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第三章 終焉を呼ぶ七大天使
第179話 ルアの守護者
しおりを挟む「ん……んぅ。」
安らかな睡眠からゆっくりとルアの意識が覚醒する。重い瞼をこすりながら、ゆっくりと体を起こしたルアは大きく背を伸ばした。
「ん~~~…………っはぁ~~~。今日もいい天気だなぁ。」
窓の外から心地よい日差しが射し込んでいるのを見てぽつりとつぶやいたルア。今日もまた何気ない日常が始まると思っていた彼だったが……。その思考は一瞬にして崩れ去ることになる。
「お目覚め……ですね。」
「ふぇ?え…………えぇっ!?だ、だだだ誰ですかッ!?」
ルアが驚き声を上げるのも当然で、彼が目を覚ますと、見知らぬ女性が彼のベッドの傍らに立っていたのだ。
「んん?なんだ騒々しいぞルア……。」
ルアの大きな声を聴いて東雲もゆっくりと体を起こした。
そして彼女もルアと同様にその見知らぬ女性を目にする。
「……何者だ貴様。」
「そんなに警戒せずともいいですよ。私の名はルシファー、レト様にこの方をお守りするよう命を承けてきました。」
「なに?レトからだと?」
東雲がレトの名を呼ぶと、ルシファーの眉がピクリと動く。
「恐れ多くもあの方を呼び捨てにするとは……無礼ですよ?」
「くくくくく、癇に障ったか?それは悪いことをしたなぁ……ん?」
ルシファーと名乗った女性と東雲の間の空気がピリピリと張りつめていく。まさに一触即発だったその時、ルアの部屋のドアが勢い良く開いた。
そして中に入ってきた人物を見てルシファーはペコリと一礼した。
「これはこれは……アルテミス様、お初お目にかかります。」
「る、ルシファー……あ、あなた本当に生きて…………。」
「あなたのお母様であるレト様のお陰ですよ。」
「お、お母様もとんでもないのを寄越したわね……。まさか元七大天使のトップのあなたを送ってくるなんて。」
アルの言葉に東雲の表情が変わる。
「元七大天使……だと?」
「フフフ、ずいぶん昔の話ですよ。」
「だが、お前が七大天使と同等の力を持っていることに変わりはない……違うか?」
鋭い眼光を向ける東雲にルシファーは不敵に笑う。
「だとしたら、どうしますか?」
「わかっているのだろう?妾と……戦え!!」
ピョンと東雲はベッドから飛び上がると、人の姿へと化けルシファーの前に立った。
「ちょっ…………東雲!?」
「止めるでない、七大天使の力を経験する良い機会だろう?」
「フフフ、そう焦らずともレト様からあなた達の成長を手伝うよう命じられておりますよ。」
「ならば余計に話は早い。さぁ、表に行くぞ。」
意気揚々と外へと出ていこうとした東雲だったが……。
「そうしてあげたいのは山々ですが、今は…………。」
「え……わぁ!?」
ルシファーは起きたばかりのルアのことを抱き上げ、自分の体に引き寄せた。背の高いルシファーに引き寄せられたルアの頭には彼女の大きな胸がずっしりとのし掛かり、身動きがとれなくなってしまう。
「私にはこの方をお守りする……という使命があるので。後にしていただけますか?」
「なっ…………。」
「私に与えられた最も重要な使命はこの方をお守りするということ。あなた達の成長を手伝うのは二の次です。」
「わぷっ!!」
ルシファーはルアのことを大きな体で包み込むように抱きしめる。
「今日はあなた様の行動を把握するために一日中密着させていただきます。これも守護の一環なのでどうか悪しからず……。それでは行きましょう、人間の生活では朝起きた後には食事をすると聞き及んでいます。」
「えぁっ……ちょ、ちょっと待っ…………。」
そしてルアはルシファーに連れられて部屋の外へと出ていってしまった。
部屋の中にポツンと取り残された東雲とアル。東雲は一つ大きなため息を吐くと、アルに向かって問いかける。
「はぁ……変態女神、さっきあやつのことを元七大天使と言っていたな。元とはどういうことだ?七大天使は入れ替わりが激しいのか?」
「だからその呼び方やめなさいって!!…………ちなみに七大天使は滅多に入れ替わることはないわ。」
「ほぅ?ではなぜあやつは七大天使から外されたのだ?」
「ルシファーは大昔に神々に謀反を起こしてるのよ。その時に同じ七大天使を二人殺してるの。」
「あやつ一人でか!?」
「そうよ。でも最終的には謀反は失敗した。何人かの神々が協力してルシファーを打ち倒したって聞いたけど……まさか生きてたなんて私も驚きよ。」
「神々が束になっても倒しきれなかった者があやつということか……くくくくく、面白い。」
「はぁ、とことんあなたは自分が強くなることにしか興味がないのね。…………ただ、一つだけ忠告しておくわ。ルシファーには気を付けるのね。下手に怒りを買ったら……私でも手がつけられないわよ?」
それだけ忠告するとアルは部屋を後にした。
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