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残された九大魔王編
462.智謀
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ディアトロスの目が金色に変貌を遂げた後、魔力回路に迸る程の魔力が詰め込まれていく。その様子が他者にも可視出来る程のとてつもない『魔力』であった。しかし『ディアトロス』のその様子に隙があるとみた『組織』の魔王や賢者達が一斉に向かっていく。
完全に魔法に意識がいっているディアトロスは、そんな近づいてくる者達に一切表情を向けず、自分の世界に入り込んでいる。
「調子に乗って大きな魔法を放とうとしたようだが、こんな隙を作るとは噂程ではないなぁ!」
組織に属する『真なる大魔王』領域に居る魔族はそう言うと、そのまま鋭利な爪で無防備に見える『ディアトロス』を引き裂こうとするのだった。
――しかし。
「ディアトロス殿に隙? おいおいどこにあるんだよ。お前本当に大魔王領域に居るのか? ちゃんと周囲を見渡さないと、あっさり死んじまうぞ?」
「魔王軍を舐めるなよ! そんなセリフはあたし達『九大魔王』をなんとかしてから吐きなぁ!」
精霊達を避難させたあと直ぐに戻って来た『イリーガル』はそう告げると、得の大刀に『青』を『創成付与』させて『ディアトロス』に近づこうとした魔族の首を切断してみせる。
更にその周りに集まってきていた者達は、両手に短剣を持った『リーシャ』が次々薙ぎ倒していく。
幾重にもブレて見える程速く動き切り刻んでいく姿はまるで、吹き荒れる暴風のようであった。
あっさりと『ディアトロス』の隙を狙って近づいてきた魔族や人間達は、イリーガルやリーシャの手によって地に倒れ伏していく。
――彼らは決して弱いわけではない。イリーガル達が圧倒的すぎるのである。
戦力値が数百億を誇る『本隊』の組織の者達であったが、流石に『九大魔王』が相手ではそれも形無しであった。
「さて、それではいくかの?」
周りで起きている事など全く気にせず、何も問題はないとばかりに『自らの魔法の行使』だけを考えていた『ディアトロス』が遂に動き始める。
精霊の大陸全域を包み込む程の魔力が『ディアトロス』から発せられていく。
そしてその濃厚な魔力は空から大陸を巻くように、ゆっくりゆっくりと移動を始める。ディアトロスの魔力が自分の意志を持つかの如く、移動する様を見たルビリスは眉を寄せる。
(攻撃をするにしては余りにも速度がないようですが、いったい何が狙いなのでしょうか?)
ゆっくりと移動をしていた可視出来る程のディアトロスの魔力は、ルビリスの身にも近づいていく。そして突然霧状になったかと思うと、ルビリスに降りかかるように霧の魔力が襲い掛かった。
「これは『神聖魔法』の中にあるような『魔力』を奪う系統でしょうか?」
ルビリスは『転移』を使って降りかかってきたソレを躱してみせながらそう告げる。
そこで周囲を見渡すと先程ルビリスにも襲い掛かってきた霧状の物が『組織』の者達を飲み込んでいた。
霧になった魔力の渦に飲み込まれた魔族は、何と身体中の皮膚がどろどろと溶け始めて行く。身体中の骨が露になった後に彼らは突然奇声をあげ始めた。
最初は『智謀』の行った攻撃で激痛が伴ってあげた声なのかと判断したが、皮膚が溶けて露となった骨格部分が変貌していき、そして溶けた筈の皮膚が戻っていったかと思うと、魔族達の元々の体つきとはまるで違う、まさに別人のような姿へと変わったのである。
そしてその別人の姿となった彼らは、やがて最初に聞こえてきたような奇声を上げ始める。
「キヒ……ぃ、キヒヒヒ、きひひひ!!」
顔まで作り替わったかと思うと、組織のモノだった魔族はギラついた眼をしながら涎を垂らしながら嗤い始めた。
「な、何? 一体何が起きている……!」
そうしている内に次から次に、霧に飲まれていった者達が、先程の魔族と同じく身体が変貌していくのであった。
ルビリスは効力がいまいち分からない現状に苛立ちながら、まだ無事な者達全員に『根源魔法』である『聖なる護守』を使いながら様子を見る。
大賢者領域の最高峰のランクに居る『ルビリス』の『根源魔法』は生半可な効力ではなく、その場に居る者達の魔に対する耐久力を大幅に増幅させた。
(※『根源魔法』は『神聖魔法』のことである)。
しかしそれでも魔力に飲まれた者は、他の者と同じく変貌させられていくのだった。
「催眠や洗脳と違い身体から脳までを造り変えている? いやしかし……。まさかそんな事を『培養液』等を用いずに個体ではなく、これだけの規模の人数に出来る筈がない」
「これはマヤカシの筈だ。し、しかし確かに私は奴の攻撃を躱した筈」
ルビリスは狼狽えながらも再び根源魔法を行使しようと、右手に魔力を込めようとするが、その右手の感覚がないことに気づいた。
「……」
大陸の上空で呆然と立ちすくむルビリスは、無表情のまま現状を冷静に確かめる。
(全てが真実の筈がない。しかし私の右手の感覚がないのは事実だ)
――ルビリスは目を閉じて考える。
目に見えている事が全て現実であるならば、あれだけの事が出来る『智謀』はもっと早く我々組織の壊滅が可能であったはずである。
ルビリスは目を開けて、動く左手で冷静に自分に対して魔法を行使する。
――根源魔法、『聖なる再施』。
「くっ! やはりマヤカシの類でしたか!!」
ルビリスは自身の身体が『聖なる再施』で完全に再生した事によって、いつの間にか掛かっていた『ディアトロス』の放った幻覚かマヤカシの類の魔法を解く事に成功したようだった。
そしてルビリスはちらりと、組織の同胞達の姿を見る。
マヤカシを掛けられた組織の者達は、狂ったように仲間に襲い掛かり、襲い掛かられた方も笑いながらやり返して同士討ちをしていた。
「何と悍ましい姿だ」
この光景を見てルビリスは、苦虫を噛み潰したかのような表情を浮かべるのだった。
「カッカッカ! どうやらお主もあの『人間の若造』と同じく力ある者のようじゃな? よくぞワシの魔法を自力で解いて見せた。しかし少しばかり遅かったようだな」
ディアトロスが指を鳴らすと、同士討ちをしていた組織の者達の身体が灰になっていった。
――神域『時』魔法、『空間除外』。
そして灰になっていく『全員』が、その状態のまま世界から『除外』されてしまうのだった。
「く……っ!」
ルビリスは一旦引こうとするが、周囲にはイリーガルとリーシャが立っており、完全にルビリスを包囲していた。
「さて、どうやら終わりのようじゃな?」
ルビリスの予想を越える『智謀』の大魔王の魔法の脅威に、眉を寄せながら舌打ちをするのであった。
…………
「これはまずいわねぇ。リーシャ達はもう組織の奴らとやり合ってるみたい」
シスを探しに再び『アレルバレル』の世界へ戻ってきたレアは、ディアトロスの魔力の余波を受ける前に、直ぐに金色のオーラを纏いながらそう言った。
「れ、レアさん!? どうしてここに!?」
そんなレアの前に精霊女王『ミューテリア』が慌てて駆け寄ってくる。
ミューテリアに何か言葉を返そうとするレアだが、口を開かせる前に『ミューテリア』はレアの手を取り、直ぐに『イリーガル』の部隊の元へ『転移』を開始するのだった。
完全に魔法に意識がいっているディアトロスは、そんな近づいてくる者達に一切表情を向けず、自分の世界に入り込んでいる。
「調子に乗って大きな魔法を放とうとしたようだが、こんな隙を作るとは噂程ではないなぁ!」
組織に属する『真なる大魔王』領域に居る魔族はそう言うと、そのまま鋭利な爪で無防備に見える『ディアトロス』を引き裂こうとするのだった。
――しかし。
「ディアトロス殿に隙? おいおいどこにあるんだよ。お前本当に大魔王領域に居るのか? ちゃんと周囲を見渡さないと、あっさり死んじまうぞ?」
「魔王軍を舐めるなよ! そんなセリフはあたし達『九大魔王』をなんとかしてから吐きなぁ!」
精霊達を避難させたあと直ぐに戻って来た『イリーガル』はそう告げると、得の大刀に『青』を『創成付与』させて『ディアトロス』に近づこうとした魔族の首を切断してみせる。
更にその周りに集まってきていた者達は、両手に短剣を持った『リーシャ』が次々薙ぎ倒していく。
幾重にもブレて見える程速く動き切り刻んでいく姿はまるで、吹き荒れる暴風のようであった。
あっさりと『ディアトロス』の隙を狙って近づいてきた魔族や人間達は、イリーガルやリーシャの手によって地に倒れ伏していく。
――彼らは決して弱いわけではない。イリーガル達が圧倒的すぎるのである。
戦力値が数百億を誇る『本隊』の組織の者達であったが、流石に『九大魔王』が相手ではそれも形無しであった。
「さて、それではいくかの?」
周りで起きている事など全く気にせず、何も問題はないとばかりに『自らの魔法の行使』だけを考えていた『ディアトロス』が遂に動き始める。
精霊の大陸全域を包み込む程の魔力が『ディアトロス』から発せられていく。
そしてその濃厚な魔力は空から大陸を巻くように、ゆっくりゆっくりと移動を始める。ディアトロスの魔力が自分の意志を持つかの如く、移動する様を見たルビリスは眉を寄せる。
(攻撃をするにしては余りにも速度がないようですが、いったい何が狙いなのでしょうか?)
ゆっくりと移動をしていた可視出来る程のディアトロスの魔力は、ルビリスの身にも近づいていく。そして突然霧状になったかと思うと、ルビリスに降りかかるように霧の魔力が襲い掛かった。
「これは『神聖魔法』の中にあるような『魔力』を奪う系統でしょうか?」
ルビリスは『転移』を使って降りかかってきたソレを躱してみせながらそう告げる。
そこで周囲を見渡すと先程ルビリスにも襲い掛かってきた霧状の物が『組織』の者達を飲み込んでいた。
霧になった魔力の渦に飲み込まれた魔族は、何と身体中の皮膚がどろどろと溶け始めて行く。身体中の骨が露になった後に彼らは突然奇声をあげ始めた。
最初は『智謀』の行った攻撃で激痛が伴ってあげた声なのかと判断したが、皮膚が溶けて露となった骨格部分が変貌していき、そして溶けた筈の皮膚が戻っていったかと思うと、魔族達の元々の体つきとはまるで違う、まさに別人のような姿へと変わったのである。
そしてその別人の姿となった彼らは、やがて最初に聞こえてきたような奇声を上げ始める。
「キヒ……ぃ、キヒヒヒ、きひひひ!!」
顔まで作り替わったかと思うと、組織のモノだった魔族はギラついた眼をしながら涎を垂らしながら嗤い始めた。
「な、何? 一体何が起きている……!」
そうしている内に次から次に、霧に飲まれていった者達が、先程の魔族と同じく身体が変貌していくのであった。
ルビリスは効力がいまいち分からない現状に苛立ちながら、まだ無事な者達全員に『根源魔法』である『聖なる護守』を使いながら様子を見る。
大賢者領域の最高峰のランクに居る『ルビリス』の『根源魔法』は生半可な効力ではなく、その場に居る者達の魔に対する耐久力を大幅に増幅させた。
(※『根源魔法』は『神聖魔法』のことである)。
しかしそれでも魔力に飲まれた者は、他の者と同じく変貌させられていくのだった。
「催眠や洗脳と違い身体から脳までを造り変えている? いやしかし……。まさかそんな事を『培養液』等を用いずに個体ではなく、これだけの規模の人数に出来る筈がない」
「これはマヤカシの筈だ。し、しかし確かに私は奴の攻撃を躱した筈」
ルビリスは狼狽えながらも再び根源魔法を行使しようと、右手に魔力を込めようとするが、その右手の感覚がないことに気づいた。
「……」
大陸の上空で呆然と立ちすくむルビリスは、無表情のまま現状を冷静に確かめる。
(全てが真実の筈がない。しかし私の右手の感覚がないのは事実だ)
――ルビリスは目を閉じて考える。
目に見えている事が全て現実であるならば、あれだけの事が出来る『智謀』はもっと早く我々組織の壊滅が可能であったはずである。
ルビリスは目を開けて、動く左手で冷静に自分に対して魔法を行使する。
――根源魔法、『聖なる再施』。
「くっ! やはりマヤカシの類でしたか!!」
ルビリスは自身の身体が『聖なる再施』で完全に再生した事によって、いつの間にか掛かっていた『ディアトロス』の放った幻覚かマヤカシの類の魔法を解く事に成功したようだった。
そしてルビリスはちらりと、組織の同胞達の姿を見る。
マヤカシを掛けられた組織の者達は、狂ったように仲間に襲い掛かり、襲い掛かられた方も笑いながらやり返して同士討ちをしていた。
「何と悍ましい姿だ」
この光景を見てルビリスは、苦虫を噛み潰したかのような表情を浮かべるのだった。
「カッカッカ! どうやらお主もあの『人間の若造』と同じく力ある者のようじゃな? よくぞワシの魔法を自力で解いて見せた。しかし少しばかり遅かったようだな」
ディアトロスが指を鳴らすと、同士討ちをしていた組織の者達の身体が灰になっていった。
――神域『時』魔法、『空間除外』。
そして灰になっていく『全員』が、その状態のまま世界から『除外』されてしまうのだった。
「く……っ!」
ルビリスは一旦引こうとするが、周囲にはイリーガルとリーシャが立っており、完全にルビリスを包囲していた。
「さて、どうやら終わりのようじゃな?」
ルビリスの予想を越える『智謀』の大魔王の魔法の脅威に、眉を寄せながら舌打ちをするのであった。
…………
「これはまずいわねぇ。リーシャ達はもう組織の奴らとやり合ってるみたい」
シスを探しに再び『アレルバレル』の世界へ戻ってきたレアは、ディアトロスの魔力の余波を受ける前に、直ぐに金色のオーラを纏いながらそう言った。
「れ、レアさん!? どうしてここに!?」
そんなレアの前に精霊女王『ミューテリア』が慌てて駆け寄ってくる。
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