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第三章 終焉を呼ぶ七大天使
第191話 欲
しおりを挟む「ぜぇっ……ぜぇっ……も、もう無理だ。」
息を切らしながらガクリと前のめりに倒れこむロレット。
「わしも魔力切れじゃぁ……。」
しゅん……と由良も黒い九尾の姿からいつもの姿へと戻ってしまう。
力を出しきって疲労している二人の前に、ルシファーはにこやかに微笑みながら円の中心に立っていた。
「フフフ、お二方良く頑張りましたね。」
「はぁ……はぁ……それで、我らに合っている欲望というのはわかったのか?」
膝を震わせながら立ち上がったロレットはルシファーに向かって問いかける。
「由良さんの欲はとても分かりやすかったですよ。」
「我の欲はどうだったのだ?」
「ロレットさんの欲は……残念ながら今回は見定めることはできませんでした。」
「むぅ……。」
ルシファーの言葉に残念そうな表情を浮かべるロレット。
「ではわしの欲望は何なのじゃ?」
「由良さんの内に秘めている欲望は嫉妬です。」
「嫉妬…………。」
由良はそう言われたとき、ある心当たりを思い出した。
少し前、由良が突然の発情期を迎え、ルアのことを欲望の赴くまま襲った。その時、東雲に言及された突然の発情の原因が嫉妬だったのだ。
「どうやらご自分でも心当たりがおありのようですね?」
「うむ、まぁ……あるのぉ。」
「嫉妬の欲望は七つある罪深い欲望の中でも最も自分を破滅に追い込む可能性のあるものです。しかし、そのぶん欲望の解放による力は一線を画すものがあります。」
円の中から出たルシファーは二人の周りを歩き回りながら説明し始めた。
「正直なところ……由良さんが嫉妬の適性があるのは、こうして力を見せてもらう前から気がついていました。ルア様への執着……そして強い者に対する視線……罪深い欲望というのは日常生活にも現れるのですよ。」
「嫉妬か……うむむ……。」
どこか歯切れの悪そうな、納得のいかないような表情の由良。
「フフフ、どこか納得できていない様子ですね。」
「そりゃあそうじゃろう?急に嫉妬深いやつじゃ……と言われても受け入れられるはずがない。」
「あくまでも心の内側にある欲ですから、そこまで気にする必要はないと思いますよ?それに……嫉妬というのは一途な心を持っていなければ抱くことのないものです。それだけ由良さんがルア様のことを想っているという証拠にもなるのですよ?」
「むむむ、そう言われると悪い気もしないかもしれん。」
「フフフ、そうでしょう?」
上手く言いくるめたルシファー。そんな彼女にロレットがあることを問いかける。
「由良が嫉妬に適性があるのはわかったが……他にはどんなものがあるのだ?」
「それも良い質問ですロレットさん。先程話した嫉妬の他に、傲慢、憤怒、怠惰、強欲、色欲、暴食。嫉妬を含めたこの七つが罪深い欲望と呼ばれる欲望です。」
「ふむ、我には傲慢が似合いそうなものだな。」
ルシファーから話を聞いたロレットはそう思いを馳せたが……。
「あ、それはないのでご安心を。ロレットさんからは傲慢の欲は感じませんでした。」
「なんだと!?」
「それと、由良さんと同じ嫉妬も感じませんでした。ですので……残る憤怒か怠惰か、強欲か色欲か暴食のうちのどれかでしょう。」
「むぅ……どれも我に合っているとは思えんものばかりだな。」
「フフフ、そう思っていても欲望というものは心の奥底にあるものです。自分でも気がつけないものがあると思いますよ?逆に由良さんのような分かりやすい方が珍しいのですから。」
首をかしげるロレットにそう話すルシファー。
「さて、では今日はこのぐらいで切り上げるとしましょうか。お二方も力を出し尽くしてしまったようですし………それにルア様のことも気になります。」
「むっ?ルアがどうかしたのかの!?」
「少し体に熱を帯びていた様子で…………。」
「なんじゃと!?こうしてはおれん!!早く帰ってルアの様子を見に行かねばっ!!」
ルシファーがそう報告する前に、表情を変えた由良は一人で移動魔法を使ってさっさと帰ってしまう。先程まで魔力がすっからかんだったというのにルアのことを思った瞬間に移動魔法が使えてしまったようだ。
そんな由良を見てルシファーはニヤリと笑うのだった。
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