルマー』大陸で、当然の如く苦戦を強いられる事となりました。
実際に『ギールドッグ』は、本来の『勲章ランクA」』の者達であっても、三人程のパーティでなければ勝てる相手ではありません。そんな相手に実際の強さが『勲章ランクB』程度しかない『リマルカ』が、ギールドッグに勝てる道理はありませんでした。
作者はこの章では前半に国の在り方と冒険者ギルドの現状を書き、後半部分に山伏『サイヨウ・サガラ』の出会いの導入部分をどうしても書きたかったので、『指名依頼編』は少し長くなっております。今後どちらの話の展開も重要になって来るために、この『指名依頼編』は七章の大きなポイントとして見ていただけたらと思います。
(※それとは別に一章のギルド対抗戦でソフィと戦った『リマルカ』をもう一度出したかったという作者の思いも込められております。笑)。
次に国の在り方ですが、これはルードリヒの国王『エイル』との対談での話です。この国の在り方というテーマは実は、この作品の『裏のテーマ』と呼べるモノでもあり、実は第一章から目立たぬように少しずつこのテーマを散りばめていました。第一章ではスイレンの忍者の里に対しての統治と、ソフィの想う統治の方法などです。
この章ではエイルは『ルードリヒ』の歴史から続く統治の考え方として『君主制度』が挙げられました。
エイルの考え方としては 「民の為に王が道を開かねばならぬ』というこの君主制の考え方で、王みずからが決めた事を民に強いて導いていくというモノでした。
それに対してソフィもまた、自身の思想を語ります。
『国の発展は、民を無くして有るべくも無し』。
つまり王という立場に居る者は可能な限り民が良いと思った事を否定ではなく尊重すべきとして、そこに間違いがあるのならば、統治者としての責任をもって初めて否定を促すものとするという考え方です。
互いに国どころか生きていた世界が違うために、ソフィはエイルの持つ思想に干渉をするつもりではなく、こういう考え方もあるのだと告げました。エイルはこれまでこういった話を語った事がなく、ソフィの言葉に感銘を受けてこの章での対談で、民の意見を尊重することが大事なのではないかと考え始めました。
全てをソフィの云う通りにするつもりはもちろんエイルにもありませんが、真摯に受け止めて修正案が必要だと思う場面では今後はエイルは改善をしていく事でしょう。
しかしながらソフィ自身『アレルバレル』の世界でよかれと思って行ってきた『国の発展は、民を無くして有るべくも無し』という考え方に、勇者『マリス』が告げた『圧政』という言葉を未だに引きずっており、それがトラウマとなっていて本当の正しい統治とは何かと、出ている結論以外の考え方を模索している最中でもあります。
今後ソフィは納得のいく自身や守るべき民が、互いに正解だと思えるような統治に、行きつく事が出来ればよいのですが、それはまだこの時点では答えは出なさそうです。
★『山伏サイヨウ・サガラ』
そして『ルードリヒ国王の指名依頼編』の後半部分になりますが、ここで新キャラクターの山伏である『サイヨウ・サガラ』が出てきます。修験者である彼ですが、作中でもかなりの力量を持っています。
大賢者ミラの組織と同盟を結んでいる別の組織に属する男『ビラーノ』。彼もまた『代替身体』とはいっても『金色の体現者』であるレアをあっさりと倒して見せる程の実力を持っていましたが、サイヨウの前ではあっさりとやられてしまいます。
組織の者達に姑息な行動ばかりを取られて、苛立ちを見せるソフィの前に姿を現して、落ち着かせるように説法をソフィにします。
『悪』と『邪』の違いや、正と善について語るサイヨウですが、実はこのサイヨウは後述する予定である、この章の一番大きなテーマである『巡る魂』。
『輪廻転生』をするソフィの友人『エルシス』にとって重要性を持っているのです。内容は作中の通りですが、次章から再びこの『サイヨウ・サガラ』が登場しますので、覚えていただければ幸いです。
★『大魔王シス』
実は作者が第三章からずっと書きたくて仕方がなかった伏線をようやく第七章にて回収出来ました。作中でも少し出しましたが、大魔王シスには二つの魂が宿っています。
一つは元々の『セレス』から生を受けた時に抱いた本来の魂。そして『輪廻転生』によって『シス』の身体に宿った『エルシス』の魂です。
二つの魂を宿らせたまま生きていけば、いつかはシスの精神が持たず自我の崩壊へと誘われるために、エルシスの魂は因果を曲げるかの如く、自我を芽生えさせる事なくシスの内側に眠る事を選びました。
このまま大魔王シスは、本来の魂のまま生きていく事になる筈でしたが、不測の事態が起きてしまいます。こちらも作中で紹介した通りですが、家族同然であるヴェルトマーが、シーマの配下であるシュライダーに、目の前で残虐な殺され方をしてシスの精神が崩壊しかけてしまい、魂に大きなダメージを負ってしまった事で、肉体の死を迎えかけてしまったのです。
そしてシスの魂は、無意識に自分の肉体を守るために、精神の深淵に眠るエルシスの魂を追い出して代わりに深淵に引きこもってしまったのです。
そしてここが重要な補足の部分なのですが、この時にエルシスの魂がシスに宿っていなかった場合。シスはレアの告げた通り『憎悪の大魔王』となって『邪』に支配された邪悪な魔族になっていたという事です。
この時エルシスの魂がシスの肉体に宿っていなければ、今のレイズ魔国の女王『シス』は、居なくなっていた事でしょう。
次にシスの持つ『潜在する力』ですが、これは『エルシス』の魂とは何も関係がありません。
母親である『セレス』はレアの残したメモによって、あらゆる魔法を使えた事で『セレス』は『魔』を司る魔女として恐れられましたが『エリス』のように膨大な魔力を持っていなかったために、魔力値自体は大した事はありませんでした。
そして『シス』もまた幼少期の頃は指導をしていたリーゼが、シスの本当の力を見抜く事が出来なかったために大したことはないと思われていました。
それに伴って本人の性格が弱気な事もあり、自分は大した事のない魔族なんだと思ってしまい、本来の力に蓋をしてしまい、潜在する力に気づくことなく、成長してしまいました。
もし幼少期の頃にもっと早く『ヴェルトマー』がシスの前に現れて今のシスの年齢までずっと修行を重ねさせていたならば、祖母であり『魔』の天才であった『エリス』を遥かに凌ぐ魔族になっていた事でしょう。
さて、そのシスの持つ本来の力ですがどれ程の強さなのでしょうか。第三章で怒りによって体を突き動かされたシスが、ソフィを相手に無詠唱で複数の魔法を同時に発動させましたが、この時の時点でシスが神域魔法の『発動羅列』を会得していた場合、同じように複数の『神域魔法』を発動させることが出来ていたでしょう。
そして『シス』自身の恐ろしいところは、一度見た魔法の『発動羅列』を瞬時にトレース出来る事です。この技術を持つ者は作中では『エルシス』を除いて他にはいません。
つまりその点に関しては『ミラを越える程』の『魔』の才能をシスは持っているという事になります。
(※但しあくまで他人の『発動羅列』をトレースすることなので、自分自身で新たに『エルシス』や『フルーフ』のように新魔法の開発が、出来るわけではありません)。
大魔王シスが潜在する力を全て余すことなく使えるようになれば、師であるユファはおろか、エルシスさえも凌ぐ大賢者になる事も不可能ではないでしょう。
★『大賢者エルシス』
言わずと知れた『アレルバレル』の世界で、最強の人間にして最強の大魔王『ソフィ』の友人。人間にして『金色の体現者』であり『青』の練度も5.0に到達している。それだけに留まらず、あらゆる魔法を生み出しており、その最たるものが『神聖魔法』である。
かつての『アレルバレル』では二十歳という若さで、既に自分に匹敵する存在を見失った彼は、これ以上強くなったところで、自分で自分の強さを測る事が出来ないのではないかという不安を抱き、成長を諦めかけていた天才賢者。
第405話『最強の大魔王は人間に興味を抱く』にて、自身の強さを測る事の出来る存在。大魔王ソフィに出会い彼はついに指標を得る事となった。そして21歳の時に初めてソフィと戦い人生初めての敗北を知る。(この時のエルシスの金色纏い時の最大戦力値は2200億)。
このソフィとの死闘の後に彼はソフィと親友とも呼べる友になり、今度は彼がソフィの願いを叶えようとしてソフィのためだけに強くなるための修行を開始する。
そして三十歳に差し掛かろうという年齢になった頃『金色』と『青の混合二色』の体現に成功する。
しかしエルシスを以てしても、この力を長時間維持する事は難しく、結局数秒単位しか持たないために実戦ではこれ以降使う事はなかった。この時の最大瞬間戦力値は5500億を越えているが、もしエルシスの寿命が魔族程にあれば『混合二色』ではなく『青』と『金色』の『二色の併用』の体現に至りながらにして、戦闘で数分から数十分コントロールを続けられたことは間違いないでしょう。
そしてエルシスが五十歳を迎える頃。自分の寿命が持つ間に友人の願いを叶える事は不可能だと悟り、自分の人生自身に『は』悔いは無かったが、ソフィに孤独を感じさせてしまい、その事を想い悔み続ける日々を送り続けるが、遂にエルシスは寿命によってその生涯を終える。
★【大魔王リーシャ】
第369話『リーシャとの出会い』にて本作初登場。
当時五歳のリーシャは集落の試験のために、エイネの『名付け』魔物の『ボア』と戦っていたところにレアと出会い、レアに試験相手のボアを倒された事で喧嘩になる。
第六章後半。当初こそリーシャはレアを嫌っていたが、レアと生活をしていく上で面倒見のいいレアにどんどん惹かれていき、第415話『最後の別れと涙』にて、レアと別れる時まで涙を堪えたが、レアが『概念跳躍』で戻った後に大号泣をしてしまう。
大好きなレアにもらった髪留めを今でも大事につけている。
徐々にレアを失った悲しみに耐えられなくなり、自身の髪型や言葉遣いなどを無意識にレアに寄せていくリーシャだったが、その姿を見て恐ろしい程にエイネに心配されてしまい、それ以後エイネの前では以前の口調を心掛けている。
集落の長老バルドに裏切られたに、リーシャとエイネは集落を出て魔界中を旅しようとするが、ビル爺にソフィの『魔王軍』を紹介されてそのままソフィの配下となる。
一番最初に所属した時のリーシャの地位は、序列部隊でさえ入れず圏外だった。だが、一緒に魔王軍に所属した『エイネ』が、その『能力』を見込まれて『序列二桁・94位』に任命されたのを踏まえて、リーシャはおいて行かれないために死ぬ気で研鑽を積む。
『金色の体現』を果たした後、リーシャは『敵』を切り刻む時に発狂する事で有名となり、敵が動かなくなるまで止まる事なく攻撃をし続けるため、最初についた異名は『狂鬼』であった。リーシャが『九大魔王』に任命された後、先に『九大魔王』入りを果たしていたエイネと共に、かつてレア達と一緒に過ごした集落へと戻った。
だが、そこで組織の者達の襲撃にあい『リーシャ』を庇った『エイネ』は別世界へと跳ばされる事となった。
エイネとレア。そして多くの仲間や主であるソフィをも失った彼女は、組織の者達を延々と殺すために生き続けていた。
――第七章の補足と訂正は以上になります。
皆様お久しぶりです。羽海汐遠です。第六章後半のあとがきから、2か月程が経ちました。本当に月日が経つのは早いと感じる日々です。
第七章は冒頭でも述べましたが、ついに大賢者ミラが戦いの場に出てきました。それも相手がまさかソフィではなく、大賢者エルシスの魂が宿ったシスです! これを書いている時、本当に楽しくて楽しくて気が付けば5時間くらいぶっ通しで書いていました。笑。
エルシスはユファ並に思い入れがあり、この作品では初期の頃から名前だけは登場させていましたが、実際にこうして戦闘シーンを書くと感慨深いものがありました。
少しでも圧倒的感を出したくて、組織の面々をふんだんに使ってしまいましたね。実際にミラやハワード、そしてルビリスは九大魔王相手であっても、引けを取らない強さなのですが。
因みにこの作品のプロットを初期の頃に書き上げた時、エルシスの転生先をシスに決めた時に、名前でバレるかなぁと懸念が少しありましたが、読者の方の感想で、まさかリディアがエルシス? といった感想をいただき、ほっとしたのを覚えています。笑。
今回新しく『発動羅列』や『スタック』といった設定を試みたのですが、自分の思い描いた内容が文章として伝える事が出来ていれば嬉しいです。
『発動羅列』は簡単に言うと、『魔』の言語で表したプログラムのようなものです。完成した羅列の文言を『理』を用いて詠唱用に置き換えて発動させると魔法陣が出現して、そこで魔力を乗せると、魔法陣が高速回転をして魔法が発動する。といった風な物となります。
『スタック』は、魔力回路に込められた魔力を抜き出した後の状態で、魔法を頭の中で使おうと考える時に置いておく場所みたいなものです。(魔力回路から出しているので、ずっと放置しておくと消えます)。
例に挙げると、魔法を発動できる状況を作ったとして、いつでも『魔力』を込めるとその『魔法』が発動出来る状態が『待機状態』となります。
文章だと難しいですが『発動羅列』と『スタック』がなければ魔法は使えないという認識で大丈夫です。
次章では組織の者達は少しお休みとなり、再び物語は『リラリオ』の世界中心に戻ってきます。七章では出番が少なかったリディアや、ラルフ達にスポットライトを当てる予定ですが、ソフィにも遂に春がやってきます! お楽しみに! 笑。
それでは第七章のあとがきはここまでにしたいと思います。
SNSのDMやサイトでの感想。誤字脱字報告をしていただいた方々、ありがとうございます! また次回、第八章のあとがきでお会い出来る事を楽しみにしています!
それではお疲れ様でした!
作者:羽海汐遠。
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