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第三章 終焉を呼ぶ七大天使

第190話 天使の結界

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 そしてルシファーはレトから与えられた使命を果たすため、由良達のもとを訪れていた。

「むっ?お主は……ルシファー。」

「こんにちは由良さん。……と、あなたは…………。」

「ロレットだ。」

「あぁ、そうでしたロレットさん……でしたね。」

「急に現れて何の用じゃ?」

 東雲はルシファーに問いかける。

「私のもう一つの使命……あなた達の成長を手伝うという使命を果たしに来ました。」

「ほぅ?」

 ロレットはルシファーの言葉に興味深そうな様子を見せる。

 ルシファーはキョロキョロと周りを見渡すと首をかしげる。

「他の方々は……一緒ではないのですね?」

「うむ、わしら以外は別の場所でアルテミスに稽古をつけてもらっておるはずじゃ。」

「アルテミス様に……そうですか。ではアルテミス様の邪魔をするのは無粋ですので、先にあなた達からやりましょうか。」

 そう言うと、ルシファーは自分の足元に自分の体が収まるギリギリの大きさの円を描いた。

「では、まずはこの円の中から私を引きずり出してみてください。」

 満面の笑みでそう言ったルシファーに、呆気にとられながらロレットが問いかける。

「………………それだけか?」

「はい、私はここから動きませんし……あなた方に攻撃もしません。」

 ルシファーがそう口にした瞬間、ロレットからブチリと何かが切れるような音が響く。そして彼女は腰から生えている尻尾を思い切り地面に叩きつけた。

「ナメられたものだ、今の言葉……呑み込むことは許さんぞっ!!」

 ロレットは剣を強く握り、ルシファーへと向かって一気に距離を詰めると彼女の目の前で大きく振りかぶった。

龍神の一閃ドラグーンスラストォォォォッ!!」

 必殺の一撃の名を叫びながら振りかぶった剣を振り下ろす。本当にルシファーが何もしないのならば、体が二つに別れる軌道だ。

 しかし、ルシファーの笑みは崩れない。

「良い攻撃です。並みの天使ならば一撃で屠れるでしょう……ですが。」

 淡々と分析しながら話すルシファーの目の前で、ロレットの剣がビタリと動きを止めた。

「っ!?」

「七大天使相手には、攻撃を届かせることすらできないですね。」

「貴様……何もしないと言ったではないか!!」

「えぇ、私は何もしていませんよ?」

「ではなぜ我の剣が届かん!?」

「普通の天使と違い、七大天使は体の周りに強固な結界が張ってあるのです。ですから、このように……生半可な攻撃では体に触れることすらできない……と、いうことです。」

 ルシファーの言った結界を無理矢理打ち砕くべく、ロレットは剣に力を込めるが、剣は止まったところから1mmも動く様子はない。

「ぐぐぐっ!!なんっ……なんだこの硬さはっ!!」

「七大天使の結界はこのように物理的な攻撃も…………。」

「狐火……獄式っ!!」

 ルシファーが話している最中、彼女に黒い炎を纏った狐が飛びかかり黒い炎を上げて爆発する。
 しかし、ルシファーは何事も無かったかのように円の中に立っていた。

「魔力が込もった攻撃も通しません。」

「くっ……。」

 黒く染まった由良へと視線を送りながら、ルシファーは不敵に笑う。

「下界の全てを拒絶する……それが七大天使の結界なのです。」

 そう説明したルシファーに由良があることを問いかけた。
 
「ではなぜルアはお主に触れられる?全てを拒絶する結界なのならば、ルアも触れられぬはずじゃ。」

「あぁ、いい質問です由良さん。実はこの結界には二つ穴があるんです。その一つは、主の存在です。」

「主の存在?」

「はい、今現在私認識では主はルア様……ということになっています。天使が主と認識したものは、結界をすり抜け、私達に触ることができるのです。」

 ルシファー曰く、自分が主と認識したものは結界をすり抜け触れることができるらしい。

「もう一つの穴は何なのじゃ?」

「天使の結界は強い穢れによって中和することが可能です。」

「穢れ?…………とはなんだ?」

 ロレットの頭の上に大きな?マークが浮かぶ。

「穢れというのは、罪深い欲望のことです。」

「罪深い欲望?うむむむむ……ますます訳がわからなくなったぞ。」

「欲望は人それぞれ適性があります。なので……今回は私がお二人の内に潜む強い欲望を精査しましょう。さぁ、手を止めている暇はありませんよ?どんどん攻撃してきてくださいね?」

 不敵な笑みを浮かべながらルシファーは、円の中心に立つのだった。

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