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別世界の『理』編

447.根源の玉と概念跳躍

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 ブラストが『根源の玉』のマジックアイテムの効果によって『アレルバレル』の世界から『リラリオ』の世界へ跳んだ後、ディアトロスとイリーガルは残された『魔王軍』の配下達と合流して『魔界』にある精霊の大陸へと移動した。

 この大陸は『魔界』では珍しく魔族が治めている大陸ではない。ソフィによって保護された『アレルバレル』の『精霊』達が治める国がある。

 アレルバレルの世界に生息する精霊は、ほとんどがこの大陸に集まっていて、魔族はソフィが精霊達の防衛にと派遣していたイリーガルと、その部隊しかこの大陸には居ない。

 この世界の精霊達の女王『ミューテリア』は、イリーガルとディアトロスが、その姿を見せた事で大いに喜び再会を祝した。

 ソフィや主だった『魔王軍』の者達が別世界へ跳ばされた後、すでに『人間界』だけではなく『魔界』の複数の大陸に組織の者達が入り込んでおり、残されているソフィの『魔界』の配下達は少なかった。

「ここはどうにか無事だが、南方の方はほぼ取られちまったのぉ」

 ディアトロスがそう言うと、イリーガルもミューテリアも複雑そうな表情を浮かべる。

「奴らの大半は唯のデクだが、中には面倒な魔法を使う奴が混じっている。気を抜くと俺らでもまずい」

 イリーガル達を襲っている組織には、フルーフの『概念跳躍アルム・ノーティア』を進化させて自身だけではなく、他者をも別世界へ跳ばす者達が居る。

 『概念跳躍アルム・ノーティア』は相手より魔力が高くなければ効力は発揮されないため、組織の中でもトップクラスの魔力を持つ大賢者ミラや、そのミラの右腕であるルビリス程でなければ、ディアトロスやイリーガルといった『九大魔王』の古参クラスを跳ばす事は不可能に近い。

 だが『序列一桁』クラスの『魔王軍』の者達であれば、組織の幹部クラスの賢者でも十分に別世界へ跳ばす事は可能である。

 大賢者ミラの作り出した組織は、すでに三千年程前の時の圧倒的な存在感を示して見せたソフィの魔王軍と同等の戦力を保有しており、流石のディアトロスやイリーガル達であっても、その組織達が一斉に襲撃を仕掛けてくれば必ず勝てるとは言い難かった。

「本来魔法を司るのは、妾達『精霊族』じゃったのにな」

 精霊女王『ミューテリア』は不甲斐ないとばかりに視線を下ろして溜息を吐く。

「何を言うか精霊女王よ。まだ終わったわけではないわい。我らの主が戻ってくるまではこのワシが守り切って見せる」

 ディアトロスは口角を吊り上げて『九大魔王』筆頭としての威厳を見せつけるのだった。

「現在はディアトロス殿の張っている結界と『ミューテリア』殿の二重結界によって『組織』の連中はこの大陸には侵入は防げてはいるが、あの『大賢者』と名乗る人間が来れば話は変わるでしょう。奴が来るまでに何とかしなければならないでしょうな」

 イリーガルは現実を顧みて少しでも何か対策出来る事は無いかと口を開いた。

「うむ。その通りだな。それにしてもこのマジックアイテムは一体、何なのじゃろうな?」

 そう言うとディアトロスは、ブラストから渡された『根源の玉』を取り出した。

「ミューテリアよ。何かこのアイテムの事を知ってはおらぬか? この玉に魔力を灯すとどうやら別の世界へと跳ばされるようなのじゃが」

 ディアトロスがミューテリアに根源の玉を手で渡すが、ミューテリアは首を捻る。

「妾も長く現世に居るが、こんなマジックアイテムは見た事がないのぉ。しかし集約された魔力が、こめられているところを見るとこれを作った者は、相当な魔力の持ち主じゃな」

『魔』を司る精霊の長であり、魔族でいえば『ソフィ』や『ディアトロス』と遜色がない程の長い年月を生きてきた『ミューテリア』でも知らないとなると、これを作ったのは『皇帝』の時代より遥か昔に作られたモノかもしれない。

「ふむ。あの若造がどうやら持っていたようじゃし。もしかすると別世界のマジックアイテムなのかもしれぬな。それにしてもあの若造も厄介じゃな」

『死の概念』がないと自ら公言しており、よく分からない実験を繰り返しながら、新魔法を次々と生み出していったかと思えば、更にはこういったマジックアイテムを多く所有しているミラをディアトロスは、忌々しそうに顔を歪めながら揶揄するのだった。

「ソフィの親分でさえ、別世界へと跳ばすアイテムですからな。組織の奴らが使う魔法より、危ないかもしれませんな」

 そう言ってイリーガルも、』を取り出すのだった。

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