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第三章 終焉を呼ぶ七大天使

第202話 ルアに起こった異変

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 ガブリエルが襲来してから数日、体を休めたルアだったが、いざ毎日の修業に励もうとすると彼の体に異変が起こっていた。

「メタモルフォーゼ!!………………あれ?」

 いつものようにメタモルフォーゼと言っても、ルアの体に全然変化が現れない。不思議に思い何度も何度もメタモルフォーゼと口にするが、一向に体に変化が現れない。

「ど、どうして……メタモルフォーゼができないの?」

 焦りを感じているルアのもとにルシファーが歩み寄った。

「ルア様。」

「ルシファーさん、メタモルフォーゼができないんです。」

「なんと……それは大変なことになっているようですね。ルア様少々お体に触れますよ。」

 ルシファーはルアの後ろに回り込むと彼の背中に手を添えた。そして目を閉じると、ルアの体に魔力を流し込んだ。すると、何かを感じ取ったのか少し驚いた表情を浮かべながら彼の背中から手を離す。

「な、何かわかりましたか?」

「どうやらレト様のドレスの力で一時的にルア様のメタモルフォーゼが封印されているようです。」

「えぇっ!?どうして……そんな。」

「おそらくですが、レト様のドレスに仕込まれていた安全装置というものがまだ機能しているのではないでしょうか。それのせいで一時的にメタモルフォーゼができなくなっているのかと。」

「そ、そんなこれじゃあ皆を守れない。」

 落胆するルアにルシファーが優しく言葉をかけた。

「ルア様、一人ですべてを背負う必要はないのですよ。あなた様が無茶をして傷つけば傷つくほど、周りの方々が悲しむのです。」

「そ、それは……。」

 ルシファーの言葉にルアは何も言い返すことができずにいた。

「どうかご自分の身を大事になさってください。ルア様、あなたは……なのですから。」

「……はい。」

 コクリと頷いたルアの頭をルシファーは優しくなでた。

「さて、ではルア様しばらくは私とともに体力の回復に努めましょうか♪」

「えっ?」

「人間という種族がどういう風にして体力を回復させるのか……たくさん調べてきましたので、一つ一つ実践していきましょう♪」

 にこりとルシファーは笑うと、一冊の本を取り出した。そしてパラパラとページをめくり始める。

「そうですね、私が調べた限りでは……温泉?というものに浸かると体が癒えるという文献が多かったので、まずは温泉はどうでしょうか?」

「温泉……ですか。」

「温泉に入りながらできる回復方法もあるようなので、ぜひいかがでしょうか。」

 にこにこと微笑みながら、純粋な期待の視線を向けてくるルシファーに、断ることができずにルアはコクリと頷いた。

「フフフ、それでは早速……参りましょうか♪私の体にしっかりと捕まってください。」

 ルシファーに言われた通り、ルアは彼女の体に恥ずかしがりながらもしがみついた。
 
「では参ります。」

 ブン……とルシファーの足元で魔法陣が怪しく輝くと、次の瞬間……二人はとある場所へと転移していた。
 ルアが目を開けると、そこには一度見たことがある景色が広がっていた。

「あれ……ここって……夜の国?」

 ルア達が転移してきた場所は紛れもなく夜の国だった。

「おや、ルア様はここに来たことがあるのですか?」

「は、はい。ミリアさんに会うために……。」

「なるほど……。」

 と、ルシファーに以前ここに来た経緯を説明していると、二人のもとに一人の女性が近寄ってきた。

「大きな魔力を感じたので、まさかとは思いましたが……。あなただったんですね。」

「あっ!!えっ……とロザリィさん……ですよね?」

「覚えて頂いていたようで光栄です。」

 二人を出迎えに来たのはクイーンサキュバスのロザリィだった。

「今日はミリア様はご一緒ではないのですね。」

「は、はい。」

「……ルア様、お知り合いですか?」

「あ、ルシファーさんこの人は…………。」

 ルアはルシファーにロザリィのことを話した。すると彼女は納得したように大きく頷く。

 そしてロザリィはルア達にあることを問いかけた。

「それで……本日は夜の国にどんなご用でしょうか?」

「実はこちらの温泉を探しているのですが……ご存じですか?」

 ルシファーがロザリィに温泉の詳細の書いてある本を手渡すと、彼女は……。

「あぁ、この温泉なら……私が経営している場所ですね。」

「なんと、では案内してもらっても?」

「もちろんです。こちらへ……。」

 そしてルア達はロザリィが経営しているという温泉へと向かうのだった。
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