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第三章 終焉を呼ぶ七大天使

第204話 歌声

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「ルア様……ルア様?」

「んん……あれ?」

 ポンポンとルシファーに肩を揺すられてルアが目を覚ますと、彼は温泉ではなく、大きなベッドの上に寝かされていた。

 体を起こすと、温泉に入る前と後で体に変化が現れているのを感じる。

「体が軽い。」

「それはそうでしょうね。」

 ガチャリと扉を開けて入ってきたのは際どい水着姿から、元の衣服へと着替えていたロザリィだった。
 彼女はルアへとお水を一杯手渡すとベッドの横に腰かけた。

「体の中に溜まっていた古い淫気を抜いて新しいものに詰め替えたんです。しかもクイーンサキュバスの淫気に。」

「淫……気?」

 聞いたことのないワードにルアは思わず首をかしげた。

「淫気っていうのは、この世界のすべての魔物娘が持っている……まぁ何て言うのかしら♂を誘惑する……もと?って言ったらいいでしょうか。」

「な、なんかちょっとエッチですね。」

「まぁもともと魔物娘は人間の♂から精を搾って生活していたものですからね。今は普通の食事でも生活できますが……。」

 顔を少し赤らめるルアに、なんの恥ずかしげもなくロザリィは語る。

「そういったものが体に蓄積していって、だんだん古くなると、体の調子が悪くなったりする原因になるんです。」

「ほぇ~……。」

「だからあぁして体を擦り付けて、新しい淫気を送り込んで、古い淫気を外に押し出していたんです。今体が軽いのはそのおかげということですね。」

「なるほど……。」

 水をごくごくと飲みながらルアがロザリィの話を聞いていると……。

「もし、あなたが大人だったら……さっきのよりももっと刺激的で気持ちいい事をしてあげれたんですけど、まだ子供ですからね。大人のサービスは大人になったらしてあげましょう。」

 ぺろりと舌なめずりをしながら言った彼女の妖艶さに、ルアは思わずビクリと体を震わせた。

 そしてルアが水を飲み終わる頃を見計らって、ルシファーはロザリィへとお礼を告げた。

「この度はありがとうございました。私も貴重な体験ができました。」

「いいえ、私も久しぶりに♂と触れあえて良いリフレッシュになったので、良ければまたいらしてください。そのときは……もっと。」

「フフフ、さてではルア様に向かいましょうか。」

「えっ、これで終わりじゃないんですか?」

「まだまだ……これは始まりに過ぎませんよ?最低でもこのページに書いてきたものは全て回らないと、私の気も済みません♪」

 ズラリといろいろな名称が書かれたページをルアへと見せたルシファー。

 それを見たルアは、本当にこれを一日で回るのだろうかと疑問に思ってしまう程たくさん書かれていた。

「それでは失礼致します。」

「えぇ、また夜の国へいらしてください。」

 艶めかさたっぷりの笑みを浮かべるロザリィに見送られ、ルアとルシファーは再びどこかへと転移していった。











 そして次にルアが目を開けると、そこにはキラキラと輝く水面が広がっていた。

「あれ、ここって……。」

「おや?ルア様はここにも訪れたことがおありなのですか?」

 ルア達が転移してきたのはとある海辺の砂浜だった。ルアはその砂浜の景色に見覚えがあった。

「もしかして……シーレーヌ?」

 辺りをキョロキョロと見渡していたルアの耳に澄んだ歌声が聞こえてくる。

「~~~~~♪♪」

「あ、やっぱり……。」

 歌声の聞こえた来た方には人だかりができていた。その人だかりの視線の先では、人魚が自慢の歌声を披露していた。

「すごい久しぶり……でも前と変わってない綺麗な声だなぁ。」

「ルア様は歌がお好きなのですか?」

 すっかり人魚の歌に聞き入っていたルアに、ルシファーは問いかける。

「うん、聴いてると凄い心が落ち着く気がするんです。」

「フフフ、そうでしたか。また一つルア様の事を知ることができました。それだけでもここに来た甲斐がありました。」

 そう喜びを噛み締めたルシファーは、おもむろに人魚の方へと視線を向けると、ルアにも聞こえないような声でポツリと呟く。

「ミカエルも歌が上手でしたね。今度機会があれば教えてもらいましょうか。」

 そして二人は人魚の歌を最後まで聞き入っていた。
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