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ヴェルマー大陸VSミールガルド大陸編

130.憂鬱

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 ――ここは『ヴェルマー』大陸。

 ラルグ魔国が全国統一を果たしてから数日が過ぎた。

 ようやく大陸も戦争の混乱から落ちついてきており、各国も『ヴェルマー』大陸の王となった『ラルグ』の『シーマ』を認めざるを得なくなっていた。

 序盤に戦った『レイズ』魔国や『トウジン』魔国という大国が攻め滅ぼされた事を受けて、各国も抵抗が少なく言われるがままに属国と化した。

 最後まで抵抗した小国もあったが、例外なく攻め滅ぼされて凄惨な最後を遂げた国もあった。

 そしてそんなラルグ魔国の王である『シーマ』はというと、連日に渡って祝勝会と称した宴を楽しんでいた。

 No.2である『ゴルガー・フィクス』が『シーマ』を褒め続けて持ち上げるので気をよくした『シーマ』が上機嫌で宴を続けさせているのだった。

 そして宴が続く中で遂に話題が『ミールガルド』大陸へと向かわせた『シュライダー』の話になる。

「ゴルガーよ……。まだシュライダーからの連絡はないのか?」

 既にあれから数日が過ぎており、そろそろ戻ってきてもおかしくはない。

 ゴルガーは差し出されたシーマの盃に酒をつぎ足しながら考える様な素振りを見せていた。

「た、確かにおかしいですな。シュライダーには数多くの魔族をつけておりますし『ミールガルド』大陸程度の戦力であれば、十分すぎると思うのですが」

 考えられる事と言えば、元ラルグ魔国のNo.2であった『レルバノン』と『シス』が共闘してシュライダー達を返り討ちにしたという事くらいであろう。

 しかしレルバノンやシスは戦力値は高い者達だが、数千の魔族がいるラルグ魔国軍が相手である。

 如何に『質』が高くても『数』で勝てない以上は『シュライダー』が負ける道理はない筈である。

(『ミールガルド』大陸に、我々の知らない強者が紛れ込んでいるのか? いやしかしそれならば派遣している諜報部隊が連絡してきてもいい筈だ)

 直接レルバノンの部下に忍び込ませていた、上位魔族であった『ソフィア』は『レルバノン』達に正体がばれて処されたのだろうという判断がつくが、他の諜報部隊はまだ生きている筈なのである。

 だが『ミールガルド』大陸で、そんな強者がいるといった連絡は入ってきていない。

 何か帰還出来ない事情でもあったのだろうかと『ゴルガー』は考え始める。

「まあもうしばらく待ってみるとしよう。それでも音沙汰がなければ、また考えようではないか」

 がっはっはと笑いながら酒を呑み続ける『シーマ』王に、困ったように愛想笑いを浮かべる『ゴルガー』であった。

 それから数刻後、遂に部下の元に諜報員から連絡が入ったらしく、ゴルガーの元に部下から内情を伝えられた。

 ――その恐るべき内容とは……。

 『シュライダー軍事副司令官の率いていたラルグ魔国第三軍は全滅。シュライダー軍事副司令官は、レルバノン・元フィクスの屋敷の前で、首だけが発見された』

 ――というモノであった。

「な、何だと!? この情報は正しいのか!」

 ゴルガーの目の前にいる諜報を管理する部隊長に訊ねるが、慌てて頷くのみであった。

「し、シーマ様に何とお伝えすればよいのだ!?」

 これは困った事になったとゴルガーは頭を抱える。

 此度の『ミールガルド』大陸への宣戦布告めいた行動を進言したのは間違いなく『ゴルガー・フィクス』である。

 更に第三軍で十分だと示した上でシーマ王に、命令を出させてしまっている。

 しかしそれが蓋を開けて見れば第三軍は全滅して指揮官であった『シュライダー軍』事副司令官を戦死させたとあっては、ゴルガーはシーマ王に合わせる顔がない。

 そればかりか大事な臣下であり軍の副司令官を失わせてしまったのだ。

 『ゴルガー』の責任はとても大きいものである。

「ぐ……っ! わ、分かった。この件は他の者には、絶対に漏らすなよ?」

 ゴルガーの言葉に報告を持ってきた諜報部隊長は、コクコクと慌てて頷きながらその場を後にした。

「こ、これは……、非常に困った事になった!」

 黙っていてもいずれは王に分かる事なので、苦々しく思いながらもゴルガーはシーマ王にこの報告された話を持っていくのであった。

 ……
 ……
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