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第三章 終焉を呼ぶ七大天使

第201話 次なる刺客

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 ルアが目覚める頃……天界では大騒ぎが起こっていた。

「た、大変です!!」

 一人の天使が、ある七大天使のもとへと駆けつけた。

「そんなに慌ててどうしましたかぁ~?」

 クルリと後ろを振り返ったのはミカエルだ。

 にこにこと微笑みながら振り返った彼女に、天使は焦りを隠せない様子で言った。

「が、ガブリエル様が……ガブリエル様が消滅しました!!」

「…………!!」

 その言葉に一瞬ミカエルは驚いた表情を浮かべた。しかし、これは演技である。内心はというと……。

(さすがは姉様、ガブリエルさんじゃ相手にならなかったみたいですね。) 

 内心ではクスリと微笑むミカエル。決して顔には出さないが……。

「主神には私が伝えるので、あなたは下がって良いですよ。」

「はっ……。」

 ミカエルがそう言うと、天使はどこかへと去っていった。

 そしてミカエルは一人になるとニヤリと笑う。

「クスクス……さてと、それじゃあ主神のとこに向かおっかな~♪」

 すたすたと何歩か歩くと、彼女の姿が消えどこかへと消え去ってしまった。

 そして次に彼女が姿を現したのは天使達が崇め称える主神の前だった。
 鏡の前で髪をとかしている主神の前でミカエルは跪くと、口を開いた。

「お知らせします。ガブリエルが消滅しました。」

 ミカエルからその言葉を聞くと、天使達が主神と崇める女性の手が止まった。

「……ガブリエルが、やられた?」

「はい。」

「そう……ガブリエルが…………。」

 背中を向けているが、彼女からはドロドロとどす黒い何かが溢れ出している。

「あの子は七大天使には相応しくはなかった……そう言うことなのかしら。」

 溢れ出た黒いそれは彼女の体を包み込むと、向かい合っていた鏡にまで侵食し、鏡にヒビが入り始めた。

 そしてその黒いモノは歪なハサミのような形を象ると、自分の腰まで伸びた金色の髪の毛をジョキジョキと音を立てて切り始める。

 髪を短く切った彼女は、大きく息を吸い込むと、ある天使の名前を呼んだ。

。」

 彼女が名前を呼んだ瞬間、膝元に一人の天使が現れた。

「七大天使第4席ラグエル、呼ばれて飛び出て参上いたしま~したっ。」

「ラグエル、あなたに使命を与えます。」

「は~い~。」

「レトの作り出した世界を……生物を……全てにしなさい。あなたに与えた神器なら……簡単なことでしょう?」

「えへ、えへへへへぇ……ついに、ついにやっても良いんですね~?」

 彼女の言葉にラグエルは怪しく笑いながら、恍惚とした笑みを浮かべる。

「構いません。あの世界ごと滅ぼしてしまいなさい。」

「うぇへへへへ♪ラグエル使命を承りました。」

 不気味にラグエルは笑うと、腰に下げていたラッパを軽く吹いた。

 パラパッパラパパラ~♪

「それでは世界の終演に相応しい曲を作って来ま~す。では、おまかせくださ~い。」

 ラッパを吹きながらラグエルは主神の前を去っていった。それを見送ると、彼女はミカエルにも声をかけた。

「ミカエル、あなたにも使命を与えます。」

「なんでしょう?」

「ラグエルに同行し、あの世界の終焉を見届けなさい。そして……万が一、ラグエルがやられてしまった時には、終焉のラッパだけは回収してくるのです。」

「わかりました。」

「では、下がりなさい。」

 そしてミカエルは彼女のもとから立ち去ると、口角を歪に歪めて笑った。

「やっと姉様のもとにいける……。あわよくば姉様と共に…………ふふふふふ♪ふふふふふふふっ♪」

 ミカエルはポケットにしまっていたルシファーの写った写真を取り出すと、それに優しくキスをした。

「ラグエル……あなたには悪いですけど、私は姉様の味方……ですからねっ♪使命なんて糞喰らえ~っ♪」

 ミカエルだけの空間で、彼女の笑い声が堪えず響いていた。
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