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ヴェルマー大陸VSミールガルド大陸編

131.ゴルガーの懸念

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 諜報部隊長から連絡を受けた『ゴルガー』は、その足で『シーマ』王のもとに話を届けに行った。

 案の定というべきか『シーマ』王は『ゴルガーの』話を聞いていく内に機嫌が悪くなっていった。

 そして全てを話し終えた後、シーマは静かに口を開ける。

「お前はあの時には我が国ので『ミールガルド』大陸を支配するには十分だと、確かに言わなかったか?」

 ゴルガーは『最上位魔族』の最上位に位置する『シーマ』王の威圧をその身に受けて、脂汗を流しながら口を開いた。

「は、ははっ! その通りです! し、しかしどうやら『ミールガルド』大陸には、私が思っている以上に厄介な者達がいたらしく……っ!」

 ゴルガーが弁論をしようとするのをシーマは制止する。

「もうよい……。単にシュライダーの手に負えない者がいたということであろう? 少しは骨がある奴がいるという事ではないか……」

「はっ……!」

 ゴルガーは頭を下げて同意するしかない。

「仕方あるまい。よしゴルガー、今すぐに準備をしろ」

「え?」

 言っている意味が分からないといった様子で、呆けた声をあげるゴルガーに溜息を吐きながらも『シーマ』王は詳しく説明を始める。

「この大陸中に散らばる、と言っているのだ」

「ぜ、全軍で『ミールガルド』大陸を攻められるのですか!?」

 ゴルガーの言葉に『シーマ』王はニヤリと笑みを浮かべるのだった。

「どうやらお前は、俺にさえ黙っておきたい程のがあるみたいだからな。ここらで不安を取り除いておいてやろうというのだ」

「!」

 ゴルガーは内情をピタリとあてられてしまい、押し黙るしかなかった。

「よいな? ラルグ魔国に所属する全軍の準備が出来次第『ミールガルド』大陸を攻め滅ぼす。分かったら下がれ」

 シーマ王が決めた事に異論を挟む余地はなく、全てが決定事項となる為に命令を聞いたゴルガーは頭を下げて頷く。

「仰せのままに……! シーマ様」

 ゴルガーは直ぐに『ネスツ』統括軍事司令にシーマ王の言葉を伝える。

 そしてネスツから各軍の部隊長達に伝えられた内容はとして伝わっていく。

 ゴルガーの懸念とは裏腹に『ラルグ』魔国軍内部では新たな戦争の伝令に、血の気が多い『ラルグ』の魔族達は喜んだのだった。

 ……
 ……
 ……

「まさか全軍出撃とは……っ! しかしそれならば

 ゴルガーはそう言って溜息を吐いた。

 ラルグ魔国のとある一室『魔国王補佐』として宛がわれている場所で、ゴルガーは改めて懸念に思っていた事について考える。

 諜報部隊から知らせられた情報の中に、があったのだ。

 それは『ミールガルド』大陸の二大国家の内『ケビン』王国を襲撃した、我が国の魔族総勢3000程の者達がにあっさりとというのだ。

 我が国の第三軍の兵士達とは言っても、個々の戦力値は100万を越える魔族達なのである。

 たとえ『最上位魔族』であるゴルガー自身が、第三軍の兵士達3000体を相手にしろと言われて、果たして勝つ事が出来るかといわれると首を縦には振る事は出来ない。

 レイズ魔国クラスの魔力を持っていたとして、広域戦闘魔法を放ったとしても一瞬で滅ぼす事など出来る筈もない。

 国外へ逃亡した『レルバノン』や『シス』といった『最上位魔族』の中でも一際戦力値が高い『最上位魔族』であっても、シュライダーを含めたラルグ魔国軍の総勢7000体を越える『魔族』を倒す事は不可能である。

 ――だからこそ、それだけの軍勢の追手を『ミールガルド』大陸へと差し向けたのだから。

 しかしこのとは、一体何者なのだ?

 ミールガルド大陸の人間ではありえない筈だ。

 そしてこの『ラルグ』魔国の『最上位魔族』であっても、不可能な事を可能とする者――。

 ゴルガーがそこまで考えた時、背筋に冷たいものが流れた。

 ――まさか、まさかまさかまさか!?

 ――!?

 十歳程の見た目というのは、過去に存在していた『魔王』のだからなのでは!?

 この大陸の一部の魔族だけが知る伝説――。

 過去にこの世界に存在していたとされる魔王は、当時世界に数多ある大陸に生息する種族『魔人族』『精霊族』『龍族』を相手に戦争を引き起こして、刃向かう者を容赦なく攻め滅ぼして魔族を世界の頂点に位置する種族に押し上げた後、この『ヴェルマー』大陸に後継者を作ってそのまま世界から消えたとされる伝説があるのだった。

 ――何故突然姿を消したのか。

 詳細こそは分からないが、もしこの『魔王』が現代に蘇り『ミールガルド』大陸にその御身を預けていたとするならば、今の時代の『魔族』など容易く葬る事が出来るのではないだろうか。

「い、いや流石に考えすぎだろう」

 自分は何を過去の伝説を真剣に考えているのだとばかりに、ゴルガーは頭を振って考えを頭から消す。

 しかし彼の考えていた『』のという発想は、面白いところをついていた。

 、その伝説の『魔王』こそは、この『リラリオ』の世界に再び体現を果たしているのだから。
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